提供:ことりっぷ
2023年8月、箱根・宮ノ下に、現役のお坊さんが作る精進料理の朝食処「斎縁」がオープン。築70年の古民家をリノベーションした店内では、先付けから始まる精進料理のコース料理を楽しめます。営業時間は、朝8時から朝食を食べ終えるまで。また、おいしいと評判の献米を使ったご飯はお代わり自由です。箱根旅をするなら、朝ごはんは「斎縁」で。ゆったりとお腹いっぱいになれる、幸せな1日を始めてみませんか?
宮ノ下の町を見守る「常泉寺」の副住職が始めたお店
「常泉寺」からすぐ。坂の途中に佇む1軒屋
箱根の玄関口「箱根湯本駅」と「強羅駅」の真ん中あたり。箱根駅伝で有名な「宮ノ下温泉郷」の一角、ぐねぐね曲がった細い路地に「斎縁」はあります。
こちらは、関ヶ原合戦よりも古い、450年以上も昔からこの地を見守ってきた「常泉寺」の副住職・折橋大貴さんが始めたお店。お寺が管理していた古民家をリノベーションし、朝ごはん専門のお店として、2023年8月にオープンさせました。
看板は木工が趣味の一つ、という「常泉寺」の住職が手彫りしたもの
入り口で目を引くのは、ぬくもりを感じる木彫りの看板。まるで「ようこそ」と出迎えてくれるようで、心が和みます。
玄関先には、寄り添うひょうたんが2つ
静かなお庭には、ひょうたんの置物が飾られ、訪れる人をほっこり楽しませてくれます。実はこのひょうたんもオリジナル。大貴さんのお母さんが、心を込めて手作りしたのだとか。
心地よさとわくわく感であふれた古民家
建物は、木造2階建ての1軒屋。周囲の景色に溶け込むよう、外観は木のぬくもりがいっぱい。「おじゃまします」と言いたくなるような、心地よさとわくわく感があります。
盆栽や絵付けされた美しい貝殻など、折橋さんご一家の作品もあちこちに
大切に守られてきた古民家は、職人技の結集。日常の美しさを切り取る「丸窓」が設けられていたり、アーチ状にくり抜かれた壁があったり。古民家ならではの、遊び心を取り入れた魅力的な空間になっています。
きめ細やかな“おもてなし”が行き届く8席のみの空間
窓から降り注ぐ、陽の光が気持ちいい
天井や梁など、骨組みは当時のまま。リノベーションにより、近代的にできるところは手を加え、古民家の良さと新しい家の便利さをうまくミックスさせました。
また、店内に流れるBGMも、シックなジャズやロマンティックなヴォーカルナンバーなど、おしゃれでスマート。
奥行きのある店内は、手前が飲食スペース、奥がオープンな厨房になっています。大貴さんがお客さん一人一人に向き合えるように、席数は8席のみ。事前予約制なので、忘れずに予約しておきましょう。
調理師と食品衛生士の資格を保持する、唯一無二のお坊さん
「誰かの為の方が、頑張れるのだと思います」とにっこり
大貴さんは、大学卒業後、お坊さんの修業をしたのち、視野を広めるため自分の好きな料理の世界へ。調理学校へ通い、料理の楽しさに魅了されたと言います。
そして、お寺で開催していた「朝粥の会」での料理が評判となり、「精進料理の先生」として活動するように。現在は副住職とは別に、料理人としての顔を持ち、日々おいしさを追求。和食のみならず、イタリア料理やフランス料理にも精通しています。
外からも中からもよく見えるオープンな厨房
開業から半年経った今でも、厨房はぴかぴか。すみずみまで掃除が行き届いており、改めて大貴さんの料理への愛情が伝わってきます。
広がる音や香りが、感覚をフルに刺激してくれる
パチパチと揚げ物が揚がる音や、香ばしいかおりも、楽しみのひとつ。「これからどんな料理に出会えるのだろう?」と期待が高まります。
ほんとに精進料理?と驚く、感動のコース料理
かつて宮ノ下で人気を泊した名旅館「奈良屋」のお盆が、さり気ないアクセントに
こちらでは、精進料理をコーススタイルで提供。季節や届いた食材により、メニューの内容が変わります。
精進料理というと、味が薄いイメージですが、しっかり目の味付けが魅力。旬の野菜を中心に、料理のジャンルを問わず、カジュアルに精進料理を楽しめます。
この日の先付けは、パリッと香ばしく揚げられた「さつまいもと自家製ラムレーズンの春巻き」、イタリアンテイストな「きのこフライのトマトソース添え」、炒めたミョウガ入りの「味噌だれ湯豆腐」など。肉やお魚は一切使っていませんが、どれも食欲をそそるおいしさ。
調理も接客も、すべて大貴さん一人で行います。丁寧な料理の説明や、絶妙なタイミングでのサーブが心地良い♪
メインはボリューム満点の「精進朝食膳」
身近なお膳に仕立てられた「精進朝食膳」
先付けの次に出されるのは、メインとなる「精進朝食膳」。お坊さんが使う器「応量器」に、バランスのとれた朝ごはんが盛り付けられています。
野菜が中心ですが、揚げたり、焼いたり、煮たり。味や食感のバリエーションも豊富で、ボリューム満点です。また「献米」という一度仏様に献上したお米を炊いたご飯は、お代わり自由。お肉やお魚がなくても、大満足の朝ごはんです。
サクふわ食感がたまらない、がんもどき
こんがりと揚がったがんもどきは、大貴さんが作る自家製。口に運ぶと、ふわっと柔らか。のり塩がアクセントになり、精進料理とも和食ともまた違う、“新鮮さ”を与えてくれます。
デザートと一緒に出される静岡茶で、ほっとひと息
食後に出されるデザートも、動物性の物は一切使いません。この日のデザートは、シナモン香る「りんごの赤ワイン煮込み」。りんごにしっかり味が染み込み、さわやかな甘さと酸味があふれます。
朝ごはんを食べた後は、縁側で日向ぼっこ
よく陽があたり、ぽかぽかな縁側
お腹がいっぱいになったら、縁側に出て、のんびりスローな朝時間を楽しみましょう。心地良い風が通る縁側は、日向ぼっこするのに最適。美しいお庭を眺めながら、心和むひとときを。
また2Fの和室は、畳の上でごろんと横になれるのが魅力。リクエストをすれば、レンタルスペースとして利用することも可能です。
とっておきの朝ごはんや、ゲストハウスに泊まった際の朝食スポットとしても重宝する「斎縁」。お坊さんだけに、町の歴史やガイドブックに載っていない穴場の観光スポットも教えてくれます。
いつもと違う箱根旅がしたい方は、ちょっぴり早起きして、「斎縁」へ。ほっと落ち着けるすてきな隠れ家で、ゆったり癒しのモーニングを楽しんでくださいね。
文:安藤美紀