提供：ことりっぷ
2024年春の北陸新幹線「敦賀」延伸開業に向け、盛り上がりをみせる北陸エリア。新幹線開業後は、富山・福井・石川、北陸３県すべてに新幹線が通るようになります。そこで今回は、スローな時間が流れる富山にフォーカス♪ ノスタルジックな港町をめぐり、ものづくりが根付く文化に触れ、おいしい海の幸に満たされる、富山週末旅を案内します。見て、触れて、感じて。富山で、疲れた心をパワーチャージしてみては。
歴史ある「シマタニ昇龍工房」ですずがみ作り体験
全国各地の寺院に「おりん」を納めている
JR富山駅から電車に揺られること約20分。まずは鋳物発祥の地として知られる、高岡市へ向かいます。
400年もの伝統と歴史を持つこの町には、鋳物や錫（すず）の製作体験ができる工房が点在。町を歩けば一生モノの道具に出会えたり、物語を感じさせるすてきなお店が現れたり。新しいものと古いものが調和した町を、のんびりめぐることができます。
明治42年創業の「シマタニ昇龍工房」は、そんな高岡で「おりん」をつくり続ける小さな工房。すぐ横には、モダンな「おりん」の展示ルームも併設しています。
４代目の島谷好徳さん
現在4代目を務めるのは、島谷好徳さん。島谷さんがつくる「おりん」は、調音され、透き通った音色するとが評判です。その繊細な音色は、とても心地良く、深く心に染みわたるよう。耳を傾けると、清らかな音が心を穏やかにしてくれます。
２名から参加OKの「すずがみ作り体験」（体験料金4500円～）
「シマタニ昇龍工房」は、錫で出来た「すずがみ」を独自で開発。手で好きな形に変えられる魔法のような「すずがみ」は、大きな話題となり、世代を超えて人気の商品になりました。工房では、職人さんの技を間近で見学できたり、「すずがみ」作りの体験をできます。
「すずがみ」を作る道具は、金槌と自分の手だけ。薄い錫の板に、金槌をコンコンと打ち付け、模様をつけていきます。実際にやってみると、金槌を下ろす角度によってうまく模様がつかないことも……。しかし、達成感や満足度は期待以上♪ 世界にひとつの魔法のお皿は、日々の生活に彩りを添えてくれそうです。
「茶寮 和香」で味わう極上の日本料理ランチ
はらはらと風に揺れる白い暖簾をくぐって、店内へ
国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている、高岡市金屋町の一角。千本格子の家並みに溶け込むように建つのは、江戸末期の商家を改装した「茶寮 和香（さりょう にこか）」です。
こちらのお店は、地元・高岡の食材をふんだんに使ったお任せコースが評判の名店。北陸ミシュラン一つも獲得した、知る人ぞ知る大人の隠れ家です。
懐かしくて新しいモダンな店内
江戸時代から今に至るまで、ゆっくりと、少しずつ時を刻んできた古民家。中に入ると、凛とした美しい空間に、柔らかな光が降り注ぎます。
店主の早川さんは、高岡市生まれ。大阪で日本料理の腕を磨き、2015年に「茶寮 和香」を開業させました。
カウンター席に座ると、すぐ間近で、早川さんの仕事ぶりが見られます。一つ一つ丁寧に仕上げられる匠の技に、ワクワク♪カウンター越しに、優しい早川さんとの会話も弾みます。
昼の「お任せコース」（5500円）※事前予約制
メニューは、昼も夜も、お任せコースのみ。昼はお料理６品に、お食事、デザートがついて、満足感たっぷりの内容になっています。“旬”を感じられるお料理は、素材そのもののおいしさはもちろんのこと、料理を盛り付ける器にもこだわりが。高岡で作られる器や、前の家主が大切に保管していた器などが使われます。食材を活かし、洗練された料理に仕上げるセンスに脱帽。唯一無二の日本料理に感動が止まりません。
暮らしに寄り添う伝統工芸の宝庫「ZIBA（ジーバ）」
2020年10月、「御旅屋セリオ」２階に移転リニューアルオープン
続いて向かったのは、高岡市中心市街地の商業施設「御旅屋セリオ」の２階にある「高岡地域地場産業センター」。こちらは「ZIBA（ジーバ）」の愛称で親しまれ、高岡の手仕事品に気軽に触れられるスポットとして人気を集めています。
幅広いジャンルの“かわいい”が揃う店内
広い店内では、高岡銅器、高岡漆器、井波彫刻、越中和紙など、富山県内の６つの伝統工芸品を一同に集めて店頭販売。センスよく並べられた品々は、ひねりの効いたデザインや、遊び心あふれる大人かわいいものばかり。どれも手に取って、じっくり眺めたくなります。
一度に40名まで参加可能な鋳物体験工房。体験料金は一人2500円から
そして、さまざまなクラフト体験が出来るのも「ZIBA」の魅力です。手ぶらで参加できるうえに、体験料金もリーズナブル。旅の思い出を形に残すのに、もってこいのスポットです。
鋳物の製作体験では、280～300℃近くまで熱した錫（すず）を型に流し込み、完成までの工程を、すべて室内で行うというから驚き。高岡銅器のぐい呑制作体験は、その日に持ち帰って、その日の夜、家で乾杯できます。
心が整う、国宝「勝興寺」を訪ねて
国宝に指定された本堂
続いて向かったのは、2022年、新たに国宝に指定され、注目を集める高岡市の「勝興寺」。その歴史はとても古く、この地に建立されたのは1584年。境内にある多くの建物が、200年～300年前に建てられました。
23年にも及んだ「平成の大修理」は、2021年にすべて完了。大修理を終えた本堂の屋根も美しい檜皮葺きが復元され、訪れる人の目を楽しませてくれます。
本堂は、思わずハッと息をのむほどきらびやか。特に極楽浄土を表した天井は、見ごたえたっぷりです。
京都の西本願寺に合わせて拡張された歴史を持つ「大広間・式台」
本堂と同じく、国宝に指定された「大広間・式台」。襖絵のグリーンの模様は、修繕工事中に下地から出てきた創建当初の色や柄を復元しているのだとか。今、見てもおしゃれなので、じっくり眺めてみてくださいね。
他にも「勝興寺」には、七不思議の言い伝えがあります。七不思議をめぐって、境内をゆっくり散策してみるのも楽しい時間になるはず。
ノスタルジックな港町で「内川」さんぽ
高岡駅前から路面電車に乗り、富山県屈指のベイエリア・射水市へ。射水市の新湊を流れる内川は、両岸に漁船がずらっと並びノスタルジック。 立山連峰を望むこの美しい水辺の風景は、「日本のベニス」とも呼ばれています。
「べいぐるん」所要時間約30分コース（一人1000円）
内川エリアをめぐるのに便利なのが、電気三輪自動車の「べいぐるん」。誰でもアプリや電話で気軽に予約ができ、運転手さんが観光スポットをガイドしてくれます。「べいぐるん」でさわやかな風を感じながら、ぜひ水辺の風景を楽しんで。
新湊観光船「内川遊覧＆12の橋巡り」（一人1800円）
日本のベニス内川を存分に楽しむなら、「新湊観光船」に乗ってみては。乗車時間は約50分間、手軽にプチバカンス気分を味わえます。
全国的にも珍しい屋根がついた歩行者専用の「東橋」
昭和にタイムスリップしたような港町の風景を眺めながら、水路に架かった12の橋をくぐれるのも、この船の醍醐味。橋は全体的に低く作られており、くぐる瞬間はなかなかスリリング。毎回、橋をくぐるたび胸が高鳴り、冒険心がくすぐられます。
巨大な海のキリンにも遭遇!?
内川から、富山湾へ出ると、一気に大パノラマが広がります。富山湾へ出たら、大迫力の「新湊大橋」をくぐり、一般公開されている帆船「海王丸」へ行き、Uターン。お天気が良ければ、船の上から立山連峰も眺められますよ。ワクワクと非日常感に満ちたクルーズは、きっと一生モノの思い出になるはず♪
夜の内川はライトが川面に反射し、海外にいるかのような幻想的な光景を楽しめます。のんびりおさんぽしながら、昼間とはまた違う雰囲気をぜひ楽しんで。
内川の隠れ家イタリアン「バルツェルラボ」
モダンでおしゃれな店内
クルーズを終えたら、お楽しみの夕食タイム。やってきたのは、古民家を改装した隠れ家イタリアン。「バルツェルラボ」は、2021年、富山市総曲輪から、ここ内川に移転オープンしました。
夜のお任せコースの一例（8470円）
メニューは、お任せコースのみ。店主自ら新湊漁港で仕入れた魚を中心に、富山県内から集めた食材をふんだんに使用したコース料理を楽しめます。一品一品、創作意欲にあふれ、季節を感じられる贅沢な味わい。新鮮なお魚だけでなく、メインの池多牛も絶品です。
アメリカ人オーナーが営むバー「BRIDGE BAR」
本をお供に、落ち着いて過ごせるライブラリーコーナー
「もう少しお酒が飲みたい」そんなときは、「バルツェルラボ」から歩いて行ける「BRIDGE BAR」へ。こちらは、風情ある古民家をリノベーションしたバーです。
１階には、バーカウンターや本が並ぶライブラリーコーナーが。階段を上った中２階には、外の景色を眺めながらお酒が飲める、隠れ家のような席もあります。
オーナーは、内川に魅了されハワイから移住した、スティーブンさん。陽気なスティーブンさんは、日本語がとっても上手。好きなお酒を片手に語らうスティーブンさんとの会話も、楽しい時間です。
「ブッカーズ」ロック（１杯2000円）
常時70種類以上のアメリカンウイスキーから、バーテンダーの藤井さんがアレンジを加えたオリジナルカクテルまで、豊富なドリンクメニューがそろいます。なかには、バーボンの最高傑作と言われる「ブッカーズ」もラインナップ。お酒が好きな方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
絵になる港町をおさんぽしたり、幅広い伝統工芸品に触れたり。富山が誇るすてきな日常を体感しに、お出かけしてみませんか？
文：安藤美紀
