提供:ことりっぷ
約5万㎡もの敷地の中に廻遊式庭園のあるそば処「檑亭(らいてい)」。由緒ある茶室や竹林、八角堂などが点在する庭をアジサイや萩、水仙など一年を通して季節の花が彩りを添え、高台からは富士山と相模湾を望む雄大な景色が広がります。食事はもちろんのこと歴史のある建物や散策も楽しい庭園の様子をご紹介します。
イチョウの大木を従える威風堂々とした山門
京急バス・高砂停留所下車すぐ
昭和初期に別荘地としての開発が進み瀟洒なお屋敷が建ち並ぶ鎌倉山で、ひときわ存在感のある「檑亭」。1969年創業の老舗のそば処で50年以上の歴史があります。お店の入り口となる風格のある山門は、鎌倉の鶴岡八幡宮の東側のエリアにあたる西御門(にしみかど)にあった1642年建立の古刹・高松寺から移築したものです。
竹林の入り口
敷地内には石仏や石塔が点在する広々とした廻遊式庭園があり、季節の草花を楽しみながらのんびりと散策できます。眺望のいい本館前からは富士山と相模湾を望み、竹林では生い茂る竹を揺らす風を心地よく感じます。足元に届く木漏れ日がスポットライトのような丸い形をしていて、竹が風にそよぐたびにゆらゆらと揺らめく様子はとても神秘的です。
文化的な魅力もあふれる鎌倉山のお屋敷
建物は国の登録有形文化財、鎌倉市の「日本遺産」構成文化財に指定
門から入って石畳の小径を進むと大きな木造建築の本館が見えてきます。江戸時代の豪農の旧宅を昭和初期に横浜市内から移築し別荘として使われていたのだそう。山の傾斜を活かした斜面に建ち、1階はそば処、2階は会席料理をいただく和室が3部屋あります。
眺望も抜群の会席料理(7865円~※予約制)専用の待合席
和室へは龍の彫刻をほどこした欄間のある重厚な玄関から入り、玄関と本館をつなぐ待合席にはクラシカルな空間が広がります。日本の近代化に貢献した岩倉具視氏の邸宅で使われていた国産の黎明期のステンドグラスや舶来品のシャンデリア、伊藤博文直筆の額など会席料理をいただく前に日本建築の美しさと歴史の重みも感じられますよ。
(左上)2階の玄関(右上)玄関に華やかさをプラスする花頭窓(左下)廊下の一部は江戸時代のままの工法を大切に保存(右上)和洋折衷の待合室
窓からの眺望も一緒に楽しむ香りのいい自家製そば
1階そば処の入り口
1階には小あがりとテーブル席があり、ここの窓からも緑をたたえた庭園の向こうに江の島西浜海岸、空気の澄んだ日には富士山を望みます。テーブルとイスは庭園内の松の木から作られているのだそう。
そばやアラカルトを楽しむ1階席
自慢のそばは北海道産のそば粉を使い毎朝その日の分を自家製造します。お料理もぜひ味わいたい逸品ぞろい。細かい手仕事をほどこして揚げるサクッとした絶品の天ぷら、春には庭で獲れる新鮮なタケノコやフキノトウの料理など、一品一品が折り紙つきです。
「天せいろ」(1900円)そば猪口などの陶磁器は庭園内の窯で焼いた作家の作品
週末だけオープンする木立のなかの甘味処
深紅の野点傘が目印の「露庵」
そばを堪能した後は、ぜひ庭園の散策を。とくに週末は甘味処「露庵」がオープンしているので、和スイーツをこちらでいただくのもおすすめです。
(左上)撮影などでも使われる寄付(右上)石造仁王像(左下)木立の緑に映える野点傘(右下)壇のまわりには希少な古代瓦を配置した八角堂
露庵まではのんびり散策しながら歩いても5分ほどの距離です。茅葺きの寄付や法隆寺の夢殿を模したという八角堂を見ながら進み、阿吽の呼吸ぴったりの一対の仁王像の先に見えてきます。
野点傘のもとでのティータイムは小鳥のさえずりがBGM
「そばだんご」(770円)「コーヒー」(550円)
木々に囲まれ小鳥のさえずりが聞こえてくるのどかな「露庵」。「あんみつ」などの甘味のほか、「チーズケーキ」や「そばだんご」といったオリジナルのスイーツも人気です。オーダーごとにゆで上げ、こし餡をたっぷりのせた「そばだんご」は、ほんのりとした香ばしさの漂うおそば屋さんならではの味わいです。
「氷水 いちご」(850円)
4月下旬から10月下旬の陽気のいい時期は、深紅の野点傘が日陰をつくるお庭で気持ちよく過ごせます。メニューにも自家製シロップをたっぷりかけた「氷水」のほか、そば前肴セットなどとフリードリンク、〆のせいろそばをセットにした「鎌倉山ビアガーデン」も登場します。鎌倉山の自然を満喫して、のんびりとしたひと時を過ごしてはいかがでしょうか。
「鎌倉山ビアガーデン」(4950円※予約制)のそば前肴セット※1時間半制でビール飲み放題、ワインなどの持ち込み自由
文:高橋茉弓