提供:ことりっぷ
一見お城のようにも見える外観が印象的な「蒲郡クラシックホテル」は、100年近い歴史のある建物を受け継いだホテル。中に入ると外観とは対照的な、アールデコ洋式を取り入れたレトロモダンなインテリアに彩られ、メインダイニングではカレーやビーフカツなど、昔ながらのメニューも再現されています。三河湾の美しい景色を眺めながら、レトロ建築を楽しむひとときを過ごしてみませんか。
三河湾を一望できる風光明媚なロケーション
目の前に三河湾が広がり、国の天然記念物にも指定されている竹島を望む場所にある「蒲郡クラシックホテル」。昭和9年に創業した「蒲郡ホテル」から受け継いだ建物を今も大切に守りながら営業していて、ホテルやその周辺の建物が国の登録文化財にも指定されています。名古屋の織物商、瀧信四郎氏がこの地の風景を気に入り、明治末期から保養地として開発したのがそのはじまり。西洋建築と日本の城郭建築を融合させた豪奢なホテルを竹島を一望できる丘の上に作り上げました。
外観は銅板吹きの屋根となっていて、寺院や城郭を思わせる和風の様式ですが、各階にはベランダのような空間がもうけられ、景観を楽しめるように設計されています。
外観や内装は時代とともに補修改装されていますが、エントランスを入ると広がるロビーは創業当時の佇まいを色濃く残すフロアのひとつ。見上げると、2階まで吹き抜けになって、天井の漆喰壁には家紋のようにも見えるレリーフや繊細な透かし彫りが施されています。さらにその中心にはモダンなシャンデリア。華やかな時代を思い起こさせる空間です。
各客室は大幅に改装されていますが、それでも昭和天皇をはじめとする皇室の方々や昭和の文豪などが宿泊してきたというロイヤルスイートルームは、当時の面影があちこちに。歴史と伝統を感じさせるお部屋に宿泊するひとときは特別な時間になるはずですよ。
ほかにも館内には今ではあまり見かけることができないレトロな意匠があちこちにあるので、宿泊した際には館内をぜひじっくり観察してみてください。ステンドグラスや照明は特にこの時代のモダンなデザインが取り入れられていて、かわいいモチーフや美しく繊細なデザインにうっとりします。
アールデコの時代を感じるメインダイニングへ
ホテルには3つのレストランがあり、数寄屋風の離れでは和食を、寺院建築を思わせる六角堂では鉄板焼きを楽しむことができます。なかでもホテル2階にあるメインダイニングでは、クラシックなフランス料理を、創業当時のアールデコ様式の意匠が残る空間で味わうことができます。飴色になった床、天井のモチーフなど、大切に使われてきたことを感じさせるたたずまい。古いながらもその豪華さや美しさに驚かされます。
窓辺にテーブルを配し、ベランダのようになった一角もあり、三河湾の美しい景色を目の前に食事を楽しむことも。ホテル2階のラウンジバーでも、天気の良い日は屋外のテラスでお茶をすることができ、竹島が浮かぶ穏やかな海の景色が贅沢な気分にさせてくれますよ。
伝統の製法を大切に、味わいを追求した品々
「カレーセット・透明カレー」(4000円※1日10食、ランチ限定)
メインダイニングではクラシックな製法で作り上げたカレーや当時の従業員や文献から再現したというビフカツをぜひ楽しんでみてください。なかでも海の幸を美味しく楽しめるようにと創作した「透明カレー」は、20年以上前にレストランの名物にと開発したものなのだそう。パエリアのように魚介の旨味が詰まったライスには、ムール貝や車海老など旬の魚介をたっぷりです。
ここにかけるルーはとろりとしていますが、半透明。コンソメをベースに16種類ものスパイスを配合したルーとなっていて、スパイシーですが香りや風味を魚介類とマッチするように調合されています。魚介の味わいを邪魔しない、香りを大切にしたルーは小麦粉やバターを使っていないとか。カロリーが抑えられていて、ヘルシーなのも魅力です。
メインダイニングやラウンジバーでは「蒲郡クラシックホテル」オリジナルの日本酒をぜひどうぞ。食事に合うようにとアルコール度を抑えて作られていて、ホテルの敷地内に咲くツツジの花から採取した酵母で作り上げたお酒も。優しく華やかな味わいはフレンチや和食など幅広い料理と相性良く楽しめます。
歴史を感じる建物や風景があちこちに
敷地内にはホテルゆかりの人物や文豪を紹介する「海辺の文学記念館」があるのでこちらにも立ち寄ってみてください。川端康成や志賀直哉、谷崎潤一郎など、昭和を代表する作家たちが滞在し、この地の様子について作品に記しているのだとか。貴重な史料や文献が展示・紹介されています。
初夏は潮干狩りでにぎわう、竹島。海岸から島へと続く橋も、ホテル創業者が私財を投じて作り上げたものなのだそう。この地への思いをうかがい知ることができます。昭和に生き、この地を愛してきた人々が見た景色と同じ風景、佇まいが残る「蒲郡クラシックホテル」で、当時の人々の思いに触れてみてはいかがでしょうか。
文:田口真由美