良質な国産ワインの産地として知られる長野県内には地域の特徴をいかした4つのワインバレーがあります。中でも北東部に広がる「千曲川ワインバレー」では、ぶどうの生産から手掛けるこだわりを持ったワイングロワーが集まるエリア。
信州の豊かな食とともに、今注目を集めています。今回は、リゾート地・軽井沢から車で約50分、ワインとともに料理や景観も楽しめる素敵なスポット、東御(とうみ)市の「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」をご紹介します。
ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリーとは
伝統的なフランスのワイナリーのように、畑の隣でワイン造りができたら…。そんな夢を叶えるべく、エッセイスト・画家である玉村豊男さんが奥さんとともに築いた農園とワイナリーです。
1991年から開墾を始めワイン用のぶどうを栽培、2003年にワイナリー、2004年にカフェレストランをオープンしました。現在は全国からファンが訪れる、千曲川ワインバレーのパイオニア的存在です。
千曲川ワインバレーの個性豊かなワイナリー
国際的なコンテストで評価を得るなど注目を集める千曲川ワインバレー。年間を通して雨が少なく、フランスのワインの名産地・アルザス地方に似た気候とも言われています。中でも東御市を中心とした広域ワイン特区は、大規模な工場生産ではなく、「ぶどうを育てるところから始める」というこだわりをもった小規模ワイナリーが集まるエリアです。
軽井沢周辺からのアクセスも良く、ワイナリー巡りを楽しむのもおすすめ。近隣の産直や道の駅なども充実しています。豊富な農産物で知られる長野県の食文化と相まって、美食家なら一度は訪れてみたい魅力を秘めた場所です。
軽井沢から車で行ける、ワイナリーまでのアクセス
東京駅から長野県東御市の「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」までは、軽井沢駅から車で約50分の場所にあります。東京駅から北陸新幹線で約1時間30分、最寄りの上田駅で下車し、タクシーで約30分ほどで到着します。
標高850mの丘の上にあるヴィラデストの畑は、驚くほどに澄んだ空気。北アルプスの雄大な山々が連なる絶景が迎えてくれます。
絶景のガーデンとヴィンヤードを散策
広さおよそ1,000坪というお庭は、自由に散策することができます。多年草や宿根草が多く、四季折々にさまざまな花が咲きます。普段見かけないお花もあり、多くのお客さんが写真を撮っていました。また、育てている野菜やハーブはレストランの料理に使われているそうです。
全部で12ヘクタールほどあるヴィラデストのヴィンヤード(ぶどう畑)では、いずれもワイン用の品種が育てられています。爽やかな白ワイン用品種「ソーヴィニョンブラン」の畑からは、街も山々も輝いています。
散策の途中で、草刈りスタッフのヤギ子さんに出会いました。彼女に会いにくるお客さんもいるヴィラデストの人気者です。きれいに整えられた畑は彼女の功績でもあるのですね。のどかな光景に、まるでフランスの片田舎を旅しているような気分になります。
ヴィラデストのオーナー・玉村豊男さん
「フランスでは農家が畑の横に作業場を作り、そこで仕込みをするのが昔ながらのワイン造り。私も自分が飲むワインを作るだけのつもりが、いつの間にかこんなに育って…」と、笑う玉村さん。「食文化に想いを馳せたり、散歩してのんびり過ごしたりしていただければ。畑ごとにワインの出来上がりも違うので、ぜひ土地の表現を楽しんでください」とお話ししてくださいました。
収穫したぶどうをすぐに仕込む、ヴィラデストのワイン造り
秋の収穫期(毎年9月~10月)、特別に仕込み作業を見せていただきました。この日は、赤ワイン用の仕込みが行われていました。「カルベネ・ソーヴィニョン」と、「カルベネ・フラン」の2品種を次々と機械に投入し、破砕します。
畑のすぐ横に醸造施設があるため、ヴィラデストでは収穫してから最高のタイミングで仕込みができるのが強み。オーナーの玉村さんが理想とするワイナリーの姿です。
食用とは違い茎以外を破砕してしまうのですが、収穫の時点でおいしいぶどうだけを選りすぐっているそうで、選ばれたぶどうはしっかりした味わいを感じます。
破砕の後は、発酵、圧搾、熟成と時間をかけて進みます。醸造施設はカフェレストランからガラス越しに見えるので、タイミングが良ければ醸造作業を眺めることができますよ。
常に一定の温度・湿度で管理されたセラーにはボトル詰めされたワインが保存されています。たくさんありますが、ほとんど1年で売り切ってしまうそうです。
眺めの良いカフェレストランで旬のランチコース
北アルプスの山々とガーデンを見渡す心地よい客席。出てくるお料理には、ヴィラデストの農園で採れた新鮮な野菜やハーブも使われています。その土地の景色や風の匂い、日差しまで含めて全身で味わうスタイルは、まさしくワインの本場フランスの楽しみ方ですね。
前菜、主菜、デザートとドリンクがセットになったランチコースで旬を堪能しましょう。季節によってメニューは変わりますが、魚や肉など複数の中から選べます。千曲川の清流で育った信州サーモンは、黒米の衣が香ばしいカリカリ食感。
ワインは「プリマベーラメルロー」、フレッシュな果実感と優しい酸味でランチにぴったりです(ワインはセットに含まれません)。
もうひとつのメインは信州豚肩ロース。塩漬けにしてから一度煮て、さらに焼いているので繊細な甘みと柔らかさが引き出されています。野菜そのものもおいしくて、ワインとの相性は言うまでもなく最高です。
ワイン以外のソフトドリンクや紅茶などのメニューも充実しているのも、うれしいポイントです。
旬の柿を使ったデザートは、フレッシュハーブティーと一緒にいただきます。空気がきれいだとこんなに香りが立つのかと驚きます。とてもシンプルですが、標高850mというのも美食の条件かもしれませんね。あらためてテロワールの奥深さを感じます。
お土産やプレゼントに最適なヴィラデストのショップ&ギャラリー
カフェレストランに併設のショップでは、思わず見とれてしまう美しい植物画のポストカードや食器類、クラフト製品などが購入できます。植物や野菜の画は、画家であるオーナーの玉村さんが描いたもの。
玉村さんのお人柄がにじみ出ているような、優しいタッチで描かれた野菜の絵。種類が豊富で一式揃えたくなってしまいます。お皿を使うたびに、この丘で見た風景を思い出して食事が楽しくなりそうですね。
もちろんワインも購入できます。代表的なメルロー、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニョン・ブランなどの品種に加え、ヴィラデストではさらに、畑ごとに分けて生産されているものもあり、違いを飲み比べてみるのもおすすめです。前述の通り、およそ1年で売り切ってしまうので、その年のワインはぜひ手に入れたいところ。
階下にはギャラリースペースがあり、玉村さんの原画をゆっくり鑑賞することができます。作品は購入も可能です。
ヴィラデストはテロワールを満喫できるワイナリー
無理だと言われた土壌でワイン用ぶどう栽培を根付かせ、千曲川ワインバレーの先駆者となった玉村さんの元には、ワイン造りを学びたい人も多く訪れます。気さくで朗らかな笑顔は、まるでワイナリーの姿そのものを表しているようです。
ワイン好きに限らず、旅を愛する人にぜひ訪れてほしいワイナリー。ワインのテロワールを全身で満喫する体験を、皆さんも味わってみませんか?
ヴィラデストガーデンファームアンドワイナリー
- 住所
- 長野県東御市和6027
- アクセス
- 北陸新幹線「上田駅」よりタクシーで約30分しなの鉄道「田中駅」または「大屋駅」よりタクシーで約15分
- 営業時間
- 10:00〜17:00ランチタイム 11:30〜15:00(予約優先)
サパーコース17:00〜(要予約・開催日はホームペ-ジでご確認下さい) - 詳細
- ヴィラデストガーデンファームアンドワイナリー 公式サイト
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写真・取材・文/Junko Saito