提供:テレビ静岡
2024年7月に新しいお札が発行されますが、まさにその製造が静岡で行われていました。一般の人も予約をすれば見学できます。
表通りでも一本裏へ入れば、そこはまるで別世界。静岡県民必見の裏スポットを巡る「しずおか裏表さんぽ」。静岡市を東西に走る南幹線を東方面に散歩します。
お札を製造する国立印刷局
静岡市駿河区栗原のテレビ静岡を清水方面へ。南幹線を少し裏に入った所にあるのが国立印刷局です。1943年に創設された静岡工場は、2023年に80周年を迎えました。
国立印刷局静岡工場・田中浩史 総務課長:
ここはみなさんが普段使っている「お札」をつくっている場所です
お札は造幣局が作っているのではと思ったかもしれませんが、造幣局は500円硬貨などのコインを、国立印刷局は紙幣をつくります。事前申し込みをすれば、小学生以上の一般の人も無料で工場見学ができます。所要時間は約1時間半。たくさんお札が見られるそうです!
1億円サイズが持てる見学コース
敷地を進むと早速お札工場ならではの物がありました。ミツマタの木です。ミツマタはお札の紙の原材料の一部なのだそうです。
続いて屋内へ。お札のことがよくわかる場所に案内してもらいました。展示室ではDVDを見ながらお札について学べます。
新しいお札に印刷される肖像画もありました。新1万円札は渋沢栄一、新5000円札は津田梅子、新1000円札の北里柴三郎は破傷風治療の確立やペスト菌を発見した人物です。
さらに奥へ進むと、お札のアレコレが学べる体験施設があります。偽造防止のための特殊発光インキや、普通の印刷機では再現できないマイクロ文字。
照明を当てると「すかし」が浮き出る展示もありました。
国立印刷局静岡工場・田中 総務課長:
工芸官という職員がいて、すかしのデザインをしたり肖像画の彫刻を彫ったりして日々技術を高めています
お札に詰め込まれている技術は、まさに芸術でした。お札の重さを体験できる展示もありました。1億円サイズを実際に持ち上げることができます。やってみると持ち上がるのですが、その重さは約10kgもありました。
そして見学コースの最後は「観覧室」。7月に発行される新しいお札の印刷作業が、廊下からガラス窓越しに見られるんです。
「お札の川」が流れていました
ここからは見学コースには含まれませんが、特別に印刷作業を近くから見せてもらいました。目の前を印刷された紙がすごいスピードで流れていく様子は、まるで「お札の川」。
1枚の紙に20面のお札が印刷されるそうです。意外とカラフルで、触ってみるとボコボコと盛り上がっています。これは深凹版(ふかおうはん)印刷といって、現在のお札にも使われている技法です。
これには偽造防止だけでなく、ある重要な目的も。
国立印刷局静岡工場・宮本義政 工場長:
識別マークと呼んでいて1000円は対角線、5000円は上下、1万円は左右にあります。マークは同じですが場所を変えることで目の不自由な方でもどのお札かわかる工夫をしています
また新しいお札は国籍や年齢を問わないユニバーサルデザインとして、漢字の数字よりもアラビア数字が大きくなっています。外国人観光客にわかりやすそうです。
3Dで肖像が動く
新しいお札はデザインの変更だけでなく、世界初のホログラムの技術を採用しています。1万円と5000円は帯状の長いホログラム、現在のお札にはホログラムがない1000円にもパッチタイプのホログラムが導入されます。
そして世界初なのが、見る角度によって肖像が動いているように見える3Dホログラムです。
肖像画の渋沢栄一や北里柴三郎が左右を振り向いているように見えるんです。この最先端技術を銀行券に採用するのは世界初。7月に新しいお札が手元に来たら、ぜひ試してみてください。
「高い倫理観」があるからこそ!
断裁には人の手も関わっています。1束500万円を4束分、つまり2,000万円を一度にカットします。用紙は湿度や温度で伸び縮みするので、高度な技術が求められます。
最後は品質と枚数をチェック。いよいよ最終工程です。1,000万円の束を10束ずつ、1億円にまとめて包みます。完成したお札は専用の荷台で日本銀行へ納めます。パレット1台でなんと40億円です。
大変失礼な質問ですが、大金が目の前にあって欲しくなってしまわないのでしょうか?
国立印刷局静岡工場・宮本義政 工場長:
私どもは製造中にお札という感覚はないんです。日本銀行から依頼を受けた「製品」なんです。国立印刷局にある間は製品という感覚でのぞんでいるので、高い倫理観を持っています
こうして大切につくられたお札、宮本工場長は「ぜひ新しいお札に親しんで愛してもらえれば」と話していました。新しいお札は7月3日に発行されます。
基本情報
- 住所
- 静岡市駿河区国吉田3-5-1
- 営業時間
- 火・木 10:00~ 13:30~
※ネットか電話で2週間前までに要予約
問い合わせ 054-265-8055 - 公式サイト
- 国立印刷局 静岡工場
※この記事は、2024年1月26日にテレビ静岡「テレしずWasabee」で公開された記事を転載したものです。