伝統ある花街として知られる京都市東山区の宮川町に、2024年3月に誕生した「鈴 京都宮川筋 hitotose 穐 -Aki-」。趣のある2階建ての京町家を一棟貸し切りにでき、施設内にはサウナと広々とした露天風呂を備えています。周辺には観光名所も多く、旅の拠点にするのにもおすすめ。プライベート感たっぷりのぜいたくな空間で思い切りくつろいだ1泊2日の滞在記をご紹介します。
目次
- ・アクセス、チェックイン
- ・館内の様子
- ・夕食
- ・宿周辺を散策
- ・朝食
アクセス、チェックイン
お茶屋が並ぶ閑静な路地に佇む一軒家
京都五花街(ごかがい)の一つである宮川町。江戸時代からの伝統が息づくこの街に「鈴 京都宮川筋 hitotose 穐 -Aki-」はあります。「hitotose」とは一年、すなわち春夏秋冬を意味し、「穐」は秋のこと。宿の近くには100年以上の歴史を持つ歌舞練場(かぶれんじょう)があります。歌舞練場とは、芸妓や舞妓が踊りや歌の練習をする劇場のこと。そんな劇場での公演の最終日を指す「千秋楽」を「千穐楽」と呼びますが、これは火事を連想させる火の字が入った「秋」を嫌い、代わりに縁起のよい亀の字が入る「穐」を使うようになったのだそう。宿の名前もそこから「穐」と名付けられました。
アクセスは京都駅から電車で15分ほどの京阪本線「祇園四条」駅からわずか徒歩約3分。京都の中心を流れる鴨川からもほど近く、京都観光がしやすい立地も魅力です。
チェックインは徒歩約1分の距離にあるホテル「Rinn Miyagawacho Grande」で行います。チェックインを済ませ、スタッフの案内を受けて閑静な路地へと入ると、京町家と呼ばれる伝統的な木造家屋の建物が見えてきました。出格子が設置された軒下には、宮川町の紋章である三つ輪の提灯がぶら下がっていて、一見お宿とはわからないほど周囲と馴染んでいます。隠れ家のような佇まいにわくわくしながら、カードキーをかざして扉を開けました。
館内の様子
日本の伝統美を意識した空間
中に入って驚いたのは、その広さ。2階建ての一軒家で186平米あり、入口からは想像できないほど広々としたラグジュアリーな空間になっています。デザインは空間デザイナーの折原美紀さんが手掛け、陰影に美しさを見出す日本古来の美意識を反映。スタイリッシュかつ日本らしさを感じさせる美しい空間が評価され、世界3大デザイン賞の一つ「Red Dot Award: Design Concept 2024」において「ベスト・オブ・ザ・ベスト賞」を受賞しています。
本格的なフィンランドサウナ
1階にはフィンランド・VETO社製のストーブとオートロウリュを設置したプライベートサウナが備えられています。4名まで入れるサウナで、オートロウリュは10分に1回水が流れてくる仕組み。思う存分、好きなだけサウナを満喫できます。
オートロウリュに加えて自分好みにセルフロウリュができるのも、サウナ好きにはたまりません。専用のオリジナルアロマオイルをサウナストーンに垂らすと、高野槇などの爽やかな香りとともにロウリュを楽しめます。
水風呂にもなる露天風呂
タイル造りの露天風呂もラグジュアリー感をプラス。ガラス扉を開け、リビングとつなげてより開放的な雰囲気を味わえます。浴槽のお湯はバルコニー側に流れる設計になっているので、あふれるほどお湯をためても問題ありません。横にはデッキチェアが置かれ、湯浴みのあとゆっくり休むこともできます。
また、露天風呂スペースには製氷機が設置され、水に氷を入れてキンキンに冷えた水風呂としても使えます。ミニ冷蔵庫にはオロナミンCとポカリスエットがあり、サウナ上がりにぴったりの「オロポ」を作って飲むことも可能。至れり尽くせりのサービスですね。
内風呂も完備
1階には露天風呂だけでなく、使いやすい内風呂も完備されています。サウナで汗をかいたあとに露天風呂の水風呂で体を冷やし、デッキチェアで外気浴。最後は温かい内風呂で体を洗うという楽しみ方もできますね。
パイルワッフル生地でできたオリジナルのバスローブは、ほどよい厚みでしっかりとした肌触り。サウナで着用したり、露天風呂と内風呂を移動したりするときにも使えます。
和紙が使われたキッチン&リビング
キッチンはペニンシュラ型(対面キッチンの一種)のオープンスタイルで設備も充実。お皿やグラス類、フォーク、ナイフなどのカトラリーはもちろん、オーブンや炊飯器といった調理器具もそろっているので、食材を買ってきて好きな料理を作ることもできます。
独特な質感のキッチン台や壁に使われているのは、なんと和紙。和紙職人のハタノワタルさんが一枚一枚手作業で重ねたもので、細かい部分にまで職人の技を感じます。耐水性がある柿渋で撥水コーティングが施されているので、水が染み込むことはありません。
キッチンの冷蔵庫をはじめ、施設内にあるドリンクはオールインクルーシブで自由に飲むことができます。炭酸水、オレンジジュース、牛乳などのほか、ビールは京都の地ビールを含む3種類がそろっていました。
ビール以外のアルコール類も豊富です。ワインセラーのなかには赤ワインと白ワインがあり、2階のミニバーにはウイスキーと京都で造られた日本酒が。それぞれが好きなお酒を片手に、ゆったりと語らう時間を過ごせます。
リビングの壁にも和紙を使用。照明は宮川町の路地を照らす灯篭をモチーフにするなど、随所に日本らしさ、京都らしさを見つけることができます。全体の明るさは6段階に調節でき、4段階目の落ち着いた明るさをイメージしてデザインされたそう。シックな雰囲気が広がり、まさに「陰影の美」を感じる空間です。
ウォールナットの一枚板を使ったリビングテーブルは定員の4人が座っても広々と使える大きさで、デザインだけでなく使いやすさも兼ね備えています。
長期滞在にうれしいランドリースペース
長期滞在でも快適に過ごせるよう、ランドリースペースもあります。洗濯乾燥機、除湿器、物干し場、特注のアイロン台が備わっているので、洗濯から乾燥まで同じ場所で一気に済ませられます。
デザインが異なる2つの寝室
木材の表面に凸凹をつけるなぐり加工を施した階段を上って2階へ。ここにはベッドが2台置かれた寝室が2部屋あり、グループ利用にもぴったり。
メインのベッドルームは天井、床、壁のお部屋全体とソファテーブルに和紙を使用しており、白で統一されたモダンなインテリア。ヘッドボード側の壁には柳の葉をイメージし、こより状に固めた和紙がデザインされています。ベッドはシモンズ社製のダブルサイズベッドを設置。大きめの掛布団などは寝具メーカー・西川の特注品。上質なベッドと幻想的な間接照明が快適な眠りへと誘います。
それぞれのベッドルームに独立したシャワールーム、洗面台、トイレが付いているのもポイント。洗面台は大きな鏡と明るいライトが備えられていて使いやすく、こちらの台にも柿渋で撥水加工を施した和紙が使われています。
アメニティはタイ生まれのオーガニックスキンケアブランド「PANPURI(パンピューリ)」のソープ、シャンプー、コンディショナー、シャワージェル。柑橘系のフレッシュな香りに癒やされます。ポンプ式ではなく小分けタイプなので、持ち帰れるのもうれしいポイント。
クレンジングオイル、洗顔料、化粧水、乳液は「雪肌精」のもので、1階のお風呂で使えるバスソルトも置かれていました。ヘアドライヤーは女性に人気の「KINUJO」を設置しています。
部屋着はオリジナルで「鈴」のロゴ入り。肌触りがよく、セパレートタイプでリラックスできます。
サブベッドルームは雰囲気ががらりと変わり、茶色を基調とした温かみのあるインテリア。天井にはLEDライトの下に和紙が何重にも貼り重ねられ、点灯すると壁や天井に光の線が浮かび上がり、まるでアート作品のような趣。ベッドはシモンズ社製のセミダブルサイズが2台並んでいます。
サブベッドルームはバリアフリールームになっていて、玄関からエレベーターを使って入ることができます。大きな荷物を持っているときも階段を使わずに2階へ行けるので、移動しやすいですね。
2階の無料のミニバーには、ソフトドリンクやアルコール類、スナック菓子が完備。ネスプレッソのカプセル式コーヒーメーカーとさまざまな種類のカプセルも置かれ、いろいろな味わいのコーヒーを飲むことができます。
お茶は、京都に本店を構える一保堂茶舗(いっぽどうちゃほ)の緑茶とほうじ茶のティーバッグ。茶器にもこだわり、茶道から着想を得たミニマルなデザインのポットやカップを使っています。
夕食
老舗京料理が味わえるプランも
せっかくの京都滞在。夜の雰囲気を味わいたいと思い、夕食を食べに出かけました。「鈴 京都宮川筋 hitotose 穐 -Aki-」が位置する宮川町周辺には飲食店がたくさんあるので、食事をする場所には困りません。好きなものをテイクアウトするのもいいですね。
もっと特別感のあるディナーなら、プロの料理人が専属シェフとしてキッチンで調理してくれるサービスも用意されています。(原則10日前までに予約。別料金)また、老舗の京料理店「宮川町 わた亀」の夕食がついたプランも。職人の技術が光る本格的な京料理をお部屋で味わうことができます。
宿周辺を散策
静かな朝に名所を巡る
翌朝は少し早起きをして周辺を散策。徒歩圏内に観光名所がたくさんありますが、昼過ぎには混んでしまうので朝に巡るのがおすすめです。まずは朝の空気を吸い込みながら、鴨川沿いを歩きました。そこから祇園のメインストリートである花見小路へ。お茶屋が続く街並みは趣があり、京都に来たことを実感します。京都で最初の禅寺である建仁寺(けんにんじ)や、「縁切り神社」として知られる安井金比羅宮(やすいこんぴらぐう)も近くにあります。
朝食
リビングで京都発のデニッシュを
散歩を終えたら朝食の時間です。あらかじめキッチンに用意されていたオレンジ色の箱を開けてみると、中には京都生まれのデニッシュ専門店「GRAND MARBLE」のデニッシュとセットが。ふわふわのデニッシュをほどよい厚さに切り、BALMUDAのオーブンレンジで軽くトーストしていただきました。上質なジャムや紅茶、京都のカフェ「Botanic Coffee Kyoto」によるオリジナルのグラノーラも無料で置かれており、どれも朝食にぴったりです。これらはチェックイン時にそろっているので、軽食にしたり、持ち帰ってお土産にすることもできます。
「鈴 京都宮川筋 hitotose 穐 -Aki-」を拠点にした京都の旅。一棟貸し切りなので誰にも邪魔されず、まるで京都に暮らしているかのような感覚でリラックスして過ごせました。本格サウナと露天風呂でととのい、広々としたリビングでくつろぎ、快適なベッドルームで一日の疲れを癒やす――。設備からアメニティに至るまでこだわりが感じられる空間は、旅を何倍にも楽しいものにしてくれるはず。ぜひ家族や友人、大切な人と一緒に、一般的なホテルとは違う特別なステイを体験してみませんか。
鈴 京都宮川筋 hitotose 穐-Aki-
- 住所
- 京都府京都市東山区宮川筋4-297-10
- アクセス
- 京阪本線「祇園四条」駅から徒歩約3分
- 駐車場
- なし
- チェックイン
- 16:00~21:00
- チェックアウト
- 12:00
- 総部屋数
- 1室
撮影/大林博之、取材・文/土田理奈