別荘でのくつろぎと、旅館のもてなしが織りなす、大人だけに許された極上のプライベートタイムを過ごせる「奥湯河原 結唯 -YUI-」。箱根山麓の懐、万葉集にも謳われた奥湯河原に佇む大人の隠れ家です。
海も山の幸も楽しめる美食、一棟貸し切りの贅沢空間、自然と一体になれる客室露天風呂など、特別な日の滞在にもおすすめな、1泊2日の宿泊体験記をご紹介します。
文豪も愛した温泉地、湯河原温泉
東京や横浜からもアクセスの良い温泉地・湯河原町。特急「踊り子号」に乗れば、東京駅からは1時間15分ほど、横浜駅からは55分ほどで到着します。古くから文豪、画家など多くの作家が創作活動のために訪れた場所としても知られています。
杉の屋根が印象的な駅前広場の設計は建築家の隈研吾氏が手掛け、ヒノキや御影石製の手湯も設置されています。
奥湯河原に佇む、大人の隠れ家
湯河原駅より車で10分ほど離れた奥湯河原に「奥湯河原 結唯 -YUI-」はあります。館内には、一棟貸しの離れが6棟と本館に5室の客室(※本館客室は現在リニューアル中)のみの、プライベートステイを楽しめる宿です。
プレミアム離れ「紫葉(しよう)」は、4つの客室棟からなり、全てが100平米以上で専用の露天風呂を有しています。
宿泊棟の前には専用の駐車場があり、チェックインからチェックアウトまで、顔を合わせるのは宿のスタッフのみというのも、おこもり感があってうれしいです。宿泊者が20歳以上の大人限定なのもポイント。大人のみに許された贅沢な空間が広がります。
今回宿泊した「紫夕(しゆう)」は、155平米の広さとリビングから見えるパノラミックな景色が印象的な特別客室です。日本の近現代をコンセプトに、懐かしさと、随所に光るモダンアクセントが新鮮で、自宅の延長のようにくつろげます。
お茶菓子をいただきながら、客室でチェックイン
チェックインはお茶菓子をいただきながら、客室で行います。お茶菓子は季節に合わせて提供され、今回は春が近いので桜わらび餅でした。瑞々しい味わいと、大自然を前に心が解れていくのを感じます。
リビングの反対側には、掘りごたつの小上がりスペースもあります。こちらの裏側には、キッチンも付いているので持ち込んだ食材を温めたりすることも可能です。リビングではのんびりと、こちらでは食事や作業をして過ごせます。
冷蔵庫に入っているドリンクは全て無料で楽しめます。お酒やフルーツジュースなど、季節や宿泊者の好みに合わせて用意しています。
リピーターの方には、前回飲んでいなかったものを外して、新たに好きそうなものを入れるなどしているそうです。
珈琲は、コーヒーハンターで知られる株式会社ミカフェートとコラボレーションしたオリジナルの豆。コーヒーミルが置いてあるので、挽きたてのコーヒーを味わえます。紅茶も小田原地域に根ざした茶農家「如春園」とコラボレーションしたオリジナルの紅茶です。
足湯やワイドデッキを備える30平米の専用庭
リビングから外に出ると、ワイドデッキスペースが広がります。足湯のできるテーブルもあり、タオルや虫除けスプレーなども準備されています。デッキのすぐ下には藤木川が流れ、四季の移ろいを感じられます。夏の時季にはホタル観賞もできるそうです。
使い分けのできる2室のベッドルーム
紫夕には、ベッドルームが2室あります。定員は4名なので、二世帯やお友達との旅行でも気を使わずに過ごせるのがうれしいところ。
主寝室はリビングからひとつ階段を降りたところにあり、川のせせらぎも聞こえてきます。自然の音を楽しみたい人はそのままに、防音効果のある二重サッシを閉めれば静寂を楽しめます。
デッキスペースがあるので、景色を見ながらお茶を飲むのも良いですね。
ゲストルームにもセミダブルベッドが2つ。シモンズ社と共同開発をしたマットレスは、程よい硬さで身体を包み込んでくれます。
館内着にもなる作務衣(さむえ)、ほかにも浴衣や半纏(はんてん)なども用意しています。のんびりと過ごしてほしいとの想いから、全館で作務衣や浴衣の着用が可能です。
大パノラマを楽しめる客室露天風呂
中2階の露天風呂は、川へと舟がせり出すように備わっています。源泉かけ流しの豊かなお湯は、化粧水のような保湿効果を持つといわれています。
美しい木々と、藤木川を横目に湯浴みを楽しめます。
自分だけのプライベート空間なので、アメニティドリンクを持ち込んで一杯楽しむのも良いですね。
男女で異なるアメニティが用意されています。女性用の基礎化粧品は、資生堂のプレステージスキンケアブランドの「ザ・ギンザ」、男性用は京都発の紳士用スキンケアブランド「SHUN」。アメニティにもこだわりを感じます。
日本建築の美×粋なモダンスタイルのプレミアム離れ
残り3つのプレミアム離れ「桃花」「朝葱」「翠嶺」も個性ある趣です。木の薫る和室リビング、広がり豊かなテラススペースなど、家具職人による上質で遊び心のあるアクセントが随所に光る、贅沢な空間が広がります。
レストランがあるのは本館なので、離れからは回廊を通って向かいます。竹林が生い茂り、鯉も悠々と泳いでいます。
落ち着いた和空間で受けるエステ
中庭にひっそりと佇む「心妙庵」。以前は茶室だった場所をエステサロンにしたそうで、落ち着いた和の空間が広がります。
植物コスメ「YON-KA」を使用したメニューを用意しています。2人同時施術も可能なので、大切な記念日にカップルで受けることもできます。人気メニューはカッサのトリートメントとフェイシャルのセット。極上のリラックス時間が滞在を更に彩ってくれるでしょう。
海も山の幸も。季節の結唯スタイル「和の雅」
お食事は隣接する本館「結唯」でいただきます。夕食の時間になると、スタッフの方が扉を開けて待っていてくれました。
本館は、離れとはまた違った趣があります。季節に合わせて活けているというお花も美しい。
高級料亭を思わせる、上質な佇まいのラウンジ「群青(ぐんじょう)」では、女将が出迎えてくれました。
夕食は、和食の匠がお届けする「和の雅 -結唯スタイル」。季節の香りが凝縮された日本料理、十数品が旅の食卓を彩ります。
ぐい呑み棚が瀟洒な雰囲気を作るカウンターと、奥湯河原の景色をのぞむテーブルの半個室が、大人のひとときを演出します。
食事に合わせていただく飲み物もこだわり抜かれたものばかり。宿泊者の好みに合わせて、女将がお酒や酒器を提案してくれます。
一杯目に提案してもらったのは、ノンアルコール派には白茶のさっぱりとした味わいを楽しめる「ランチザンデュテ ホワイトスパークリング」。アルコール派には、紅茶のような華やかさを感じるビール「ガージェリー・エステラ」。
先付けは「菜の花と蟹 雲丹和え」。旬を感じる味わいに、これからどんなお食事が運ばれてくるのかと、楽しみになります。
器は、料理人が全国の窯元に出向き、陶芸家たちとの信頼関係から、優れた逸品を仕入れているのだそう。お食事、食器、お酒、酒器と目でも舌でも楽しめる時間が始まります。
前菜に合わせて濃醇な米の甘みが感じられる「愛山」を、蛍手という技法を使った酒器でいただきます。 女将のプレゼンテーションも楽しくて、ついついお酒が進みます。
盆に美しく盛られた前菜「焼竹の子すし つぼみ菜田楽」。熊本から仕入れた姫竹を酢飯と合わせて一口サイズのお寿司に。「身がしっかりしたバイ貝にちなんで、梅も一緒に飾りました」と、女将のユーモアも随所に感じました。
赤い器には生姜で煮たあん肝、青い器には黒豆を黄身で揚げた黄身揚げ、合鴨ロースのうま煮など、一口サイズで多彩な味わいを楽しめます。
煮物椀「おこぜ葛叩き」。魚介は近海で獲れたものを提供しています。おこぜの上品で深い味わいが五臓六腑にしみわたります。
向付「近海漁港旬魚盛り」。豆皿にはふぐ、大間のマグロ、つぶ貝が盛られています。敷地内で獲れた竹を使って作った器の中には、ヒラメ、人参、ぼうふうが入っており、見た目も楽しめる一品。
有田焼のかわいらしい酒器に合わせていただいたのは、酸味と甘みを感じる「亜麻猫」。焼酎造りで用いられる白麹を用いて醸したお酒です。
焼肴「まながつを味噌柚庵焼き」。ふっくらと焼き上げたまながつおに京野菜を添えています。魚も野菜も地ものがメインではありますが、そのときの旬の味わいを全国から取り寄せているそうです。
鳥獣戯画が描かれた器に入っていたのは、お凌ぎの「さわら煮卸し」。蓋を開けると、爽やかに柚子が香ります。一度揚げたさわらと、ふきのとうや梅麩と合わせていただきます。
食事に合わせて、お酒もしっかりしたものに。米の旨味を感じる「鍋島 純米吟醸」を注ぐのは、味わい深い形の伊賀焼です。
強肴「黒毛和牛フィレ肉」。A5ランクの黒毛和牛を、じっくりと焼き加減を調整しながら焼いているそうで、口の中に入れた瞬間にとろけました。
食事の最後には、進み具合に合わせて釜炊きした「魚沼産こしひかり」を。残ったお米は、おにぎりにしてお部屋に持ってきてくれます。
品目が多かったのに、全てがちょうどよい量で感動したので伺ってみると「お客様の食べる時間や量をみつつ、少しずつ調整しています」と、教えてもらいました。これもお客様、一組一組に向き合っているからこそできる技なのか、と感動しました。
食後も自分時間を堪能
日が暮れると回廊がライトアップされ、幻想的な雰囲気に包まれます。旅館周辺は、夜になると車もほとんど通らない……ということで、聞こえるのは自然の音のみ。
お部屋に戻ると、スタッフの方が待っていてくれて「暖炉をつけますか?」と。バイオエタノールを使った暖炉で、一度灯してもらうと1時間ほど楽しめます。
足湯に浸かりながら、冷蔵庫に入っていたお酒で再度乾杯。自然を感じながら、自分だけの時間を楽しみましょう。
再び温泉に浸かって小腹が空いたら、握ってもらったおにぎりや冷凍庫に入っているアイスを食べるのも良いですね。
心と身体に優しい和食膳
朝食は和食膳。一皿一皿、季節の食材が丁寧に仕上げられています。
湯河原のとうふ専門店「湯河原十二庵」の湯豆腐、小田原のかまぼこ、近海鯵の干物、湯河原みかんの生搾りジュースなど、ご近所さんの食材もふんだんに取り入れています。自宅から車で直接来て、そのまま帰られる方も多いので、地元の味わいを楽しんで欲しいとの思いで、取り入れているそうです。
11時のチェックアウトまでのんびり
チェックアウトの時間は11時なので、朝バタバタせずに済むのもうれしい。コーヒーを挽いてハンドドリップを楽しんだり、デッキに出て深呼吸をしたり、温泉に浸かったり……最後まで堪能しましょう。
湯河原駅までの送迎サービスを利用して帰路へ。時間になると、スタッフの方がお部屋まで迎えにきてくれます。
日常を忘れて自由に過ごしてほしい
女将におすすめの過ごし方を伺いました。「旅館と別荘の良いところの掛け合わせで過ごしてもらえるのが、当館です。自然を眺めながらのんびりと読書を楽しむ方もいれば、チェックインからチェックアウトまでお酒を楽しまれる方もいます。ご自身の別荘のように、好きなようにお過ごしください。」
おもてなしはしっかりとしつつもプライベートも保てる、付かず離れずの感じに心地よさを感じ、リピーターの方も多いのだそう。予約時にお客様の好みをヒアリングするのはもちろんのこと、リピーターの方であれば前回の好みを覚えていて、冷蔵庫の飲料を変えたり、食事メニューを変えたりするサービスもあるのだとか。スモールラグジュアリーなお宿だからこそ、ひとりひとりに寄り添った接客ができるのではないでしょうか。
記念日や誕生日、プロポーズなどのお手伝いも相談に乗ってくれるとのことなので、特別な日に訪れてみてはいかがでしょうか。
奥湯河原 結唯 -YUI-
- 住所
- 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上683-25
- アクセス
- 車/厚木IC-小田原厚木道路-真鶴道路で約60分
電車/JR湯河原駅よりタクシーで約10分、バスで約30分(上り坂を徒歩約5分) - チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン:18:00)
- チェックアウト
- 11:00
- 総部屋数
- 6室
- 駐車場
- 有り(5台)無料 予約不要
取材・撮影・文/加藤あやな