明治時代以降、駐日外交官をはじめ外国人たちの避暑地として栄えた奥日光エリア。「関東の冷蔵庫」とも称されており、夏の観光にぴったりのスポットです。周辺には「華厳滝(けごんたき)」をはじめとする名瀑が点在しているほか、大自然を堪能できる絶景スポットが多数あります。地元の天然氷を使ったかき氷やソフトクリームなどを味わえば、より涼やかにリラックスできるはず。そんな奥日光の1日観光に適したモデルコースを紹介します。
目次
奥日光とは?アクセスについて
奥日光とは、栃木県日光市にある全長約15.8kmの観光道路「いろは坂」より西の地域の総称です。日光市の標高は高く、例えば世界遺産にも選ばれた「日光東照宮」付近は標高600~700mもあり、夏でも比較的涼しいエリアです。奥日光は標高1,300~1,600mと、さらに高地で、より涼感を得られることから「関東の冷蔵庫」と呼ばれるほど、避暑地として親しまれています。
奥日光へのアクセス
首都圏から日光市へ車で向かう場合、まずは東北自動車道「浦和IC」を通って「宇都宮IC」を目指します。1時間15分ほどの道のりです。そこから日光宇都宮道路へ乗り換えて約30分、「清滝IC」または「日光IC」で国道120号へ降ります。その後、国道を1時間ほど走り「いろは坂」を越えたら到着です。
電車で向かう場合は、東武「浅草駅」から東武特急スペーシアで1時間40分ほどで「東武日光駅」に到着。「東武日光駅」からは、バスやタクシー、レンタカーを利用しましょう。観光スポットをめぐるバスもあるので、詳細は東武バス公式サイトを確認してみてください。
「日光珈琲 御用邸通」で腹ごしらえ&かき氷でひと涼み
日光に到着したら、まずは腹ごしらえをしましょう。おすすめは「日光珈琲 御用邸通」です。「日光東照宮」にも近く車で5分ほどで行けるので、時間に余裕があれば立ち寄ってみるのも良いですね。
太い梁(はり)が印象的な古民家カフェで、自家焙煎のスペシャルティコーヒーや食事メニューに加え、かき氷も人気です。
イチオシは「御用邸通の黒カレー(ドリンクセット付)」(2,310円)。「日光珈琲」の本店がある栃木県鹿沼市の銘柄豚「さつきポーク」を、農家から仕入れるリンゴをメインに3日間じっくり煮込み、焙煎スパイスを複数回に分けて香り立たせた逸品です。甘酸っぱさのあとに、ほろ苦さとスパイシーな味わいが口の中で広がります。
締めは「かき氷」(990円~)をいただきましょう。日光の天然氷は良質で、首都圏など県外のかき氷店も愛用するほど。「日光珈琲 御用邸通」では地元の天然氷蔵元「四代目 氷屋徳次郎」製のものを使用しており、氷のピュアなおいしさを感じられます。
約10種類のメニューの中から、取材時は自家焙煎のコーヒーシロップと練乳、クリームチーズアイスをあしらった「カフェ・オーレ」(1,430円)を注文しました。コーヒーのほろ苦さと、練乳の甘み、チーズのコクが相性ぴったりで、一度食べたらやみつきになりそうです。
日光珈琲 御用邸通
- 住所
- 栃木県日光市本町3-13
- 営業時間
- 10:00~18:00(L.O17:00)
- 定休日
- 月曜、第1・3火曜(祝日の場合は翌日)
- アクセス
- 【電車】JR「日光」駅、「東武日光」駅からタクシーで約7分
【車】日光宇都宮道路「日光」ICから約7分 - 公式サイト
- 日光珈琲 御用邸通
▼ 車で約25分
日光一と名高い「明智平展望台」から圧巻のパノラマビューを
おいしいカレーでお腹を満たし、かき氷で涼んだあとは「明智平展望台(あけちだいら てんぼうだい)」へ向かいましょう。日光市街と奥日光を結ぶ観光道路「いろは坂」の上り専用ルート「第二いろは坂」を、ほぼ上りきったところにある展望スポットです。
広い駐車場が設けられ、一角には売店やロープウェイ乗り場があります。
全長は約300mのこのロープウェイは1933年に開通しており、日本で2番目に古い歴史を持つのだとか。9:00から15:30(上り最終は15:10)まで、10分間隔で運転しています。
3分ほどロープウェイに乗って展望台の屋上へたどり着くと、目の前には絶景が。西側は中禅寺湖、華厳滝、男体山(なんたいさん)など雄大な景色を見渡せ、東側は切り立った断崖の連なる屏風岩や、筑波山、鬼怒川、関東平野などを楽しめます。海抜1,373mの高さから、日光の大自然を堪能してみてください。
明智平展望台・明智平ロープウェイ
- 住所
- 栃木県日光市細尾町深沢
- 営業時間
- 9:00~15:30(ロープウェイ運行時間)
- 定休日
- なし※荒天時や点検整備により運休する場合あり
- 料金
- ロープウェイ往復 大人1,000円、6~11歳500円
- アクセス
- 【電車】JR「日光」駅、「東武日光」駅からタクシーで約32分
【車】日光宇都宮道路「清滝」ICから約20分※いずれもロープウェイ乗り場までの距離 - 公式サイト
- 明智平ロープウェイ
▼ 車で約5分
97mの落下高と爆音に心奪われる「華厳滝」
奥日光には「華厳滝」「竜頭ノ滝(りゅうずのたき)」「湯滝(ゆたき)」という3つの名瀑があり、なかでも最も有名なのが「華厳滝」。全国的にも広く知られている、日本三大名瀑のひとつです。
観瀑台は無料と有料の2つがあり、間近で見るならエレベーターで向かう有料観瀑台(大人570円)がおすすめ。97mの高さから中禅寺湖の水が勢いよく落下する様を、間近に見ることができます。
100mの高さを60秒で昇降する専用エレベーターから降りると、地下通路からすでにひんやりと涼しく、滝に近づいている実感が湧いてきます。その空気にこれから望む景観への期待がより高まります。
通路を抜けた先は滝つぼと同じくらいの高さになっており、少し下から「華厳滝」を見ることができます。大きな音と激しい水しぶきを立てながら、勢いよく流れる様子は圧巻です!
駐車場の近くにある、無料観瀑台では上から滝の様子を眺めることができます。違う角度から見ると、それぞれ雰囲気が変わって面白いのでぜひ両方立ち寄ってみてください。
「華厳滝」は季節に応じて表情が異なるのも魅力。例えば、6月には無数のイワツバメが周辺を飛び回り、秋は紅葉のコントラストが美しい色彩を演出します。また、1~2月は「十二滝」と呼ばれる小滝が凍り、ブルーアイスといわれる神秘的な光景に。夏以外も見応え十分なところも「華厳滝」が名瀑といわれるゆえんです。
華厳滝
- 住所
- 栃木県日光市中宮祠2479−2
- 営業時間
- 24時間【華厳滝エレベーター】3~11月8:00~17:00、12~2月9:00~16:30
- 定休日
- なし
- 料金
- 大人570円、小学生340円(エレベーター往復)
※2024年9月1日より大人600円、小学生400円 - アクセス
- 【電車】JR「日光」駅、「東武日光」駅からタクシーで約30分
【車】日光宇都宮道路「清滝」ICから約21分 - 公式サイト
- 華厳滝エレベーター
▼ 車で約8分
湖畔で避暑リゾート気分に浸れる「イタリア大使館別荘記念公園」
古くから、国際的な避暑地として親しまれている奥日光。中禅寺湖の周辺には別荘も点在しています。「イタリア大使館別荘記念公園」内の建物は、1928年にイタリア大使館の夏季別荘として建造されました。その後、1997年まで歴代の大使が使用していた邸宅を復元したものが現在の姿です。
設計は国内のさまざまな建築に携わった巨匠アントニン・レーモンドによるもの。設計だけでなく建材にもこだわってつくられています。現在置かれている床板、建具、家具などは当時の設計図をもとに、できる限り再利用して復元されました。
外壁に使用されている日光杉の樹皮と薄板で構成された市松模様が、より優美な雰囲気を演出しています。
1階は、ともに暖炉を持つ食堂と書斎が中央の居間を挟んだワンルームとなっており、開放感あふれた広縁の眺めも見事。2階は中禅寺湖に面して寝室が並んでいて、湖の景観が最大限に生かされています。
また1階には「カフェ コモ」が併設し、優雅な雰囲気の中でコーヒー、カプチーノ、ジュースなどがいただけます。ちなみに店名の「コモ」とはイタリアのコモ湖にちなんで命名されたそうです。近くには「英国大使館別荘記念公園」や中禅寺湖遊覧船の乗り場もあり、一帯に広がる中禅寺湖の美しさを眺めながら、リゾート気分を味わえます。
イタリア大使館別荘記念公園
- 住所
- 栃木県日光市中宮祠2482
- 営業時間
- 4月・11月11~30日/9:00~16:00、5月~11月10日/9:00~17:00
- 定休日
- 12~3月は閉鎖、4月の月曜※その他の月は無休
- 入館料
- 大人300円、4歳~中学生150円
- アクセス
- 【電車】JR「日光」駅、「東武日光」駅からタクシーで約38分
【車】日光宇都宮道路「清滝」ICから約25分 - 公式サイト
- 日光自然博物館 イタリア大使館別荘記念公園
▼ 車で約15分
間近で見られる渓流瀑や二股の滝など見どころ満点「竜頭ノ滝」
「竜頭ノ滝」は中禅寺湖の北側にある渓流爆。長さ210m、幅10mほどの階段状の岩場を落下した水流が、大きな岩で二分されています。その様子が竜の頭に似ていることから、この名前が付けられたのだとか。
遊歩道のすぐそばに建つ、売店・食事処「龍頭乃茶屋(りゅうずのちゃや)」には観瀑台(入場無料)も併設されています。
すぐ横にあるのは「龍頭観音堂」です。その脇の階段から滝の上流付近へ登ることができます。
パワースポットや休憩地点として立ち寄るのもおすすめです。間近で見られる渓流瀑や二股の滝なども希少なので、ぜひこの機会に訪れてみてください。
竜頭ノ滝
- 住所
- 栃木県日光市中宮祠2485
- 営業時間
- 24時間、龍頭乃茶屋/5~11月9:00~17:00、12~4月10:00~16:00
- 定休日
- なし
- 料金
- 無料
- アクセス
- 【電車】JR「日光」駅、「東武日光」駅からタクシーで約35分
【車】日光宇都宮道路「清滝」ICから約25分 - 公式サイト
- 竜頭ノ滝
▼ 車で約5分
神話によって名付けられた約400haの大湿原「戦場ヶ原」
さらに北上すると、道の両脇に広大な湿原「戦場ヶ原」が。ここはかつて中禅寺湖の所有をめぐり、男体山の神と赤城山の神が争った戦場だったという伝説が名称の由来となっています。
一帯は湖だった地形が湿原化したもので、その面積はなんと約400ha。各所に男体山を背景とした展望ポイントがあり、四季折々の壮大な自然を体感できます。
眺望は一年を通して楽しめますが、ワタスゲやホザキシモツケが見頃を迎える6月中旬~8月上旬や、草原の紅葉が美しい9月下旬~10月上旬の景色は特におすすめ。
また、350種類にもおよぶ植物が自生するうえに野鳥が多いことでも知られ、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地」としてラムサール条約に登録されています。
加えて、「戦場ヶ原」はハイキングコースも魅力です。王道のルートは、湯元温泉を起点に、滝や池に、青木橋、戦場ヶ原展望台、石楠花橋など数々の景勝地を通って竜頭ノ滝を目指す約2時間半の行程。アップダウンが少ないので、初級者にもやさしいコースとなっています。
戦場ヶ原
- 住所
- 栃木県日光市中宮祠
- 営業時間
- 24時間
- 定休日
- なし
- 料金
- 入場無料
- アクセス
- 【電車】JR「日光」駅、「東武日光」駅からタクシーで約40分
【車】日光宇都宮道路「清滝」ICから約30分
▼ 車で約3分
高さ70mの名瀑を間近に望む「湯滝」
湯ノ湖の南端にある「湯滝」。全長約110m、高低差約70mの傾斜を一気に落下する姿が爽快な名瀑です。滝の斜面を構成する岸壁は、湯川の流れをせき止めて湯ノ湖を形成した三岳の溶岩となっており、滝つぼの直前で二股に分かれて落ちる末広がりの形も個性的。
観爆台が滝の目の前にあるのもうれしいポイントです。迫力ある姿を間近で眺められるだけでなく、水しぶきが時折飛んでくるので暑い日にはより一層清涼感を得られます。
流れ落ちた水は清流となり、日によっては渓流釣りを楽しむ人の姿も。
また、「湯滝」はさきほど紹介した「戦場ヶ原」から北上するハイキングコースの途中にあるため、ベンチなども置かれており休憩スポットとしても利用できます。季節によっては観爆台に野鳥が飛んでくることもあり、奥日光の大自然をダイレクトに感じられるスポットです。
湯滝
- 住所
- 栃木県日光市湯元
- 営業時間
- 24時間
- 定休日
- なし
- 料金
- 入場無料
- 駐車場
- あり
- アクセス
- 【電車】JR「日光」駅、「東武日光」駅からタクシーで約42分
【車】日光宇都宮道路「清滝」ICから約35分
▼ 車で約4分
濃厚フレッシュなソフトクリームが名物の「三本松茶屋」
1871年創業の、奥日光の中で最も古い歴史を持つ老舗「三本松茶屋」。地元の銘菓や珍味などもたくさんそろっているので、帰りに立ち寄って日光土産を探すのに最適です。
このお店の名物のひとつが「ソフトクリーム」(400円)。定番のバニラほか、栃木名物のイチゴや抹茶のフレーバーもあり、2種類ミックスも注文可能。無料で大盛りにできるのもうれしいですね。
なお、抹茶は京都宇治産の上級品、イチゴはフードロス削減を目的に、県内の規格外品が使われています。
お土産には「東照カステラ」(1,200円)や「きぬの清流」(540円~)など、日光のおいしいお菓子が勢ぞろい。
同店オリジナルの、栃木県産リンゴをたっぷり使った「アップルパイ」(2,160円)や自社醸造のクラフトビールも見逃せません。店内には食堂もあるので、ここでゆっくり旅の疲れを癒やして帰りましょう。
なお、このお店は「戦場ヶ原」の圏内にあり駐車場も広いので、「湯滝」へ行く前にここで停めて周辺を散策することもできます。思い思いのプランで満喫してください。
三本松茶屋
- 住所
- 栃木県日光市中宮祠2493
- 営業時間
- 月~金9:00~17:00、土日9:00~19:00
- 定休日
- なし
- アクセス
- 【電車】JR「日光」駅、「東武日光」駅から車で約40分
【車】日光宇都宮道路「清滝」ICから約30分 - 公式サイト
- 三本松茶屋
真夏でも平均最高気温が20℃台前半という涼しさの奥日光。その一番の理由は、海抜1,300~1,600mの高原だからだといわれます。絶好のロケーションと名瀑や冷たいスイーツなどで、ぜひ涼やかなサマーバカンスを過ごしてみてください。すてきな宿泊施設も多いので、何泊かしてのんびり過ごすのもおすすめです。
今回のモデルコースMAP
取材・文/中山 秀明 撮影/浦田 進