標高約700mの高原に位置し、四季折々の自然を楽しみながら心も身体も癒やされる箱根・仙石原温泉。誰にも邪魔されず、プライベートな空間で温泉を堪能したい……そんな贅沢を叶えてくれる全室露天風呂付きの宿が「金乃竹 仙石原」です。
一人ひとりへのおもてなしを大切にしているため客室は9室のみに限定され、食事は部屋食。なるべく客同士が顔を合わせないように配慮されています。かぐや姫の恋物語に想いをはせ、極上の宿で過ごす1泊2日をお届けします。
竹林に囲まれた隠れ家「金乃竹 仙石原」へのアクセス
金乃竹 仙石原はかぐや姫のお話「竹取物語」をコンセプトにした高級温泉旅館。この世のものとは思えないほど美しいかぐや姫に恋をした5人の男性や帝との物語から着想を得た幻想的な空間で、2人だけのおこもりステイを楽しめます。
アクセスは東名御殿場ICより車で約20分。バス停「台ケ岳」より徒歩約3分ですが、急な登り坂のため小田原駅や箱根湯本駅からタクシーを使うのもおすすめです。
竹林に囲まれた敷地内に入ると、重厚感のある門をたずさえた建物が見えてきます。闇夜に溶け込む建物は窓がなく、外部から客室が見えることはありません。
車を停めるとすぐにスタッフが駆けつけ、荷物を持って「こちらへどうぞ」と案内してくれました。
中はどうなっているのか……そんな期待を膨らませながら中へと入り、入り組んだ道を進んだ先にあったのは水面鏡を配したエントランス。
竹がふんだんにあしらわれた空間は、まさに幻想的な竹取物語の世界を彷彿とさせます。ここで靴を脱ぎ、そのまま宿泊する客室に案内されました。
想像を超える空間。2023年オープンの「姫(HIME)」に宿泊
照明を落とした廊下は裏道のような、ひっそりとした空間。地下1階・1階・2階それぞれに客室があり、エレベーターで今回宿泊する2階「姫(HIME)」へと向かいました。
客室に入ると、これまでの雰囲気とは一変。大きな窓から陽の光が差し込む明るい空間が待ち受けていました。まずはダイニングでウェルカムドリンクとお茶菓子をいただきながらチェックインを行います。
ドリンクはスパークリングワイン、生ビール、静岡御殿場産「富士山紅茶」、静岡煎茶「天下一」などから選択可能。お茶菓子は季節に合わせて変わり、この日は「自家製シャインマスカット大福」と「自家製 抹茶わらび餅」を選択しました。
自家製シャインマスカット大福はとてもやわらかな餅と皮が弾けるシャインマスカットが絶品。季節のフルーツ大福は、人気のお茶菓子です。
2023年にオープンした「姫(HIME)」はテラスを含めて約131平米もの空間。入り口からダイニング、洗面所、ベッドルーム、バスルームと続き、想像を超える広さに驚きを隠せませんでした。定員は2人。
大きなキングサイズのベッドを中心に備えたベッドルームには、竹林や水盤を眺める縁側のようなスペースも用意。ワインを片手に四季を感じる特等席に座るだけで、心が癒やされていきます。
用意されているドリンクやお菓子は全客室、すべて無料。最上級ランクの客室「帝(MIKADO)」と「姫(HIME)」はシャンパン「ルイ・ロデレール」やフランス「アラン・ミリア」のジュースなど、特別なラインナップとなっています。
お菓子は金乃竹オリジナルのナッツ。「はちみつ木の実」と「はちみつ木の実 黒胡椒仕立て」の2種類で、お酒との相性もぴったりです。
金乃竹 仙石原は全室露天風呂付きですが、「姫(HIME)」には加えて内湯も備わっています。内湯は温泉ではないので、例えば水風呂として使用することも可能です。
広大なテラスの露天風呂では、源泉かけ流しの大涌谷温泉を楽しめます。
泉質は酸性ーカルシウムー硫酸塩・塩化物温泉。湯の花が浮かぶ乳白色の温泉で、肌ざわりはやわらか。ほのかな温泉の香りにも癒やされながら、貸切で露天風呂を独り占めできます。
バスアメニティも上質なアイテムが用意されています。バリ島発オーガニックコスメ「Sensatia(センセイシャ )」のシャンプー・コンディショナー・ボディウォッシュ・ボディローションは自然の香りが心地良く、髪や肌を美しく整えてくれます。100%オーガニック素材のため1日でバクテリア分解され、環境にもやさしいアイテムです。
スキンケアはフランスのスパ発スキンケアブランド「オムニサンス・パリ」。メイク落とし、洗顔ジェル、スキンローション、フェイスクリームのセットで、パラベンなどお肌に不要なものは無添加です。容器もプラントベースのチューブを使用するなど、環境に配慮されています。
ダイニングとベッドルームをつなぐのは、ダブルシンクで身支度がしやすい洗面所。メイクをしやすいよう、拡大鏡も用意されています。ドライヤーはツヤのある髪に導く「ReFa」です。
専用プライベートガーデン付きの「煌 (KIRAMEKI)」
金乃竹 仙石原の客室はすべて趣が異なり、そのすべてが89平米を超える広さ。地下1階に位置する「煌 (KIRAMEKI)」は段差がなく、ダイニング・露天風呂・ベッドルーム・テラスがフラットにつながっています。広さはテラス含め約95平米、定員2人。
煌 (KIRAMEKI)は専用のプライベートガーデンがあり、露天風呂やテラスで自然を楽しめます。春は桜、夏は深緑、秋は紅葉……と季節の移り変わりを、プライベートな空間で感じることができます。
プレゼントにもおすすめ。「The Moon SPA」
客室で極上の露天風呂に癒やされた後は、館内にある「The Moon SPA」のオールハンド・スパトリートメントでリラックス。Sensatiaのアイテムを使用したボディ&フェイシャルのシグニチャートリートメント「かぐや(150分 38,500円)」など、心と肌を美しく整えてくれるメニューを体験できます。
トリートメントルームは1室のみのため、プレゼントとしてもよろこばれます。営業時間は14:00〜22:00(L.O20:00)、完全予約制です。
「姫(HIME)」限定の豪華食材に注目。部屋食で味わう夕食
夕食はお部屋で楽しめるのも金乃竹 仙石原の大きな特徴です。時間になると、スタッフが1品ずつ客室のダイニングに持ってきてくれます。料理は京都の食材や地元の食材を、京の技法で彩りよくあしらった京懐石。京都の料亭出身の岩井総料理長と太田料理長が作り上げる、季節の料理を堪能できます。
この日は先附「三河産鰻 蒲焼き」、添え「北海道噴火湾産毛蟹 吉野煮」、猪口「蝦夷鮑 肝和え」から始まり、豪華13品が登場しました。
椀「オランダ鱧」は、油で揚げた鱧を清汁仕立てにした一品。石川県・輪島塗の金乃竹オリジナルの器も美しく、京料理らしい繊細で上品な味わいが印象的でした。
続く造里は相模湾産の本マグロ、イサキ、ミズダコ、オキタカベに加え、館内の生簀(いけす)から揚げたばかりの伊勢海老という豪華なラインナップ。
「帝(MIKADO)」と「姫(HIME)」宿泊者限定でアップグレードされたメニューです。伊勢海老は2人で1尾が丸ごと提供され、その新鮮な甘みを深く噛みしめました。
新鮮な魚介は土佐醤油のほか、ゼラチン・昆布出汁・塩を合わせた「泡の塩」で味わうのが金乃竹流。伊勢海老の殻やみそは、翌朝の朝食の味噌汁で味わうことも可能です。
凌ぎ「千葉県産鰹棒寿司」、焼き物「赤甘鯛雲丹焼」と海の幸をふんだんに堪能した後に登場したのは、強肴「仙台牛フィレ肉の炙り焼き」です。
絶妙な焼き加減で提供されたフィレ肉は脂身のバランスが良く「もう1枚食べたい……」と思わせるほど絶品。A5ランクの仙台牛は「帝(MIKADO)」と「姫(HIME)」宿泊者限定食材となっています。
揚物で相模湾産の「太刀魚」や京野菜「賀茂茄子」などを堪能し、最後の御飯は「ときしらず(時鮭)の釜炊き」。五つ星お米マイスターの土屋一さんが厳選した「つや姫」と脂ののったときしらずがとてもおいしく、まるや八丁味噌の赤出汁や香物と一緒に楽しみました。
金の竹が光る水盤が幻想的。「Bar Bamboo」
スタッフの方に「水物はバーでもお召し上がりになれますが、いかがいたしますか?」とご提案いただき、地下1階の「Bar Bamboo」に移動。金の竹が光る水盤がとても幻想的で、圧倒的な非現実の中でお酒を楽しめる空間となっています。
水物はかぐや姫が求婚する5人の男性たちに5つの宝物を持ってくるよう難題を出したことにちなみ、5つのデザートが登場。この日は「白桃の氷菓」「シャインマスカット&巨峰」「無花果蜜煮」「抹茶餡の水羊羹」「梨バター焼き」がずらりと並び、宝物のように輝くデザートたちを満喫しました。
夕食後は「Bar Bamboo」にそのまま残り、バーテンダーが作るお酒に舌鼓。オリジナルカクテルやワインのほか、約100種類のリキュールやウイスキーから好きなカクテルを注文できます。
一番人気は季節のフルーツカクテル。旬のフレッシュフルーツを使用したカクテルが、特に女性に選ばれています。獺祭焼酎を使用した「獺祭×メロンのマティーニ」(2,640円)とアロエのリキュールをプラスした「シャインマスカットのマティーニ」(2,420円)をチョイスし、上質な夜のひとときを楽しみました。ちなみにフルーツカクテルやお酒はルームサービスも可能です。
宿の気遣いがうれしい。夜食のおにぎり
小腹が減ってしまった夜中、客室でいただいた「夜食のおにぎり」。これは夕食で食べきれなかった「ときしらずの釜炊き御飯」を、おにぎりにしてもらっていたものです。「好きなタイミングでお召し上がりください」という旅館の気遣いに心が動かされました。
地元の名産品が勢ぞろい。部屋食で朝食を堪能
翌朝はゆっくり目覚め、客室のダイニングで朝食。夕食に続き朝食も「部屋食」となっており、予約した時間にスタッフが持ってきてくれました。
朝の献立も「生搾り野菜ジュース」、鉢物「蒸し野菜」、小田原市下曽我の名産「曽我十郎梅干し」、自家製「浅漬け&ちりめん山椒」、有明産「焼き海苔」、相州牛の「京風煮込み」、横浜食菜卵の「温玉」、濃厚な「伊勢海老の赤出汁」など盛りだくさん。地元の食材を中心とした料理が並び、山形産「つや姫」の釜炊きご飯とともに、箸が進みます。
豆腐は箱根強羅にある、地元の名店「箱根銀豆腐」の冷奴。箱根の名水から生まれる豆腐は何もつけなくともおいしく、大豆の濃厚な味わいが広がります。季節に合わせ、10月頃からはほっこり温かい湯豆腐で提供される予定です。
干物は通常客室ではアジ、サバ、金目鯛の3種類から選択するのですが、「帝(MIKADO)」と「姫(HIME)」宿泊者はアマダイの干物を食べることができます。ふっくら厚みのあるアマダイを、一尾丸ごと味わえるのはとても贅沢。朝から気分の上がるおいしさでした。
竹取物語の世界観に包まれ、非日常へと誘う「金乃竹 仙石原」。2人のプライベートな時間を楽しめるよう、最大限配慮されたスタッフのおもてなしが心に残りました。心置きなく客室露天風呂で温泉を楽しみ、部屋食で京懐石に舌鼓……宿泊した人だけが体感できる、至福の箱根旅へと出かけませんか。
金乃竹 仙石原
- 住所
- 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原817-342
- アクセス
- 箱根湯本駅より箱根登山バス「桃源台行き」で約30分「台ケ岳」下車 徒歩にて約3分
- 駐車場
- 無料(予約不要)
- チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン:18:00)
- チェックアウト
- 11:00
- 総部屋数
- 9室
撮影/岡村智明 取材・文/小浜みゆ