子どもの頃、一度は聞いたことのある昔ばなし『桃太郎』。物語発祥の地と呼ばれる岡山県には、桃太郎由来のスポットやお土産などがたくさんあります。そのルーツとも言われる『温羅(うら)退治』という神話が語り継がれているのが、岡山県岡山市にある「吉備津神社(きびつじんじゃ)」です。
そこで今回は、吉備津神社の見どころや周辺スポット、お土産に買って帰りたいきびだんごの情報などをご紹介します。
目次
昔ばなし『桃太郎』のルーツを探しに岡山へ
電車や新幹線で、岡山駅東口に降り立つと出迎えてくれるのが、桃太郎像。お供の犬・サル・キジも連れています。東口から東に延びる通りは「桃太郎大通り」と名付けられていて、各所に桃太郎や犬などの銅像が置かれています。
JR吉備線(桃太郎線)に乗って吉備津駅へ
早速「吉備津神社」に向かいましょう。吉備津神社の最寄り駅はJR吉備線(桃太郎線)「吉備津駅」。岡山駅から電車に乗って約30分、そこから徒歩約10分で到着します。
JR吉備線は1時間1〜2本の運行なので、帰りの時刻表を確認するのをお忘れなく。
吉備津駅を出発して数分すると、450mに渡る松の大木が並ぶ参道が現れます。岡山県下最大の松並木で、迫力があります。
桃太郎ゆかりのスポット「吉備津神社」
吉備津神社は、大吉備津彦命(おおきびつひこのみこと)を主神とし、その異母弟の若日子建吉備津日子命(わかひこたけきびつひこのみこと)と、その子 吉備武彦命(きびたけひこのみこと)等、一族の神々を合わせ祀る神社です。
桃太郎伝説の原型となったとされる『温羅退治』の舞台の地が、ここ吉備津神社なのです。
古代、岡山県と広島県東部を含むエリアが吉備国(きびのくに)と呼ばれていた頃、温羅(うら)と呼ばれる一族が略奪などの野蛮な行いをしていました。崇神天皇(すじんてんのう)によって、温羅討伐を命じられた大吉備津彦命が、温羅退治のために現在の「吉備津神社」の場所に本陣を構えて温羅を成敗。その後、「茅葺宮(かやぶきのみや)」を建てて住んだと伝えられています。
吉備津神社は東西に長く、本殿から続く廻廊は約398mの長さがあります。本殿へのお参り以外にも、境内を巡るには1時間程度の所要時間をみておくと良さそうです。
国宝「本殿・拝殿」
圧巻の大きさを誇る本殿・拝殿は、国宝に指定されています。その大きさは、桁行き 約14.6m、梁間 約17.7m、棟高 約12m、建坪 約255平米の大建築で、京都の八坂神社に次ぐ大きさで、出雲大社の約2倍以上の広さを誇ります。
写真に収まらないほどのスケールなので、全体を映すには、階段を登り一童社側から撮影するのがおすすめです。
本殿の屋根の部分が、2つあるため「比翼入母屋造(ひよくいりもやづくり)」と言い、全国で唯一の様式なので、「吉備津造(きびつづくり)」とも呼ばれています。
東大寺再建に尽力した僧・重源(ちょうげん)が大陸よりもたらした大仏様の「挿肘木(さしひじき)」といわれる組物により、本殿の深い軒や回縁を支柱なしに一軒でつくり、美しく調和した建築美を生み出しています。
記録によると、過去2回火災によって焼失していますが、約600年前の室町時代 将軍・足利義満の時代に、約25年の歳月をかけて応永32(1425)年に再建されました。それ以来、解体修理もなくその雄大な姿を現代に伝えています。
参拝方法は、二拝二拍手一拝。延命長寿、縁結びや夫婦円満、家内安全、厄除け、必勝祈願、商売繁盛などのご利益があるといわれています。
本殿内の360度映像を見ることのできるバーチャル体験もありました。スマホでQRコードを読み込むと、本殿内部の他、鳴釜神事(なるかましんじ)、えびす祭りなどの様子を楽しめます。
シンボルの一つでもある大イチョウは樹齢600年を誇ります。
桃太郎ゆかりの御朱印帳やおみくじ
本殿・拝殿の向かいに授与所があります。桃太郎の絵が描かれた建物には、4種類のおみくじが用意されています。
桃太郎が描かれた絵馬や御朱印帳の他、桃をモチーフにしたお守りなどもあります。古来より桃は魔除けの果実と呼ばれているそうで、身につけることで災いから守ってくれると言われています。
学問の神様「一童社」
一童社(いちどうしゃ)は、学問の神様・菅原道真(すがわらのみちざね)公と、芸能の神様・天鈿女神(あめのうずめのみこと)をお祀りしており、進学合格、芸事上達のご利益があるといわれています。絵馬でできた「祈願トンネル」には、受験の合格祈願や応援メッセージが多数書かれていました。
長さ約398mの美しい廻廊
拝殿の右手に位置する約398mの廻廊。地形に沿って建てられた一直線の造形美に圧倒されます。天正元(1573)年から約20年間かけて造られ、現在は岡山県の重要文化財に指定されています。
廻廊は本殿・拝殿から、本宮社までつながっており、廻廊の左右には「えびす宮」や「あじさい園」「御竈殿(おかまでん)」などがあり、散策をしながら境内を巡れます。
恵比寿と大黒の二神を祀る「えびす宮」。毎年、元日から11日まで、商売繁盛、五穀豊饒などを祈願して、えびす様の縁起物が授与されます。
廻廊の途中にある石段の両脇には、6月下旬になると約1,500株の紫陽花が咲き誇ります。
取材時は6月初旬だったので見頃は少し先でしたが、地元の人のみならず、国内外から紫陽花を見に訪れている人がいました。境内には他にも、梅、桜、牡丹などもあり季節にあわせて花々を愛でることができます。
あじさい園から、石段を登りきった先には吉備国の地主神が祭られている「岩山宮」があります。
朱塗りの柱を有する三社が祀られており、写真左から春日宮・大神宮・八幡宮と並びます。
鳴釜神事が行われる「御竈殿」
廻廊の途中では、釜の鳴る音で吉凶を占う「鳴釜神事(なるかましんじ)」が執り行われる「御竈殿」へ続く廻廊があります。
国の重要文化財に指定されている「御竈殿」はは400年前に再建されたもの。「鳴釜神事」の起源は『温羅(うら)退治』に由来します。
温羅を捕らえた大吉備津彦命は、温羅の首をはねましたが、不思議なことに首は大声をあげ、唸りが止むことはありませんでした。そのため、やむなく御竈殿の釜の下に埋めてしまいましたが、それでも唸り声は止むことなく近郊の村々に鳴り響きました。大吉備津彦命が困り果てていた時、夢枕に温羅の霊が現れて、温羅の妻・阿曽媛(あぞひめ)に釜を炊くように言いました。続けて「世の中に良いことがあれば良い音を鳴らし、凶があれば荒く鳴る」と、告げました。お告げの通りにすると、唸り声も治まり平和が訪れたそうで、これが鳴釜神事の起源と言われています。名将、黒田官兵衛もここで吉凶を占った記録があるのだそう。
現在は阿曽媛の代わりに、阿曽女(あぞめ)を担う巫女が釜を炊いて占います。炊き上げる釜の鳴る音で吉凶を占いますが、阿曽女は何も伝えないのが習わし。参拝者自身が、音を感じ取り吉凶を判断します。
廻廊は本宮社まで続き、南端を左に曲がると本宮社の拝殿が見えます。
本宮社では御祭神である大吉備津彦命の父神と母神をお祀りしており、安産・育児の神様として信仰されています。
時間がある方は「吉備の中山遊歩道」の散策を
本宮社のお参りをした後に境内の外に出ると、山に向かって車道が伸びており、少し歩くと「吉備の中山遊歩道」の案内板があります。「吉備の中山」は、吉備の国と呼ばれていた頃、その中心にあったと言われていて、御陵(ごりょう)の方角をむいて東側に「吉備津彦神社」、西側に「吉備津神社」が鎮座しています。
吉備の中山遊歩道を20分程歩くと、大吉備津彦命の陵墓である中山茶臼山古墳(なかやまちゃうすやまこふん)に到着します。宮内庁の管理下にあるため、近くまで行くことはできませんが、鳥居が見え神聖な気持ちになりますので、時間と体力のある方は訪れてみてはいかがでしょうか。
参拝前後のランチや休憩に「お食事処 桃太郎」
吉備津神社の駐車場前で、戦前から営業する食事処&土産店「お食事処 桃太郎」。参拝前後の休憩やランチにおすすめです。
店頭ではお土産も販売しています。吉備津神社の御神酒や岡山名物のきびだんごなどを購入している方が多かったですよ。
食事はうどんやそば、牛丼、カレーライス、おでんなどを販売しています。おすすめは「桃太郎うどん」と「桃太郎そば」。キジ肉団子ともちもちのきびだんごが入っているのが特徴です。山菜、わかめ、卵などが入っており食べごたえも抜群。そばは十割そばを使用しています。
キジ肉やきびだんごを入れた、うどんやそばは珍しく、お店オリジナルとのことなので、訪れた際はぜひチェックしてみてください。
きびだんご2個と、きなこのかかったソフトクリーム。優しい甘さのミルクと香ばしいきなこの相性が抜群です。
王道から変わり種まで、岡山名物のきびだんごをお土産に
岡山のお土産といえば「きびだんご」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。お土産ショップには、各メーカーから様々な商品が並び、どれを選んだら良いか悩んでしまいます。そこで今回は、パッケージが印象的な3種類をご紹介します。
廣榮堂武田「きびだんご」
イラストレーターNoritakeさんのかわいいキャラクターが描かれた「廣榮堂武田(こうえいどうたけだ)」のきびだんご。柔らかい食感と、素材の味わいを感じる優しい甘さが特徴のきびだんごです。国産の上質なもち粉、きび粉を使用し創業当初から培った伝統を味わえます。
山方永寿堂「白桃きびだんご」
ドーンと描かれた桃の中から、桃太郎が飛び出すユニークなパッケージが印象的な山方永寿堂の「白桃きびだんご」。岡山県産白桃ピュレを生地に練り込み、白桃の優しい甘さと香りが漂います。
竹久夢二本舗敷島堂「マスカットきびだんご」
きびだんごとマスカット、岡山の名物をかけあわせた贅沢な一品。岡山特産のマスカット果蜜が中に入っており、ひと口食べるとフルーティーな果蜜がとろけだします。まるでマスカットを食べているような甘酸っぱいおいしさを楽しめます。
吉備津神社の公式サイトでは「鬼退治神話」のページもあるので、訪問前に読んで桃太郎の物語を復習してみてはいかがでしょうか。岡山市内や倉敷市内からも近く、吉備津神社から電車や車で30分~1時間ほどの距離なので合わせて岡山観光を楽しんでみてくださいね。
吉備津神社
- 開閉門時間
- 5:00~18:00
※御祈祷の受付 9:00~14:00頃まで、御朱印の受付 9:00~16:00まで - 住所
- 岡山県岡山市北区吉備津931
- 交通アクセス
- 【電車】JR「岡山駅」から「吉備津駅(乗車約17分)」下車、徒歩約10分、JR「倉敷駅」から「吉備津駅(乗車約40分)」下車、徒歩約10分
【車】岡山総社ICからで約15分、岡山ICから約15分 - 公式サイト
- 吉備津神社
取材・撮影・文/加藤あやな