伊豆半島のほぼ中央に位置する河津温泉は、山に抱かれ、川に寄り添う、のどかな温泉地です。そこに構える「河津七滝 渓流温泉茶寮 水鞠(MIZUMARI)」は4室限定のお宿。すべてのお部屋に源泉かけ流しの露天風呂を備え、チェックインから食事までをお部屋で過ごせます。
豊かな自然に囲まれ、渓流を眺めるプライベートな露天風呂でのひとときは、まさに非日常。食事を含む滞在中の飲み物が無料というオールインクルーシブなサービスが特徴的で、のんびりとしたおこもり滞在が叶います。子ども連れファミリーが驚くほどのベビーグッズや、おもちゃなどが充実しているので、お子さまの初めての温泉デビューにもおすすめです。
目次
- 1.伊豆半島の自然を堪能するロケーション
- 2.颯爽とした足取りで館内へ
- 3.お部屋でくつろぎながらチェックイン
- 4.源泉かけ流しの露天風呂で至福の時間
- 5.こだわりのアメニティで特別感を堪能
- 6.無料でいただける客室のドリンク類
- 7.大充実の子ども向けサービス
- 8.何度でも訪れたくなるキッズルーム
- 9.自販機や駄菓子もオールインクルーシブ
- 10.高評価なサービスの秘訣は?
- 11.海と山の幸が目白押しの夕食
- 12.やわらかな灯りに照らされる夜
- 13.ご当地グルメが詰まった朝食
- 14.チェックアウト後も自然を謳歌
- 15.「水鞠」に込められた想い
伊豆半島の自然を堪能できるロケーション
「河津七滝 渓流温泉茶寮 水鞠(MIZUMARI)」へのアクセスは、車なら東名高速道路の沼津ICから伊豆縦貫自動車道で天城山を抜けて約1時間半。
電車・バスなら熱海駅から海を横目に河津駅までJR伊東線に乗ること約1時間半、河津駅からバスで約25分。最寄りの「河津七滝」バス停から宿までは徒歩5分ほど。水と桔梗(キキョウ)を思わせる青色のロゴが目印です。
緑豊かな里山が後ろに控え、宿の横を流れるのは伊豆七滝に合流する沼ノ川(別名:荻野入川)。森と水に囲まれたロケーションで、空気も清らかに感じられます。
颯爽とした足取りで館内へ
駐車場に到着すると、早速スタッフの方が笑顔でお出迎え。あたたかな歓迎を受けて、建物に入る前から今回の滞在が素敵なものになる予感がして足取りも弾みます。
玄関の先には、風鈴草と青もみじが爽やかな初夏を演出。
さらに歩みを進めると、壁一面に設けられた窓ガラスから日光がさんさんと注がれ、ステンドグラスの色鮮やかなランプとの光景がまるで美術館にいるよう。
チェックインはお部屋で行うと聞き、ロビーには立ち止まらずに通過。装飾品や中庭の景色に目を配りながら、落ち着いたらまた来ようと自分に誓いつつ、後にします。
お部屋への道すがら、置かれた茶香炉からは鼻腔をくすぐる茶葉の香り。ふわっとしたやわらかな香りに緊張気味だった身体もゆるりとほぐれていきます。
お部屋でくつろぎながらチェックイン
103号室に入ると、目の前には10畳分の居間があり、すぐ隣には同じく10畳分の寝室がふすまで仕切られていました。最大4名まで宿泊でき、広さは60平米ほど。トイレが2カ所あるなど、ファミリーやグループ旅行にも快適なお部屋です。
二間続きのお部屋は101号室と103号室の2部屋。他に広さ30平米のお部屋が2部屋あり、こちらも露天風呂と内風呂、トイレと洗面所付き。全4室すべての露天風呂が川に面し、川音や新緑の眩さ、お湯のぬくもりなど五感で自然を体感できます。
この日のお茶菓子にいただいたのは、下田の和菓子屋さんによる桑の葉入りクリーム大福。しっとりした生地に生クリームと粒あんがお互いを引き立ててまろやかな味わい。日本茶と一緒にいただき、ひと休憩。お部屋でのくつろぎ時間の始まりです。
源泉かけ流しの露天風呂で至福のひとときを
寝室の先には、お部屋のハイライトとも言える露天風呂がお待ちかね。ガラス戸を開けてみると、温泉が湯船に注がれる音、それに川のせせらぎと鳥のさえずりといった自然の重奏曲に全身が包まれ、自分が豊かな自然の中にいることを教えてくれます。
露天風呂は家族みんなで入っても悠々と足を伸ばせる檜風呂と、大人ひとりが丁度よく入れる壺風呂の2種類。
38℃前後の源泉は長湯に最適で、時間とともに身体が徐々に温まってくるのが感じられます。会話を楽しんだり、川を眺めたり。余計なものは一切なく、目の前に広がるのは温泉を満喫するための贅沢な空間だけです。
無色無臭のアルカリ性単純温泉は、やわらかな肌触りで癖がなく、子どもにも入りやすい泉質。お肌の汚れなどを落としてくれることから「美肌の湯」として親しまれています。
こだわりのアメニティで特別感を堪能
脱衣所の横には石造りの内風呂と洗い場があります。浴室の窓からも外の様子を眺めながら入浴ができます。
シャンプー・トリートメント・フェイス&ボディウォッシュには、スパ発のスキンケアブランド「LAPIDEM(ラピデム)」。ウェルネスをキーワードに、95%以上の成分が天然由来のもの。しっとりした使い心地が実感でき、気に入ったら宿で購入も可能です。
広いパウダールームは明るく、すっきりとした印象。鏡も大きく、使い勝手も考慮されています。
男性用にはイギリス初の「ブルドッグ」のスキンケアシリーズと替刃式のカミソリが。女性用にはフランス発コスメブランド「ALGOTHERM(アルゴテルム)」のメイク落とし・洗顔料・化粧水・乳液の4点と、小ぶりサイズの「POLA(ポーラ)」のボディソープ・シャンプー・コンディショナー・ボディローションが入ったクリアポーチを用意していただけます。
お部屋には館内で利用できる浴衣と半纏(はんてん)と、上下に分かれるナイトウェア(パジャマ)、足袋靴下も。手ぶらで訪れても安心なアメニティ類がそろっています。
すべてを無料でいただける客室のドリンク類
窓いっぱいに広がる木々が陽の光を浴びたり、葉っぱが風に揺らめいたりと、広縁のテーブルは外の自然を眺める特等席になっています。
窓際の冷蔵庫の中には地域限定「静岡産三ケ日みかん」のクラフトチューハイ、伊豆の地ビール「碧い海」がすぐにでも飲める状態で待機中。ウィスキーのミニボトルや割材のソーダも置かれているなど、品揃えの充実ぶりに、「本当に無料なの?」と驚いてしまうほど。
コーヒーマシンとお茶セットもあり、ミネラルウォーターも遠慮なく飲める2リットルサイズのペットボトルが用意されていました。
そして、冷蔵庫の横には電子レンジまで完備。滞在を快適に過ごしてほしいという宿の想いが随所に感じられます。
大充実の子ども向けサービス
哺乳瓶を消毒したり、離乳食を温めたりと子育ての場面では電子レンジが欠かせません。「河津七滝 渓流温泉茶寮 水鞠(MIZUMARI)」では、赤ちゃんの温泉デビューを応援し、子どもとの滞在を歓迎していることから、お部屋に電子レンジを備え置くことに決めたそう。
温泉デビュー用に、抗菌マット付きのバスチェアを揃えたベビーバスを用意しており、宿泊前に宿に希望を伝えることでお部屋に用意していただけます。また、赤ちゃん用のボディウォッシュ&シャンプーに加え、保湿用ミルクジェルもあるので、自宅から準備していく必要がありません。
ひとりで座れるお子さまであれば、ベビーソファも大活躍。大人が着替える際に子どもを座らせておけるので安心です。
子ども用浴衣は80cm~140cmサイズまであり、上下に分かれるセパレートタイプの浴衣も。半纏(はんてん)も、大中小のサイズをそろえています。
宿では電子レンジを筆頭に、ママパパの「あったら良いな」と思える声を参考に備品を徐々に増やしていったのだとか。子ども用布団セットには、おねしょシーツ(防水シーツ)まで添えられています。セットすれば万が一の時も安心。
おむつ用ごみ箱のほか、補助便座の貸出しもあるのでお部屋に2カ所あるトイレの一方を子ども専用にすることもできます。
バウンサーはお部屋でのうたた寝タイムにも大活躍。宿にはぬいぐるみもそろっているので、子どものお気に入りを借りておくのもおすすめ。
ファミリーが訪れるにつれて、宿での気づきを反映したグッズもあります。子連れ旅行の場合、第2子を妊娠しているお母さんも多くみられたことから、マタニティパジャマや寝る時に負担を軽減する抱き枕を新たに用意。
食事も生魚を避けたり、子どもの好き嫌いに合わせたりと、細かな要望にも応えてくれます。お子さま連れでの旅行を考えている場合は事前にアメニティと合わせて相談してみましょう。
何度でも訪れたくなるキッズルーム
子どもが思い切り遊べるようにと宴会場だった場所を専用のキッズルームに変更。トランポリンやすべり台、絵本といったおもちゃ屋さんのような品ぞろえに子どもたちも目を輝かすはず。雨天時にも利用でき、客室エリアから少し離れた場所にあるので、おもちゃの音やはしゃぎ声など、まわりを気にせずに楽しめるのも魅力です。
キッズルームの隣の部屋には、自由に遊べる卓球台も置かれていて大人も楽しめます。
オールインクルーシブに含まれる自販機&駄菓子
遊んでいる最中に喉が渇いたら、近くにある館内の自販機へ。オールインクルーシブを謳うこちらのお宿では、自販機の飲み物も無料という徹底ぶり。
自販機の横に小銭が置かれ、こちらを投入して好きなソフトドリンクとアルコールをいただけます。
飲み物だけでなく、20種類近い駄菓子もすべて無料。小さな子ども用のお菓子から、大人用のおつまみまで幅広いラインナップで、どれにしようか迷ってしまうほど。
近くには伊豆の観光パンフレットを集めたコーナーもあり、周辺観光のプランニングに役立ちます。
高評価なサービスの秘訣は?
2022年4月にリニューアルオープンしたばかりの「河津七滝 渓流温泉茶寮 水鞠(MIZUMARI)」。宿の「お風呂の評価」もさることながら、「サービスの評価」が特に高いことがお客さまのクチコミから伺えます。子ども向けのサービスが目立ちますが、スタッフの丁寧な対応や細かな心配りなど、宿泊者のおもてなしに関する投稿がたくさん。
「スタッフには、お客さまを自分の家族と同じようにお迎えしようと言っています。どんなリクエストも『No』と言ってしまっては、それで終わりです。家族に対してだったら諦めずに考え続けて、何とかして希望に添える代案を出すのではないでしょうか。今の自分に何ができるか、本当にお客さまが滞在を楽しまれているか、という問いかけを忘れずにお客さま一人ひとりをお迎えしていきたいです」と、亭主の向谷(むかいだに)さん。
海と山の幸が目白押しの夕食
おもてなしの精神は、食事の場面でも活かされています。前菜から始まり、椀物、お造りと8品前後からなる懐石料理は旬の味を堪能してもらえるよう、一品ずつ出来立ての状態でお部屋に運ばれてきます。
まずは、ヤマモモの食前酒とともに開宴。伊豆はヤマモモの北限地と言われ、さっぱりした酸味に食欲が促進。前菜は、海の旨みが凝縮した「サザエの雲丹(うに)クリーム焼き」、サクッとした歯ざわりが小気味よい「じんた(小鯵)の唐揚げ」など、異なる味覚と食感が一度に味わえ、見た目も華やか。
黒むつや赤羽太(あかはた)といった伊豆ならではの海産物は新鮮さゆえの弾力があり、食べ応え十分。お醤油やお塩など、お刺身や好みに合わせて、様々な食べ方を楽しめます。
地域の特産品を使った幅広い野菜やブランド牛からも、伊豆の豊かな土壌が垣間見えます。椀物の平目真丈(しんじょう)、アイスプラント、独活(うど)、椎茸(しいたけ)、すべてが伊豆産。平目真丈のなめらかな味わいに、シャキシャキとした触感のアイスプラントが加わり、異色の組み合わせながら両者の特徴が引き立つメニューです。
赤身でさっぱりとした味が特徴の「伊豆牛」。部位の中でも珍しい「とも三角」が分厚くカットされ、ご褒美感のある一品。弾力があるので噛めば噛むほどに味が広がり、徐々に脂の甘味が存在感を発揮。付け合わせの「わさび茎の三杯酢」を間に挟めば、口の中が一新され、毎度新たな気持ちでお肉を堪能できます。
ミニバーや自販機に引き続き、夕食時のドリンクも無料。静岡あらごしみかん、白隠正宗(はくいん まさむね)など静岡県産のお酒はもちろん、日本酒と焼酎は全国の銘酒を、ワインはヨーロッパ産をそろえており、その内容は数々の酒好きをうならせるほどです。
ご飯とお味噌汁を食べ終えるころには満腹感とともに幸福感もいっぱいに。しかし、最後まで豪華に食事を振る舞うのが、こちらのおもてなし。人気カフェ店のメニューにありそうな「抹茶のパルフェ」のフィナーレにうれしい悲鳴をあげるはず。さっぱり味のマスカルポーネクリームと小倉パウンドケーキとの相性は抜群で、最後に到達する自家製の抹茶寒天が後味を爽やかに仕上げます。
デザートとは別に、湯上がり後にぴったりなパイナップルゼリーも用意されているなど、まさに至れり尽くせりな内容。
子ども用にはハンバーグやうどんなど、好みのメニューを集めた「キッズプレート」を特別にいただけます。生魚が苦手なら焼き魚に変更したり、市販のベビーフードと手作りを組み合わせたりと柔軟な対応。ベビーフードを温めてくれるサービスも頼めます。
やわらかな灯りに照らされる夜
地元の美食を堪能したら、窓の向こうは一気に夜の世界。やわらかな灯りに包まれての露天風呂も格別です。川の流れる音に耳を澄ませてしばらく目を閉じてみると、心が落ち着きこの上ない心地のよさを覚える自分に気づきます。
中庭では夜になるとライトアップが始まり、その奥には満点の星も見られます。きれいな水が流れる川沿いとあって、例年6月頃はホタル観賞にも期待。初夏の新緑、秋の紅葉、冬の桜と、河津の一年は彩り豊か、また別の季節にも訪れたい気持ちになります。
夜はステンドグラスに灯りがともるロビーもおすすめ。ガラス工芸の繊細な絵柄が色鮮やかに輝き、昼間とは違う幻想的な空間が広がります。
わさび丼など、ご当地グルメが詰まった朝食
穏やかな緑の光を浴びながらの起床。起きてすぐに露天風呂に入れる贅沢。寝起きの身体がじんわりと温まり、優しい気分で一日を始められます。
朝食は8時半もしくは9時の時間から選べます。夕食に引き続き、朝食もうれしくなるほどの品数です。甘味と酸味が調和された甘夏のジュースは、さわやかな気分になれる一杯。二日酔いに効くしじみのお味噌汁からは、さり気ない優しさが感じられます。
焼き魚は、鯵(あじ)の干物とアマゴの2つから選択可能。アマゴは鮭と同じ種類に属し、見た目もそっくり。味にクセがなく、ふっくらとした食感が特徴。噛むごとにゆるりと塩気が感じられ、ご飯が進みます。
そして、河津に訪れたなら外せない「わさび丼」も朝食でいただけます。冷たく清らかな水で育った河津のわさびは、江戸時代より栽培が始まり、今でも特産品として有名。TVドラマ『孤独のグルメ』にも登場したご当地メニューです。食べる直前に、自分で本わさびをすり下ろして、わさび丼に添えます。
静岡のブランド米「きぬむすめ」に自家製おかかを好きなだけかけて、最後に新鮮なわさびをのせたら、わさび丼の完成。噛みごたえのある白米に、おかかがほろほろと口の中でほぐれ、わさび特有のつーんとした辛さが全体の味を引き締めるという、素材の良さなしでは成立しないおいしさを味わえます。
この日の朝食のデザートはレアチーズケーキ。濃厚なクリームがわさびの後味を和らげ、最後の最後まで心身ともに満たされる料理のフルコースをいただきました。
森林浴に滝巡りとチェックアウト後も自然を謳歌
チェックアウトは朝食を終えてからも、一息つける11時。お茶やコーヒーを飲みながらゆっくりと身支度の準備ができます。
チェックアウト後のおすすめは、宿の名称にもある「河津七滝(かわづななだる)」。宿から徒歩で行ける近さで、河津の水の豊かさを体感できる場所です。7つの滝のなかの1つ「出合滝(であいだる)」は、河津川と沼ノ川が合流する滝。お部屋の露天風呂から眺めていた沼ノ川が、主流に合流する様子は、旅の締めくくりにふさわしい光景です。
河津七滝では、川端康成の短編小説「伊豆の踊り子」に登場する踊り子と青年のブロンズ像がある「初景滝(しょけいだる)」や、迫力の「大滝(おおだる)」なども人気の見どころスポット。時間のあるかたは、ぜひ7カ所の滝を巡ってみましょう。
「水鞠」に込められた想い
露天風呂横の渓流を借景とし、水音がBGMのように流れる「河津七滝 渓流温泉茶寮 水鞠(MIZUMARI)」。宿の名前を決める際、川は宿にとって不可欠な存在でした。「水に関連する言葉から、この宿を連想できるものを選びました。大きな水しぶきを意味する「水鞠(みずまり)」は瞬間的な状態で、これはお客さまと私たちの一期一会な関係と通じます。だからこそ、この出会いを大切に、少しでも満喫してほしいという願いを宿の名前に込めたのです」と話す向谷さん。
川に寄り添うお宿は、今日もお客さま一人ひとりに合わせて、丁寧におもてなし。決まった形を持たない、その柔軟な姿勢はまるで変幻自在な水に似ています。
河津七滝 渓流温泉茶寮 水鞠(MIZUMARI)
- 住所
- 静岡県賀茂郡河津町梨本424-2
- アクセス
- 伊豆急行「河津駅」から路線バス乗車、約25分「河津七滝」バス停下車で徒歩約5分
または「河津駅」からタクシーで約15分 - 駐車場
- 20台(無料/予約不要)
- チェックイン
- 15:00(最終チェックイン:18:00)
- チェックアウト
- 11:00
取材・写真・文/浅井みら野