京都府京都市伏見区にある「伏見稲荷大社」は、全国に約3万社ある稲荷神社の総本宮。名前の由来は、五穀豊穣を意味する「稲が成る」から「イナリ」という名がついたと言われています。近年では商売繁昌や家内安全、芸能上達の神様として人気ですが、1589(天正17)年に豊臣秀吉が母・大政所(おおまんどころ)の病悩平癒祈願(びょうのうへいゆきがん)をしたという歴史あるパワースポットでもあります。また、伏見稲荷大社といえば朱色の鳥居が立ち並ぶ「千本鳥居」が有名ですが、その奥にある稲荷山も見逃せないパワースポットの宝庫なんです。
千本鳥居を通って、伏見稲荷大社を散策
朱色の鳥居が並ぶ「千本鳥居」は、どこから写真を撮っても絵になる!
JR京都駅から伏見稲荷大社のあるJR「稲荷」駅までは、たったの2駅。駅の目の前がもう神社の参道で、「京都」駅から10分ほどで到着できるアクセス抜群の神社です。
伏見稲荷大社に到着し、本殿でお参りしてから奥に進むと、いよいよ千本鳥居の登場! この千本鳥居の美しい朱色は、生命・大地・生産の力を稲荷大神の御霊の働きとして表現した色です。浴衣や着物を着て朱の鳥居の前で写真を撮ると、とても写真映えするため、あちこちでスマホやカメラで撮影している風景に遭遇します。
昼間は神社のご神木である杉と鳥居の合間からやわらかい光が差し込み、夜間は鳥居の途中にある吊り灯ろうに幽玄な光が灯ります。少し雨が降っても、ご神木の杉と鳥居で雨が遮られるため、たっぷり散策を楽しめるのも魅力です。
たくさんの鳥居があるのは、「願いが通る(通った)」という、崇敬者から稲荷大神様へのお礼として奉納されているから。現在では境内に約1万基もの鳥居が立ち並びます。20年ほどで全て建て替えられているため、どこを見てもきれいな鳥居が続きます。
鳥居とともに境内に祀られているのは、神様のお使いで眷属(けんぞく)と呼ばれる白狐(びゃっこ)。この白い色は、目に見えない透明で特別な力を持つキツネを表しています。キツネは穀物の天敵であるネズミを食べてくれるため、五穀豊穣の神様のお使いと考えられています。
そのキツネがくわえているものには、色々な種類があります。稲穂は五穀豊穣、鍵は大切なものを収蔵する蔵の鍵、巻物は知恵、宝珠(ほうじゅ)は霊徳を象徴しています。
「奥の院(奥社奉拝所)」で、心願成就を占う!
大鳥居から千本鳥居を抜け、奥の院で知られる「奥社奉拝所」までは15分ほどで到着します。奥社奉拝所にはこのような置くタイプの鳥居もたくさん奉納され、生い茂った木々を見上げると森の神々しい雰囲気を感じます。
ここでぜひ試していただきたいのが「おもかる石」。
心の中で願いを唱えてから、灯ろうの上の石をゆっくりと持ちあげてみてください。思ったよりも軽ければ願いは叶い、重ければ難しい、という意味を持つ試し石となっています。
伏見稲荷大社
- 住所
- 京都市伏見区深草薮之内町68
- 電話番号
- 075-641-7331
パワースポットの宝庫!稲荷山を「お山」しよう!
伏見稲荷大社奥にあるディープスポット「稲荷山」
「千本鳥居を中心に短い時間で回りたい」という方には奥社奉拝所まででも十分ですが、実はこのあとが伏見稲荷大社の醍醐味!
海抜233メートル、「東山三十六峰」のひとつに数えられる稲荷山は、甲子園球場の22倍、約87万平方メートルもの広さを誇り、立ち寄っておきたいパワースポットの数々が点在しています。
昔から、京都では稲荷山を参拝することを「お山する」といいます。稲荷山に行くときは、4キロメートルほどに渡ってゆるやかな階段が続くため、ハイキングをするときと同じような準備をして行きましょう! 途中からトイレもなくなりますのでご注意ください。
所要時間は休憩時間を含め4時間程度。健脚で休憩なしでも大丈夫! という場合は、3時間程度を想定するとよいでしょう。
「根上がりの松(膝松さん)」で、株と健康運を上げる!
千本鳥居を抜けてすぐそばにある根上がりの松。根っこが上がっていることから、「株の値が上がる」と証券を扱う方に人気のスポットです。根っこの下をくぐると、「膝がよくなる」など腰痛や神経痛がよくなるとも言われています。
歩いていると気づくと思いますが、山に沿うように「お塚」と呼ばれる神様の祠(ほこら)が密集しているのも稲荷山の特徴です。
「新池(谺ケ池・こだまがいけ)」で、探し人の手がかりを得る!
根上がりの松からおよそ5分、次に見えてくるのは新池(しんいけ)です。別名「谺ケ池(こだまがいけ)」と呼ばれており、手を打ったときのこだまが返ってくる方向に探し人の手がかりがあると言われています。
新池のほとりにある熊鷹社(くまたかしゃ)ではローソクを奉納すると、火打石を打ってお清めをしてもらえます。
三ツ辻のお酒の神様「大松大神」へ
熊鷹社から三ツ辻までは、約10分。瓢箪(ひょうたん)の形からお酒の神様とあがめられている、大松大神のお塚に到着します。
京都市内を一望! 四ツ辻のお茶屋でひと休み
三ツ辻から約15分ほど参道を上った四ツ辻では、稲荷山から唯一京都市内を見渡す景色を堪能できます。伏見稲荷大社の入口にある大鳥居から四ツ辻までは、およそ1時間前後。眼下に広がる京都の街を撮影している参拝者も多く、稲荷山の高さを実感できる場所です。
山頂へ向かうどのルートもこの四ツ辻を経由します。ベンチがあって休憩ができる場所はここだけなので、「薬力社」や「御劔社」などの見どころを巡りながら頂上を目指す「右回り」と、「三ノ峠」などを巡ってまずは頂上を目指す「左回り」ルートのどちらから山頂を目指すのか、体力と相談しながらルートを決めましょう。
今回は、神道の基本ともされる「右回り」ルートを選びました。
休憩する場合には、テレビ番組『秘密のケンミンSHOW』でも紹介された、俳優・西村和彦さんのご実家の四ツ辻の茶屋「にしむら亭」へ。
定番はうどんにお稲荷さんが付いた「稲荷山セット」(900円)です。
稲荷寿司はネズミをかたどっており、神様の使いのキツネに好かれるために作られたという説や、キツネの好きな油揚げを使ったという説もあるそうですよ。
夏に食事以外で利用する場合は、季節限定のかき氷がおすすめ! 甘酒や黒砂糖を使った、ほかでは味わえない大人向けのかき氷があります。
にしむら亭
- 住所
- 京都府京都市伏見区稲荷山官有地四ッ辻
- 営業時間
- 月〜金10:00~17:00(L.O.16:00)、土日祝9:00〜17:00(L.O.16:00)
- 定休日
- 不定休 ※主に金曜日
- 電話番号
- 050-3491-1894
稲荷山の山道には、ほかにも味わいたいスイーツがあります。
新池にある創業1757(宝暦7)年の老舗和菓子店「竹屋」の五福餅(150円)、「三徳亭」で売られている大谷茶園の稲荷山限定抹茶最中アイス(300円)、御劔社(みつるぎしゃ)の玉露ようかん(160円)は、道中の疲れを癒してくれます。
「眼力社(がんりきしゃ)」で、目利き力を上げる!
四ツ辻から山頂を目指し、右回りのルートを取って10〜15分ほど行くと、青竹をくわえた狐の像に出会えます。
この眼力社は、病気平癒や商売の目先が利く(心眼、先見の明)・願力(入試、就職、結婚)に御利益があると言われています。
向かいにある「眼力亭」には、変わったお土産があります。中でも「願力さんの夢実現・願力ノート」(600円)は、夢を書き留めておくことで願望達成の近道になると言われています。使うほどに仕事や勉強に忍び寄る雑念を消し去ってくれるという「目標達成・眼力さん消しゴム」(400円)もありますよ。
眼力亭
- 住所
- 京都府京都市伏見区稲荷山官有地19 眼力社前
- 営業時間
- 夕方早く閉店
- 定休日
- 無休(ただし不定期にて定休)
- 電話番号
- 075-641-6051
「薬力社(やくりきしゃ)」で、御神水をいただこう
眼力社から約10分のところにある「薬力社」。ここには健康長寿の湧き水があり、中には健脚を願う草鞋(ぞうり)もたくさん奉納されています。
また、すぐそばには喉によいとされる「おせき社」もあります。本来はお関稲荷という関所の役目を果たしていましたが、歌舞伎俳優が喉がよくなるように願掛けしたところ痛みが消えたことから、現在では病気平癒を願う場所になっています。
おすすめは、薬力社の向かいにある薬力亭の御神水から作られた「薬力コーヒー」(400円)。おみやげに京都産の「薬力健康たまご」(80円・ほうじ茶付き)も人気です。
薬力亭
- 住所
- 京都府京都市伏見区稲荷山官有地17
- 営業時間
- 8:00〜18:00
- 定休日
- 無休
- 電話番号
- 075-641-3846
謡曲の題材にもなった、「御劔社(みつるぎしゃ・長者社)」
薬力社から10分ほどで到着する御劔社(長者社)。神聖な場所とされる劔石(つるぎいし)は、別名「雷石」と呼ばれている約3メートルもの大きな石です。
剣を鍛える「焼刃の水(やいばのみず)」が、お塚の拝所の裏手にあります。この御神水と稲荷山の粘土質の土を使い、三条小鍛冶宗近(さんじょうこかじむねちか)は稲荷大神の神使(しんし)の白狐が相槌して「小狐丸(こぎつねまる)」という剣を作ったと言われています。
この話は謡曲『小鍛冶』になり、現在でも親しまれています。
いよいよ山頂!「一ノ峰上社 (いちのみねかみしゃ)」
御劔社から山頂の一ノ峰上社までは、約15分。ここまで来れば、いよいよ標高233メートルの頂上に到着です!
一ノ峰上社は、古来より末広大神と言われ、あつい信仰を集めています。帰りは二ノ峰、間ノ峰、三ノ峰、四ツ辻を通り、下山します。
最強の恋愛成就のパワースポット「荒木神社」
稲荷山の山頂から降り、三ツ辻を通って、最後にぜひ立ち寄りたいパワースポットが「荒木神社」。恋愛だけではなく、求人や就職など、人との良縁を結んでいただけるパワースポットです。
縁結びの神様「口入稲荷大神(くちいれ いなり おおかみ)」をかたどった口入人形は、夫婦(めおと)と伴(とも)の三体の眷属(けんぞく)です。
口入人形(初穂料5,000円・三体一組)は、お願いが叶ったらお礼にお返しに来ます。新しい人形が所狭しとたくさん奉納されているということは、たくさん願いが叶った人がいる証拠ですね。
大人気のキツネのおみくじも。外国人の参拝客が多く、おみくじは4カ国語に対応しています。
お稲荷さんに関するよくある質問は、8カ国語訳で記載された用紙があります。また、翻訳機の「ポケトーク」も常備するなど、海外の観光客にも丁寧に対応しているのがよく分かります。
授与所にある荒木神社のグッズをデザインしている奥村さん。手ぬぐいや扇など、どれもおしゃれなデザインです。
ご縁をいただきにすぐ行きたい! という方は、伏見稲荷大社の本殿の左側、境内を抜ける道を通れば約5分で到着します。現在は裏参道と言われていますが、昔はこの荒木神社が稲荷山の入口でした。
伏見稲荷大社から来る場合は、「大日本大道教」の境内にある竹の鳥居の隣に荒木神社がありますよ。
京都伏見稲荷山 荒木神社
- 住所
- 京都府京都市伏見区深草開土口町12-3
- 時間
- 参拝自由
[神饌授与所]9:00〜17:00 無休
- 電話番号
- 075-643-0651
伏見神社周辺で楽しみたい、おすすめグルメ
伏見稲荷大社の周辺には、定番の参道茶屋からおしゃれなカフェや屋台までグルメスポットがいっぱい! 中でもおすすめの3軒をピックアップしてご紹介します。
外国人にも人気の映えるカフェ「KAFE INARI」
荒木神社の近くにあるおしゃれなカフェ「KAFE INARI」。
持ち帰り用のカップには、キツネのしっぽがデザインしてあってカワイイ!
目にも鮮やかなカフェプレートをはじめ、メニューはどれも写真映えするものばかり。中でも驚きなのは「焼きアイス」(2本セット1,200円)。バーナーであぶってもらった後、さらにミニ七輪の上でも好みの焼き加減になるまでじっくりあぶってくれます。
アイスなのに溶けない秘密は葛粉。少ない水分で固まるため、焼いても形が崩れないのだそう。焼かずにそのまま食べればアイスですが、焼くことで冷たいときよりも葛餅のような、ねっとりとした食感や旨味が楽しめます。
KAFE INARI
- 住所
- 京都府京都市伏見区深草開土町20
- アクセス
- JR「稲荷」駅より徒歩約7分
- 営業時間
- 9:30〜17:30
- 定休日
- 無休
- 電話番号
- 075-643-5217
新感覚!魅せる和菓子「まるもち家」
伏見稲荷大社前の参道にある「まるもち家」。「まる」には「金銭」と「受験生の答案用紙に〇(丸)をいただけるように」という意味があり、商売繁盛と学業成就にという願いを込めたお餅「まるもち」からお店の名前が付けられています。
つぶあん、みたらし、抹茶の「まるもち」は5個500円。3種類はどの組み合わせでもいただけます。
夏の人気商品は、天然水と寒天で作った「水まる餅」(500円)。水風船の中に入っているのを、割ってからいただきます。
まるもち家伏見稲荷本店
- 住所
- 京都府京都市伏見区深草一ノ坪町26-3
- アクセス
- JR「稲荷」駅より徒歩約3分
- 営業時間
- 10:00〜17:00
- 定休日
- 不定休
- 電話
- 075-643-6381
稲荷山めぐりのランチやお土産に最適!「千本いなり」
伏見稲荷大社へ行くにはJRだけでなく、大阪方面にアクセスしやすい京阪電車も便利です。京阪「伏見稲荷」駅には、おいなりさんが満載! コインロッカーや自動販売機にも、白狐がデザインされています。
駅の改札のすぐ外にある「千本いなり」は、いなり寿司の持ち帰り専門店。ショーケースのすぐ右隣がカウンターになっているので、購入したいなり寿司をその場で食べることもできます。
「季節限定うなぎいなり」や「蓮根と青山椒」など、食べたことのないメニューがたくさん! 季節の野菜が入った「わさびいなり」にはマイルドなワサビが使われていて、辛い物が苦手な方でも大丈夫です。
左から「季節限定うなぎいなり」(302円)、「わさびいなり」(129円)、「牛肉時雨煮いなり」(270円)。彩も鮮やか。
伏見稲荷 千本いなり
- 住所
- 京都府京都市伏見区深草一ノ坪町33 京阪伏見稲荷駅構内
- アクセス
- JR「稲荷」駅より徒歩約4分
- 営業時間
- 10:00~18:00
- 定休日
- 無休
- 電話番号
- 080-7997-7518
ほかにも魅力たっぷり!ディープな伏見稲荷大社と稲荷山めぐり
伏見稲荷大社の近くには、ほかにも『竹取物語』ゆかりの地と言われる「伏見神宝神社」や、木彫りの喝法師のお腹から引く喝おみくじがある「間力大神」など、見どころ満載。
7月に催されるたくさんの提灯で飾られた「本宮祭(もとみやさい)」は、浴衣姿でキツネのお面をつけて行きたくなるお祭りです。
冬には、雪化粧した白い鳥居に遭遇できるかもしれません。季節を変えて何度でも「伏見稲荷大社」を訪れてみませんか。
取材・撮影・文/佐々木美佳
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