
※この記事の内容は2021年8月公開のもを一部含みます。2024年9月時点で変更のあった箇所に訂正を加えています。期間・営業時間は状況によって異なる場合があります。ホテル公式ホームページをご確認の上、ご利用ください。
歴史ある温泉地・箱根で唯一無二のクラシックホテルとして愛され続けている「富士屋ホテル」。創業から140年余りの時を刻む歴史あるホテルですが、約2年間の大規模な改修工事を経て2020年7月にグランドオープンしました。この記事では富士屋ホテルの深い歴史と温泉を堪能しつつ、新しい魅力もすべて楽しむ1泊2日モデルプランをご紹介します。
目次
クラシカルな趣はそのままに。リニューアルした「富士屋ホテル」

1878年、日本初の本格的なリゾートホテルとして箱根・宮ノ下で開業した「富士屋ホテル」。外国人客専用のホテルだった時代もある富士屋ホテルは世界中から多くの外国人を迎え、ヘレン・ケラー、チャーリー・チャップリン、ジョン・レノン&オノ・ヨーコ夫妻など数々の著名人も宿泊しました。

1891年に建てられた「本館」をはじめ、敷地内各所の耐震補強と改修工事が2020年7月に完了。クラシカルな雰囲気と格式が感じられる「富士屋ホテル」ならではの佇まいはそのままに、より快適で安全な滞在が叶います。
バス停の目の前。「富士屋ホテル」へのアクセス

富士屋ホテルへの行き方は箱根湯本駅よりバスで約15分。「ホテル前」バス停で下車し、徒歩約2分で到着します。車で行く場合、無料で駐車場が利用可能。入る前から歴史を感じさせる存在感に圧倒され、滞在への期待が高まります。
チェックイン前にラウンジで名物のアップルパイを

チェックイン時間より少し早めに到着し、広々としたラウンジでティータイム。大きな窓から光が差し込む東側の席でいただきます。ここは2020年のリニューアルで、1977年以前にあった「オーシャンビューパーラー」を復元した場所。当時は相模湾が望めたことからその名が付き、開放的な空間でお茶を楽しめます。

ラウンジで味わいたいのが名物のアップルパイ。かつてジョン・レノンも好んで食べたというホテルの名物で、シナモンを効かせたりんごたっぷりの贅沢なパイです。温製・冷製はお好みで。紅茶は優雅なNINA'Sの「マリーアントワネット」がりんごの香りとよく合います。
特別なルームキーを受け取って。フロントでチェックイン

ラウンジに併設されているフロントで15:00にチェックイン。フロントカウンターには、ケヤキの一枚板に見事な彫刻が施されています。源頼朝が富士の裾野で行なった「富士の巻狩」が題材となっているそう。

富士屋ホテルは多種多様な客室があり、今回宿泊したのは「花御殿ヘリテージルーム「桜」」。花御殿は1936年に建築され、外国人から「フラワーパレス」とも称された富士屋ホテルの象徴的な建物です。全40室すべての客室に花の名が付けられ、それぞれの花がデザインされたルームキーを受け取り部屋へと向かいます。
ヘレン・ケラーも宿泊。花御殿ヘリテージルーム「桜」

花御殿ヘリテージルーム「桜」はヘレン・ケラーも宿泊した花御殿を代表する客室の一つ。カーペット、絵画など、随所に桜のモチーフがあしらわれ、クラシカルな雰囲気に華を添えています。

レイアウトはベッドルーム、リビング、バスルーム(トイレ別)。和洋折衷のインテリアで、富士屋ホテルの花御殿だけが持つ独特の優美さを醸し出しています。


客室では家具にもご注目を。リニューアルに伴って家具は職人の手によって修復され、修復が難しく新調した家具にはヴィンテージ家具に合わせて「扇」のデザインが施されています。
椅子は革が張り替えられ新品同様に。椅子の足には、よく見ると「食堂」の文字とシリアルナンバーが刻まれており、ひとつひとつのモノが大切に使われていることが分かります。歴史を積み重ねたヴィンテージ家具ならではの趣にも注目です。

デスクに置かれた小箱には富士屋ホテルオリジナルのステッカーやハガキが用意され、お土産として持ち帰り可能。花御殿に宿泊したゲストだけの特典が、客室の花をモチーフにした絵ハガキです。桜が描かれた絵ハガキは、憧れの花御殿へと宿泊した大切な思い出になります。

花御殿ヘリテージルーム「桜」は2階の角部屋で、美しい眺めも特徴。箱根の自然を堪能しながら、本館を目の前に望む絶好のロケーションです。

滞在中は館内着でリラックス。全客室に紺×グレーの着心地の良い館内着が用意されており、スパ・宿泊者専用ラウンジ・ギャラリーコージーはこの館内着を着て利用可能。白いパジャマは花御殿ヘリテージルーム「桜」やジュニアスイートルームなど、特別な客室だけに準備されています。

バスルームはバスタブ+シャワーブース付き。富士屋ホテルでは全客室に宮ノ下天然温泉が供給されているので、スパのほか客室でも箱根の湯を楽しめます。

バスアメニティはリニューアルにあわせて商品開発をした富士屋ホテルのオリジナルアイテムで、肌、髪、地球環境に優しい植物由来成分を主に配合しています。

客室探索を楽しみ、ドリンクでほっと一息。ドリンクマシーンではコーヒー、紅茶、緑茶が選べ、別途リクエストするとカフェインレスコーヒーも無料でいただけます。
花御殿のほかにも選べる多彩な客室
富士屋ホテルには「本館」「西洋館」「花御殿」「フォレスト・ウイング」という4つの建物があり、それぞれ異なる魅力で滞在を楽しめます。
本館「ヒストリックジュニアスイート」


本館の「ヒストリックジュニアスイート」は白を貴重とした気持ちのよいデザインで、シックな色合いのファブリックが特徴。ヒストリックジュニアスイートの14号室は夏目漱石も宿泊しています。
バスルームには日本の寺社建築でよく見られる火灯窓が設置。リニューアルでは客室の水回りも新しくなり、より快適に過ごすことができるようになりました。
⻄洋館「ヒストリックデラックスツイン」


⻄洋館「ヒストリックデラックスツイン」のお部屋はピンクの壁が愛らしい雰囲気。この壁は改修工事中にかつての壁が桃色の漆喰壁だったことが発覚し、その色を再現したのだそう。バスルームには、映画に出てくるようなかわいい猫足のバスタブも。宮ノ下天然温泉の湯浴みを楽しみながら、優雅なバスタイムを叶えてくれます。
フォレスト・ウイング「プレミアスイート」


敷地内の高台に位置するフォレスト・ウイングは、箱根の自然をより身近に感じられるお部屋や、箱根登山鉄道が眺められるお部屋も。また、館内唯一の半露天風呂を備えたモダンなスイートルームがあるのも特徴です。プライベートな湯浴みを楽しみ、気の向くままにのんびりとテラスで涼む贅沢なひとときが味わえます。
日本初の室内温泉プール、読書ができる宿泊者限定ラウンジへ

荷ほどきが済んだら花御殿の屋内プール&ジム「マーメイド」へ。ここは日本初の室内温泉プールで、宮ノ下天然温泉を使用しています。プールの奥にはフィットネスマシンを備えたジムもあり、体を動かすのも良い過ごし方。

汗を流した後は花御殿の「ギャラリー・コージー」でほっと一息。ここにはC.B.バーナードや稲垣稔次郎など、富士屋ホテルと箱根の風景を描いた芸術家の作品が展示され、コーヒーやソフトドリンクを楽しみながら鑑賞できます。

ソファでゆっくりとくつろぎたい方はフォレスト・ウイング2階の「宿泊者専用ラウンジ」へ。富士屋ホテルの歴史を学べる本や箱根に関連する本など約600冊の和書と洋書が並び、静かな空間で読書も楽しめます。

ここには花御殿の各客室にちなんだ本も並んでいます。例えば、「桜」のブックカバーがかけられた本は『桜の樹の下には』が収録された『梶井基次郎全集』。「桜」の客室に泊まり、「桜」をモチーフにした小説を読むといった、富士屋ホテルらしい粋な過ごし方もおすすめです。
絶品の一言。メインダイニングルーム・ザ・フジヤで夕食

夕食は「メインダイニングルーム・ザ・フジヤ」へ。1930年のオープン以来人気を博してきたレストランで、上質なフランス料理を堪能できます。内装は3代目社長の山口正造にゆかりのある日光東照宮や東南アジアをモチーフにした彫刻などが散りばめられ、訪れる人を目でも楽しませてくれます。
日本アルプスの高山植物636種が描かれた天井もザ・フジヤの見どころ。リニューアルに伴い京都の川面美術研究所が修復し、美しい色合いが復元されました。

ユニークな彫刻がトーテムポールのような鬼の顔。これは3代目の山口正造が従業員を見守り、お客様に良いサービスを提供するようにというメッセージが込められているそうです。




季節のコースは3種類から選択でき、夏の一例がこちら。夏らしく涼やかな前菜からスタートし、デザートまで全8品で洗練されたフレンチを楽しめます。低温湯煎でじっくりと火入れし、フライパンで外側をカリッと焼き上げた「牛フィレ肉のポワレ」は絶品の一言。「白桃のコンポートにバジルのアイスクリーム添え」にはホテル内のハーブガーデンで育ったハーブが添えられています。
<夏のフランス料理コースディナー一例>
・トマトのロワイヤルに帆立貝のタルタル
・季節野菜と魚介ズッキーニのアビエ仕立て赤ピーマンのクーリとピストゥー
・トウモロコシの冷製スープ 又は コンソメスープ
・舌平目のワイン蒸し雲丹入りクリームソース
・お口直しのグラニテ
・牛フィレ肉のポワレにグリーンアスパラのポッシェ ベアルネーズソース
・白桃のコンポートにバジルのアイスクリーム添え
・小菓子とドリンク(コーヒー、エスプレッソ、紅茶、ハーブティー)
フォレスト・ウイングの最上階スパで温泉を満喫

食事後は高台に立つ「フォレスト・ウイング」最上階・6階にあるスパへ。江戸時代に箱根七湯に数えられていた宮ノ下温泉の湯を内湯と半露天風呂で満喫できます。冷え性、筋肉もしくは関節の慢性的な痛みやこわばり、胃腸機能の低下などに効能があるといわれる、ナトリウム塩化物泉。サウナも併設されており、温泉と合わせてリフレッシュできます。
スパからは、美しい箱根の景色や食堂棟の昇天閣にある昇り龍も眺められます。夜だけでなく、明るい時間帯に湯浴みを楽しむのもおすすめです。
深い癒やしへと誘う。リラクゼーション施設「禅」

1日の最後はリラクゼーション施設「禅」へ。寺院をイメージした美しい和の空間で、フェイシャル・ボディとさまざまなメニューを受けられます。カウンセリングを丁寧に行なってくれるため、「リラックスしたい」「ひどいコリをほぐしたい」といった一人ひとりの要望に応じたマッサージで深い癒やしへと誘ってくれます。
朝食はフルサービスブレックファストに舌鼓

ぐっすりと眠り気持ちよく目覚めたら、メインダイニングルーム・ザ・フジヤで朝食を。メニューは「ブレックファスト フジヤ」「ペストリーブレックファスト フジヤ」「サラダブレックファスト フジヤ」から選択。「ブレックファスト フジヤ」は卵料理がメインで、クラシックホテルならではの朝食を味わえます。

朝食のモーニングブレッドはホテルのベーカリー&スイーツ「ピコット」で毎朝焼き上げているもの。焼きたての食パン、クロワッサン、レーズンパンはどれもおいしく、富士屋ホテルの宿泊を優雅に彩ってくれます。
ハーブガーデンにも訪れて。約5,000坪の庭園で朝の散歩

お部屋に戻る前に庭園で朝の散歩を。7,602坪の敷地を持つ富士屋ホテルですが、そのうち約5,000坪が広大な庭園。庭園の池や滝の水は箱根の湧き水で、水のせせらぎ、鳥の声に耳を傾けながら気持ちよく散策できます。
中心にある水車は「営繕さん」の手づくり。営繕さんとは館内外の備品の制作・修復などを行う施設管理のスタッフで、富士屋ホテルの歴史において欠かせない存在です。

四季に応じて移りゆく花々も庭園の魅力。春は桜・藤、夏は紫陽花・山百合、秋は紅葉、冬は椿と1年を通してさまざまな花が咲き誇ります。

庭園内にあるハーブガーデンは、2021年5月に誕生した新施設。ローズマリー、ラベンダー、セージなど10種類以上のハーブが栽培され、一部はホテルの食事でも使用されています。
思い出をお持ち帰り。ベーカリー&ショップでお土産選び

散策後はホテル内のベーカリーやショップでお土産選び。ベーカリー&スイーツ「ピコット」では富士屋ホテルのベーカリーとペストリーのスタッフが焼き上げる手づくりのパンやスイーツを購入できます。

一押しはクラシックカレーパン、レーズンパン、食パン。ホテルのラウンジで提供している名物のアップルパイも販売しており、お土産に持ち帰ることも可能です。

ホテル・ショップでは、富士屋ホテルでの滞在を家でも楽しめるアイテムをお土産にすることもできます。富士屋ホテルの象徴である花御殿の図案をポーセリンに蘇らせた「花御殿ポーセリンアート」や、客室にも置かれていたロゴ入り木製の「目覚まし時計」は、どちらも特別な一品です。

他にも、ホテル内で手作りされたクッキーの詰め合わせ「富士屋ホテルホームメイド 本館焼き菓子詰め合わせ」(数量限定)もおすすめ。異なる味と食感を味わえる組み合わせが楽しめ、お土産や贈り物にもぴったりです。
チェックアウト後は「ホテル・ミュージアム」へ

11:00のチェックアウトを済ませたら、宿泊者以外も入れる「ルー・ド・ラ・ペ」や「ホテル・ミュージアム」へ。富士屋ホテルの創業から現在に至るまでの貴重な史料が展示され、まるで美術館のように楽しめます。

「ホテル・ミュージアム」は箱根町の重要文化財「レジスターブック(宿帳)」、営繕さんが手がけた看板作品など見どころたっぷり。展示エリアの奥で流れている平成の大改修の映像も必見です。

積み重ねてきた歴史と最高のサービスでゲストを心から楽しませてくれる「富士屋ホテル」。一つの彫刻をとってもその背景には深い歴史があり、スタッフと交流しながらストーリーを聞くのも富士屋ホテルの楽しみ方です。新しくなった唯一無二のクラシックホテルへ訪れてみませんか?
富士屋ホテル
- 住所
- 神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下359
- アクセス
- 電車:箱根登山鉄道「宮ノ下駅」より 徒歩約7分 / 小田原厚木道路「箱根口IC」より国道1号線経由約20分 (11㎞)
- チェックイン
- 15:00
- チェックアウト
- 11:00
- 駐車場
- 有り(無料)
取材・撮影・文/小浜みゆ