羽黒山で撮りたい絶景とプロのテクニックを聞きました!
出羽三山(でわさんざん)は、山形県にある羽黒山(はぐろさん)、月山(がっさん)、湯殿山(ゆどのさん)の総称。それぞれ、現世の幸せを祈る羽黒山(現在)、死後の安楽と往生を祈る月山(過去)、新しい生命の誕生を表す湯殿山(未来)とされ、三山を巡ることは江戸時代に「生まれかわりの旅」として広がり、「お伊勢参り」と並んで人気を博しました。
以降、修験道を中心に山岳信仰の場として多くの参拝者を集めてきた出羽三山。そのうちの羽黒山には、三神を合わせて祀る大社殿「三神合祭殿(さんじんごうさいでん)」があり、ここをお参りすれば三神をお参りしたことになるとされています。今回は風景写真家の高橋智裕さんが、この羽黒山の絶景スポットと撮影テクニックを紹介します。
写真家
高橋 智裕(たかはし ともひろ)さん
1973年4月生まれ、福島県いわき市出身。現在、長野県上田市在住。JPU 協同組合日本写真家ユニオン理事/JSPA 日本風景写真家協会会員。内閣官房・内閣府主催 伊勢志摩サミットフォトコンテストで優秀賞を受賞し、首相官邸にて表彰を受ける。「写真」は「写心」の気持ちを忘れることなく、自然との共存、自然からの声をテーマに、情景的な風景を求めて全国をまわり、作品作りに尽力している。防災啓発活動をする「防災ジャーナリスト」としての顔も持つ。
目次
おすすめの絶景スポット【1】羽黒山大鳥居
まずは、山形県の鶴岡市街地から羽黒山を目指します。道中、雪の多いこの地域では一面に広がる雪原風景を楽しめます。
このような雪原を撮影する場合、オートでそのまま撮ってしまうと、いわゆる露出アンダーの写真になってしまいます。露出補正でプラス1くらいを目安に撮影してみてください。
県道47号線を20分ほど進むと見えてくるのが、羽黒山大鳥居です。出羽三山参りの玄関口として1929年に建てられ、長い間、出羽三山のシンボル的存在に。2018年に建て替えられて従来よりも一回り大きくなり、現在の高さは約24mあります。
鳥居の近くにある駐車場に車を停め、大鳥居の後ろに伸びる坂道を絡めて撮影ができる場所まで、歩いて移動してみましょう。そうすると、大鳥居の迫力をより表現した写真を撮ることが可能です。また、望遠レンズを使用すると圧縮効果が出て、より迫力が増します。
羽黒山大鳥居
- 住所
- 山形県鶴岡市羽黒町玉川中国見
- アクセス
- 【車】山形自動車道「鶴岡」ICより約20分
おすすめの絶景スポット【2】隋神門
大鳥居からさらに進むと、出羽三山の神域の入り口に建つ、隋神門(ずいしんもん)に辿り着きます。まだ雪深い時期ですが、人と人がすれ違えるくらいの幅で除雪されているので埋もれることはありません。ただし、長靴を履いた方が安心です。
白銀の中に佇む赤い隋神門は、圧倒的な存在感を放っています。それを表現するため、中心に被写体を置く「日の丸構図」で撮影してみました。被写体に強い存在感がある時は小細工せず、日の丸構図で撮ってみるのがおすすめです。
隋神門をくぐると、ガラッと雰囲気が変わります。もうすでに羽黒山、月山、湯殿山で形成される出羽三山の神域に入り込んでいるのを実感します。
杉の木々に覆われ、現実から乖離したひっそりとした場所に、雪に覆われた社(やしろ)が点在。神々の存在を感じながら、滑らないよう注意して歩を進めましょう。
隋神門
- 住所
- 山形県鶴岡市羽黒町手向羽黒33
- アクセス
- 【車】山形自動車道「鶴岡」ICより約30分
おすすめの絶景スポット【3】羽黒山五重塔
雪と杉の巨木に覆われた参道をしばらく歩くと、その間から巨大な建造物が見えてきます。東北最古の塔、国宝の羽黒山五重塔です。
平将門が創建し、現在の塔は約600年前に再建されたと言われています。カメラを構える前に近くまで行き、自分の目で見上げ、感じてみてください。高さ約29mの木造建築の大きさに圧倒されるはずです。
この塔を撮影する時は、さまざまな構図を試してみましょう。広角レンズを使い、下から仰ぎ見てパース効果を狙ったり、望遠レンズで塔の一部を切り取ったり、さらに、標準レンズで見たままの雰囲気を写し込んだり。露出に気をつけながら、お気に入りの五重塔を見つけてください。
そうしているうちに、あっという間に時間が過ぎていってしまいます。それほど感動する風景です。
羽黒山五重塔
- 住所
- 山形県鶴岡市羽黒町手向羽黒山33-14
- アクセス
- 【車】山形自動車道「鶴岡」ICより約30分
おすすめの絶景スポット【4】出羽三山神社
五重塔を後にし、車で羽黒山有料道路を進んでいくと、羽黒山の山頂にある出羽三山信仰の中心、出羽三山神社に着きます。ちなみに、隋神門から羽黒山山頂へは、両側に大きな杉が並び立つ2446段の石段を上って行くことも可能です。ただ、徒歩で1時間~1時間半ほどかかるので覚悟が必要でしょう。山頂近くまで上ると、朱色の鳥居が見えてきます。
山頂の中心に建つのが、羽黒山、月山、湯殿山の三神をあわせて祀る三神合祭殿(さんじんごうさいでん)です。
境内には小規模な神社「末社」が多数点在しています。出羽三山神社は早朝、もしくは夕方に撮影するのがおすすめです。雨や雪の降った日の早朝などは、霧に覆われた、厳かな雰囲気を表現することができるでしょう。
神社などを撮影する場合、全体を入れたくなりがちですが、一部を切り取ってみると、とても印象深い写真に仕上げることができます。勇気を持って、美しいと感じた中でも最も惹かれた部分を切り取ってみてください。写真は引き算が大切です!
出羽三山神社
- 住所
- 山形県鶴岡市羽黒町手向字手向7
- アクセス
- 【車】山形自動車道「鶴岡」ICより約35分
- 詳細
- 出羽三山神社 公式ホームページ
アットホームな雰囲気の大衆喫茶でほっと一息
羽黒山で冷えた体を中から温めたい!おいしいものを食べたい!という方におすすめなのが、鶴岡市にある「喫茶まりーな」。店内は清潔感にあふれ、明るいイメージです。
雪化粧した鶴岡の街を眺めながら過ごすひとときは、心に刻まれるでしょう。パスタをはじめ、メニューも豊富で迷ってしまいます。
特におすすめなのは、牛肉たっぷり、ボリューム満点のカツカレー。長時間煮込まれたルーにゴロっとしたやわらかいブロック肉が入り、優しい辛さがじわりと広がって、寒さが吹き飛びます。
さらに注目は、上に盛られたとんかつ。約200gの分厚いとんかつはとてもやわらかくジューシー。このとんかつの厚さを強調するため、横から接写気味に撮影してみました。この時、意識したいのはピントです。スマホのオートフォーカスでは、指で画面をタッチした位置に自動でピントを合わせてくれます。また、露出は明るめにして撮るといいでしょう。
喫茶まりーな
- 住所
- 山形県鶴岡市のぞみ町1-8
- 時間
- 平日/11:00~20:00、日曜日/11:00〜17:00
- 定休日
- 木曜日
- アクセス
- 【電車・車】JR「鶴岡」駅より車で15分
おすすめの絶景スポット【5】山居倉庫
羽黒山からは少し離れますが、鶴岡市の北に位置する酒田市から、撮影スポットをもう一つご紹介。2021年3月に国指定史跡となった米保管倉庫の山居倉庫は、山形・庄内地方を代表する観光スポットです。三角屋根の倉庫とけやき並木を合わせた写真がおすすめです。
ここでは、しっとりとした情緒あふれる雰囲気の写真を撮りたいですね。撮影におすすめの時間は夕方以降。薄暗くなると倉庫がライトアップされ、とてもきれいです。
雨上がりや雪解けのタイミングでは、道の水溜まりに写り込む倉庫を入れると、おしゃれな写真が撮れますよ。
シャッタースピードが遅くなるため三脚を使用して、ノイズが出てしまうISO感度は低く抑えましょう。あとは、マニュアルフォーカスで画面を大きくして、ピントをきっちり合わせください。ピントは何よりも大切です。冬は防寒対策もしっかりして、訪れてみてください。
山居倉庫
- 住所
- 山形県酒田市山居町1-1-8
- アクセス
- 【電車・バス】JR「酒田」駅より庄内交通バスで「山居倉庫前」下車、徒歩すぐ
【車】日本海東北自動車道「酒田」ICより約15分 - 詳細
- 山居倉庫 - 酒田市
撮影・文/高橋 智裕