目の前に日本海の荒波が押し寄せる「千里浜なぎさドライブウェイ」は、日本で唯一、車でビーチを走ることのできる自動車道。ここでしか体験できない、憧れの砂浜ドライブをもっと楽しめる情報や走行の注意点、さらにドライバーにうれしいサービスや能登のグルメが味わえる道の駅など、周辺の情報もあわせてご紹介します。
道中も絶景!「千里浜なぎさドライブウェイ」どうやって行く?
石川県羽咋(はくい)市にある「千里浜なぎさドライブウェイ」は、全長約8キロメートルに渡って砂浜上を走れる車道。金沢からだと車で約40分北の方角へ進んだところにある、のと里山海道「今浜」ICが最寄りの出入り口。輪島方面からなら、北側の出入り口「千里浜」ICが便利です。
県外から来られる方は、北陸自動車道「金沢森本」ICから約30分、金沢外環状道路「津幡」バイパスを通り、のと里山海道「白尾」ICへ抜ければ千里浜に出ることができます。
のと里山海道も絶景!
途中に通る自動車専用道・のと里山海道も、景色が見もの。海沿いの高台(内灘町の丘陵)の上を通っているので、その車窓からははるか水平線の切れ目まで見渡せます。1987(昭和62)年には当時の建設省によって「日本の道100選」にも選定されています。
夏にはヨットやサーフィンを楽しむ人々が見え、夜には沖にイカ釣りの漁火がポツポツと灯ります。
2013年まで通行料が必要でしたが、現在は無料で通行が可能。金沢と能登をつなぐ重要な道路でもあるので、トラックなどの交通量も相当なものです。海からの横風だけでなく、景色の見とれすぎにはくれぐれも注意しましょう。
のと里山海道「今浜」ICを降りて道路の表示通りに進むと、いよいよ砂浜が見えてきました。強風や悪天候の日にはここに仕切りが設けられて、全面通行止めとなります。この坂を下りれば、いよいよ砂浜ドライブの始まりです!
一般的な自家用車でも走行可能。絶景ドライブスタート!
引き締まる砂が走りやすさのポイント
「千里浜なぎさドライブウェイ」の走行所要時間は、約15分。下り線の方が海に近く、上りと下りで景色の見え方が違うので、何度も往復する車も見られます。何度走っても無料で、24時間走行可能なのもうれしいところです(荒天時に通行止めとなる場合あり)。
砂浜を走るというと、特別な自動車でなければならないイメージがありますが、一般的な自家用車で走行が可能です。理由は、砂にあります。
日本海の激しい海流に揉まれ打ち寄せられた砂粒の大きさは、一般的な浜辺のものに比べて半分程度。しかも粒のサイズはほぼ均等で、水を含むと固く引き締まるのです。そのため、平坦な部分の走り心地は普通の道路とほとんど変わらないほど。濡れた砂は手ですくい上げてもサラッと落ちずに、泥のように塊で持ち上がるから驚きです。
地面の安定感から、バイクに原付や自転車、10トンを超えるような観光バスまで走行しています。乗馬クラブの馬もここを走ることがあるのだとか。
走っても停めても広がる絶景!
砂浜の安定感が分かったところで、さっそく走行を開始しましょう。見渡す限りフロントガラス越しに広がる砂浜、そして海! 窓を開けると潮風が吹き込んできて、ここが砂浜であることを感じさせてくれます。
走行中ももちろんですが、駐車して眺める景色も圧巻! 波打ち際に車を寄せて降りてみましょう。車線は設定されていないので、多くのドライバーが海側に車を寄せ、ゆっくり景色を眺めています。一面に広がる海をバックに、愛車と記念写真を一枚、なんてどうでしょう?
波打ち際に車を停めて窓を開けると、この風景! まるで車が海に浮かんでいるようですね。ただし、満潮時には、余裕をもって車を停めていても、気がついたら車のすぐ下に波が、なんてことも。潮位に気を付けて楽しんでください。
地元の方に教えてもらおう!砂浜ドライブのコツ
せっかく砂浜のドライブに行くなら、めいっぱい走行を楽しみたいもの。そこで、千里浜なぎさドライブウェイ北側の出入り口「千里浜」ICよりすぐの「道の駅のと千里浜」で駅長を務める野間仁(のまひとし)さんに、砂浜ならではの走行のコツや気をつけるべきことをお伺いしました。
――普通の道路と同じように走れるとはいえ、走行にあたっての注意点はありますか?
標識より陸側は、水分がほとんどなく乾燥していて、走るとタイヤが埋まる可能性があります。海水を含んで硬くなった砂の色が濃い部分を選んで、時速30キロメートル程度でゆっくり安全に走りましょう。
――特に慎重に運転をした方が良いスポットや時期はありますか?
まず、川が横切っている場所です。その部分は砂浜の下に川を通すためのコンクリート構造物があり、でこぼこしているので、運転はくれぐれも慎重に!
そして、夏場。千里浜は海水浴場でもあるため、遊泳期間中は車道が一部柵で仕切られ、道路標識も立ちます。人通りも多くなるので、標識に従ってくれぐれも注意しましょう。
――通行止めの情報などはどこで確認できますか?
基本的には年中走行可能ですが、悪天候で波が高い時などは通行止めになり、海岸に入ることもできません。最新の状況はWebページ「石川みち情報ネット」や「千里浜ライブカメラ」で確認できます。また「道の駅のと千里浜」でも、営業時間中は千里浜の様子をライブカメラで流しています。
――野間さんおすすめの訪れるべき時間帯はありますか?
断然、夕暮れです。特に太陽が沈んでからの、雲と海が一体になったまるで絵画のような、日本海独特の真っ赤な夕焼けは圧巻です。夕暮れを見るために、遠方から「夕焼けウォッチャー」の方も大勢いらっしゃるほどです。
「道の駅のと千里浜」で愛車もドライバーもリフレッシュ!
お話をお伺いした野間さんが駅長を務めるのが、「道の駅のと千里浜」。砂浜での走行を楽しんだら、車にもドライバーにもうれしいサービスが満載のこちらで一休みするのがおすすめです!
2017年にオープンしたこちらの道の駅は、千里浜ICからほどなくして到着。大型車6台・普通車155台の広々とした駐車場があり、車も人もしっかりと休むことができます。
運転のあとは道の駅でタイヤシャワーを
千里浜なぎさドライブウェイから近い道の駅ならではのサービスが、「タイヤシャワー」。駐車場の隅に設置されています。
千里浜は大きな石などがあまりないため、走行しているだけで車に傷が付くことはほぼありません。ただ、車の底やタイヤには海の塩を含んだ砂は付くため、放置すると車がさびやすくなることも。そんな心配を解消してくれるのがタイヤシャワーです。車の底面とタイヤのある低い位置に優しくシャワーがあたり、細かい砂を落としていきます。利用は無料で、車から降りてボタンを押すだけの簡単操作なのもありがたいですね。
運転疲れの足をいたわる「だいこん 足の湯」
タイヤシャワーが終わったら、道の駅の建物西側にある「だいこん 足の湯」へどうぞ。名産品である「能登だいこん」が名前の由来となった足湯です。源泉かけ流しのお湯で、足を浸けるとお湯のぬめりとほのかな硫黄の香りが。ナトリウム・塩化物・炭酸水素塩泉で、じんわりと疲れを癒す入り心地です。
だいこん 足の湯
- 営業時間・定休日
- 道の駅営業時間に準じる
※12~3月は屋外のため休業
足湯に浸かると目の前に見えるのが、千里浜の砂で作られた砂像。能登のイノシシを意味する「のとしし」に大黒様が乗った、ご当地ならではのおめでたいモニュメントです。しっかりとした強度がある千里浜の砂だからできた、堂々たる砂像は見ごたえも抜群です!
道の駅で能登の恵み味わおう!
車も体もすっきりしたところで、いよいよ建物の中へ入ってみましょう。こちらのメインはなんといっても、能登の名産品を使ったグルメ! 野菜や魚の直売所やレストラン、お土産物屋などが揃いますが、今回はドライブでの立ち寄りにぴったりなテイクアウトグルメをご紹介します。
名物は、併設レストラン「のとののど」の高田シェフがメニュー開発した、能登半島のイノシシ・のとししを使ったグルメの数々です。畑を食い荒らすため害獣として駆除されたイノシシを、この地域では自前の施設で新鮮なうちに食肉として処理しています。
中でも人気は「のとししコロッケ」(280円)。のとししの脂の旨味が、スティック状のコロッケの中にぎゅっと閉じ込められています。真ん中にまぶされるのは、同じく能登の名産であるお塩。優しい塩味が全体を引き締めてくれます。
イノシシ肉は牛肉や豚肉よりカロリーが低く、良質なたんぱく質を摂取できるのがうれしいところ。コラーゲンも豊富です!
のとののど
- 営業時間
- 11:00~16:00(LO15:30)
- 定休日
- 水曜
「ファーマーズベーカリー」では、米どころ・羽咋市で栽培された玄米の粉を使用したもちもち生地のパンを販売。こちらでも、イノシシの挽肉を使用した「のとししカレーパン」(200円)が人気です。自慢の生地に包まれた、辛すぎないカレーにイノシシが溶け込みコクを感じる一品。臭みがなく食べやすいので、その人気にも納得です。
ファーマーズベーカリー
- 営業時間
- 9:00~売り切れ
- 定休日
- 無休
ちょっとした休憩にぴったりのカフェメニューも。写真左「マルガージェラート」は、2017年にイタリアで開催された「シャーベット・フェスティバル」で優勝を飾った柴野大造氏が手掛ける石川のお店。能登の塩を使ったフレーバーなど、この土地ならではの味が楽しめます(写真は「能登塩ジェラート」「羽咋米クリームチーズ」「いちじくジェラート」のトリプルにピスタチオジェラートのサービス付き(550円)。
写真右は、直売所「かわんちまーと」とレストラン「のとののど」で購入できる、「神音(かのん)」の「道の駅オリジナルブレンドコーヒー」(300円)。羽咋市内の自家焙煎珈琲店が手掛ける限定ブレンドで、店頭の焙煎機器で挽きたての一杯をいただけます。程よくフルーティーな風味が運転で疲れた体をシャキっとさせてくれます。
マルガージェラート
- 営業時間
- 10:00~16:00
- 定休日
- 無休
かわんちまーと
- 営業時間
- 9:00~18:00(12~3月は 9:00~17:00)
- 定休日
- 無休
道の駅のと千里浜
- 住所
- 石川県羽咋市千里浜町タ1−62
- 営業時間
- 9:00〜18:00
※店舗によって一部異なります。
※駐車場・トイレは24時間利用可能です。
- 定休日
- 水曜
※店舗によって一部異なります。
- その他詳細
- 道の駅のと千里浜公式Webページ
走行後の車内を整え、帰路へ!
取材協力:ニコニコレンタカー かほく宇野気店
道の駅もたっぷり楽しんだら、帰路へ。写真は、千里浜なぎさドライブウェイで車を乗り降りしながら楽しんだあとの車内の様子です。レンタカーを借りている方は簡単に清掃をしてから出発しましょう。千里浜周辺のレンタカー店であれば、この程度の砂汚れなら問題なく返却ができるお店も。出発地や旅の計画に合わせてお店を選んでみてくださいね!
千里浜なぎさドライブウェイでの砂浜走行と、周辺の道の駅をご紹介してきましたが、中能登と呼ばれるこのエリアには、他にも見どころがいっぱいです。縁結びで名高いパワースポット「気多大社」に、名湯「和倉温泉」、日本海側で唯一ジンベイザメを見ることができる「のとじま水族館」など、まるまる一日ゆっくり回っても飽きません。ぜひドライブの旅に訪れてみてくださいね。
取材・撮影・文/宮武 和多哉