バイキング発祥の地である「帝国ホテル 東京」の「インペリアルバイキング サール」が、2023年8月に65周年を迎えリニューアル。従来の上質なフランス料理に中国料理や日本料理が加わり、さらに進化したバイキングをご紹介します。
目次
「帝国ホテル」が生み出した「バイキング」とは
豪華な料理がずらりと並び、好きなものを好きなだけ味わえるバイキング。その歴史は「帝国ホテル」から始まりました。
バイキングの構想が立ち上がったのは1957年のこと。当時の帝国ホテル社長、犬丸徹三氏がデンマークのコペンハーゲンを訪れた際、北欧の伝統料理「スモーガスボード」に出会ったことがきっかけでした。犬丸氏は、食卓に並べられたさまざまな料理を自由に食べるそのスタイルに着目。パリで修業中だった村上信夫シェフに研究を依頼し、1958年に日本初のブフェ形式のレストラン「インペリアルバイキング」(2004年に「インペリアルバイキング サール」に改名)がオープンしました。
開店するやいなや、レストランは大盛況。今や日本でバイキングといえば、ブフェ形式のレストランを意味するまでに定着しました。50周年となる2008年には、同店のオープン日である8月1日が「バイキングの日」に制定されています。
ちなみにバイキングという名前の由来は、開店当時に話題となっていた映画『バイキング』から。北欧が舞台であり、海賊の豪快なイメージが「好きなものを好きなだけ味わうスタイル」にぴったりということで、社内公募で決定しました。
「帝国ホテル 東京」のバイキングの特徴の一つが、バイキングコンシェルジュ。胸元に開店当時からのエンブレムをモチーフにしたバッジが輝くスタッフです。2014年から始まったもので、コンシェルジュがバイキングの楽しみ方や料理とドリンクのペアリングなどを提案してくれます。
バイキングコンシェルジュに選ばれるのはバイキングに造詣が深く実務経験豊富なスタッフのみで、現在は2名が在籍。バイキングコンシェルジュがテーブルマナーを教えてくれる特別プランも用意されていて、食事をしながら楽しくマナーを学べると好評なのだそう。
シェフに聞く!リニューアルのポイント
こうした歴史を持つ「インペリアルバイキング サール」が、65周年を迎えた2023年8月にリニューアル。どのように変わったのか、紀野安彦シェフと畑繁良シェフにお話を伺いました。
大きなポイントは、「帝国ホテル 東京」の伝統を受け継ぐフランス料理に加えて、中国料理と日本料理が登場したこと。それに伴い総メニュー数も約40品から約50品に増加しました。「料理のジャンルが増えたことで、より幅広い年齢層のお客様に楽しんでもらえるようになりました。親子三世代でいらしてくださる方もいらっしゃいます」と紀野シェフは話します。
中国料理は、「帝国ホテル 大阪」直営の中国料理レストラン「ジャスミンガーデン」で長年シェフを務めた畑繁良シェフが監修。国内の数々の料理コンクールでも受賞歴のある畑シェフが、リニューアルのために大阪から東京に拠点を移して考案した珠玉のメニューが並びます。
「帝国ホテル 大阪の『ジャスミンガーデン』でも人気の料理を提供していますが、単純にそのまま提供するのではなく、関西と関東で分かれるお客様の味の好みの違いを考慮してレシピを組み直しました」と畑シェフ。実は、関東は関西よりも辛いものや濃いめの味つけを好む傾向にあるといいます。高級レストランのクオリティはそのままに、利用客の嗜好に合わせたメニューの数々はすでに多くのファンを獲得。特定の料理を目当てに2日に1回のペースで訪れる方もいるほどだそう。
目玉の「北京ダック」をはじめ、高級食材のフカヒレやアワビを使った料理など、一般的なバイキングではなかなかお目にかかれない豪華なメニューを思う存分味わえます。
帝国ホテル流バイキングの楽しみ方を徹底解説
バイキングコンシェルジュ直伝の攻略法
せっかくバイキングに行くなら、余すことなく楽しみたいですよね。そこで、バイキングコンシェルジュの濱野英和さんにバイキングを満喫するコツを伺いました。
「まずは自分なりのプランを立てることがポイントです」と濱野さん。「はじめにブフェ台を見渡し、どんな料理があるのか把握しましょう。お腹いっぱいになってから『こんな料理もあったのか』と気づくのはもったいないですよね。バイキングはメニューがたくさんあるため、全部食べるのはなかなか難しいです。食べる順番や量を最初に考えておくことをおすすめします」と言います。
バイキングといえども食べる順番にマナーや決まりがあるのでは?と思いますが、そんなことはないのだそう。「自由に楽しめるのがバイキングの魅力です。ご自身で前菜から組み立ててもいいですし、いきなりメインディッシュやデザートを食べてもいいです。例えばカレーやカツを組み合わせるなど、自分なりのアレンジをしても大丈夫です。そういったコース料理ではできないような食べ方はバイキングならではのため、ぜひ自由に、楽しく召し上がってください」と教えていただきました。
これはハズせない!バイキングのおすすめ料理
約50品あるメニューのなかでも特に押さえておきたい3品をご紹介します。まずはリニューアルで新たに登場した「北京ダック」。パリッと丸ごと焼いたダックを切り分け、薄餅(中華風クレープ)に包んで一つずつ提供されます。北京ダックといえば皮のみを使うことが多いですが、こちらはお肉も一緒に食べるスタイル。香ばしい皮とやわらかくジューシーな肉が口の中でハーモニーを奏でます。
私が研修で滞在していた香港では、皮だけでなく肉も食べるのが一般的です。脂分が少なく、とても肉質がやわらかいダックを使うため、丸ごと食べられます。皮だけの北京ダックは、どうしても肉部分にロスが生まれてしまいます。SDGsの観点からも好ましくないと考え、モモの部分まで食べられるやわらかいダックを仕入れ、香港に倣ったスタイルで提供しています。香港のバーベキューソースを使ったオリジナルの味噌がポイントです。(畑繁良シェフ)
畑シェフのこの考案は大ヒット!メニューの中でも代表的な人気料理になりました。
海老蒸し餃子や広東焼売など、日ごとに内容が変わる点心も大好評。お正月シーズンにはかわいい豚の顔をイメージした肉まんを提供するなど、点心を得意とする畑シェフの遊び心が光ります。定番の小籠包も、ほかにはない関西風の出汁入り。脂たっぷりの小籠包は胃もたれしてしまうこともありますが、こちらはホッとするようなやさしい味わいで、何個でも食べられそうです。
日本人にとって重すぎず、飽きずに食べられる小籠包を作りたいと考えたときに、出汁に行き着きました。カツオや昆布の出汁を加えたオリジナルの小籠包です。(畑繁良シェフ)
「帝国ホテル 東京」のバイキングといえば、看板メニューの「ローストビーフ」。1958年の開店当時から65年もの間レシピを受け継ぐ、ファンの多い一品です。ライブキッチンにて大きな塊肉をシェフが切り分けて提供。ジュ・ド・ブッフという、牛筋から手間ひまをかけて作られるソースをかけ、お好みで西洋わさびを添えて。ローストビーフの概念が変わるほどジューシーで食べ応えがありますが、決してしつこくありません。これは素材へのこだわりによるもの。
「インペリアルバイキング サール」では、赤身がおいしく、脂がしつこくないアメリカ産のリブロースにこだわり、ローストビーフを提供しています。これからも伝統の味を守るために、素材にこだわっていきたいと考えています。(紀野安彦シェフ)
「帝国ホテル 東京」が守り抜く、口の中でとろけるローストビーフは必食です。
いざバイキングへ!
それでは、いざブフェ台へと向かいましょう。メニューは約2カ月ごとに入れ替わり、ランチとディナータイムで若干異なりますが、ローストビーフや北京ダックといった名物料理は通年提供しています。リニューアルに伴い、ブフェ台はそれまでの2カ所から3カ所に増え、より多くの料理ができたてで味わえるように。内装も9世紀のバイキング船で用いられた彫刻パターンをデザインした絨毯が敷きつめられ、重厚感のある家具と相まってラグジュアリーな雰囲気が漂っています。
まずは前菜からいきたいという方にバイキングコンシェルジュの濱野さんがおすすめしてくださったのが、「帝国ホテル伝統のポテトサラダ ミモザ風」と「スモークサーモン」、そして海老やホタテ、イカが入った「シーフードマリネ」。ポテトサラダは開店当時の味を守る一品で、オリジナルのフレンチドレッシングが隠し味。ほのかな酸味が食欲をそそります。
和洋中と、さまざまなジャンルを一度に楽しめるのはバイキングならでは。しかも一品一品に妥協のない帝国ホテルのバイキングともなれば、満足度は桁違いです。目の前で一枚ずつ切り分けたローストビーフや、揚げたての天ぷらを味わえるなど、ライブキッチンが充実しているのもうれしいところ。
「自分オリジナル」のフルコースを作って食べてもよし。お気に入りを何度おかわりに行ってもよし。自由に楽しく、バイキングを満喫しましょう。
料理は自分で取りに行くだけでなく、卓上のタブレットで注文することもできます。何度も立ち上がらなくて済み、落ち着いて食事ができるという利点があります。
また、ブフェ台に設置された銅鑼(どら)が鳴ると、蒸したての小籠包や台湾カステラなど、「出来立ての料理が届く」合図というユニークな仕掛けも。自然と会話も弾み、料理を堪能しながら素敵な時間をすごせます。
宿泊と合わせて利用すれば、さらに特別な時間に
上質な料理の数々を、自由に心ゆくまで味わえる「インペリアルバイキング サール」。バイキングのみの利用も可能ですが、「帝国ホテル 東京」での宿泊と合わせて利用して、より忘れられない時間を過ごすのもおすすめ。日頃の感謝を込めた記念日デートや、お祝いにぴったり。もちろん自分へのご褒美に「帝国ホテル満喫旅行」をするのも。
バイキングという文化を作り上げた「帝国ホテル」。受け継いだ伝統はもちろん、革新を恐れないからこそ生まれた美食の数々をぜひ一度味わってみては。「帝国ホテル 東京」のプライドが、ここにあります。
帝国ホテル 東京
- 住所
- 東京都千代田区内幸町1-1-1
- アクセス
- 【電車】JR「有楽町」駅より徒歩約5分、または東京メトロ「日比谷」駅より徒歩約3分
【車】JR「東京」駅からタクシーで約5分 - 総部屋数
- 570室
- チェックイン
- 14:00~(最終チェックイン:24:00)
- チェックアウト
- 12:00
インペリアルバイキング サール
- 営業時間
- 朝食 7:00~9:30(最終入店 9:00)
昼食 11:00~15:00
夕食 17:30~22:00 - 料金
- 朝食 大人 6,100円/子ども(4歳~12歳)3,700円
昼食 平日:大人 12,000円/子ども(4歳~12歳)6,500円
土日祝:大人 14,000円 /子ども(4歳~12歳)8,000円
夕食 平日:大人 17,000円/子ども(4歳~12歳) 8,500円
土日祝:大人 19,000円/子ども(4歳~12歳) 10,000円
※料金は変更になる場合があります。 - 公式サイト
- インペリアルバイキング サール
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撮影/岡村智明 取材・文/土田理奈