化石燃料に依存せず、気軽に体を動かせるサイクリング。自らの足でペダルを漕ぎ、風を切って走る心地よさと満足感は、ほかの移動手段ではなかなか味わえません。滋賀県のびわ湖周辺では、湖を一周するサイクリングコース「ビワイチ」を通じた心と体の健康づくりや、貴重な自然を次世代に残すための取り組みが行われています。今回はそのさまざまな活動の内容と、サイクリストにおすすめの宿・ホテルを紹介します。
目次
サイクルツーリズムを進める「輪の国びわ湖推進協議会」
日本最大の湖、びわ湖を反時計回りに一周する「ビワイチ」は、約200kmのサイクリングコースです。雄大なびわ湖の美しさや、周辺の豊かな自然を堪能しつつ、歴史や文化に触れるスポットや地元の飲食店にも立ち寄れることが特長。サイクリストからの人気が高く、国土交通省のナショナルサイクルルートにも選定されました。
さらに、このコースの周辺地域では、民間と自治体がタッグを組み、ビワイチを通じた“心と体を満たす旅(ウェルビーイング*な旅)を楽しんでもらうための活動も行われています。
*ウェルビーイング(well-being)とは、身体的・精神的・社会的によりよい状態にあること
「輪の国びわ湖推進協議会」は、ビワイチをきっかけに気軽に自転車に親しむ人を増やし、健康的で環境に調和した社会をつくることを目指す、地元の民間団体です。今では、すっかり浸透されたビワイチですが、2009年より活動が始まりました。
滋賀県民にとっての“びわ湖”は特別な存在。「びわ湖を自転車で一周することが、小・中学生のときの“冒険”のひとつだった」と、懐かしむ方も少なくありません。そのような地元の方の原体験が、ビワイチの発想のもととなっています。
取り組みのひとつとして、同協議会はビワイチの旅をサポートする自転車ショップやカフェ、ホテルなどを募り「輪の国びわ湖 協賛ショップ」として認定。ビワイチの挑戦中に休憩やランチをしたり、タイヤに空気を入れたり、自転車のメンテナンスや相談ができたりするなど、サイクリストにうれしいサービスを提供しています。気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
滋賀県内には、官民連携で自転車活用を推進する「滋賀プラス・サイクル推進協議会」もあります。この協議会は各所に「サイクルサポートステーション」を設置しました。これは、滋賀県で自転車旅を楽しむ旅行者に、スポーツバイクに対応した空気入れや工具、トイレなどを貸し出してくれる施設のこと。
滋賀県内全域のカフェやレストラン、スーパー、ホテル、コンビニなどが協力し、ビワイチの参加者をバックアップしています。
さらに滋賀県では、ビワイチを通して自転車文化を広めるため、道路の幅の拡張工事を進め、安心・安全にビワイチを楽しむための環境づくりを行っています。
ビワイチの楽しみ方
それでは、ビワイチにはじめて挑戦する方のために、具体的な楽しみ方をご紹介します。
びわ湖までのアクセス
ビワイチは、びわ湖を一周するサイクリングコース。どこからでもスタートできますが、関東方面から来る場合は、JR米原駅からはじめるのがおすすめです。
ここには駅直結の「米原駅サイクルステーション」があり、スポーツ自転車のレンタルやガイドツアーを提供しています。
さらに、自転車安全整備士、自転車技士の資格を持ったスタッフが、自転車の調整方法や乗り方を丁寧にレクチャー。初心者のスタート地点には、ちょうどいい場所です。
また、関西方面から来る方は、大津港を最初の拠点にするとよいでしょう。大津港にはスポーツ自転車のレンタサイクル「ビワイチバイク」があり、湖は目の前です。京都駅のお隣、山科駅から京阪京津線で15 分、びわ湖浜大津駅からアクセスできます。
初心者でも楽しめるビワイチの旅
びわ湖一周の距離は、約200km。ベテランのサイクリストには1日でゴールする人もいますが、初心者は1泊2日、もしくは2泊3日のプランがおすすめ。観光名所をまわったり、ご当地グルメを味わったりしながら、ゆっくりビワイチを楽しみましょう。
ビワイチのルートは整備されているので走りやすく、湖のまわりはほぼ平坦です。しかし、一部のエリアでは峠越えのアップダウンや車通りの激しい国道沿いの道もあるので、注意して進む必要があります。湖岸道路には、ビワイチのルートを案内する独自の路面表示(青線)があります。ビワイチはびわ湖の反時計回りを推奨しているので、青線の表示は湖側のみ。車と同じように、交通ルールを守って走行しましょう。
日本一の面積を誇るびわ湖周辺には、たくさんの見どころがあります。朝と夕方で違った輝きを見せる湖面、夏は新緑、秋は紅葉など四季折々を楽しめる山々、世代を超えて受け継がれる歴史遺産…。びわ湖ならではの風景を眺めながら、安全で快適なサイクリングを満喫しましょう。
びわ湖の周辺には、先述の「輪の国びわ湖 協賛ショップ」や「ビワイチサイクルサポートステーション」があります。ビワイチの取り組みに賛同し、自転車に理解のあるお店ばかりです。何かトラブルがあったり、疲れてきたりしたときは無理をせず、これらのお店を訪ねてみてはいかがでしょうか。
協賛ショップ一覧はこちら
ビワイチサイクルサポートステーション
ビワイチにおすすめの宿・ホテル6選
滋賀県には、自転車の旅に訪れた人が泊まれる宿やホテルを「滋賀県サイクリストにやさしい宿」として認定しています。ビワイチの取り組みやMLGs(マザーレイクゴールズ)*の活動に賛同している施設で、以下の項目をすべて満たしていることが条件です。
<滋賀県サイクリストにやさしい宿の必須条件>
1.自転車の客室への持込みまたは屋内の安全な場所での保管
2.チェックイン前、チェックアウト後の手荷物の一時預かり
3.チェックイン前、チェックアウト後の駐車場所の提供
4.宅配便(自転車を含む)の受取・発送が可能
5.スポーツタイプの自転車に対応した空気入れの貸出
6.修理工具の貸出
7.観光情報の提供
8. MLGsの活動に賛同している
ここでは「滋賀県サイクリストにやさしい宿」であり、自転車を安全な場所で保管できるなど、ビワイチの旅をサポートする設備がそろう6つの宿を厳選して紹介します。びわ湖の絶景を眺め、郷土料理に舌鼓を打ちながら、リフレッシュしてください。
(★)の施設は「輪の国びわ湖 協賛ショップ」にも登録されています。
*「MLGs(マザーレイクゴールズ)」は、びわ湖の環境を守ることで持続可能な社会の実現を目指す13の目標(ゴール)のこと。びわ湖版のSDGsとも呼ばれています。
長浜・米原エリア
びわ湖畔 おいしい湯の宿 長浜太閤温泉 浜湖月 (★)
JR長浜駅より徒歩約10分、長浜ICより車で約15分。豊臣秀吉公が築いた長浜城のすぐ隣にあるのが「びわ湖畔 おいしい湯の宿 長浜太閤温泉 浜湖月」です。長浜城跡に湧き出た鉄泉、長浜太閤温泉の湯は、湯冷めしにくく、いつまでも体がぽかぽかしていることが特長です。
展望大浴場からは、雄大なびわ湖がよく見え、ビワイチでの疲れをゆっくり癒やせます。料理は、地元の食材と季節の素材を吟味した京風会席料理。近江牛会席や、焼きさば素麺などの郷土料理も味わえます。
ホテル&リゾーツ 長浜 -DAIWA ROYAL HOTEL-
びわ湖のほとりに位置する「ホテル&リゾーツ 長浜 -DAIWA ROYAL HOTEL-」は、日本の夕陽百選にも選ばれた絶景を楽しめる宿です。サイクリストを歓迎するビワイチ応援プラン(和洋中朝食ビュッフェの朝食付き)が利用でき、駐車場無料の特典も。
客室に専用スタンドが用意されており、自分の自転車を持ち込めるので安心です。
※客室持ち込みには台数制限がありますのでホテルにお問い合わせください。
大浴場にはサウナがあり、露天風呂は秀吉も愛した鉄泉の長浜太閤温泉。翌日のビワイチや観光に向けてしっかり元気を充電できます。
大津・雄琴・草津・栗東エリア
琵琶レイクオーツカ(★)
びわ湖まで徒歩約10秒の湖畔に立つ「琵琶レイクオーツカ」は、ビワイチのスタート地点や中間拠点としても最適。最寄りのJR近江舞子駅から徒歩約5分というアクセスの良さもうれしいポイントです。
ロードバイクやマウンテンバイクなどのスポーツ自転車は客室へ持ち込みができ、仏式バルブのポンプや工具セットなど、ビワイチの旅にうれしいサービスが充実しています。びわ湖側は全室レイクビューになっており、マッサージチェア付きの部屋もあるのでのんびりと琵琶湖を眺めることができます。
おごと温泉 びわ湖花街道(★)
「おごと温泉 びわ湖花街道」はびわ湖を望む高台にあり、全客室がレイクビュー。時間帯によって姿を変える美しいびわ湖の景色が楽しめます。
食事は“地産地消のおもてなし”にこだわり、びわ湖周辺の伝統野菜や近江牛、湖魚など、この土地でしか味わえないメニューを提供しています。
湖西・高島・マキノエリア
料理旅館 丸茂(★)
“料理旅館”の名の通り、一品一品真心を込めて作られた料理が人気の「料理旅館 丸茂」。近江牛のしゃぶしゃぶや名物のキジ鍋など、栄養たっぷりの食事やおいしい地酒の数々は、ビワイチで疲れた体の隅々まで染み渡るでしょう。温泉ではないものの、柔らかく自然光が差し込む心地よい風呂は、心と体を癒やしてくれます。
客室は昔ながらの純和風空間で、家庭的で温かいもてなしを大切にしている旅館。ビワイチのコースからすぐ近くというアクセスの良さも魅力です。
彦根・近江八幡・守山・東近江エリア
琵琶湖マリオットホテル(★)
びわ湖の湖東を南北に走る“さざなみ街道”沿いにあるのが「琵琶湖マリオットホテル」。日常のストレスや疲れを忘れさせてくれるほどの絶景を楽しめるロケーションです。周辺には、神社仏閣など歴史の趣を感じさせるスポットが点在しており、湖の上にたたずむ仏堂「満月寺 浮卸堂」や、世界遺産「比叡山延暦寺」が自転車圏内に。
食事は、雄大なびわ湖や比良の山々の絶景を楽しめる地上12階のレストランでどうぞ。朝食は豊富なメニューから選べるビュッフェスタイル。ディナーでは地元の食材をたっぷり使ったグリル料理などを味わえます。
雄大な琵琶湖の景色を眺めながら、ご当地グルメや観光スポットも満喫できる「ビワイチ」。初心者も、上級者も楽しめるさまざまなコースがあり、年齢や体力に合わせたチャレンジができることも魅力です。サイクリストを応援する「輪の国びわ湖推進協議会」や地元の取り組みによって生まれた「ビワイチサイクルサポートステーション」の設置などサポートも充実しています。
また琵琶湖付近には滋賀県が認定する「滋賀県サイクリストにやさしい宿」などもありますので、「ビワイチ」に挑戦する際はぜひ利用してみてください。