提供:ことりっぷ
比叡山の麓に広がる自然豊かな八瀬の地。そこから高野川の流れに誘われ南へ下ると、かつて上皇が離宮を構えた修学院へ。今では個性あるカフェやショップが点在するエリアです。この秋は、自然と人の営みがほどよく調和する小さな町を訪ねてみましょう。
比叡山を仰ぐ里山を八瀬から修学院へもみじさんぽ
秋になると、電車を降りてすぐの八瀬もみじの小径で野趣あふれる山紅葉、瑠璃光院で手入れされた庭紅葉や、SNSで話題の鮮やかなリフレクションなど、タイプの違う秋景色が目を楽しませてくれる八瀬~修学院離宮道エリア。前編では、紅葉が美しい3つのスポットをご紹介しました。
後編では、修学院駅周辺のカフェやごはん処、雑貨屋さんをめぐります。
比叡登山や離宮帰りにおいしいコーヒーと食事を「山道具とごはん 麓」
叡電修学院駅から徒歩10分。比叡登山や離宮帰りに訪れたい「山道具とごはん 麓」。店奥にはガラス窓を通して豊かな緑が見えます。
「今日の定食」1,800円
地元の修学院や、大原、黒田など近隣の田畑で収穫された野菜をふんだんに使う定食が看板メニューで、この日のメインはトマト酢豚。修学院産の米を使う雑穀米や、カリフラワー、イチジクなど旬の味がたっぷりです。
「オーガニックコーヒー」650円と「苺コンポ ートのタルト」850円。秋には苺にかわりリンゴなどのタルトが登場予定
コーヒーマイスターが淹れる深煎りオーガニックコーヒーは、手作りスイーツとよく合います。
折々に登山イベントが催され、大文字山付近を歩く「裏山ハイキング」は初心者にもおすすめなので、この秋、新しいことにチャレンジするならぜひ。
400年以上、旅人に愛される鯖街道の名物ご飯「山ばな 平八茶屋」
安土桃山時代に若狭街道(鯖街道)の茶屋として創業した「山ばな 平八茶屋」。山口県の禅寺から移築された騎牛門(きぎゅうもん)をくぐって店内へ入りましょう。
麦飯とろろ膳 造り付 5,500円
当時、白米は庶民にとっては贅沢品。パサつきのある麦飯をとろろで食べやすくした麦飯とろろ汁は、栄養もあり、消化にもよく、さっと食べられ、旅路を急ぐ人々に好まれたそう。今は米と麦を7対3の割合で炊き上げ、丹念に擦り下ろし、だしでのばした丹波産つくね芋をかけていただきます。
そんな名物料理「麦飯とろろ膳」は、麦飯ととろろ汁に、取肴や焚合、造り2種盛、吸い物、デザートなどが付きます。秋にはきのこや小芋をはじめ、むかごなどの食材が使われることもありますよ。
秋になると庭園の木々が赤や黄に色づき、赤い毛氈を敷いた席でひと休みするのもおすすめ。かま風呂もあり散策の疲れも癒やされます。
かま風呂は宿泊客以外も使用でき、タオル貸出付で1名2,200円
かま風呂とは日本古来の蒸し風呂。60~65℃というサウナよりはずっと低めの温度で、陶器の枕を使って静かに横たわりましょう。
ひとりで静かなときを過ごせるベーカリーカフェ「CAFE Uchi」
日々の喧騒から離れ、忙しい日常を忘れて、店主の淹れるコーヒーと奥様の手ごねパンが味わえるベーカリーカフェ「CAFE Uchi」。静かな空間を大切にしているので、来店は2名までで。カウンター席でほっこりひとり時間を過ごすのもいいですね。
小麦だけではなく、ライ麦、米粉などを使うパンはすべて手ごね。中はモッチリ、外は焼きたてパンのようにサクッとトーストされ、噛むほどにおいしさが味わえます。砂糖とレモン汁だけでコトコトと炊き上げられたジャム類も爽やかな風味です。
古いものと新しいものをボーダレスに提案「chic and clan ; artless Life」
修学院駅近くの商店街に店を構えるアンティークショップ「chic and clan ; artless Life」。古道具屋というよりもセレクトショップのような店構えが特徴です。
店内は、商品ディスプレイにも使われている古い家具を基調に、それとなじむ新旧の道具や雑貨、器が並び、統一感のある世界が広がります。
商品は、日本のみならず、アジア、アフリカ、ヨーロッパなど、店主のおめがねにかなったものを取り扱っています。器は現代の作家ものがメインで、家具や雑貨のコーディネートにヒントがもらえそうな一軒です。
超極細建築に集うゆるくて自由な仲間たち「ba hütte.」
設計は京都の木村松本建築設計事務所が手がけた
建築界では知る人ぞ知るガラス張りの細長いビル。この風変りな空間は、書店勤めをしていた店主が営む、立ち飲みを併設した古本&雑貨屋さん。奥行2mほどの極細ショップに魅かれ、さまざまな人がやってきます。
書棚には小説からサブカルチャー系の本まで、雑貨は文具から布小物まで、ありとあらゆるジャンルをカバー。建築好き、読書好き、お酒好きが集まり、思わぬ出会いがあったり、つながったりする楽しみも。立ち飲み初体験にもおすすめです。
「オリジナルマグカップ」1,500円と「珈琲豆」700円
大原の農園が手がける野たまごスイーツ「京都大原山田農園たまご工房」
大原で養鶏に取り組む農園が、おいしい卵をもっと広めたいと市街地に近い修学院に開いた菓子工房。鶏が自由に動き回れるよう平飼いし、十数種類の原料を配合した独自の飼料で育てるなど試行錯誤を重ね、味にこだわる「野たまご」が誕生しました。プリンやシュークリーム、クッキーなどの焼き菓子だけでなく、野たまご(1個97円)も提供しています。
「野たまごプリン」1個380円
「野たまごプリン」は黄身1個が使われており、野たまごの濃厚な風味を存分に味わえます。どれにしようか迷ったら、まずはこれをいただくのがおすすめです。
土・日・月曜にはシュークリームがお目見え。野たまごを使ったコクのあるカスタードクリームと生クリームがコンビになったダブルクリームです。
もっとよりみち
いかがでしたか?
もっとよりみちしたい方は八瀬比叡山口駅からバスに揺られ約20分で大原へ。お座敷で秋色に染まる庭を前にお抹茶を頂ける三千院や、宝泉院ではしっとりとした秋の風情を味わって。また駅からケーブルとロープウェイを乗り継ぐと、比叡山山頂駅へ到着。そこからはバスで延暦寺にも行けますよ。
文:戸塚江里子 写真:小川康貴 編集:ことりっぷ編集部