軽井沢の湖のほとりでアート鑑賞や名建築めぐり♪ 「軽井沢タリアセン」の湖畔をおさんぽ

軽井沢の湖のほとりでアート鑑賞や名建築めぐり♪ 「軽井沢タリアセン」の湖畔をおさんぽ

提供:ことりっぷ

 

カナダ人宣教師によって避暑地として知られるようになったという長野県軽井沢。軽井沢の南にある複合リゾート施設「軽井沢タリアセン」は、塩沢湖を中心に美術館や文学館が点在し、森と湖が広がる景色の中をゆっくり散策できます。

また、夏を軽井沢の別荘で過ごした文豪や建築家などの歴史的に貴重な建物がいくつか移築されているので、名建築に注目しながらのおさんぽもおすすめですよ。

 

 

自然豊かな湖畔のリゾート地でゆっくり過ごす

自然豊かな湖畔のリゾート地でゆっくり過ごす ゲートをくぐると涼しげな水路と遊歩道が出迎えてくれる

軽井沢町の南側にある「軽井沢タリアセン」は、散策にぴったりな場所。かつては水田が広がり、スケート場としても使われていた人造の塩沢湖を中心に、美術館や文学館のほか、レストランやローズガーデン、ボートなどのアクティビティが点在しています。鮮やかな緑の木々を愛でながら、水辺の散歩が楽しめます。

「ペイネ美術館」の近くには船着き場があり、手こぎボートやペダルボートも借りられます。湖沿いにたたずむ「睡鳩荘」の近くまで漕ぎ出すこともできます。

 

中の島へ渡る橋の上からの眺めもいい ボートに乗ってのんびり過ごすのもおすすめ

 

「軽井沢タリアセン」に軽井沢の歴史的価値のある別荘を移築

「軽井沢タリアセン」に軽井沢の歴史的価値のある別荘を移築 物語の世界にいるような湖越しの旧朝吹山荘「睡鳩荘」

ゲートをくぐり、右手に広がっているのが塩沢湖です。湖越しに建つ優雅な洋館の姿に、人気アニメ映画に出てくるワンシーンを思い浮かべてしまいます。こちらの建物は旧軽井沢の二手橋近くから移築された旧朝吹山荘「睡鳩荘」。こちらは実業家の朝吹家の別荘でした。

避暑地として人気の軽井沢は別荘地としても知られ、今でも数多くの別荘があります。その始まりはカナダ人宣教師A・C・ショーが、1888(明治21)年に建てた別荘といわれています。外国人の名建築家が建てた別荘や著名人が使っていた別荘など、軽井沢には歴史的価値のある建物がいくつかありますが、どう保存すべきか課題もありました。その残すべき名建築の移築先となったのが「軽井沢タリアセン」です。

 

鮮やかなオレンジ色の建物は、アントニン・レーモンドが建てた「軽井沢夏の家」

軽井沢ナショナルトラストが保存にかかわり、1985(昭和60)年の「堀辰雄山荘」から始まって、翌年にはアントニン・レーモンドのアトリエ兼別荘「軽井沢夏の家」を移築し、美術館や文学館として活用されるようになりました。「睡鳩荘」も2008(平成20)年に移築復元。いまでは、どの建物もまるで建築時からあったかのように、静かにたたずんでいます。

 

世界の人々に愛されている恋人たちの作品を展示する「ペイネ美術館」

世界の人々に愛されている恋人たちの作品を展示する「ペイネ美術館」 ペイネ美術館の前には木々に包まれるように「ペイネの恋人たち」の像が立つ

ゲートをくぐって時計回りに進み、最初に訪れたいのが「ペイネ美術館」。多くの人々に親しまれている「ペイネの恋人たち」を描くフランス人の画家、レイモン・ペイネの美術館。2階建ての木造の建物に、原画やリトグラフなど約30点の作品を展示しています。愛に包まれたやさしい気持ちになる作品ばかりで気持ちが和みます。

 

開放的な雰囲気の「ペイネ美術館」。2階へ続くスロープも当時造られたもの

 

国の重要文化財に指定された「軽井沢夏の家」

国の重要文化財に指定された「軽井沢夏の家」 左側の建物が蝶のようなバタフライ屋根になっている

「ペイネ美術館」は、1933(昭和8)年に建築家アントニン・レーモンドが軽井沢町南ヶ丘に建てたアトリエ兼別荘「軽井沢夏の家」を移築し、活用したもの。2023年には国の重要文化財に指定されました。

M字のバタフライ屋根が特徴的で、2階まで吹き抜けているので開放的な空間になっています。2階へは階段ではなく、バタフライ屋根に沿ってスロープが造られているのも建築的な見どころです。奥にはレーモンドの寝室だった部屋もあり、3面がガラス窓で、当時のゆがみのあるガラスも残っていますよ。

 

奥にある旧寝室。A・レーモンドが妻、建築スタッフとともに夏を過ごしたという

 

愛らしい野の花を描いた作品が並ぶ「深沢紅子 野の花美術館」

愛らしい野の花を描いた作品が並ぶ「深沢紅子 野の花美術館」 「明治四十四年館」と名付けられた「深沢紅子 野の花美術館」の建物。多くの文人や外国人宣教師、別荘客に利用されてきた

遊具やテニスコートのあるエリアを過ぎると、青みがかったグリーンの建物が建っています。こちらは野の花を愛し、描き続けた洋画家・深沢紅子の「野の花美術館」。1911(明治44)年築の旧軽井沢郵便局舎を移築したもので、登録有形文化財にもなっています。

軽井沢タリアセン内に移築されている「堀辰雄山荘」も、深沢紅子とゆかりのある別荘です。縁あって山荘を長年、夏のアトリエとして使い、数多くの高原の花の水彩画を描いていた建物だそう。その作品を中心に油絵や愛蔵品などを展示しています。

 

湖のほとりに建つフォトジェニックな別荘

湖のほとりに建つフォトジェニックな別荘 湖面にその姿を映す旧朝吹山荘「睡鳩荘」

湖沿いには旧軽井沢の二手橋近くから移築された、1931(昭和6)年築の旧朝吹山荘「睡鳩荘」が静かにたたずんでいます。実業家、朝吹常吉さんと奥様、5人の息子と娘が夏の間に過ごした別荘で、その後、娘のフランス文学者・朝吹登水子が受け継ぎ、夏を過ごしていました。

朝吹家の依頼を受けて設計したのは、滋賀県に英語教師として来日したアメリカ人の建築家、W. M.ヴォーリズで、軽井沢でも数多くの建物を設計しています。その中でも、「睡鳩荘」は登録有形文化財にもなっている歴史的価値のある建物です。

 

重厚な雰囲気のリビング。柱がなく、天井の梁で家を支えている

1階のリビングは一家団欒を楽しんだ場所。中央に大きな石造りの暖炉がどっしり構え、アメリカ製のダイニングテーブルや登水子さんがフランスで見立てた花柄のカーテン、大正時代の軽井沢彫の家具棚などを設えた豪華な内装に胸がときめきます。

2階は主寝室と子どもたちの寝室が3室。バルコニーに面した真ん中の部屋は、登水子さんが過ごした部屋を再現しています。建築的に注目したいのが、遮音のために2階の床全面におがくずを敷いていること。ヴォーリズ建築の特徴だそうで、主寝室ではその構造が見られますよ。

 

登水子さんの部屋を再現。家具もほとんど当時のものを置いている (左上・右上)2階の主寝室。本来の白い手すりまでは近づけないが、バルコニーにも出られる (左下)軽井沢彫のすてきな家具棚 (右下)ゆったりした欧米風の階段

主寝室からはバルコニーに出られます。目の前には木々に囲まれた静かな湖が広がり、物語の世界にいるようなお屋敷で暮らしている気分が味わえますよ。1階は無料で見学でき、企画展開催時以外は2階も無料で見学可能です。

湖畔一周は徒歩で約15分。園内には「イングリッシュローズ・ガーデン」があり、約200種1800株が咲き誇ります。見ごろは6月中旬から7月上旬。園内にはオリジナルカレーが人気のレストランやバーガーショップ、タリアセンショップがあるので、休憩するのもおすすめです。

 

睡鳩荘の1階にあるデッキ。ここに座って湖を眺めるだけで、リゾート気分に浸れそう

 

軽井沢に魅せられた文豪たちに出会う「軽井沢高原文庫」

軽井沢に魅せられた文豪たちに出会う「軽井沢高原文庫」 入口から1階の壁に使われている浅間石は、軽井沢の別荘の石垣にもよく使用されているという

「軽井沢タリアセン」入口の道路を挟んで向かいにあるのが「軽井沢高原文庫」。地元の浅間石が使われた本館の2階では、軽井沢を愛した堀辰雄や有島武郎、川端康成など文豪たちの原稿や愛用品を展示する企画展を開催しています。1階には文豪の書籍が並ぶショップがありますよ。

 

2階では企画展を開催。文豪にちなんだイベントもある 移築された作家・堀辰雄の山荘。室内も見学できる。企画展がやっていることも

自然豊かな敷地内には北軽井沢から移築された作家・野上弥生子の書斎兼茶室、作家・堀辰雄の1412番山荘があります。旧軽井沢にあった堀辰雄山荘は、堀辰雄が1941(昭和16)年にアメリカ人から購入した別荘です。山小屋のような木造の建物内には当時の暖炉や堀辰雄ゆかりの椅子なども残っています。

 

茅葺き屋根が印象的な野上弥生子の書斎。1933(昭和8)年築

 

「有島武郎別荘」内の「一房の葡萄」でコーヒータイム

「有島武郎別荘」内の「一房の葡萄」でコーヒータイム 木々に包まれた有島武郎別荘「浄月庵」。1階のカフェは入園料なしで利用可

「軽井沢高原文庫」には、三笠ホテルの近くから移築した作家・有島武郎の別荘「浄月庵」もあります。明治末期から大正初期に建てられた別荘で、武郎が父から譲り受け、こちらで代表作『生まれ出づる悩み』を執筆したといいます。1階には有島武郎記念室があります。

1階にあるライブラリーカフェ「一房の葡萄」では、コーヒーや紅茶、ケーキなどが味わえます。レトロな雰囲気の店内や、緑の木々が眺められる復元したベランダ席でゆっくり過ごしてはいかがでしょうか。

 

軽井沢を訪れた作家や画家、建築家などの足跡をたどることができる「軽井沢タリアセン」。湖畔を散策しながら、当時に思いを馳せてはいかがでしょうか。

 

 

文:細江まゆみ、写真:加藤熊三

 

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