庭園を眺めて和のアフタヌーンティーを♪日本三名園・水戸の「偕楽園」で過ごす贅沢なひととき

庭園を眺めて和のアフタヌーンティーを♪日本三名園・水戸の「偕楽園」で過ごす贅沢なひととき

提供:ことりっぷ

 

梅の名所として知られる茨城県水戸市の「偕楽園」。水戸藩主の徳川斉昭の思いを込めた名園には、「好文亭」という斉昭の別邸があります。庭園や湖を一望できる3階の「楽寿楼」からの絶景や、見事な襖絵など見どころもたくさん。建物内にあるカフェ「樂」では、「和のアフタヌーンティー」や「桝ティラミス」など、見た目にも美しい和洋折衷のスイーツが味わえますよ。梅の時期以外にも訪ねてみたくなる魅力があります。

 

水戸藩主自らが構想を練って造った江戸時代の名園

水戸藩主自らが構想を練って造った江戸時代の名園 梅のシーズンには多くの観光客でにぎわう「偕楽園」。梅林の見ごろは例年2月下旬から3月上旬ごろ

日本三名園のひとつ「偕楽園」は、水戸藩第9代藩主の徳川斉昭によって、1842(天保13)年に造園されました。斉昭が藩内を見て回った際、南に千波湖、西に筑波山などを望む景観に感動し、自ら造園構想を練り、春の先駆けとして咲く梅の木を園内に数千本植えたそうです。自身のためだけではなく、藩内の人々がこの場所で楽しめるようにと願い、「偕楽園」と名付けました。

 

四季折々の美しさを眺める絶景の「好文亭」へ

四季折々の美しさを眺める絶景の「好文亭」へ 杮(こけら)葺きの屋根が風情ある「好文亭」。廊下でつながる「奥御殿」は茅葺き屋根の平屋

園内の「好文亭」は斉昭の別邸ですが、家臣や文人墨客、藩内の人々とともに楽しむ場として建てられました。詩歌や管弦、養老の会などを催し、心身の休養をしたそうです。「好文」というのは梅の異名で、「学問に親しめば梅が咲き、学問を廃すれば咲かなかった」という故事から名付けられたもの。当時の建物は水戸の空襲で全焼しましたが、1955(昭和30)年から3年かけて復元されました。

「偕楽園」の入園料とは別に200円必要ですが、「好文亭」はぜひ見学したい見どころのひとつ。好文亭と太鼓橋廊下でつながっている平屋造りの「奥御殿」は藩主夫人の休養の場で、各部屋に描かれた梅や桜、竹、紅葉などの襖絵も見事です。こちらもあわせて見学できますよ。

 

大パノラマが広がり、開放的な3階の「楽寿楼」。見晴広場や千波湖が見渡せる

木造2層3階建ての「好文亭」の一番の見どころは3階の「楽寿楼」。東、西、南の三方を見渡せる絶景ポイントです。南に面した8畳が正室で、斉昭が風景を眺めながら思考し、休養をしていたそう。ここからは千波湖や拡張部の梅林が見え、梅や桜の時期には花景色も楽しめます。

 

(左上)「奥御殿」の梅の間。復元時に日本画家・須田珙中によって描かれた (右上)華燈口の杉戸に古歌が色紙や短冊に描かれている (右下)「楽寿楼」には富士見窓も (左下)10室を結ぶ「奥御殿」の廊下。紅白の梅も美しい

「好文亭」内では、さまざまな斉昭の工夫が見られます。「楽寿楼」には配膳用昇降機があり、1階の調理室から3階までお膳や酒肴を、滑車を使って手動で運搬したといい、日本初のエレベーターといわれています。また、眺望の妨げにならないようにと雨戸を回転式にし、戸袋を設けなかったことも素晴らしいアイデアのひとつです。

 

歴史ある好文亭で極上スイーツを味わう

歴史ある好文亭で極上スイーツを味わう 36畳の広さを誇る総板張りの大広間「西塗縁」にあるカフェ「樂」

「好文亭」内にある「西塗縁」は、詩歌の雅会などが催されていた大広間。この場所を活用して2022年3月にオープンしたのが、カフェ「樂」です。調理師免許を持つ代表の森 美木さんは、斉昭のもてなしの心が詰まったこの空間を大切に引き継ぎ、好文亭を多くの人に知ってほしいという思いでカフェを運営しています。

三方が開放できる障子の向こうには、庭園や梅林などのどかな風景が広がっていて眺めも抜群。漆塗りの床に合う丸いテーブルを飛び石に見立てたり、背もたれのない椅子を選んだりしたのも、この景観を損なわないように配慮しているそう。シックなインテリアは和の空間を引き立てています。

 

偕楽園の風景を切り取った桝スイーツに心ときめく

偕楽園の風景を切り取った桝スイーツに心ときめく 「枡ティラミス 梅」770円と「甘酒」700円。桝に入った演出も情緒があって素敵

カフェ「樂」で楽しめるのは、極上のスイーツとドリンク。国内外の人々に喜んでもらえるスイーツをと「洋の中身、和のうつわ」をコンセプトに誕生したのが、枡に入れたスイーツです。「枡は究極の和のうつわです」と森さん。

森さんのひらめきを、試行錯誤をして作り上げたのが「桝ティラミス」です。淡いピンクのグラデーションが美しい「枡ティラミス 梅」は、偕楽園の枯山水の庭をイメージしたものだそう。梅の花が一輪落ちた瞬間を描いたような風流なティラミスは、スプーンを入れるのをためらうほど。マスカルポーネクリームに手作りの梅ゼリーと甘露煮、ノンアルコールの梅酒を入れていて、梅のやさしい甘みとほどよい酸味のバランスが取れた梅尽くしのティラミスです。

 

「枡ティラミス」770円。ブレンドコーヒーまたはアイスコーヒーが選べるケーキセットは1200円

「桝ティラミス」は縦の線に注目を。こちらは好文亭のスタッフが毎朝、庭の砂利に模様づけている様子を表現したものです。スタッフの皆さんの心意気を出したいとティラミスに描いたそう。

本場のイタリアに負けないと評判の濃厚なティラミスを味わいながら、隠された思いも感じていただきましょう。桜や抹茶、紅白など季節限定のティラミスも楽しめます。

 

華やかな和のアフタヌーンティーでゆっくりと

華やかな和のアフタヌーンティーでゆっくりと 抹茶付きの和のアフタヌーンティー「樂彩」3300円。前日までに要予約

カフェを訪れるなら事前に予約したいのが、和のアフタヌーンティー「樂彩」。引き出しを開けて、スイーツが入っていたらかわいいという発想から生まれた特別メニューです。上段は笹寿司、1段目は三勺桝のティラミス、2段目は甘味と季節のフルーツが詰められ、抹茶がついています。

 

一段目は三勺桝のティラミスと自家製梅ゼリー

ミニサイズの三勺桝に入った「枡ティラミス 梅」と「枡ティラミス」、秋限定の「枡ティラミス 抹茶」の3種類が味わえる贅沢な一段目。抹茶は栗を乗せて秋を描いています。中にはあんこも入っていて、和洋折衷なティラミスです。

 

二段目は笹巻わらびもち、串団子、ねりきり、おまんじゅう、梅甘露煮、栗甘露煮、りんごのコンポートなど季節のフルーツ

二段目は昔のお花見弁当のような豪華さで、7種類の甘味が詰まっています。彩りもきれいで、バランスよくさまざまな味わいと食感が楽しめます。

 

上段は3種類の笹寿司と梅花香の物

上段の笹寿司はサンドイッチのような存在で添えられています。酢飯を包んでいるクマザサは偕楽園に生えているものだそう。梅、栗、生姜の3種類で、水戸の梅、笠間の栗と茨城県にちなんだものが味わえるのも旅気分が盛り上がります。かわいらしい梅のお漬物も味わって。

 

(左)「彩雄喜ブレンド」660円 (右)「梅ソーダ」700円

桝ティラミスとセットでも味わえるのが自家焙煎のコーヒー。ハンドドリップで淹れるブレンドは2種類。「樂ブレンド」はコロンビアとブラジルのコーヒー豆のブレンドで、「彩雄喜ブレンド」はブラジル、コロンビア、グアテマラの3種類をブレンドしています。

水戸らしいドリンクなら「梅ソーダ」を。さっぱりした甘みが暑い時期にぴったりです。茨城県近代美術館とのコラボで生まれたのは「梅花茶」。梅の花を乾燥させたものをお湯に入れると、時間をかけて花が開いていくという美しいお茶です。ケーキにもぴったりですよ。

 

斉昭による「西塗縁」の工夫にも注目を

斉昭による「西塗縁」の工夫にも注目を (左上)台座に描かれた白梅の反対側には紅梅も (右上)庭の景色を存分に楽しんで (右下)物見引手金具。入口の戸に作られている (左下)4枚の板戸には約8000字の韻字が

「西塗縁」には歴史的な見どころもあります。詩歌の雅会が催されていたため、板戸に漢詩を作るための韻字が書かれ、辞書代わりに使われていたそう。また、戸を閉めたまま室内の状況を確認できるように、杉戸の引手が透かし彫りになっています。

カウンターの横には美しいテーブルの台座も。この空間の花になればと代表の森さんが依頼した台座の紅白梅文卓「樂彩」は、笠間の陶芸家・大貫博之さんが手がけた芸術作品です。入口付近もギャラリーとしてぜひ注目してみてくださいね。

 

梅の季節のあとにも楽しめる「偕楽園」

梅の季節のあとにも楽しめる「偕楽園」 (左)「好文亭表門」。木部と板壁は松煙を塗っているので黒く、黒門とも呼ばれている (右上)園内の梅林には「水戸の六名木」も咲いている(右下)弓の材料のために斉昭が京都から取り寄せた「孟宗竹林」。荘厳な雰囲気に 

「偕楽園」内にはいくつか見どころがあります。昭和20年の空襲でも焼け残った茅葺き屋根の「好文亭表門」は、創設時の正門でした。当時の姿を今に伝える貴重な門です。この門をくぐり、「孟宗竹林」や杉林を眺めて好文亭へ向かうコースは、斉昭が考えた「陰と陽の世界」を体感できるものです。

「偕楽園」では、早春になると約3000本、約100種類の梅林が甘い香りを漂わせ、園内を彩ります。梅が終わると、3月下旬から近くの桜山、千波湖周辺で桜が咲き、「楽寿楼」からも眺められます。水戸の桜まつりも行われますよ。また、GWには「好文亭」周辺を彩るつつじも見ごろです。ぜひ出かけてみませんか。

 

 

文:細江まゆみ 撮影:加藤熊三

 

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