提供:ことりっぷ
下鴨神社の南にたたずむ豪商・三井家の旧別邸「旧三井家下鴨別邸」は、四季折々に表情を変える美しいお庭を眺めながら、ゆるりと過ごせるすてきな場所。ふだんは予約なしでカフェタイムを楽しむことができますが、事前予約をすれば、京都の名店による朝食や、ブランチ、ランチを味わえる特別なプランも日にち限定で用意されています。江戸・明治・大正の3つの時代が結ばれた国指定重要文化財のレトロ空間で、贅沢な時間を過ごしませんか。
世界遺産・下鴨神社のほど近く
入館料は一般500円(土・日曜、祝日は600円)
京阪・出町柳駅または市バス・葵橋西詰の停留所から徒歩5分ほど。下鴨神社の一の鳥居のたもとに「旧三井家下鴨別邸」へといざなう門があります。
「旧三井家下鴨別邸」は、今から100年ほど前の1925(大正14)年、三井十一家が祖霊を祀る顕名(あきな)霊社に参拝する際、休憩するための共有の別邸として造営されたもの。元々この地にあった茶室(江戸時代後期築)、木屋町三条の三井家の木屋町別邸から移築した主屋(明治時代築)、そして造営時に新たに建設された玄関棟(大正時代築)の、3つの時代にわたる建物で構成されています。
シンプルでいて上質な空間を見学
写真左上の洗面所の窓は、当時流行していた中華風のデザイン
敷地の西側にある玄関棟から中へ。ふだん見学できるのは、玄関棟と主屋の1階部分です。一見シンプルな造りですが、床の間の柱や洗面所の壁など随所に上質な素材が使われていて、照明やガラス窓、釘隠しといった小粋な意匠にも注目です。
若くして夭逝した江戸時代後期の日本画家・原在正による希少な作品のひとつ、杉戸絵(一般の撮影は不可) 表面にゆらぎのある明治時代のガラス越しに眺めてみて
いちばんの見どころは、茶人藪内節庵が作庭したと伝わる、苔が基調の風流なお庭です。主屋の座敷に座って眺めたり、そぞろ歩いたり。サルスベリやキキョウ、モミジなど四季の移ろいとともに表情を変える庭園の中央にあるのは、ひょうたん形の池。下鴨神社の糺の森を通って鴨川へと流れていく清流・泉川の水を引いているため、国の特別天然記念物に指定されるオオサンショウウオが見つかったこともあるそうです。
秋のはじめには、サルスベリの花筏も見られる よほど居心地がいいのか、春が見頃のはずのヤマブキの名残も
お庭を眺めながらカフェタイム
「自家製濃茶ゼリー(ほうじ茶付き)」650円(入館料別) ※混雑時は相席や時間制限の場合あり。主屋の座敷での喫茶は平日のみ
玄関棟の広間か主屋1階の座敷のいずれかで楽しめる喫茶は、予約不要で利用できます。亀屋良長の銘菓・烏羽玉や、抹茶ケーキセット(夏はわらび羹)、ぜんざいのほか、香り高い濃茶を使った自家製濃茶ゼリーが人気です。
通常非公開の2階でブランチタイム
「ブランチプラン」3000円(10:00~11:00/入館料別/3日前までに要予約)
2階と3階は毎年11月中旬から12月上旬の紅葉の時期に特別公開されますが、ふだんは非公開。そんな特別な空間で京都の名店の食事やサンドイッチが味わえるという、知る人ぞ知るスペシャルなプランが用意されています。朝食は泉仙の精進料理、ランチは三友居の茶懐石のお弁当、いちおしは、下鴨神社の北にあるフルーツパーラー「ホソカワ」の季節替わりのフルーツサンドが味わえるブランチプランです。開催日が限られているので、詳細はホームページで確認を。
2階の広間は、主屋でもっとも広い14畳 2階の縁廊下にでてお庭を一望
ブランチの後は特別に3階望楼へ
雨戸を格納する戸袋を秘かに窓下に設け、デザイン性と実用性を兼ね備える
ブランチや、朝食、ランチを楽しんだあとは、3階の望楼の見学もOK。全方位がガラス窓となっていて、360度のパノラマビューが広がります。下鴨神社の一の鳥居、京都のシンボル・大文字山や比叡山の稜線、三井家の菩提寺である真如堂付近なども見渡せ、爽快な気分に。
2階から望楼へ上がる階段の木製引き戸は、そろばん状のレールが付いたジャバラ式。すぐれた職人技を間近に見られる
オリジナルアイテムをおみやげに
眺める角度を変えるとほのかに輝く「木版手摺り 唐紙はがき」1枚330円
石臼挽き抹茶をたっぷり練り込んだ「濃抹茶パウンドケーキ」などオリジナルのおみやげもあります。新しくお目見えしたのは、下鴨別邸ゆかりの意匠を紋様にし、伝統の和紙に木版手摺りを施した唐紙はがき。庭池の「瓢箪」、茶室の「梅鉢窓」、玄関棟襖の「菊菱紋様」、下鴨神社の神紋「双葉葵」の4種がそろいます。
ちょっぴり早起きして下鴨神社でお参りした後に、旧三井家下鴨別邸でブランチ、そして鴨川さんぽという流れがおすすめのコース。水や自然を身近に感じ、心潤う一日を過ごせますよ。
文:佐藤理菜子 撮影:マツダナオキ