提供:ことりっぷ
「小石川植物園」は植物学の研究・教育を目的とする東京大学の附属施設。朝の連続ドラマにも登場したので、知っている人も多いかもしれません。広大な敷地では、さまざまな種類の植物が生き生きと育ち、東京23区内とは思えないほど。貴重な分株や接ぎ木などがありながら、並木道や日本庭園なども楽しめる、魅力たっぷりの「小石川植物園」をご紹介します。
広大な園内はさまざまな植物たちの世界
南側にある正門から園内へ
「小石川植物園」の正式名は「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」。植物学の研究・教育を目的とする東京大学の附属施設です。
1684(貞享元)年に、江戸幕府が設置した小石川御薬園(おやくえん)が遠い前身で、1877(明治10)年に東京大学が設立された直後に附属植物園となり、一般公開されました。
初夏に実をつけるウメの木。2月中旬~3月上旬にはウメ林の花が見頃に
正門を入ると、16万1588㎡という敷地に豊かな緑が広がっています。
季節ごとに鮮やかな花を咲かせる草木、驚くほど大きな巨木……種類豊富なたくさんの植物が育ち、東京23区内とは思えないくらいです。
季節になると、アジサイも園内あちらこちらで見られる 人と比べると、その大きさがわかる「大クスノキ」
研究成果を感じる植物との出会いも
目の当たりにすると感動する「メンデルのブドウ」(左)と「ニュートンのリンゴ」(右)
園内では、大学の付属施設らしく、日本植物学の研究成果が垣間見られる植物にも出会えます。
遺伝学の基礎を築いたメンデルが実験に用いたブドウの分株である「メンデルのブドウ」、物理学者ニュートンがリンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の法則を発見した生家のリンゴの木の接ぎ木である「ニュートンのリンゴ」。
教科書にも出ていた法則ゆかりの植物には、「これがあの…」と感動を覚えるほどです。
「精子発見のソテツ」(左)と「精子発見のイチョウ」(右)。イチョウは樹齢約300年の巨木
ほかにも、正門を入って最初に出会う「精子発見のソテツ」は、裸子植物のソテツに精子が存在することが発見され、研究に用いられた鹿児島市内に現存する株の分株で、樹齢300年ほどの巨木となった「精子発見のイチョウ」もあります。
また、温室もあり、フィリピンやインドネシアなどの東南アジアをはじめとする産地の、珍しい形をしていたり、色鮮やかな花を咲かす植物も待っています。
東南アジアや熱帯アフリカなどの植物を展示
日本庭園や重要文化財の建物、並木道も楽しめる
造園家は不明だが、江戸時代の代表的な庭園のひとつといわれる「日本庭園」
園内には、散策を楽しめる要素が、いろいろ点在しています。
奥に広がる「日本庭園」は、第5代将軍の徳川綱吉の幼少期の居邸であった白山御殿の庭園に由来するもので、江戸時代末期には蜷川能登守の江戸下屋敷の一部だったそう。
「旧東京医学校本館」は重要文化財に指定されている
また、庭園のなかには、「旧東京医学校本館」が現在は「総合研究博物館小石川分館」となって残っています。1876(明治9)年に造られた、東京大学に関係する現存最古の建物です。
(左)イロハモミジ並木と(右)ボダイジュ並木。イロハモミジは秋になると真っ赤に染まる
ほかにも、整備されて美しい並木道になっているところや、ひっそりとたたずむお稲荷さんなどもあります。
植物に守られているような太郎稲荷。少し離れたところには次郎稲荷もある
植物学に関するさまざまな資料を所蔵する「本館」
内田祥三(よしかず)の設計により1939(昭和14)年に完成した「本館」
植物学の研究成果は、園内にある「本館」に集まっています。約70万点の植物標本、約2万冊の植物学図書を所蔵していて、日々、研究に活用されています。残念ながら一般公開はされていませんが、モダンなデザインで外観もすてきです。
「柴田記念館」は10:30~16:00開館
また、理学部植物学教室の教授であった柴田桂太の生理化学研究室として1919(大正8)年に建設された建物も、「柴田記念館」として残っています。洋風なかわいい造りで、資料館になっていて中に入ることができます。
朝ドラの主人公のモデルとしておなじみの牧野富太郎をはじめ、関連する資料の展示やオリジナルグッズの販売もされています。
どの季節に行っても、違った表情で楽しませてくれる「小石川植物園」。今度のお休みに行ってみませんか。
牧野富太郎が編集した『大日本植物志』よりアズマシロカネソウ(左)、38~39歳の牧野富太郎(右)のポストカード。各110円
文:いちきドーナツ 市来恭子 撮影:依田佳子