UNESCO(ユネスコ・国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会は2021年7月27日、北海道と青森、岩手、秋田の3県に点在する「北海道・北東北の縄文遺跡群」を世界文化遺産に登録することを決定しました。2021年5月、ユネスコの諮問機関「ICOMOS(イコモス・国際記念物遺跡会議)」が、「北海道・北東北の縄文遺跡群」について世界遺産への登録がふさわしいとする勧告をまとめていました。
約15000年前の暮らしや精神世界を示す「縄文遺跡群」
今回登録が決定した「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、約15000年前に遡る農耕以前の定住生活や精神文化を示す考古遺跡。北海道、青森県、岩手県、秋田県に点在する17の考古遺跡で構成され、国の特別史跡に指定されている三内丸山(さんないまるやま)遺跡や大湯環状列石(おおゆかんじょうれっせき)などが含まれています。
イコモスでは、2020年の夏から冬ごろにかけて、現地調査と書類審査による審査を実施。その結果を受けて、世界遺産に登録することがふさわしいとする「記載」の勧告をまとめていました。
勧告についてイコモスは「農耕を伴わない定住社会及び複雑な精神文化を示している」とともに「定住社会の発展段階や様々な環境変化の適応を示している」という評価結果を発表。「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、農耕以前における人類の生活の在り方と、精緻で複雑な精神文化を顕著に示す物証であるとしました。
世界文化遺産登録に至るまでの長い道のり
「北海道・北東北の縄文遺跡群」の推薦・登録には長い道のりがありました。まず2009年に世界遺産候補として国内の暫定一覧表に記載されたものの、文化審議会では落選してしまいます。
2018年にはようやく2020年登録の推薦候補に選定されましたが、ユネスコが2020年登録の審査から、自然遺産と文化遺産を合わせた推薦枠を1国1件に制限することを発表。それを受けて自然遺産登録を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が推薦され、縄文遺跡群は2021年の推薦枠として見送られました。
しかし、2020年の世界遺産委員会が新型コロナウイルスの影響で延期に。2021年7月に開かれた世界遺産委員会で、2020年分と2021年分の候補が合わせて審査され、悲願の世界文化遺産登録が決定しました。
今回の登録は、2019年の「百舌鳥・ 古市古墳群」(大阪府)に続く20件目。自然遺産候補の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」とともに登録されたことで、日本の世界遺産は計25件となりました。
遠い祖先の暮らしや精神性を肌で感じられる縄文遺跡群、ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。