100万ドルの夜景、新鮮な海の幸、異国情緒あふれる洋館。観光地としての魅力が満載の北海道函館市にあるのが「湯の川温泉」です。「日本一空港に近い温泉街」とも言われ、楽天トラベルが発表する「人気温泉地ランキング」でも常連の温泉地。豊富なお湯だけでなく、趣ある街並みの中でグルメや植物園とサル、神社仏閣をめぐる散歩も楽しめる場所。函館観光の際は、湯の川に泊まって温泉街散策を楽しみましょう!
年間約130万人が宿泊する道内屈指の温泉街
温泉街としての始まりは、1886(明治19)年。戊辰戦争時には幕末の戦士が傷を癒やしたという歴史もあり、どこか明治・大正ロマンの漂うノスタルジックな雰囲気が魅力です。その街並みや良質なお湯を求めて、年間約130万もの人が宿泊しています。
泉質は、ナトリウム・カルシウム―塩化物泉(中性等張性高温泉)で、無臭の無色透明。肌ざわりがさらりとしているのが特長です。地下およそ100メートルで温泉が湧き出てしまうため、井戸を掘ることができなかったという過去もあるそうで、湯量がとても豊富な温泉地だということが分かります。
湯の川温泉までは、JR「函館」駅から路面電車の函館市電で約30分。「湯の川温泉」または終点の「湯の川」停留場で下車すると到着です。
函館空港からであれば車で約5分の場所に位置しており、「日本一空港に近い温泉街」とも呼ばれるアクセス良好な立地。市電やタクシーのほか、函館山の夜景を見に行くことのできる観光バスなども運行しており、函館観光の拠点としての使い勝手も抜群です。
中央には南北に松倉川が流れ、函館の海岸線まで温泉街が広がっています。市電からほど近い内陸側も、美しい眺望の露天風呂が特徴的な海側も、魅力的な宿泊施設が立ち並び、その数はおよそ30軒以上。立ち寄り湯をはじめ、グルメに観光スポットなど、1日かけて過ごせるほど見どころの多い温泉街です。宿泊する日はちょっと早めに到着して、散策に出かけてみるとよいでしょう。
湯めぐりで温泉街気分を堪能!
せっかく温泉街に宿泊するのであれば、泊まる宿以外のお湯にも浸かってみたいですよね。そこで、日帰り入浴で訪れたい3つの施設をご紹介。まずは湯めぐりを楽しみましょう。
足湯「湯巡り舞台」がお出迎え!
函館市電「湯の川温泉」停留場を下車すると、すぐに足湯「湯巡り舞台」がお出迎え。2007年12月にオープンして以来、観光客のみならず市民にも人気のスポットです。利用は無料。タオルを持参して足をつけてみましょう。
足元からポカポカと温まり、熱すぎない適度な湯温に長旅の疲れも癒やされます。屋根がかかっているので、多少であれば雨や雪の時でも利用可能。地元の人も利用しているので、これから始まる散策に向けてローカルな情報を聞いてみるのもいいですね。
湯巡り舞台
- 住所
- 北海道函館市湯川町1-16-5
- 利用時間
- 9:00~21:00
- 料金
- 無料
- アクセス
- 函館市電「湯の川温泉」停留場から徒歩約1分
展望露天風呂が自慢!「湯の川温泉 湯元啄木亭」
続いて訪れたいのは、「湯の川温泉 湯元啄木亭」です。足湯からは徒歩約3分の立地。最上階である11階浴場の眺望が評判の宿泊施設ですが、日帰り入浴を楽しむこともできます。
フロントで入浴料の支払いを済ませ、日帰りの印である黄色いスリッパに履き替えます。荷物が大きい場合は、フロントに預けることも可能です。
いざ、浴場のある11階へ。こちらは、女湯の内湯「空中大浴殿 雲海」。幅約30メートルの広い窓からは、湯の川温泉街を眼下に収め、遠くには恵山(えさん)や函館空港も見渡せるダイナミックな景色が広がります。
お待ちかねの露天風呂「空中露天風呂 いさりび」からは、山並みと海岸線という絶景が! 函館空港に離着陸する飛行機も間近に見え、頭上を飛び去る様子は大迫力。日本一空港に近い温泉街ならではの体験を楽しむことができます。
湯の川温泉 湯元啄木亭
- 住所
- 北海道函館市湯川町1-18-15
- 日帰り入浴料金
- 大人1,200円、小学生600円、幼児無料
※タオル利用は別料金300円
- 日帰り入浴可能時間
- 6:00~9:00(最終受付8:00)、13:00~21:00(最終受付20:00)
- アクセス
- 函館市電「湯の川温泉」停留場から徒歩約3分
至れり尽くせりの湯上りサービス「湯の川温泉 笑 函館屋」
「湯の川温泉 湯元啄木亭」から松倉川を渡り、徒歩約10分の「湯の川温泉 笑(えみ)函館屋」。2016年4月にオープンしたモダンな外観で、センスを感じる調度品とホスピタリティに溢れた空間が心地よいと評判のホテルです。こちらでも日帰り入浴の利用が可能。
囲炉裏のあるロビーは清潔感があり、リラックスできる空間。これからどんなお湯に浸かれるのだろうと期待も高まります。
ウエルカムドリンクとして、初夏にピッタリなレモネードのサービスが。冬には甘酒がふるまわれるなど、毎月季節に合わせたドリンクが訪れる人を歓迎してくれます。
日帰り入浴料1,000円を払い、さっそく浴場へ。脱衣所に無料で利用できるタオルが用意されているのも、日帰り入浴者にはうれしいポイントですね。
加水をしない源泉かけ流しのお湯は、温泉職人が絶えず湯温を管理しているというこだわりようです。
自慢の露天風呂は、男湯・女湯ともにシックで落ち着いた雰囲気なので、居心地がよくつい長居をしてしまいそう。湯の川温泉は無臭なので、硫黄の匂いが苦手な人でも長く入っていられると好評です。
そして、湯上りにはこんなうれしいサービスが!
ドリンクコーナーは、なんと利用無料。函館の老舗「美鈴珈琲」のコーヒーをはじめ、スパークリングワインや函館牛乳のソフトクリームまで、セルフスタイルで楽しむことができます。
「びっくりするくらい旨い」というポップに促され、自分で盛ったソフトクリームを1口。上質な函館牛乳の旨みを凝縮した上品な味わいで、さっぱりしたい湯上りにぴったりです。食べ放題ではありませんので、1~2杯に留めてくださいね!
湯の川温泉 笑 函館屋
- 住所
- 北海道函館市湯川3-10-3
- 日帰り入浴料金
- 大人1,000円、小学生以下500円、幼児無料
※無料のタオルあり
- 日帰り入浴可能時間
- 15:00~21:00(受付は20:00まで)
- アクセス
- 函館市電「湯の川」停留場から徒歩約10分
サルも温泉に浸かる!函館市熱帯植物園
湯めぐりで身も心もほぐされたところで、温泉街をぶらり散歩。ノスタルジックな街中には、植物園やグルメ、歴史ある神社仏閣など見どころが満載です!
「湯の川温泉 笑 函館屋」からすぐのところにある「函館市熱帯植物園」は、湯の川温泉の人気観光スポット。「常夏気分を味わえる植物園」をキャッチコピーに1970年に開園し、約300種3,000本の南国の植物が展示されています。
温室ではブーゲンビレアをはじめ、ハイビスカスやエンジェルトランペットなど目にも鮮やかな花々のほか、バナナやゴムの木など南国の樹木を一年中観賞することができます。
自慢のブーゲンビレア花壇の前では、撮影ポイントの案内が出ているので、ぜひ記念撮影を。
お花の全景と一緒に写りたい場合は「白い階段」、自撮りをするならお花を間近に収められる「木の階段」と、思い出を2つのアングルで残しておきましょう。
湯の川温泉の人気観光スポットとして植物園の名を広めたのが、このサル山です。開園の翌年にニホンザル20頭の飼育を始め、現在はその子孫たち70頭以上が生活しています。
人気の秘密は、ニホンザルが露天風呂でくつろぐ恒例行事「サル山温泉」。12月から5月初旬までプールに温泉が張られ、気持ちよさそうに温まる姿がかわいいと話題になっています。温泉街のお湯なので、格別に気持ちがよいのかもしれませんね。
本来、ニホンザルは水を嫌うため、暑い日でも水浴びをすることはありません。しかし、函館市熱帯植物園のサルは函館の厳しい寒さをしのぐための手段として、人間と同じように温泉に浸かることを覚えたのだとか。
暖かい時期に温泉は張られていませんが、サルの餌(100円)を購入してサルたちとコミュニケーションをとってみてください。手を叩いてアピールする姿に癒やされること間違いなしです!
函館市熱帯植物園
- 住所
- 北海道函館市湯川町3-1-15
- 電話
- 0138-57-7833
- 営業時間
- 4~10月/9:30~18:00、11~3月/9:30~16:30
- 料金
- 大人300円、小・中学生100円
- アクセス
- 函館市電「湯の川」停留場から徒歩約15分
- 公式サイト
- 函館市熱帯植物園
植物園に来た際には、こちらもおすすめ。
裏手の砂浜は、波に流されるうちに角が取れてくもりガラスのような風合いとなったガラス片「シーグラス」を見つけることができる穴場スポット。波が荒い日の翌日は、特にたくさん漂着していますよ。色とりどりのシーグラスを浜辺に並べて写真を撮れば、旅の記念にもなりますね。
函館の海の幸に舌鼓!「エル・アペティー」
散策を楽しんだら、そろそろお腹の空く時間。ランチを食べに向かいましょう。植物園近くの洋食店「エル・アペティー」は、家庭的でとても入りやすい雰囲気。
こちらではパスタやハンバーグ、日替わりのステーキ丼など洋食全般が提供されていますが、中でもおすすめの「ペスカトーレ」(1,250円、ドリンク別料金)をいただきましょう。
運ばれてくるなり、ホタテ、エビ、アサリ、イカなどがゴロゴロと入ったボリュームに驚かずにいられません!
トマトソースにガーリックをスライス状にして加えることで、濃厚な魚介のうまみや奥深さをさらに引き立てます。
オーナーの佐藤さんは有名ホテルで洋食の腕を磨いた後、生まれ育った函館で「エル・アペティー」を開業。フランス語で「食欲」という店名の通り、お腹がいっぱいになるコスパの高いレストランでした。
エル・アペティー
- 住所
- 北海道函館市湯川町3-2-3
- 電話
- 0138-57-8841
- 営業時間
- 11:00~13:30、17:00~19:30
- 定休日
- 木曜日
- アクセス
- 函館市電「湯の川」から徒歩約15分
「コーヒールームきくち」で大人気ソフトクリームを!
「エル・アペティー」をあとにして10分ほど歩いたところにあるのが、「コーヒールームきくち」。喫茶店ですがソフトクリームが大人気で、その認知度は函館でも随一。テイクアウトできるので、食べ歩きにもぴったりです。
ソフトクリームの販売を開始したのは1973年。今や地元のFM番組が企画した「函館といえば…ランキング」でも、10位にランクインするほどの人気商品となりました。
コーヒーショップらしいモカ、牛乳の味を存分に楽しめるバニラ、そしてミックスと3種類のフレーバーを展開。テイクアウトは、いずれも300円です。モカは、こちらも函館の有名店「美鈴珈琲」の豆からお店で丁寧に淹れたコーヒーを使用し、喫茶店ならではのこだわりの味。
コーヒーの奥深いほろ苦さ、そして牛乳のミルキーな濃厚さがありながらも、ジェラートのようにシャリシャリとした独特の食感がたまりません! 食後にもぺろりといただける、さっぱりとした口当たりです。
コーヒールームきくち
- 住所
- 北海道函館市湯川町3-13-19
- 電話
- 0138-59-3495
- 営業時間
- 喫茶店(イートイン)/9:30~18:30
ソフトクリームテイクアウト/9:30~19:00
- 定休日
- なし(12/30~1/1は休み)
- アクセス
- 函館市電「湯の川」停留場から徒歩約8分
- 公式サイト
- コーヒールーム きくち
地元に根付く湯川寺でコーヒーブレイク
湯の川温泉には歴史的な建造物も数多く残されています。「コーヒールームきくち」から歩いておよそ6分のところにあるのが、「湯川寺(とうせんじ)」です。
1892(明治25)年に建立され、地元に根付いた由緒正しい寺院です。見どころは、「三十三観音像」。古くから地元の人たちの信仰を支えてきた三十三体の観音像が集められています。すべて表情の異なる観音様は、縁結び、厄除け、料理上手など、1体1体異なるさまざまなご利益があると言われています。お気に入りの1体を探してみるのも楽しいですね。
本堂はステンドグラスで極楽浄土が表されているそうで、おごそかな場所ながらアート作品のような美しさが迎えてくれます。
住職や地元住民が大切にしてきたお寺はそれだけでも見応えがありますが、最近ではこんな取り組みも。訪れる人と僧侶が交流できる機会が増えればと、境内にカフェスペース「結-Yui」を開きました。法要などの都合でお休みする場合もありますが、のぼりがオープンの合図です。
キャッチコピーは「会いにいけるお寺」。お寺の境内とは思えないほど明るくモダンな室内では、お賽銭として100円を納めるとセルフサービスのコーヒーがいただけます。お寺に贈られたお菓子などが「おすそわけ」としてふるまわれることも。
散策の休憩がてら、僧侶や地元の方との交流も楽しんでみてください。
湯川寺
- 住所
- 北海道函館市湯川町3-35-10
- 電話
- 0138-57-6449
- 利用時間
- 【境内】自由
【カフェ「結-Yui」】4月末から11月末までの月~土曜日/13:00~17:00頃まで
- アクセス
- 函館市電「湯の川」停留場から徒歩約3分
- 公式サイト
- 函館市 湯川町のお寺 湯川寺
湯の川温泉始まりの地、湯倉神社へ
「湯川寺」から北西へ徒歩4分ほど歩いた場所にあるのが「湯倉神社」です。湯の川温泉の始まりとされる神社なので、立ち寄っておきましょう。
さかのぼること、室町時代。一人の木こりが現在の境内あたりに湯気が立っているのを発見しました。その湯に痛んでいた腕を浸けると、ほどなくして完治。そのお礼に薬師如来と小さな祠(ほこら)を建立したのが湯倉神社の起源であり、その後も湯治の伝説を生み出してきた湯の川温泉の始まりであると伝えられています。現在では湯の川の代表的な観光スポットとなりました。
訪れる人に人気なのが、竿で吊り上げる「イカすおみくじ」(初穂料として300円)です。
張り子のイカには、「えぞみくじ」が添付されており、「冷静に物事が見られないときっしょ(冷静に物事が見られない時でしょう)」「けっぱれ!(がんばれ)」など、北海道弁で語りかけてくれます。函館らしいおみくじは、お土産にしても喜ばれそうですね。
湯倉神社
歴史ある温泉街には入浴施設だけでなく、グルメや寺社と、散策が楽しくなるスポットが満載でした。
さらに、湯の川温泉からはさまざまな函館の人気観光スポットまでのアクセスも良好。いずれも車で、「100万ドルの夜景」でおなじみの函館山ロープウェイまでおよそ20分、日本初の女子修道院「トラピスチヌ修道院」へは約10分、幕末の箱館戦争の舞台であり、展望施設が有名な「五稜郭タワー」まではおよそ10分の距離です。
函館を訪れる際には、観光の拠点にも便利な湯の川温泉に宿泊して、温泉街散策を楽しんでください!
取材・写真・文/吉田 匡和
※掲載内容は公開時点のものです。ご利用時と異なることがありますのでご了承ください。
※表示価格は全て税込です。