旅の楽しみ方

住民より多いかかしにオオサンショウウオこんにゃく?広島市湯来町の奇妙な魅力

広島市中心街から北西に車で約1時間。広島市佐伯区湯来町(ゆきちょう)は大峰山、天上山など1,000メートル級の山々に囲まれた自然豊かな場所。広島市民には手軽にアウトドアを満喫できるスポットとして親しまれています。

そんなのどかな湯来町ですが、有名人にそっくりなかかしが町民よりも多くあふれ、町内を流れる清流・水内川(みのちがわ)にすむ「オオサンショウウオ」をかたどった名物・オオサンショウウオこんにゃくがSNSで拡散される、奇妙なエリアとして今、大注目! 不思議な魅力に加えて、食も温泉もある。2度目の広島旅行で訪れたいディープな湯来町を紹介します。

住民の数より多い「かかし」の町⁉

テレビでおなじみの有名人が集う里山を散策

湯来ロッジ

JR広島駅から車で約1時間、路線バスならJR五日市駅南口から約1時間10分で湯来町の観光拠点となる広島市国民宿舎「湯来ロッジ」に到着します。噂の「リアルかかしの里山」は、そこから国道488号を6キロメートルほど西へ。

大阪城公園へのアクセス

山道を抜け、上多田集落に到着。広場に車を止めて、作業をしている人に道を尋ねようとしたところ、なんと、全員かかしでした!

ここ上多田集落は人口100人未満の限界集落ですが、かかしの数は人間より多い120体以上! 広場の横には、ひときわにぎやかにかかしが集まっているオレンジ色の屋根の家があります。

大阪城公園へのアクセス

民家の玄関前を覗けば、テレビで見かけたことのある有名人がいっぱい! 顔はもちろんのこと、佇まいまでよく似ていて、かかしとは思えないそのクオリティの高さに驚いてしまいます。

「リアルかかし」を作る森本さん夫妻

この「リアルかかし」を作っているのが、森本さん夫妻。夫の昌利さんが骨格を担当し、木材を使ってかかしの背と手足の骨食みを作ります。それに妻の衣江さんが肉付けをして顔を作り、衣装を着せるという分担制で約1週間かけて1体のかかしを完成させているのだそうです。

衣江さんのお父さんをしのんで作ったかかし

かかしが集合するこちらの家は衣江さんの実家で、お父さんが亡くなって空き家になってしまいました。故人をしのんで愛用していた衣装を着せたかかしを作り、家の前に座らせてみたところ、近所で評判に。今では遠くから見物にくる人まで現れるようになりました。

それをきっかけに「面白いからもっと作って!」とのリクエストに応えて8年前から本格的に制作し始め、今では多田地区に150体以上のかかしを存在させるまでになりました。

広島電鉄の運転手だったというお父さんの形見の帽子をかぶり、ステッキを持った一作目のかかしが、今日もにこやかにほほ笑んでいます。

大阪城公園へのアクセス

全国にかかし村は数多くありますが、森本夫婦が作るかかしの特徴は、その精巧さにあります。目のまわりのくまどりや耳の中まで、衣江さんが丁寧にひと針ひと針刺し、目の下のシワやたるみまで表現するという細かさ。

人間のようなしなやかな動きのかかし

昌利さんの作る骨組みが、人間のようなしなやかな動きを表現しているのもポイント。体が出来上がった後で服を着せてポーズを作ります。屋外に置かれているかかしは傷みが早いので、定期的に服を着せ替えてメンテナンスもしているそうです。

指一本一本の動きにまでこだわって作られたかかしたち

指一本一本の動きにまでこだわって作られた、かかしたちが暮らす集落の日常。昼の日差しの中で、ほっこり心がなごみます。でも、夜だとけっこう怖いかも…。

訪れた人たちが感想を書き込んだノート

「わざわざここまで足を運んで、私たちの作るかかしを見に来てくれる人がいる。そして喜んでもらえるなんて、こんなにうれしいことはない」と森本夫妻。一作目のかかしの後ろにはノートが掛けられてあり、訪れた人たちが感想を書き込めるようになっています。森本夫妻はそのメッセージを全て読み、返事を書き添えています。

リクエストに応えて作られたかかし

ノートには新作のリクエストが書き込まれていることも多いそうで、こちらの方々はそこから生まれたもの。細部までこだわる森本夫妻のかかしらしく、左側の3人組は身長までご本人たちと同じ高さになっています。

「喜んでくれる人たちがいる限り、かかし作りを続けていきたい」と、森本夫妻は日々かかし作りに取り組み、「リアルかかしの里」ににぎわいをもたらしています。

リアルかかしの里山

住所
広島県広島市佐伯区湯来町多田526

レトロな田舎カフェでくつろぎタイム

田舎cafe おそらゆき

リアルかかしの里山から歩いて5分ほどの場所にある「田舎cafe おそらゆき」は、消防団の屯所だった建物を改装したお洒落なカフェ。

田舎cafe おそらゆきの店内

かつては消防車が入っていた空間とは思えないほどかわいらしくリフォームされた店内。フェアトレード豆を使用した有機コーヒー、地産地消にこだわった素材でつくられたケーキやタルトなどが楽しめます。

大阪城公園へのアクセス

日に4ピース限定の「木の実のタルト」と「豆乳カフェラテ」(ともに600円)。かかしの町民とふれあった後の一服にいかがですか?

田舎cafe おそらゆき

住所
広島市佐伯区湯来町多田599
営業時間
11:00~夕暮れまで(毎週水曜日のみ営業)
※12月~2月または3月まで冬季休業期間
電話番号
0829-85-0855

キモかわいいとSNSで話題の広島の新名物!

オオサンショウウオこんにゃく

今、広島でリアルなかかしと並んでSNSに拡散されている奇妙な食べ物があります。今にも動き出しそうな質感が「キモかわいい!」と話題の「オオサンショウウオこんにゃく」です。

湯来町特産のこんにゃくと、水内川に生息するオオサンショウウオを知ってもらいたいと、地元の高校生が発案した湯来の新名物です。

オオサンショウウオこんにゃく

湯来南高校の生徒がデザインし、市立広島工業高校の生徒が型を作って、町内のこんにゃくメーカーの「フジトシ食品」が、オオサンショウウオの質感が出るようにシシャモの卵と海藻を練り込んだ特製の生地で製造しています。

熟練の職人が手作業で製造

型に入れて茹で上がったオオサンショウウオこんにゃくの手足がもげないように、熟練の職人が一体一体をピンセットで丁寧に取り出していきます。手作業のため大量生産ができず、湯来町内の売店か通販でしか手に入れることができません。

熱湯プールを泳ぐオオサンショウウオこんにゃく

あく抜きのため、仕上げに熱湯プールを泳ぐ「オオサンショウウオこんにゃく」(大580円、小216円)。キモかわいい上に、プルプルしたさわり心地で大人気に! 味もぷちぷちとした独特の食感とさっぱりしたしょうゆ出汁のハーモニーがたまらなくおいしいと評判です。

インスタグラムにはアレンジレシピが投稿されるなど、あまりの人気ぶりに生産が追い付かず、通販で注文を受けてから出荷までに2カ月待ちの状態だとか(取材時)。

湯来町内の売店で販売されているオオサンショウウオこんにゃく

湯来町に来れば、湯来ロッジの売店または隣の「湯来特産品市場館」で買うことができます。人気商品のため早々に売り切れてしまうので、できれば朝イチにお店を訪れるのがおすすめ。

山里にチョウザメ⁉ ランチは高級魚の料理に舌鼓

SAMESUN(サメサン)

湯来ロッジから車で10分ほど南に下ったところにあるのが、全国的にも珍しいチョウザメ料理の専門店「SAMESUN(サメサン)」。実は湯来町にはチョウザメの養殖業者「廣嶋蝶鮫(ひろしまちょうざめ)」があり、その直営店。希少なチョウザメのコース料理を気軽にランチで味わえます。

チョウザメの養殖場「廣嶋蝶鮫」

チョウザメといえばキャビアが有名ですが、廣嶋蝶鮫は食用と観賞用の養殖にこだわった日本でも珍しい施設。地元の藤本一義さんが約20年前から研究を始め、現在では数千尾のチョウザメを養殖しています。お店から車で20分ほどのところにあり、見学もできます(要予約)。

そこから卸されるチョウザメの中から、料理人がメニューに合わせて最適な種類やサイズを選び、「おいしいチョウザメを、よりおいしく」食べるための工夫をこらしています。

チョウザメのコース料理

こちらは2,750円のコース(※コース料理は2日前までに要予約)。中央のキャビアがのったクラッカーの右隣りは、チョウザメ料理の中でも珍味中の珍味といわれる肝。ねっとりしたコクのある濃厚な味わいは、一度食べたら忘れられないおいしさです。

他にもあら煮や薬膳スープ、漬け、軟骨唐揚げ、フライに天ぷらなど、チョウザメづくしの料理が並びます。

チョウザメの刺身

チョウザメはその見た目からサメという名前がついていますが、サメではありません。フグや鯛に似た食感で、クセのない白身の魚です。ヘルシーで栄養価も高く、ヨーロッパでは高級食材とされています。

チョウザメのお茶漬け

〆は新鮮なチョウザメの刺し身をのせたお茶漬け。プリプリとした歯ごたえがたまらない、上品な味のお茶漬けは「SAMESUN」に毎日通いたくなるほどのおいしさです。

SAMESUN(サメサン)

住所
広島市佐伯区伏谷1351-1
※2020年秋に「廣嶋蝶鮫養魚場」へ移転予定
営業時間
11:00~15:00(L.O.14:30)
定休日
火・水曜日(祝日営業、翌日休み)
※2020年1月より不定休
電話番号
090‐9738‐0935

廣嶋蝶鮫 養魚場見学

住所
広島県広島市佐伯区湯来町大字多田214
見学時間
15:00~(1時間程度)
定休日
火・水曜日
見学料
見学のみ 1,000円、SAMESUN食事の方 500円
電話番号
0829‐85‐0257

清流・水内川で遊ぶ!

湯来釣り堀で清流釣りを体験しよう!

湯来釣り堀

ランチの後は、車で10分ほど湯来町方面に戻りった水内川沿いにある「湯来釣り堀」で遊びましょう。

湯来釣り堀

手ぶらで気軽に釣りが楽しめる「湯来釣り堀」は、1958年創業の老舗釣り堀。水内川のアユは、全国各地の河川でとれた鮎を塩焼きにして食べ比べる「清流めぐり利き鮎会」で過去3回も準グランプリを獲得するほど、高品質のアユとして知られています。

約2千坪の広大な敷地にある池では、そんな優れた河川環境が保たれた水内川からの清流が引き込まれ、アユ(夏季のみ)、マス、ヤマメが放流されています。週末にはいつもたくさんの家族連れでにぎわう人気のレジャースポットです。

塩焼き

釣った魚は施設内で調理してもらって食べることができます。下処理をしてもらって持ち帰ることもできますが、塩焼きや唐揚げで味わう人が多いそう。自分で釣った魚の味は格別なので、新鮮なうちにその場でいただくのがベストです。

オーナーの守下さん

釣れない場合はオーナーの守下さんにアドバイスを仰いでみてください。おすすめのポイントを紹介してくれますよ。

湯来釣り堀

住所
広島市佐伯区湯来町菅沢849-1
営業時間
9:00~17:00
定休日
木曜日、年末年始
料金
ヤマメ・マス用竿レンタル代:500円、アユ用竿レンタル代:200円 、釣り上げた魚代:マス100g 220円〜ほか
電話番号
0829-83-0556

シャワークライミングで滝つぼにダイブ!

シャワークライミング

湯来を訪れたならチャレンジしたいのが、水内川を約1時間半~2時間かけて上る「シャワークライミング」。湯来ロッジ隣の「湯来交流センター」が主催するリバーアドベンチャープログラムの中のひとつで、初級から上級まで3種類のコースが用意されています。

初級コースなら小学4年生から参加できます(9,000円~/人、装備・保険料込)。

水内川の最上流域をガイドと一緒に大冒険

個人では行くことが難しい水内川の最上流域をガイドと一緒に大冒険。激流を乗り越えたり、滝を登ったり…。オオサンショウウオがすむ広島県内きっての清流をめいっぱい体感できます。

崖からのダイブ

クライマックスは、スリル満点な約6メートルの崖から滝つぼへのダイブ! 勇気を出して仲間とともにするチャレンジ体験は、忘れられない思い出になるでしょう。

シャワークライミング

場所
水内川上流域
開催時期
4~10月
催行条件
2名様以上で随時開催(9,000円~/人)
申し込み締切
前日の17時まで
問い合わせ・申し込み・集合場所
湯来交流体験センター
TEL:0829-40-6016
住所:広島市佐伯区湯来町多田(湯来ロッジ隣)
詳細
湯来交流体験センター公式ページ

体験牧場の搾りたてミルクでつくった絶品ジェラート

KUBO AGRI FARM

「湯来釣り堀」から車で10分ほど南に行った体験型牧場「KUBO AGRI FARM(久保アグリファーム)」。23ヘクタールもある広大な牧場には、約120頭の乳牛が飼育され、搾りたての牛乳からつくられる絶品ジェラードとソフトクリームが敷地内にあるカフェ「wonder milk FALO」で味わえます。

KUBO AGRI FARMのソフトクリーム

一番人気の搾りたて牛乳からつくられた濃厚ソフトクリームは、生乳のようななめらかな舌ざわりとコクが特徴の一品(360円~)。他にもショーケースの中にはベルギー産のチョコや、京都産の抹茶など、素材にこだわってつくられたおいしいジェラートがたくさん並んでいます。

wonder milk FALOの店内

ソフトクリームやジェラートのほか、店内ではサンドイッチやコーヒーなどのドリンクも提供されています。

久保アグリファーム

木のぬくもりを感じるおしゃれな店内で食べるのもいいですが、すぐ横に広がる大草原に出て、青空を眺めながら食べるのも気持ちがいいですね。牧場には子どもが遊べる遊具も設置されています。

乳搾り体験

「KUBO AGRI FARM」では予約すれば、乳搾り体験やバター作り体験(500円~)もできますよ。

KUBO AGURI FARM(久保アグリファーム)

住所
広島市佐伯区湯来町白砂1207-2
営業時間
11:00~17:00
定休日
火曜日
電話番号
0829-86-0337

広島の奥座敷「湯来温泉」で温泉も楽しめる!

湯来温泉

広島市に属していますが、市内中心街とは全く趣の違う里山の風景が広がる湯来町。町内にはスタート地点の湯来ロッジのほか、“広島の奥座敷”と呼ばれ、江戸時代から湯治場として親しまれてきた「湯の山温泉」もあり、のんびりと温泉浴を楽しむこともできます。ディープな広島の魅力に触れてみたければ、ちょっと奇妙で新しい、湯来町を訪れてみてはいかがでしょう。

取材・撮影・文/林ぶんこ

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