全国各地に1万以上ある諏訪神社の総本社として知られる「諏訪大社」。長野県にある諏訪湖の周辺には、上社前宮・本宮、下社秋宮・春宮の4カ所の境内地*を所有しており、これらをすべて回ることで、より深く諏訪大社の魅力に触れることができます。今回は、諏訪大社4社を巡るおすすめコースをご紹介します。
*境内地…神社や寺などが所有する土地のこと
目次
諏訪大社へのアクセス
諏訪大社の4社は離れた場所にあり、それぞれエリアが異なります。上社本宮があるのは諏訪市、上社前宮は茅野市、下社は秋宮・春宮ともに下諏訪町に建っています。
車で向かう際には、それぞれ最寄りである中央自動車道「諏訪IC」もしくは「岡谷IC」を目指しましょう。
東京方面から行く場合は「高井戸IC」から「諏訪IC」まで約2時間10分。名古屋方面からは、「小牧IC」から中央自動車道を使って「岡谷IC」まで約2時間の道のりです。
電車を利用する場合は、新宿からは「特急あずさ」、名古屋からは「特急しなの」を利用して、それぞれ約2時間前後で到着することができます。
日本最古の神社の一つ「諏訪大社」を知る
諏訪大社の歴史とその特徴とは?
長野県中心部にある諏訪湖は、周囲約16キロメートルの信州で一番大きな湖です。そのほとりに建っているのが諏訪大社。上社(前宮・本宮)と下社(秋宮・春宮)の二社四宮からなる神社で、『古事記』にも登場しているほど長い歴史を持ちます。
自然そのものを神体とする神社で、上社は諏訪湖の南側に位置する守屋山(もりやさん)を神体山に、下社の春宮は杉、秋宮はイチイの木を神木としています。
祭神は「諏訪明神」「お諏訪さま」「諏訪大明神」として親しまれる、建御名方神(たけみなかたのかみ)と、その妃神とされる八坂刀売神(やさかとめのかみ)。下社ではさらに八重事代主神(やえことしろぬしのかみ)もまつられています。
諏訪湖の南に鎮座する「諏訪大社上社」
諏訪信仰発祥の地「諏訪大社上社 前宮」
最初にご紹介するのは、4社の中で唯一本殿を有する「上社前宮」。諏訪湖の南側の日当たりのよい高台にあり、清らかな水が得られる場所です。祭神が最初に居を構えた、諏訪信仰発祥の地として伝えられています。
参拝する際は、立派な鳥居が見える県道16号線沿いの駐車場を利用すると便利です。
駐車場向かいにある鳥居を過ぎると、向かって左手には「十間廊(じゅっけんろう)」があります。名前は、間口(土地や家屋の正面の幅)が三間(約5.5メートル)、奥行きが十間(約18メートル)あることに由来。
入口の鳥居から7分ほど歩くと「本殿」が見えてきます。この社殿自体は天正13(1586)年からあったとされていますが、現在の社殿は昭和7(1932)年に、伊勢神宮から貰った古材を用いて建てられたそう。
本殿の脇から前には「水眼(すいが)」の清流が通っています。これは、本殿から約1キロメートル登った山中にある水源から流れてくるもので、前宮の御手洗川(参拝者が手や口を清める川)や神前に供える水として、古くから大切にされてきました。かつてはこの水で、体も清めてから神事にあたっていたともいわれています。
上社前宮で見逃せないのが4つの「御柱」です。本殿を取り囲むように立っているモミの木のことで、どれも大きく、中には長さ17メートル、重さ10トンを超えるものもあるとか。
本殿に向かって右手前から、時計回りで「一の柱」、「二の柱」、「三の柱」、「四の柱」と名付けられています。
これは、諏訪大社の大祭「式年造営御柱大祭(しきねんぞうえいみはしらたいさい)」(通称:御柱祭(おんばしらさい))で氏子*たちによって建てられたものです。
このお祭りでは、寅と申の年の7年ごとに、山中にある高さ17メートルのモミの木を人力で運び、本殿の四隅に立てていくそう。ほかの3社にも、それぞれに御柱が建てられますが、4本の御柱すべてを間近で見ることができるのは、前宮だけ。せっかくなので、間近でその迫力を実感してみてください。
*氏子…自身が住む土地を守る氏神を信仰する人々のこと
御朱印やお守りは、参道の途中、右手にある社務所で貰うことができます。参拝後はぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
諏訪大社上社前宮
- 住所
- 長野県茅野市宮川2030
- 参拝時間
- 授与所9:00~16:30 ※境内には24時間入場可能
- 定休日
- なし
- アクセス
- 【車】中央自動車道「諏訪」ICから約5分
- 公式サイト
- 諏訪大社上社前宮
独特な社殿配置が特徴的な「諏訪大社上社本宮」
次にご紹介するのは「上社本宮」です。前宮から北西へ車で約4分の場所にあります。幣拝殿(へいはいでん)*と片拝殿(かたはいでん)*のみの本殿を持たない「諏訪造り」の代表的な社殿が特徴的です。また、国の重要文化財として指定されている建造物の数が、4社の中で最も多い場所でもあります。
*幣拝殿…参拝者が訪れたり、神職が祭祀を行ったりする社殿、片拝殿…拝むために本殿の前に建てられた社殿
本宮へ向かう参道は、北参道と東参道の2つ。北参道の入り口には「本宮大駐車場」、東参道入口には「本宮駐車場」があります。
鳥居をくぐって左手には、「明神湯」と呼ばれる温泉が流れ出る手水舎が。
正面の階段を上らずに左へ曲がると見えるのは、上社で最も大きい建物「神楽殿」です。文政10(1827)年に建てられ、現在は国重要文化財に指定されています。中にある大太鼓は江戸時代のもので、現在も元旦に打ち鳴らされているそう。
東参道の鳥居をくぐり、下ったところにあるのは「五間廊」。安永2(1773)年に建造され、諏訪大社の神職が着座したところだと伝えられています。
その「五間廊」の途中、二つの宝殿の間に建つ「四脚門」は、天正10(1582)年に一度焼失した後、慶長13(1608)年に徳川家康が国家の安泰を願い寄進し、再建されました。どちらも国の重要文化財に指定されている場所です。
本宮も前宮と同様に、正面に拝殿と幣殿が続き、左右に片拝殿があるという、本殿を持たない「諏訪造り」の社殿があり、それらすべてが国重要文化財。細部に見事な彫刻がほどこされた現在の社殿は、天保9(1838)年に二代目・立川 和四郎富昌(たてかわ わしろうとみまさ)を中心に建て替えられたもので、立川流の代表作ともいわれています。
左の写真が社殿の近くにある「授与所」で、右が鳥居を過ぎて右手に進んだところにある「社務所」です。
お守りの授与やご祈祷の受付は授与所で、御朱印の受付は社務所で行われています。
北参道の両脇には、土産物店や飲食店が並んでいるので、参拝後に立ち寄るのも楽しそうです。
諏訪大社上社本宮
- 住所
- 長野県諏訪市中洲宮山1
- 参拝時間
- 授与所8:30~17:00、祈祷受付9:00~16:00 ※境内には24時間入場可能
- アクセス
- 【電車】かりんちゃんバス「上社」停留所下車後徒歩約5分
【車】中央自動車道「諏訪」ICから約5分 - 公式サイト
- 諏訪大社 上社本宮
下諏訪宿に鎮座する「諏訪大社 下社」
旧中山道と甲州街道の分岐点に位置する「諏訪大社 下社秋宮」
「上社本宮」から北へ車で約30分の距離には「下社秋宮」があります。JR「下諏訪駅」から徒歩で約11分とアクセスの良い立地です。
駐車場への入り口は、鳥居の右手にあり、奥にある砂利の駐車場にも停めることが可能です。場内は一方通行になっているので、車で行く場合は気を付けましょう。
駐車場からの入口にある「温泉手水」。上社本宮は獅子の頭でしたが、こちらは龍の頭からお湯が注がれています。
鳥居から石段を上った正面にあるのは「根入りの杉」です。樹齢600年ともいわれているこの大きな杉の木は、「丑三つ時(午前2:00~午前2:30までの間)になると枝を下げて寝入りいびきが聞こえてくる」、「子どもに木の皮を煎じて飲ませると夜泣きが止まる」などと言い伝えられてきました。
神楽殿の前にある「狛犬」は、原村出身の彫刻家・清水 多嘉示(しみず たかし)の作品です。青銅製の堂々とした像は、1.7メートルの高さを誇ります。
棟全体がT字型になった三方切妻造り(さんぽうきりつまづくり)の「神楽殿」は、神をまつるための歌と舞の奉納や、祈願を行う建物です。こちらも天保6(1835)年に二代目・立川和四郎富昌により建てられました。
正面に飾られている大注連縄の長さは13メートル。間近で見ると、その大きさに思わず圧倒されます。
神楽殿の奥にあるのは、安永10(1781)年に建立された「幣拝殿」。二重楼門造りの拝殿と左片拝殿、右片拝殿が横に並んでいます。1983年には「神楽殿」とともに国の重要文化財として指定されました。
四宮それぞれにおみくじが設置されていますが、「下社秋宮」では、神楽殿と授与所の間でおみくじをひくことも。
写真左は神楽殿の南側に建つ「授与所」です。右の「社務所」は温泉手水の奥に位置しています。
お守りの授与やご祈祷の受付は授与所、御朱印は社務所で受け取ることが可能です。
諏訪大社下社秋宮
- 住所
- 長野県諏訪郡下諏訪町5828
- 参拝時間
- 授与所8:30~17:00、祈祷受付9:00~16:00 ※境内には24時間入場可能
- アクセス
- 【電車】JR「下諏訪」駅から徒歩約11分
【車】中央自動車道「岡谷」ICより約10分 - 公式サイト
- 諏訪大社 下社秋宮
旧中山道沿いに鎮座する「諏訪大社下社 春宮」
「下社春宮」は秋宮から西へ車で約4分、歩いても約20分の近さにあるため、下諏訪を散策しながら移動するのもおすすめです。入口にある御影石の大鳥居は、万治2(1659)年建立と推定されています。
春宮の手前にある屋根付きの反橋は「下馬橋(げばばし)」です。元文年間(1736~1740年)の改修とみられており、諏訪大社の中でも最も古い建築といわれています。
かつて春宮を参拝する際は、どんなに身分が高い人もこの橋を渡る前に馬から下りなくてはいけなかったそう。その名残で、毎年行われている「遷座祭(せんさざい)」でも、人々はこの橋を通ることができず、神輿(みこし)だけが通ることを許されています。
駐車場があるのは、鳥居の手前右手です。車で行った際にはこちらを利用しましょう。
鳥居をくぐって正面に建つのは「神楽殿」。現在の建物は、昭和11(1936)年に改修されたものです。
神楽殿の奥にある、中央の二重楼門づくりの建物は「幣拝殿」。さらにその左右が「片拝殿」です。秋宮と同じ図面のもと、諏訪宮大工・柴宮 長左衛門(しばみや ちょうざえもん)により、安永9(1780)年に建立されました。幣拝殿、左右片拝殿それぞれが国の重要文化財に指定されています。
神楽殿の東にある大きな杉の木は、先が二股に分かれていますが、根元で一つになっていることから「結びの杉」といわれています。
御朱印の受付、御守の授与が行われているのは、鳥居をくぐって右手にある「社務所」です。ここにも素敵なお守りなどがあるのでぜひチェックしてみてください。
諏訪大社下社春宮
- 住所
- 長野県諏訪郡下諏訪町193
- 参拝時間
- 授与所8:30~16:30 ※境内には24時間入場可能
- アクセス
- 【電車】下諏訪町循環バス「宮の上」停留所下車後徒歩約3分
【車】中央自動車道「岡谷」ICより約10分 - 公式サイト
- 諏訪大社 下社春宮
「茶房まどか」でひと休み
4社を巡る途中や、すべて参拝したあとは、「茶房まどか」でほっと一息。ここは「下社秋宮」から北へ徒歩約2分の場所にある湯宿「御宿まるや」に併設されているお店です。
宿の奥にある茶房へ進む途中には、石川県の陶芸作家が手掛ける陶器などがずらり。見ているだけでも十分楽しいですが、購入することも可能です。
茶房の中は、漆喰の白壁とレトロな格子戸、長野県松本市にある家具ブランド・松本民芸家具の重厚感が相まって、落ち着いた雰囲気がただよっています。
写真は、北海道産の小豆で作る自家製あんこを使った「ぜんざい」と、スッキリとした口あたりが特徴の「珈琲(まるやブレンド)」。ぜんざいは、珈琲セット以外にも「抹茶(温かい・冷たい)」とのセットも。
そのほか、甘さ控えめな「自家製チーズケーキ」と「粒あんサンド」も珈琲とセットで注文できる甘味として用意されています。
昔懐かしい空間の中でゆったりとしたひとときを過ごせそうです。
茶房まどか
- 住所
- 長野県諏訪郡下諏訪町立町3304 御宿まるや併設
- 営業時間
- 11:00~17:00、冬期11:30~16:30
- 定休日
- 水・木曜
- アクセス
- 【電車】JR「下諏訪」駅から徒歩約11分
【車】中央自動車道「岡谷」ICより約10分
御朱印やお守りなど、4社巡りならではの楽しみ方
諏訪大社は、4社それぞれに違うお守りが売られていたり、すべての御朱印を集めると最後に記念品が貰えたりと、4社巡りならではの楽しみ方があります。
上諏訪温泉や下諏訪宿の名湯、趣ある街並みを満喫しながら、古い歴史を持つ諏訪大社それぞれの魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
参拝モデルコースマップ
取材・文/児玉さつき 撮影/Piro Photo Works
関連記事