「日本最後の清流」と呼ばれる、高知県西部を流れる四国最長の河川・四万十川(しまんとがわ)。そこにかかる先人の智恵が生んだ沈下橋(ちんかばし)と周辺の景観は国の「重要文化的景観」に認定され、自然と人が共生する日本の原風景を一目見ようと多くの観光客が訪れています。また、自然を満喫できるアクティビティもいっぱい。レンタサイクルでゆっくりと川沿いの絶景を楽しみながら、四万十川の恵みを体感する旅へ出かけましょう。
雄大な四万十川の自然にふれあえるサイクリング旅へ!
四万十川の川沿いには多くのレンタサイクルターミナルがあり、四万十川の雄大な自然をサイクリングで気軽に楽しめるようになっています。
今回は、四万十市にある土佐くろしお鉄道の「中村駅」をスタートして「江川崎(えかわさき)駅」を目指す約40kmのサイクリングコースをご紹介。食事や休憩なども含めて所要時間4~6時間。観光名所の沈下橋5カ所に立ち寄りながら、のんびり川沿いに上流へと進みます。
四万十川観光の玄関口「中村駅」からスタート!
四万十川観光の入り口となる土佐くろしお鉄道中村駅へは、JR高知駅から特急で約1時間40分。また、東京や新宿、神戸、大阪、京都など大都市と中村駅を結ぶ、高速バスも運行されています。
中村駅がある四万十市の人口は、約3.5万人。のんびりとした雰囲気が漂う駅のロータリーには、「ようこそ!!四万十川へ」と描かれた地元高知県出身の演歌歌手の看板が出迎えてくれます。
2つの貸出システムから選べる!「四万十川レンタサイクル」
駅構内を出てすぐ左手にある四万十市観光協会の案内所では、四万十川観光の情報を調べたり、レンタサイクルできたりします。
こちらのレンタサイクルでは、2つの貸出システムがあります。
まず1つ目は、3種類の自転車から選べる「四万十川レンタサイクル」システム(1,000円~)。乗り捨てはできませんが、音声ナビが付いた電動アシスト自転車も選べるので、安並(やすなみ)水車の里や佐田沈下橋などの近郊をめぐる4~5時間のサイクリングなら、こちらがおすすめです。
2つ目は、中村駅から江川崎までの約40km間の移動手段にもなる、「四万十りんりんサイクル」(1,500円~)。マウンテンバイクしか選べませんが、途中にある7つのサイクルターミナルのどこでも借り出し・返却できるという点が便利です。
また、中村地区や江川崎・西土佐地区に宿泊する場合は、当日の午前11時までに荷物を預ければ宿泊施設まで荷物を届けてくれる、「手ぶら観光」サービス(有料)もこちらの案内所で受け付けています。
四万十市観光協会
- 住所
- 高知県四万十市駅前町8-3
- 営業時間
- 8:30~17:30
- アクセス
- 中村駅ロータリー内
バイクが借りられてツーリングもできる!
中村駅から徒歩2分程度のところに店を構える「SEACIRCLE(シーサークル)」では、レンタルバイクも扱っています。原付なら、ヘルメット代込みで4時間2,000円~。
ほかに中型や大型バイクのレンタルもあるので、気軽に四万十川沿いのツーリングが楽しめます。
SEACIRCLE KJツーリスト
- 住所
- 高知県四万十市駅前町18-19
- 営業時間
- 9:00~18:00
- 定休日
- 不定
- アクセス
- 中村駅より徒歩約2分
町のシンボル「赤鉄橋」と「安並水車の里」
自転車を借りたら、いよいよレンタサイクル旅がスタートです!中村駅は四万十川と後川(うしろがわ)に挟まれた中州の市街地にあり、駅から西に進むとすぐに四万十川が見えてきます。
川の河口から約9kmの地点にかかる「赤鉄橋(あかてつばし)」と呼ばれる四万十川橋は、中村地区の中心部を通り、町のシンボルにもなっています。
町の東側にある後川から川沿いを北上すれば、「安並水車の里」へ。ここは土佐藩山内家の家老・野中兼山が開いた四ヶ村溝(しかむらみぞ)と呼ばれる用水路から水田に水を汲み上げるために、水車が設置されています。
のどかな田園地帯の中、ガタン、ゴトンと音を響かせながら回る十数基の水車。周辺は公園として整備されており、初夏には水路沿いに植えられたアジサイが彩りを添えてくれるフォトジェニックな場所でもあります。
安並水車の里
- 住所
- 高知県四万十市安並
- アクセス
- 中村駅から自転車で約25分
一番人気! 四万十川の沈下橋で最長の「佐田沈下橋」
四万十川の景観と言えば、欄干のない沈下橋が有名。支流も含めると、保存対象に指定された沈下橋は48本にものぼります。水車の里から四万十川沿いに30分ほどペダルを漕げば、四万十川の最下流にかかる沈下橋「佐田沈下橋」に到着します。
2012年のテレビドラマ「遅咲きのヒマワリ」の舞台としても知られており、場所的にも中村駅から約8kmという近さなので、いつも多くの観光客で賑わっている人気の沈下橋。
長さ291.6m、幅4.2mと、四万十川にかかる沈下橋の中では最長で、もちろん自転車に乗ったままでも渡れます。欄干がないので、風の強い日や混雑している時などは押して歩いた方が安全です。
橋から上流を眺めれば、緑の山々に青い四万十川と気持ちのよい光景が広がります。絶景に見とれてたまに落下する自転車がいるとのことですので、よそ見をしないように気を付けましょう。
佐田沈下橋
- 住所
- 高知県中村市佐田
- アクセス
- 中村駅より自転車で約40分、車で約15分
静けさの中、ゆったり鑑賞できる「三里沈下橋」
佐田沈下橋より約3.7kmと、1つ上流にある「三里沈下橋」。隣の佐田沈下橋が大混雑している時でも比較的訪れる人が少ない、静かな雰囲気の沈下橋で、全長145.8m、幅3.3mあります。
三里沈下橋近くではカヌーツアーも行われています。
穏やかな四万十川の流れの中で、初めてのカヌー体験や沈下橋からのダイビングなどのアクティビティが楽しめますよ。
初夏の取材日には、四万十の自然に包まれた沈下橋の上で結婚式の前撮りをするカップルの姿もありました。
三里沈下橋
- 住所
- 高知県四万十市三里
- アクセス
- 中村駅より自転車で約50分、車で約20分
三里沈下橋の下をくぐり抜ける屋形船「四万十の碧」
四万十川では、屋形船を使った観光遊覧も楽しめます。川の下流域には4軒ほどの船会社があり、乗船場所や乗船時間など、自分の都合に合わせたコースを選べるようになっています。
三里沈下橋の少し上流で、橋をくぐり抜ける屋形船を運航しているのが「四万十の碧(しまんとのあお)」。佐田沈下橋までの間の四万十川の大蛇行を1時間毎に約1時間かけて周遊し、事前に予約すれば船内で食事も楽しめます。基本的には予約制ですが、空きがあれば当日でも乗船可能。
普段は穏やかな四万十川ですが、流域は台風が頻繁にやってくる土地柄。沈下橋に欄干がないのも、増水時に流木などがひっかかって水の流れを堰き止めてしまうことを防ぎ、水没時には水の抵抗を少なくするための工夫なのだそう。
「四万十の碧」の向かいの山の斜面には過去の増水時の水位が日付とともに記されており、その高さに驚かされます。
屋形船 四万十の碧 三里乗船場
- 住所
- 高知県四万十市三里1446
- 営業時間
- 9:00~16:00の毎時00分発
※季節により臨時便あり
- 定休日
- 不定休
- アクセス
- 中村駅から自転車で約55分、車で約20分
- 詳細・予約
- 屋形船 四万十の碧(別ウィンドウで開きます)
四万十川を眼下に望む隠れ家カフェ「SHADE TREE COFFEE」
四万十川周辺では普通の橋のことを「抜水橋(ばっすいばし)」と呼びます。四万十の碧から自転車で上流に5分ほど行ったところにあるのが「川登大橋(かわのぼりおおはし)」。増水の危険度が高い四万十川にかかる抜水橋だけあって、水面からかなりの高さにかけられています。
川登大橋が見えた頃に左手に現れる「SHADE TREE COFFEE(シェード ツリー コーヒー)」の看板。
「SHADE TREE COFFEE」は、週末と月曜のみオープンする隠れ家のような小さなカフェ。四万十川を眺めながら、自家焙煎したおいしいコーヒー(450円~)とベイクドクリームチーズケーキ(400円)などの自家製スイーツがいただけるとあって、かなりの人が訪れます。
人気店のため入るまでには時間がかかりますが、席に着けばこのように雄大な四万十川の絶景を見下ろせます。
SHADE TREE COFFEE
- 住所
- 高知県四万十市三里2764-7
- 営業日
- 土・日・月曜日
※営業日は月によって変わるため 公式サイト(別ウィンドウで開きます)でご確認ください。
※2019/5/21~7/12は休み
- 営業時間
- 13:00~17:30(L.O.17:00)
- アクセス
- 中村駅より自転車で約55分、車で約23分
車がすれ違うのは当たり前!「高瀬沈下橋」
三里沈下橋より上流へ約5kmのところにある「高瀬沈下橋」は、長さ232.3mと四万十川で3番目に長い沈下橋。幅は3.4mしかありませんが、住民の方が利用する生活道路なので普通に車も通ります。
一方通行ではないので車のすれ違いができるよう橋の中央には待避所がつくられていますが、ほんの気持ち程度に橋の幅が広がっているだけなので、実際に車がすれ違う場面に出くわすとかなりスリリング。
「ごめんね~!どいてどいて~!」と、地元のおばちゃんが元気よく橋の上の観光客に声をかけながら渡って行きます。
高瀬沈下橋
- 住所
- 高知県四万十市高瀬
- アクセス
- 中村駅より自転車で約1時間40分、車で約25分
売店の軽食でひと休み!「四万十カヌーとキャンプの里 かわらっこ」
中村駅から約17km、高瀬沈下橋から1.4km走ったところにある「四万十カヌーとキャンプの里 かわらっこ」。中村駅と江川崎駅のおおよそ中間地点にあって「四万十りんりんサイクル」のターミナルにもなっているので、ここで自転車を返却するのもOKです。
施設前には高知西南交通のバス停があり、路線バスでも江川崎駅あるいは中村駅まで戻ることが可能です。ただし1日3往復のみで、GWや夏休みを除く日曜・祝日は運休となっているので、利用する場合は時刻と運行日を確認しておきましょう。
「四万十カヌーとキャンプの里 かわらっこ」では、カヌーや川遊びといったアクティビティが体験できます。
キャンプやバンガローでの宿泊も可能で、カップルや家族で四万十川の自然を満喫できます。
併設の売店もあり、地元で採れた農産物のほか、サンドウィッチ(230円)や田舎寿司(300円)などの軽食も販売。食事を摂りながら、サイクリングの疲れも癒せますね。
四万十カヌーとキャンプの里 かわらっこ
- 住所
- 高知県四万十市田出ノ川24
- 営業時間
- 8:00~18:00
- 定休日
- 不定休
- アクセス
- 中村駅より自転車で約1時間45分、車で約20分、西南交通バス「かわらっこ前」下車徒歩すぐ
橋脚が3本もあって珍しい! 「勝間沈下橋」
「四万十カヌーとキャンプの里かわらっこ」から自転車で5分ほどで、「勝間沈下橋」が見えてきます。2003年公開の映画『釣りバカ日誌14 お遍路大パニック』に登場したことで、この橋が知られるようになりました。長さ171.4m、幅4.4mと、四万十川の中では1番幅が広い沈下橋です。
またここだけ橋脚が3本もある、珍しい沈下橋です。
勝間沈下橋
- 住所
- 高知県四万十市勝間
- アクセス
- 中村駅より自転車で約2時間、車で約30分
地元食材がたっぷり味わえる農家レストラン「しゃえんじり」
勝間沈下橋よりペダルを漕ぐこと約30分で、口屋内(くちやない)地区に到着。集落入口の「口屋内郵便局」を探してみましょう。この郵便局の先隣が、サイクリングターミナルにもなっている農家レストラン「しゃえんじり」です。
ここから「口屋内沈下橋」へは歩いてすぐですが、2019年5月現在は補修のため橋への立ち入りは禁止されています。
「しゃえんじり」とは、「野菜畑」という意味のこの地方の言葉。地元産の採れたて野菜を中心に、地域の主婦の方々がつくるバラエティ豊かな15種類以上の手料理を、バイキングスタイルでいただけます。
四万十川産のアメゴにタケノコの煮物、天ぷら、川エビそうめん、イタドリの炒め物など、地元料理がたっぷり。健康的でおいしいメニューをお腹いっぱい食べれば、サイクリングの疲れも吹き飛びますね。
食後のコーヒーや、ゆずジュース、焼き菓子などのデザートメニューも付いたランチバイキングは、大人1,300円、小学生700円、幼児300円。
なお、サイクリングターミナルのため、ここでも自転車を返却できますが、その場合はタクシーを呼んで江川崎駅へ向かうのが一般的だそう。
農家レストラン しゃえんじり
- 住所
- 高知県四万十市西土佐口屋内76
- 営業時間
- 11:30~14:00
- 定休日
- 水曜日(夏場無休)
- アクセス
- 中村駅より自転車で約2時間30分。車で約45分、江川崎駅より自転車で約1時間15分、車で約30分
※駐車場は口屋内郵便局南側の原っぱへ
四万十川で1番のフォトジェニックな「岩間沈下橋」
「しゃえんじり」より川沿いに7kmほど進めば、四万十川で最もフォトジェニックな沈下橋と名高い、「岩間沈下橋」が見えてきます。岩間沈下橋はその絵になるような美しさから、ポスターやテレビCMなどにも度々使われています。
しかし、2017年に橋脚の腐蝕が原因で橋の一部がV字に折れ曲がった形に沈下してしまい、現在は復旧に向けた地質調査のため立ち入り禁止の状態になっています(2019年5月現在)。
岩間沈下橋を見下ろせる「岩間四万十茶屋」の前には、撤去した橋の床版(しょうばん)が「床版ベンチ」として設置され、新たな観光名所になっています。
ベンチの横には、中村駅のロータリーで迎えてくれた三山ひろしの「四万十川」の歌詞が書かれた碑も。
岩間沈下橋
- 住所
- 高知県四万十市西土佐岩間
- アクセス
- 中村駅より自転車で約3時間20分、車で約50分、江川崎駅より自転車で約30分、車で約10分
サイクリング旅のゴール!道の駅「よって西土佐」と「江川崎駅」
岩間沈下橋から30分ほど走ると、江川崎の町に到着です。中村から約40kmの行程も、とうとうこの江川崎で終点。おいしいものを食べて、サイクリングで疲れた体をいたわってあげましょう。
「道の駅 よって西土佐」では、ブランド牛の四万十牛を使ったカレーやパスタ、四万十川で獲れた天然の鮎やうなぎ、川えびなど、四万十川の恵みを使った料理でエネルギー補給ができます。
疲れた時に欲しくなるのは、やはり甘いもの!道の駅内にあるケーキショップ「ストローベイル」では、地元産の食材を使ったスイーツが味わえます。地栗を使ったモンブランやほうじ茶のロールケーキなども人気ですが、残念ながらこの日はもう売り切れでした。見つけたら迷わず注文しましょう!
道の駅 よって西土佐
- 住所
- 高知県四万十市西土佐江川崎2410-3
- 営業時間
- 7:30~18:00(西土佐食堂10:00~16:00、ストローベイル10:00~17:00)
- 定休日
- 3~11月は無休、12~2月は火曜定休
- アクセス
- 中村駅より自転車で約4時間、車で約60分、江川崎駅より自転車で約3分、徒歩で約10分
江川崎駅前にある「四万十川ふるさと案内所」が、りんりんサイクルのターミナル。ここで自転車を返せば、JRで次の目的地まで移動することができます。
高知方面へ向かうなら、予土線で江川崎駅から四万十町にある窪川駅に向かい、そこで特急に乗り換えて1時間強。江川崎-窪川間は約1時間の鉄道旅ですが、列車内にトイレはないので注意が必要です。ちなみに江川崎の隣は、珍名駅として有名な「半家(はげ)駅」がありますのでお見逃しなく。
1日に10数本、窪川駅と愛媛県の宇和島駅を結ぶ一両列車が出ています。時間によっては江川崎駅からも予土線名物のホビートレインに乗ることもできるので、時刻表をチェックしてみましょう。
今回は、レンタサイクルで四万十川中下流域の観光スポットを、川の流れに遡って進むコースで紹介しました。自転車で沈下橋を渡りながら眺める、雄大な四万十川の流れ。眺めるだけでなくカヌーや遊覧船に乗ったり、川で獲れた鮎や鰻を味わったりと、五感で四万十の自然の恵みを体感することができます。
四万十はアクセスが難しいと思われるエリアですが、関西圏まで行けば中村駅まで夜行バスが毎日運行しており、さほど訪れにくい場所ではありません。次の休みはぜひ、四万十の大自然にふれる旅に出かけてみてください。
取材・撮影・文/林ぶんこ
※掲載内容は公開時点のものです。ご利用時と異なることがありますのでご了承ください。/small>