長野県北部に位置する野沢温泉。温泉街には観光客も利用できる外湯(共同浴場)をはじめ、野沢ゆかりの偉人の記念館や自分で温泉卵が作れる施設など、ぜひ立ち寄りたいスポットがいっぱいです。早めに宿に到着した後や翌日のチェックアウト後におすすめしたい、野沢温泉の楽しみ方をご紹介します。
自然豊かな野沢温泉へ
野沢温泉は地域自体が野沢温泉村という名称で、名前に「温泉」が付く村はここが日本唯一。源泉はなんと奈良時代に発見されたといい、江戸時代には湯治場として知られるように。標高1,650mの毛無山(けなしやま)を有し、冬はスキーやスノーボードなど、ウインタースポーツを楽しむ人でにぎわいます。
最寄りの飯山駅までは、東京から北陸新幹線はくたかで約1時間50分。飯山駅からは直通バス「野沢温泉ライナー」が1日10便運行しています。バスに乗って25分ほどで「野沢温泉中央ターミナル」に到着! 街自体は大きくないので、そこから徒歩で観光地をめぐることができます。
まずは野沢温泉観光協会で「集印帳」を入手
野沢温泉中央ターミナルからすぐの場所にある「野沢温泉観光協会」。各種パンフレットの配布や、野沢温泉オリジナルグッズの販売などを行っています。コインロッカーや休憩スペースもあり、観光客の強い味方です。
こちらでぜひ購入したいのが「集印帳」(462円)。野沢温泉では村内のあちこちに27の集印所が設置されていて、観光をしながら集印めぐりが楽しめるんです。集印帳に10カ所以上集印するとオリジナルタオル、20カ所以上でオリジナルタオル、または手ぬぐいがもらえます。タオルは、野沢温泉村の名誉村民である芸術家・岡本太郎氏による「湯」の書が入った限定品です。
観光協会のすぐ隣の「シュナイダー広場」にも集印所があるので、さっそく集印してみましょう。この広場は1930年にオーストリアから来日し、野沢温泉でスキーの指導を行ったハンネス・シュナイダー氏を称えて造られたもの。岡本太郎氏の作品も展示されています。
野沢温泉観光協会
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷9780-4
- 営業時間
- 8:30~17:30 無休
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約2分
ガラス張りのゴンドラでスリル満点の空中散歩!
2020年12月にリニューアルした、野沢温泉スキー場の長坂ゴンドラ。スキー場がクローズしている夏~初秋には、このゴンドラに乗って山腹に広がる上ノ平高原まで行くことができます。ふもとの長坂駅からやまびこ駅まで全長3,129m、所要時間は8~15分ほど(天候により速度を調整)。長坂駅までは、野沢温泉観光協会から上り坂を15分ほど歩きます。
新しくなったゴンドラは10人乗りの広々としたつくり。全面ガラス張りになっているので開放感抜群! ブナの原生林の中に飛び込んでいく勢いで、ぐんぐん上っていきます。
80台あるゴンドラのうち2台は、床までスケルトンになったスペシャルなキャビン。赤、または青の外観が目印です。足元にも緑が広がり、まるで空中に浮いているような気分!
長坂駅からやまびこ駅までは標高差が789mあり、天気によっては雲海が広がる絶景を楽しむことができます。山頂のやまびこ駅に到着したら、周辺には高山植物や山野草が楽しめる「上ノ平ピクニックガーデン」もあるので、自然の中でゆったり過ごすのもおすすめです。
長坂ゴンドラ
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷7653
- 営業時間
- 9:00~16:00(下り線は~16:30)※7~10月頃のみ運行
- 料金
- ゴンドラ往復券 大人2,500円、小人1,500円
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約12分
「おぼろ月夜の館 斑山文庫」に立ち寄る
山のふもとに戻ってきたら、レトロモダンな外観が目を引く「おぼろ月夜の館 斑山文庫」へ。童謡『春が来た』『故郷』『朧月夜』などを作詞した、国語・国文学者の高野辰之博士(1876〜1947)を称える記念館です。高野博士は長野県出身で、生前はここ野沢温泉に別荘を持っていたんだそう。記念館では高野博士の業績を振り返り、貴重な原稿や遺品、江戸・明治期の書画の収集品などが展示されています。
館内の美しいステンドグラスも見どころ。入口正面には『朧月夜』の歌詞にある「菜の花畠」をイメージしたステンドグラスが、2階のホールには『春が来た』『故郷』などにちなんだステンドグラスがはめ込まれています。ホールからは北信五岳(ほくしんごがく)の雄大な眺めも堪能できますよ。
おぼろ月夜の館 斑山文庫
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9549-6
- 営業時間
- 9:00~17:00(入館受付~16:30)※月曜日休み
- 料金
- 入館料 大人300円、小中学生150円
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約5分
フードコート「風土Village 金剛」でランチ
ランチは、地元の人たちが集う穴場のフードコート「風土Village 金剛(こんごう)」で。そば職人のオーナーによる「ぼくち蕎麦かごや」をはじめ、カフェバーやタイ料理店など、さまざまなジャンルの飲食店が6店舗入店しています。
建物は鉄工所をリノベーションしたもので、高い天井がその面影を残しています。中央にそびえ立つ大きな社殿は、重要無形文化財にも指定されている野沢温泉の祭り「道祖神祭り」の社殿を模したもの。実際の約1/2サイズで、オーナーが「村の文化を伝えたい」という思いを込めて友人たちと作り上げました。
長野といえば蕎麦が名物。「ぼくち蕎麦かごや」では、オヤマボクチという植物をつなぎにした手打ちの十割蕎麦を提供しています。蕎麦メニューは、風味をしっかりと堪能できる「並盛りざるそば」(800円)、「大盛りざるそば」(900円)の2種類のみ。
蕎麦以外のメニューも豊富で、ボリューム満点の「ソースカツ丼」(800円)や、お酒にも合う一品料理がそろいます。夜に訪れ、地元客に混ざって一杯というのもいいかも。
風土Village 金剛
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷4348-1
- 営業時間
- 11:00~14:00、17:00~22:00 (曜日や時間などにより、各店舗の営業時間は異なります)※火曜日定休
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約4分
地域住民の暮らしに根ざしてきた「麻釜」へ
お腹を満たしたら、温泉スポットめぐりに出かけましょう。外せないのが、国の天然記念物にも指定されている「麻釜(おがま)」。野沢温泉に30ほどある源泉の1つで、100℃近い熱湯が湧いています。モクモクと上がる湯気と硫黄の香りに包まれ、「これぞ温泉地!」という雰囲気。古くから地元住民が野菜などを茹でるのに利用しており、「野沢温泉の台所」と称されています。地元の人以外は立ち入りが禁止されているので、囲いの外から見学しましょう。
麻釜
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約7分
「足湯ゆらり」で温泉卵を作ってみよう
「麻釜」のすぐ近くにある「ミニ温泉広場 湯らり」では、無料で足湯を楽しめます。また、野沢温泉には温泉卵が作れる場所がいくつかあり、こちらでも温泉卵を自分で作ることができるので、ぜひチャレンジしてみましょう。
裸足になってお湯につかると、体がリラックスしていくのを感じます。高台にあるので眺めもばっちり。ベンチが設置された通常の足湯のほか、石の突起で足裏が刺激される歩行湯もあります。
卵は近隣の商店で購入を。カゴも貸し出してくれるので、カゴごと温泉卵用のお湯に入れて15~18分ほど待ちます。時間が経ったら、冷水が入った槽で冷やして完成! できたての温泉卵は硫黄がふわっと香り、トロトロ感がたまりません。
ミニ温泉広場 湯らり
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷
- 営業時間
- 6:00~21:00 ※冬季休業
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約7分
野沢温泉観光のハイライト!外湯めぐり
野沢温泉といえば、天然温泉かけ流しの外湯(共同浴場)。江戸時代から「湯仲間」という制度によって地域住民の皆さんが管理し、清潔に保たれてきました。地元の方だけでなく観光客も入れますが、地域の大切な財産であることを心に留め、マナーを守って入浴しましょう。村内に13ある外湯のうち、おすすめの3カ所をご紹介します。いずれも無料で利用できますが、入口の賽銭箱に感謝の気持ちを納めるのを忘れずに。
野沢温泉のシンボル「大湯」
まず絶対に訪れたいのが、温泉街の中心に位置する「大湯」。江戸時代には飯山藩主の御殿湯だったそうで、堂々たる湯屋建築の外観が目印です。あつ湯とぬる湯に分かれていますが、源泉は66.4℃あり、ぬる湯でも熱いと感じるかもしれません。湯もみ板を使ったり、少しずつかけ湯をしたりして、慣らしてから入りましょう。
大湯
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8765
- 営業時間
- 4~11月/5:00~23:00、12~3月/6:00~23:00
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約4分
入りやすい温度の「熊の手洗湯」
野沢温泉は熱めの湯が特徴ですが、「熊の手洗湯」は源泉が40.2℃と比較的低温。ゆっくりとつかることができます。名前はケガをした熊がこの湯で傷を癒したという伝説が由来で、やけど、切り傷に効果があり、美肌になれる湯と言われています。
熊の手洗湯
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8955
- 営業時間
- 4~11月/5:00~23:00、12~3月/6:00~23:00
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約5分
しっかり体が温まる、にごり湯の「真湯」
中心街北の山腹に位置する「つつじ山公園」の入口にある「真湯(しんゆ)」。湯の花が多く、気温などによって湯の色が変わるんだそう。源泉は55.1℃で、痔など温めるとよい病に効くとされています。
真湯
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8278-2
- 営業時間
- 6:00~19:00
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約7分
日帰り温泉施設「麻釜温泉公園 ふるさとの湯」でゆったり過ごす
「外湯はハードルが高いかも…」という人には、日帰り温泉施設「麻釜温泉公園 ふるさとの湯」がおすすめです。あつ湯、ぬる湯に分かれた内湯と露天風呂を備え、いずれも源泉かけ流し。湯の温度が調整されていて入りやすく、シャンプーやボディーソープも用意されているので、手ぶらでも利用できます(タオルは有料)。
麻釜温泉公園 ふるさとの湯
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8734
- 営業時間
- 10:00~20:00(入館受付~19:30)※木曜日定休
- 料金
- 入浴料 大人500円、小学生以下300円
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約5分
「ハウスサンアントン」でちょっとティータイム
ひとしきり温泉を楽しんだら、メインストリートの大湯通りへ。白い外観が目を引く「野沢温泉 ホテルハウスサンアントン」は、「ホテル&ジャムファクトリー」をうたい、1階にはショップカフェがあります。北信州の旬のフルーツを、無添加のジャムやジェラート、ジュースなどに加工して販売しています。
ジェラートは店内で手作り。長野県木島平村にある中沢牧場の生乳を使っていて、濃厚なミルクの味わいが口の中に広がります。ラインナップは季節などにより変わりますが、常時10種類ほど(各種1個380円)。なかでもフレッシュミルク、紅玉りんご、蕎麦が人気。蕎麦味のジェラートなんて驚きですが、意外にも蕎麦とミルクがよく合います。
店内のカフェスペースでひと休み。ドリンクにジェラートを追加することもできます。写真は「クラフトコーラ」(レギュラーサイズ550円)に「フレッシュミルクのジェラート」(トッピング150円)を追加したもの。また「100%ナチュラルフレッシュジュース」はりんご、赤しそ、ラ・フランス、黄金桃があり、りんごはさらに6つの品種から選べます。今回は一番甘みが強い「王林りんご」(500円)をセレクト。余計なものが入っていない、果実の自然な甘さがのどを潤してくれます。
ジャムは近くの工房で手作りし、約30種類を用意。飯山産の雪国パッションフルーツ、信州中野産のシナノスイート、小布施産のチェリーキッスなど、長野の四季がぎゅっと詰まったジャムが並びます。楽天トラベルが主催する「朝ごはんフェスティバル(R)」でも入賞した逸品は、お土産にもぴったり。
サンアントン ショップカフェ
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9515
- 営業時間
- 平日9:00~18:00、土・日曜日9:00~21:00 ※水曜日定休
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約3分
「野沢菜本舗」の野沢菜漬けをお土産に
全国的にも有名な野沢菜は、ここ野沢温泉が発祥。郷土食として愛される本場の野沢菜漬けを買って帰りましょう。大湯通りにある「野沢菜本舗」では、無添加の自家製野沢菜漬けを購入できます。
一番人気はあっさりとした「野沢菜浅漬け」(400円)。代々伝わる漬け方を守り、厳寒の冬にじっくり乳酸発酵させた「野沢菜本漬け」(500円)も、独特の酸味でファンの多い一品。そのまま食べても、刻んで納豆と混ぜてもおいしいですね。本漬けは炒飯の具にしたり、醤油・砂糖と一緒に炒めたりするのもおすすめだそう。和がらしがきいた「野沢菜地ビール漬け」(450円)といった変わり種もあり、どれにしようか迷ってしまいます。
野沢菜漬けのほかにも、長野県産の菜の花はちみつやフルーツジュースなど、さまざまな特産品を扱っています。地酒や地ビール、長野産ワインといった酒類も充実。お土産にも自分用にも、ほしいものがきっと見つかるはず。
野沢菜本舗
- 住所
- 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9511
- 営業時間
- 8:20~18:00 ※水曜日定休
- アクセス
- 「野沢温泉中央ターミナル」より徒歩約3分
道祖神が見守る歴史ある温泉街を楽しんで!
温泉街を歩いていると、男女を模した木の像をあちこちで見かけるはず。これは道祖神(どうそじん)と呼ばれる災厄の侵入を防ぐ神様で、縁結びや子宝の神様としても古くから地域の人たちに大切にされています。外湯めぐりでリフレッシュしながら、歴史と伝統が息づく野沢温泉の街歩きを楽しんでみてはいかが?
取材・撮影・文/土田理奈
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