山梨県笛吹市にある石和温泉郷。甲府盆地の東寄りに位置し、桃や葡萄の収穫量が全国1位の地としても知られています。フルーツ狩りやワイナリー巡りと一緒に、温泉を楽しむ人も多く、週末には首都圏から多くの人が訪れます。
その石和温泉郷で、昭和39年より旅館を営む「石和温泉 銘石の宿 かげつ」。約6,000坪の広大な日本庭園に、銘石や錦鯉が彩りを添えます。1泊2日の滞在でありながら、まるで広大な敷地で観光地巡りをしたような気分に浸れる宿泊体験。癒やしのおこもり滞在をご紹介します。
新宿から約90分! 都心からもアクセスの良い「石和温泉」
石和温泉郷は、温泉の豊富な山梨県で最大規模の湯量を誇り、全国でも屈指の温泉郷として知られています。電車や車でのアクセスも良く、特に電車は「新宿駅」より、JR中央線特急を利用すると約90分で「石和温泉駅」に到着します。
「石和温泉 銘石の宿 かげつ」は、石和温泉駅より車で約5分。駐車場は旅館の向かい側にあります。電車の場合は無料送迎の利用が可能。利用時間は14:00〜18:00で「石和温泉駅」北口に到着後、電話をかけると迎えに来てくれます。
美しい日本庭園が広がる「石和温泉 銘石の宿 かげつ」
創業以来、数多くの文化人や芸術家に愛され続けてきた「石和温泉 銘石の宿 かげつ」。四季折々に姿を変える約6,000坪の日本庭園を、全国各地から集めたという巨岩・奇石・銘石や銘木、錦鯉が彩ります。
日本庭園の美しさと質により、世界各国の専門家が評価するプロジェクト「しおさいプロジェクト」にも選出されており、その美しさは折り紙付き。庭園には滝が20カ所、灯篭が60本もあります。
日本全国各地から取り寄せた銘石も圧巻です。熊本県で採石された「紫雲石」や、館内でも3つの指に入る大きさの「王将石」など、パワーを感じられる石が並びます。
館内と庭園の池が繋がっており、そこを約8,000匹の錦鯉が悠々と泳いでいます。泳ぐ姿を見ているだけで癒やされます。
赤黒白と模様が入り、光沢のある質感なのが「松之助」、全身金色で光り輝くのが「山吹」、他にも茶鯉や藍衣など、大きなサイズから小さなサイズまで、様々な品種の鯉を生育しています。最近では約300匹の鯉を新たに放流したそうで、小さな鯉も元気よく泳いでいました。
いよいよ館内へと足を進めます
ロビーでは立派な石がお出迎えしてくれました。石和という地名や2代目社長の名前から、石に縁があるそうで、昭和39年に石庭と大露天風呂のある旅館を開業したのが始まりだといいます。開業から50年以上経ちましたが、現在も造園や改築をし、改良を重ねているのだそう。
フロントでは消毒・検温を。現在は感染症対策の一環で、チェックインはお部屋で行っています。
贅を極めた優雅な空間と静寂さ、どんな滞在になるのかと、わくわくしながら客室へと向かいます。
すべての客室から庭園を眺められるように設計
客室は全36室、庭園を中心に東殿・中殿・西殿・南殿・奥の殿が並び、それぞれの棟は渡り廊下で結ばれています。あまりの広さに自分のいる場所がわからなくなってしまう人もいるのだとか。
客室は全て庭園と池に面しており、鯉の泳ぐ様子を見たり、滝の流れる音を聞いたりしながら、くつろげます。
窓から鯉に餌やりのできる部屋や、庭園を見下ろすことのできる部屋など様々。常連のお客様の中には、お気に入りの眺望がある方もいるそうです。
庭園を眺めながらゆったりと過ごせる露天風呂付客室
全36室中4部屋あるのが、人気の露天風呂付き客室です。1階 中の殿にある「天目(露天風呂付き)」には、12畳と6畳の和室、応接間に加え露天風呂が配されています。
窓をあけると、すぐ足元には池が広がり、優雅に漂う鯉の姿や水のせせらぎを感じます。贅沢気分に浸れるので、記念日などの特別な日に利用する方も多いのだそう。
6畳の先に応接間、窓を開けると洗い場付きの露天風呂があります。
夕焼けや庭園を望みながら、客室露天風呂を堪能する優雅な時間。日常から開放された格別な時間を過ごせます。
入浴におすすめの時間は、宵待ちの時間帯。徐々に日が沈み、庭園がライトアップされ、幻想的な景色が広がります。
縁側付きの客室もあるので、チェックイン後にお茶を飲みながらゆっくりと過ごすのも良いですね。
ほかにも趣の異なる一般客室
一間、次の間付き、ベッドが入ったタイプなど様々。景観や宿泊人数によって、選ぶことができます。
巨岩・奇石が施された野趣あふれる大露天風呂
大露天風呂は1階の西殿に位置しています。広々とした大浴場にも優雅な石が点在しています。
泉質はアルカリ性単純温泉。肌当たりの良いなめらかな湯なので、いつまでも入っていられます。男女風呂ともに、内風呂・大露天風呂・サウナがあります。大浴場は24時間営業ですが、サウナのみ22時まで、翌朝は6時からです。
女湯は内風呂と露天風呂が続くようになっており、扉をあけて露天風呂へと向かいます。
石と草花に囲まれた空間、ほのぼのと湯の香りが漂い、癒やされていくのを感じます。打たせ湯も、疲れた身体にぴったり。露天の中にも石があるので、半身浴や石の上に座って外気浴も楽しめます。
脱衣所にはバスタオルと、化粧水などのアメニティもあるので、お部屋から何も持ってこなくても大丈夫。大浴場を出たところには、24時間利用できる湯上がりサービスもあります。冷たいお茶を飲みながらゆっくりと休憩。お連れ様との待ち合わせにもおすすめです。
庭園散策や鯉の餌やりなど、ゆるやかに流れる時間を楽しむ
夕食前に汗を流したら、夕涼みしながら庭園散策はいかがでしょうか。約6,000坪もあるので、見どころがたくさんあります。チェックインの際にもらった「石庭園へのいざない」マップを片手に館内散策を楽しみました。
日本各地より集めた銘石や銘木に加え、記念撮影したくなるスポットも点在しています。
石が積み上げられた「十三重層塔」や、かわいらしい表情をした「お地蔵さん」など、お気に入りのスポットを探すのも楽しいです。
最近、新たに作ったという「かげつ テラス」は夜になると美しくライトアップされます。夕食後に再度訪れてみては。
ロビーには鯉のえさが100円で売っています。手を叩いたり、グーパーにしたりすると鯉が寄ってくるので、そこで餌やりを。すごい勢いで食いつくので、最初は驚きましたが、楽しいひと時を過ごせます。
まだまだある! 充実の館内施設
1階ロビーには、全国発送にも対応している売店があります。「桔梗信玄餅」や、甲州ワインなど山梨の名産品が揃います。お部屋にあったお茶請けの「甲斐路ロマン」も売っていました。
大浴場のそばには、エステルーム「癒し処 典正」が。100%天然の精油を使用したオールハンドトリートメントを受けられます。エステルームは全5部屋あり、2名同時に施術も可能です。事前予約制なので、ご希望の方は宿泊予約時にお申し込みください。
雰囲気の良い場所でしっぽりと飲みたい方におすすめなのが、南殿の奥側にある「クラブ石」です。富士を流れる銘水を仕込み水に使った地酒や、地産ワインなど。地元以外ではなかなか手に入らない逸品も用意しています。 ※通常はカラオケの用意もありますが、コロナ禍で休業中
7月〜8月には、家族連れに人気のガーデンプールがオープン。お子様向けに浮き輪の貸し出しなども対応しています。
山梨の旬を味わう絶品夕食
自然豊かな山梨の地で育まれた素材をたっぷりと使用した懐石料理が並びます。夕食は基本的にはお部屋で、大人数のグループの場合は個室でいただけます。
山梨といえば、ワインも有名。売店では地元のワイナリーで造られたワインが売っているほか、ルームサービスでワインも注文できます。山梨県産のワインも数十種類取り揃えており、ハーフワインもあります。今回いただいたのは甲府市にあるサドヤワイナリーのもの。
懐石料理の主役が、かげつ名物「甲州牛の溶岩焼き」です。柔らかい肉質と適度にサシの入った鮮やかな肉色が特徴の甲州牛を、贅沢に溶岩焼きでいただきます。
阿蘇山でとれた溶岩の上で焼くことで、遠赤効果で柔らかくなり、よりジューシーに仕上がります。
一品一品が丁寧に調理されていて美しく、品数も豊富。どれから手を付けて良いか悩んでしまいます。
茄子の甘味と濃厚な味付けの相性が抜群だった「米茄子袱紗味噌焼き」や、サクサク食感が新鮮な「サーモンの米粉麺包み」など、どれを食べてもご馳走で、一口食べる毎に笑みがこぼれました。
夕食後はライトアップされた庭園を散策
日中の印象とはまた違い、情緒溢れる景色が広がります。ところどころライトアップされ、幻想的。2階の廊下から全体を見下ろすのがおすすめです。
お部屋に戻ると、夕食の片付けを終え、お布団が敷かれていました。再度、大浴場で湯に浸かったり、庭園を眺めながらお酒を楽しんだりして、夜が更けていくのでした。
身体が喜ぶ、優しい味わいの和朝食
朝風呂にも入り、お腹もペコペコ。朝食は、庭園に囲まれ、鯉が悠々と泳ぐ姿を眺められるラウンジ「松之助」でいただきます。錦鯉を眺めながらの朝食なんて、贅沢です。
新鮮な地元の素材を中心に、ちょっとお疲れの胃にも優しい、バランスの良い朝食が並びます。炊きたての「梨北米こしひかり」に合う、季節の野菜や新鮮な魚など、食の匠が腕を振るうおかずの数々。北杜市明野町の「明野のたまご」と、八ヶ岳山麓の黄大豆を使った納豆で、納豆卵かけごはんも良いですね。
1泊2日とは思えない充実感
チェックアウトの時間は10:00。それまでは館内を散策するなどして、最後まで自然の中でパワーチャージ。一風呂浴びるのも良いかもしれません。
先代が造り上げた日本庭園を後世へとつなげ、理想の形態を追い求めるためにその後も建築や造園を続けている「銘石の宿 かげつ」。今後もさらに素敵な旅館へとなっていくことでしょう。
温泉やお食事のおいしさはもちろん、スタッフの方達のあたたかさにも触れ、心も身体も癒やされていくのを感じました。古くからなお、愛され続けているのも納得です。さらに、広大な敷地での一泊だったので、まるで観光地を巡っているような楽しささえもありました。
チェックインの前後でフルーツ狩りやワイナリー巡りができるので、食に温泉に癒やしにと、大満足の1泊2日を過ごせるのではないでしょうか。
石和温泉 銘石の宿 かげつ
- 住所
- 山梨県笛吹市石和町川中島385
- アクセス
- JR中央線 石和温泉駅より徒歩20分(北口より無料送迎有)
中央道 一宮御坂ICより約10分/昭和ICより約30分 - 駐車場
- 無料(60台・先着順)
- チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン19:00)
- チェックアウト
- 10:00
取材・撮影・文/加藤あやな
関連記事