雪景色に包まれながら自家源泉かけ流しの露天風呂を満喫!「湯けむりの宿 稲住温泉」で極上の体験を

稲住温泉

栗駒山の麓に広がる秋田県最古の温泉郷・秋ノ宮温泉郷。その中に、かつて武者小路実篤をはじめとする文化人や著名人に愛された温泉宿「稲住(いなずみ)温泉」がありました。残念ながら閉館してしまったその老舗旅館が、共立リゾートの手によって2019年、新たに「湯けむりの宿 稲住温泉」としてオープン。ぬくもりに包まれた客室や、豊富な湯量を誇る自家源泉かけ流しの温泉、雪景色に包まれた幻想的な露天風呂など、さまざまな魅力を持つ「稲住温泉」での癒やしの滞在記をお届けします。

 

 

アクセス、立地、チェックイン

栗駒山の麓に佇む、文豪に愛された温泉宿

湯けむりの宿 稲住温泉

「湯けむりの宿 稲住温泉」は秋田、宮城、岩手の3県にまたがる栗駒山の麓に佇む温泉宿。位置する秋ノ宮温泉郷は、宿それぞれが泉質の異なる源泉を有しているのが特徴で、「稲住温泉」でも2つの源泉を堪能することができます。上品な和モダンの門構えは大人の隠れ宿といった趣。宿泊は中学生以上に限定されています。

アクセスはJR横堀駅から車で約20分、または鳴子温泉駅から車で約40分。秋田空港からは車で約80分。金・土・日曜と特定日は東北新幹線が停車するJR古川駅から、それ以外の日はJR湯沢駅から送迎バスも用意されています(要問い合せ・予約)。

 

湯けむりの宿 稲住温泉

中に入ると、木のぬくもりを感じるエントランスがお出迎え。昭和の名宿というと重々しい雰囲気を想像してしまいますが、「稲住温泉」は格式の高さは残したまま、明るく開放的です。歴史を受け継ぎ、昔の面影を残しながらも、令和の時代に合わせた居心地のよさを追求しているのだそう。

フロントには戦時中、旧稲住温泉に疎開していた作家・武者小路実篤の手紙を石碑にしたものが大きな写真で飾られています。

 

湯けむりの宿 稲住温泉

チェックインはロビーで。まずはウェルカムドリンクでひと息ついたら、フロントにてタブレットで記帳。チェックイン中も寒くないようにとフロアは床暖房になっているので、足元もぽかぽかです。

ロビーにはコーヒーマシンや紅茶のティーバッグなどが用意されていて、ウェルカムドリンク以外にも24時間自由にドリンクを飲むことができます。

 

湯けむりの宿 稲住温泉

フロント横にある浴衣処「花遊」にはさまざまな色、柄、サイズの浴衣が並んでいて、ここから好きな浴衣を選んで館内着として利用できます。早速、気に入った浴衣を手に取り、客室に向かいました。

 

客室

ウッドデッキから絶景が楽しめる離れ「天の座 嵐亭」

天の座 嵐亭

客室は全49室でさまざまなタイプのお部屋があります。今回は、離れ「天の座」の「嵐亭(らんてい)」に宿泊しました。「天の座」は歴史ある旧稲住温泉の建物を今に残す、4つしかない特別なお部屋。昭和の著名な建築家が設計し、至るところにこだわりを感じます。

広さは75平米で定員は4名。池のある大きな庭に面して、半円形のウッドデッキが張り出しているのが特徴です。主室、寝室、浴室のほか、茶室やくつろぐための空間もあり、とても広々としています。

 

天の座 嵐亭

寝室は畳の上にローベッドが2台並んでいます。和の趣はそのまま、しっかりと厚みのあるベッドで快適に眠ることができます。

 

天の座 嵐亭

丸い檜の露天風呂は自家源泉かけ流し。泉質はナトリウム−塩化物・炭酸水素塩泉で、キリっと熱めで体がよく温まります。目の前には四季折々で姿を変えるお庭が広がっていて、開放感抜群。自然を独り占めしたような気分で湯浴みを楽しみました。

 

天の座 嵐亭

露天風呂だけでなく、内風呂も備わっています。爽やかな檜の香りに包まれ、こちらも何度も入りたい心地よさ。実際、「嵐亭」ではお部屋にこもって心ゆくまで温泉を満喫する宿泊客が多いのだとか。

 

天の座 嵐亭

館内着は浴衣だけでなく、作務衣もお部屋に用意されています。動きやすく、よりリラックスできますね。

 

天の座 嵐亭

離れ「天の坐」利用プランでは、ハーフボトルワイン(赤・白)と地酒が各1本ずつサービスされます。秋田・湯沢の木村酒造「福小町」の稲住温泉オリジナルラベル。お着き菓子として、秋田銘菓のもろこしと地元の大吟醸酒粕を使った酒まんじゅうが置かれていました。

 

天の座 嵐亭

チェックイン時に選んだ浴衣に着替えてテラスに出てみました。ほかのお部屋とは離れた独立した空間のためとても静かで、聞こえてくるのは風の音など自然のささやきのみ。冬は雪景色、春夏は木々の新緑、秋は紅葉と、季節によって変わる美しい景色が楽しめます。

 

快適に過ごせる「月の座」和洋室

月の座

客室は、離れ「天の坐」のほかに「月の坐」「雲の坐」「湯の坐」「水の坐」に分けられてます。「月の坐」の和洋室タイプはゆったりとした造りで、広さは39平米~57平米。畳敷きの落ち着いた雰囲気で、主室には和モダンなソファチェアとローテーブルが置かれています。檜の内風呂に加え、自家源泉かけ流しの露天風呂も付いているのがうれしいところ。

 

月の座

寝室には寝心地のいいセミダブルベッドが2台、窓側を向いて配置されています。昇降式のすだれで主室と区切って使うことも可能です。

 

温泉

露天風呂とサウナを備えた大浴場「山月の湯」

山月の湯

「稲住温泉」には内風呂と露天風呂を備えた2つの大浴場があり、男女入れ替え制。夜間の1:00~3:00に入れ替えが行われるので、チェックイン後と翌朝で両方を楽しむことができます。内風呂の大きな窓いっぱいに山々が見え、まるで湯舟とつながっているよう。

大浴場は客室の温泉とは異なる源泉のかけ流しで、泉質は弱酸性の単純温泉。山奥で自噴する高温の温泉を引き込み、沢の水で温度を調整しています。「荒湯」と名付けられたお湯は濁りがあり、自噴泉のため日によって硫黄の香りの強さなどが変わるのが特徴です。

 

山月の湯

内風呂から階段を下りていくと、雪見が楽しめる露天風呂があります。大自然に囲まれた野趣あふれる造りで、目前には山が迫り、その下に流れる川の音が聞こえてきます。暖冬で取材日は雪が少なかったのですが、例年であればメートル単位の深い雪が降る地域。しんしんと雪が降り積もるなか、一面の銀世界に包まれながら入る露天風呂は、冬の「稲住温泉」でしか叶えられない極上の体験になるはずです。

 

山月の湯
山月の湯

露天風呂の近くにはサウナと、きれいな沢の水を使った水風呂も。自然のなかでの外気浴は開放感がたまりません。

 

山月の湯
山月の湯

こちらはもう一つの大浴場。露天風呂は信楽焼(しがらきやき)と檜の丸風呂で、岩風呂とはまた違った趣です。

 

山月の湯

温泉にゆっくり浸かったあとは、湯上り処「山水」へ。ここではドリンクやアイスキャンディーなどを無料で味わえます。朝の時間帯はアイスキャンディーの代わりにミルクを提供しています。

 

山月の湯

東北限定のプレミアムビール「花鳥風月」やレモンチューハイ各種のほか、スナック類も無料サービス。客室に持ち帰ってゆっくり飲むことも可能です。

 

プライベート感満載の貸切風呂「紅雲の湯」「桜雲の湯」

紅雲の湯

大浴場に加えて貸切風呂も2カ所あり、空いていればどちらも24時間いつでも利用できます。予約制ではないので、自分の好きなタイミングで行けるのがうれしいですね。泉質は大浴場と同じ荒湯。こちらは楕円形の陶器製の湯舟がある「紅雲の湯」です。

 

桜雲の湯

もう一つの「桜雲の湯」は檜風呂。窓からは雪景色が見え、プライベートな時間をゆったりと楽しめます。

 

ラウンジ

秋田のおいしい地酒でほろ酔い気分

集い処 楽庵
集い処 楽庵

夕食前にラウンジ「集い処 楽庵」に向かうことにしました。館内のあちこちに書や絵画が飾られていますが、これは旧稲住温泉時代に著名人から寄贈されたもの。

平福百穂(ひらふくひゃくすい)や土屋秀禾(つちやしゅうか)、勝平得之(かつひらとくし)など、秋田出身の芸術家による作品や、第29代内閣総理大臣・犬養毅の書、稲住温泉と縁の深い武者小路実篤の生原稿も飾られていました。貴重な作品の数々を眺めるのも楽しい時間です。

 

集い処 楽庵

ラウンジの利用時間は15:00~20:00で、宿泊客は誰でも自由に出入りできます。けん玉やオセロ、トランプ、将棋なども用意されているので、童心にかえって遊んでみるのもいいかもしれません。

 

集い処 楽庵

ラウンジではお酒やビールといったアルコール類のほか、甘酒やビネガードリンク、アイスコーヒーなどを無料で楽しめます。お酒は地元の酒蔵の日本酒を1~3種類用意し、秋田県内の宿泊客が多い日は近隣県の銘柄に替えているそう。細やかな心遣いが感じられます。

 

集い処 楽庵

おやつもいくつか準備されていて、この日は大学芋、おはぎ、三色団子。おいしい地酒とともに味わいました。

 

集い処 楽庵

「稲住温泉」には自分の好きな枕を選べるサービスも。そば枕や備長炭など、素材や形状が異なる7種類が用意されています。ラウンジからの帰りに「枕処」に立ち寄り、自分に合いそうな枕を選んで部屋に持ち帰りました。

 

夕食

地酒によく合う美食の数々を心ゆくまで

仙楽

夕食は落ち着いた雰囲気のお食事処「仙楽」にていただきます。提供されるのは秋田の旬の食材をふんだんに使った和会席。鍋料理、強肴(しいざかな)、〆の食事は、いくつかの選択肢から好きなものを選ぶことができるのがなんとも贅沢ですね。

まず登場したのは、ずらりと並んだお箸と九谷焼(くたにやき)の箸置き。こちらも好きなものを選んで使うことができます。

 

仙楽

秋田といえば日本酒。お料理に合う地酒を豊富にラインナップしています(別途有料)。なかには全国的に大人気な「新政(あらまさ)」の貴重な銘柄も。今回はいろいろな銘柄を試してみたかったので、地酒3種飲み比べをオーダーしました。いよいよ夕食のスタートです。

 

仙楽
「前菜盆盛り」
合鴨ロース煮、寒鮒(かんぶな)甘露煮、河豚(ふぐ)寿司、数の子、早蕨(さわらび)、蕪(かぶ)と湯葉の蟹あんかけ、里芋田楽、いぶりがっこのクリームチーズ和え
仙楽
先椀の「鱈土瓶蒸し」
鱈(たら)と白しめじ、大根、人参に三つ葉を添えて土瓶蒸しに
仙楽
「お造り」
本鮪(まぐろ)、鰤(ぶり)、霜降り海老、鯛

お造りの新鮮な魚は厚切りで食べ応えがあり、秋田産の海藻・えごも一緒にお皿にのっています。こんにゃくのような食感のえごは、辛子酢味噌をつけて味わいました。

 

仙楽
「焼き物」
由利牛と蒸した長芋、アピオス、まこも茸、カリフラワー、ブロッコリーとともに

秋田のきれいな空気と水、豊富な牧草で育てられた由利牛(ゆりぎゅう)。底にお湯が入った竹筒の器で提供され、蓋の部分を開けると蒸気がもくもくと上がる楽しい一皿です。蒸気の熱で自分の好みの状態までお肉を加熱でき、ネギダレ、または紫蘇(しそ)ダレでいただきます。

 

仙楽
選べる鍋料理「きりたんぽ鍋」
具材はきりたんぽ、比内地鶏、鶏のきんかん、せりなど

鍋料理はしょっつる鍋、きりたんぽ鍋、しゃぶしゃぶ鍋から1つを選択。一人鍋なので、グループでもそれぞれ好きな鍋を選ぶことができます。迷いに迷い、秋田の郷土料理きりたんぽ鍋をセレクト。比内地鶏の旨みが出たスープは、しみじみと体に染みるおいしさです。

 

仙楽
選べる強肴
ハタハタ寿司、白魚唐揚げ、河豚煮凝り、ぶり大根、海鼠(なまこ)酢の5品から1品

こちらも5品から1つを選べ、どれも地酒に合う一品です。写真手前のふぐの煮凝りの下に敷かれているのは、ひろっこと呼ばれるアサツキの新芽で秋田県湯沢市の伝統野菜。その土地ならではの食材を味わえるのがうれしいですね。

 

仙楽
選べるお食事
鯛ご飯、鯛天ぷらうどん(温・冷)のどちらか

〆の食事は鯛ご飯、または鯛の天ぷらうどんのどちらかを選べます。うどんは秋田の名物・稲庭うどんで、細くつるつるとしたのどごし。梅干しから出汁をとった爽やかなつゆと合わせて、お腹いっぱいでもあっという間にスルスルと食べてしまいました。

 

仙楽
「水菓子」
林檎プリン、苺、デコポン

秋田ならではの食材を中心に多彩な料理が登場し、最後の水菓子まで大満足の夕食でした。

 

夜食

名物の夜鳴きそばをしょっつるでアレンジ

らいぶらりー 月心

夕食後は「らいぶらりー 月心」へ。ここには武者小路実篤の全集などが展示されていて、実際に手に取って読むことができます。特に稲住温泉で過ごした日々を振り返った「稲住日記」は、今この場所にいるからこそ手に取りたい一冊。当時の情景がありありと目に浮かんできます。

 

らいぶらりー 月心

しばらく読書をしていたら小腹が空いてきたので、共立リゾートの名物でもある「夜鳴きそば」を。ロビーにて22:00~22:30に、夜鳴きそばとフルーツを無料で提供しています。

「夜鳴きそば」は昔懐かしい醤油味で、秋田の一部地域ではラーメンにお麩を入れることから、こちらでもお麩がトッピングされています。秋田の特産品しょっつるで味変もでき、最後までおいしく完食しました。

 

朝食、チェックアウト

選べるごはんのおともがうれしい和御膳

仙楽

翌朝、お部屋の露天風呂で朝風呂を満喫したあと、夕食と同じくお食事処「仙楽」にて朝食をいただきました。

季節の野菜を使った和御膳はボリュームたっぷり。曲げわっぱに美しく盛り付けられたニシンの煮つけや信田巻(しのだまき)をはじめ、2種類食べられるようにあえて小ぶりにしたブリの照り焼きと塩鮭、小鍋で熱々のままいただく八杯豆腐(はちはいどうふ)など、工夫を凝らした一品がずらりと並びます。ごはんは秋田を代表する銘柄あきたこまちで、ごはんとおかゆから選ぶことができます。

 

仙楽

うれしかったのが、朝ごはんのおともも自分の好きなものを選べること。藁納豆、松前漬け、温泉卵、いかの三升漬け、子持ちきくらげから1品選択できます。どのおかずも、炊きたてのごはんやおかゆによく合い、朝からおいしいごはんをたくさん食べて幸せな気持ちになりました。

 

花つづみ
花つづみ

朝食を食べた後は、館内の「花づつみ」でお土産探し。名物のいぶりがっこを使ったおつまみや稲庭手延べうどんなどが並びます。昨夜の夕食で選んだ、カラフルな九谷焼の箸置きもこちらで購入できます。

 

湯けむりの宿 稲住温泉

昭和に誕生した名旅館を令和の時代によみがえらせた「湯けむりの宿 稲住温泉」。貴重な建築物や風格は残しながらも堅苦しさはなく、リラックスして過ごせるお宿です。自家源泉かけ流しの温泉もすばらしく、特に豪雪地帯ならではの銀世界に囲まれた雪見風呂は忘れられない体験になるはず。唯一無二の絶景と温泉に癒やされに、稲住温泉を訪ねてみませんか。

 

湯けむりの宿 稲住温泉

住所
秋田県湯沢市秋ノ宮山居野11-1
アクセス
JR「横堀」駅から車で約20分、JR「鳴子温泉」駅から車で約40分、秋田空港から車で約80分
チェックイン
15:00
チェックアウト
11:00
客室数
49室
駐車場
あり/40台(無料、予約不要)

撮影/岡村智明 取材・文/土田理奈

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