富士山を望み、甲府盆地を見下ろしながらゆったりと入浴できる「ほったらかし温泉」。山梨県山梨市矢坪、棚山(標高1,171m)の約700m地点という場所ながら、年間約43万人の入浴客が訪れます。営業時間は日の出の1時間前から22時まで。至極の温泉の楽しみ方をご紹介します。
ほったらかし温泉ってどんなところ?
ほったらかし温泉は「あっちの湯」「こっちの湯」と、特徴が異なる2ヵ所の浴場がある温泉施設です。最初に造られたのは1999年に開湯した「こっちの湯」。富士山を真正面に望む眺望と、落ち着いた風情を堪能できます。その後、2003年に開湯した「あっちの湯」は、「こっちの湯」に比べ、2倍の広さを誇ります。入浴しながら甲府盆地を一望でき、日の出から夜景まで楽しめます。
建物やお風呂などは、9割方スタッフの方の手作り。先代が山を購入し、露天風呂の石を組み上げるところから始まり、多くの人の手を借りて開業するに至ったそうです。
開業当初は、登山客やツーリング客がほとんどだったと言いますが、クチコミでだんだんとその名が広がり、現在では年間約43万人が訪れるようになりました。
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ほったらかし温泉へのアクセス
車やバイクの場合、東京方面からは中央自動車道を経由し約2時間20分で到着します。勝沼ICまたは一宮・御坂ICで中央自動車道を降り、車を走らせること約25分。笛吹川フルーツ公園第一駐車場の中から通り抜けるルートで行くのがおすすめです。
駐車場の看板が見えてきたら、道順通りに進むとほったらかし温泉の駐車場に到着します。
駐車台数は280台、夏休み等の繁忙期には満車近くなることもあるそうですが、一組あたりの滞在時間もそこまで長くないので、駐車場待ちが発生することは少ないそうです。
電車の場合は、JR中央線「山梨市駅」から、タクシーで約10分で到着します。
右に「こっちの湯」、左に「あっちの湯」
駐車場の先に「ほったらかし温泉」の看板が見えてきました!
ほったらかし……という名前からどんな施設だろう?と思っていましたが、広い敷地の中に建物もあり、予想に反してほったらかされていないことに安心しました。
「ほったらかすことしかできないから、“ほったらかし温泉”って名前なんです。その名前に助けられているところもありますね」と、スタッフの小池さん。
「あっちの湯」と「こっちの湯」、どちらの浴場も内湯と露天風呂(それぞれにあつ湯・ぬる湯あり)があります。泉質はアルカリ性単純温泉で、神経痛や筋肉痛、慢性消化器病や冷え性に効果があると言われています。お湯は出しっぱなしで、毎日総入れ替えしているというのだから驚き。
入浴料は1回 大人800円、小人 400円。どちらの湯にも入れるのではなく、入浴前に選ぶ必要があります。選び方のポイントを伺うと、時間帯とその日の気分で選ぶのがおすすめとのこと。
日の出前と夕方からは甲府盆地を一望できる「あっちの湯」、昼間は富士山がよく見える「こっちの湯」が人気なんだそう。広くて開放感がある分、少しにぎやかな「あっちの湯」、趣があって、歴史を感じながらゆったりと入浴できる「こっちの湯」と、どちらも違った魅力があります。
それでは早速「こっちの湯」と「あっちの湯」を見ていきましょう。どちらも女湯のご紹介ですが、男湯も線対称に造っているそうなので、同じような景観だと思っていただければと思います。
落ち着いた雰囲気の中入浴できる「こっちの湯」
1999年に開湯した「こっちの湯」。ほったらかし温泉の歴史はここから始まりました。
木造りと岩造りの露天風呂、木の香り漂う内風呂。落ち着いた風情が根強い人気で、常連客はこちらを好む方が多いのだそう。
正面に富士山、右手に山梨百名山の一つ兜山(かぶとやま)の稜線、そして眼下には甲府盆地が広がります。
上段にはあつ湯とぬる湯、洗い場があります。「こっちの湯」の源泉は36度。あつ湯は約41度、ぬる湯は約38度に調整していて、冬はさらに水温を2度あげているそうです。
洗い場にはボディソープとリンスインシャンプーが置いてあるので、手ぶらでの入浴もかないます。
タオル(200円)とバスタオル(1,000円)も販売。このデザインも先代が創ったものなんだそう。
下段には野趣あふれる岩造りの露天風呂が。少し熱くなったら岩の上で外気浴も良いですね。
日差しを遮るものがないので、日除け笠も置いてあります。もちろん晴天の日だけでなく雨や雪除けにもなる万能グッズです。
洗い場のある内風呂も完備。露天風呂と比べると規模は小さいですが、こちらも泉質は同様です。
脱衣所は、ロッカーと洗面所、トイレの簡素な造り。ドライヤーは置いてありますが、基礎化粧品などはないので、使いたい方は忘れずに。貴重品ロッカーは100円で使用できます。
眺望も広さも2倍!スケールの大きい「あっちの湯」
入浴客が増えたため、2003年に新たに誕生した2つ目の浴場「あっちの湯」。従来の「こっちの湯」に比べて、眺望も広さも全てが2倍のスケールです。
「ほったらかし温泉」入り口より一番遠い場所にあり、階段を降りて向かいます。開業当初は、実は駐車場として整備したスペースだったのだそう。
手前が女湯、奥が男湯です。脱衣所までの道も趣がありますよね。
「あっちの湯」も「こっちの湯」同様、露天風呂(あつ湯とぬる湯)と内風呂があります。こちらの源泉は38度。
右手に富士山、左手に大菩薩嶺を望み、眼下に甲府盆地東部を見下ろす、雄大な眺望が自慢です。
下段は岩風呂。時間を忘れて、ずっと浸かっていられるような景色が広がります。
昼間の「あっちの湯」も開放的ですが、ぜひ訪れて欲しいのが日の出と夜景の時間。日の出時間1時間前より開場するので、温泉に浸かりながら日の出を眺めることができるのです。ここから初日の出を楽しむ方もいるのだとか。
※オープン時刻は季節により変動します(12・1・2月は6:00前後、3月は5:30前後、4月1日〜14日は4:45前後、4月15日〜30日は4:30前後、5・6・7月は4:00前後、8・9月は4:30前後、10月は5:00前後、11月は5:30前後です)
日が暮れると新日本三大夜景の認定を受けた甲府盆地の夜景を一望できます。夕焼けに染まる赤富士、きらびやかに輝く甲府盆地、そして夜が更けていくと満天にちりばめられた星座……と、どの時間帯に行っても楽しめます。
洗い場も「こっちの湯」に比べて2倍の広さ。同様にボディソープとリンスインシャンプーが置いてあります。
さっぱりした後は「展望テラス」で名物ご飯を楽しもう
お風呂上がりに絶景を楽しめる展望テラスには、朝食処「気まぐれ屋」と軽食スタンド「桃太郎」があります。
朝食処「気まぐれ屋」の朝ごはん「みそ汁セット」
「気まぐれ屋」のオープンは日の出頃。日の出を楽しんだ入浴客が戻ってくる頃に開店し、9時30分頃を目安に閉店します。
「ほったらかし温泉」開業当初、店長が起きられるかわからないから「気まぐれ屋」という名前にしたのだそう。日の出入浴のために、夜中に向かってくる人が多いのに、食事処がないのは申し訳ないという思いからスタートしました。
提供するのは、朝ごはんのみそ汁セット(600円)です。ごはん・みそ汁・生たまご・漬物・納豆という、朝食で欲しい物が全て揃ったセットで、平日は100食、休日は400食近く売れるそうです。
お米は梨北産のコシヒカリを使用。ガス釜で炊いており、炊きたてが食べられるように時間も調整しているのだそう。みそ汁の具は山のものを中心に。季節やその日に合わせて変わるそうですが、取材した日はしめじ・山菜・大葉・お麩が入っていました。具だくさんで、入浴で乾いた身体に染み渡ります。
たまごは、山梨県・明野農場のワイン卵を使用。ワインの醸造過程で残るブドウの皮や種といった副産物を機械で乾燥させたものを鶏の飼料に混ぜています。コクや旨みが強く、濃厚でおいしい卵かけごはんを味わえます。
シンプルなセットを格上げしてくれるのがこのロケーション。富士山や甲府盆地を眺めながらいただけば、通常よりも何倍にもおいしく感じるでしょう。(取材時、朝方は富士山が見えていたそうですが、霞んで見えなくなっていました。見えていれば、写真右手側に富士山の姿が。)
休日には、豚汁セットやバナナジュース、豚大根、さらにお昼時にはカレーも販売します。
軽食スタンド「桃太郎」の「温玉あげ」
10時〜22時まで営業しているのが、軽食スタンド「桃太郎」です。
山梨名物「ほうとう」や「桜もつ煮」に加え、うどんやそば、更にはかき氷やソフトクリームも販売しています。
その中でも、とくに味わってもらいたいのが「温玉あげ」(1個180円)です。温泉卵を揚げ、その上に塩をまぶしています。サクサクの衣にほどよい塩味、中から黄身がとろりと出てきます。シンプルながら絶品。入浴でたくさん汗をかいた後に食べて欲しい一品です。
休憩所でひと休み
ご紹介した軽食は、景色を眺めながら休憩所でどうぞ。屋根なし、屋根あり、室内とお好きなロケーションでゆったりと過ごせます。
ログハウスタイプの休憩所もあります。アニメ『ゆるキャン△』のモデル地として、「ほったらかし温泉」が登場したときに、主人公たちが休憩していた場所です。
山梨土産も豊富に揃う「おみやげ屋」
温泉を後にする前に「おみやげ屋」に立ち寄るのも忘れずに。ほったらかし温泉公式土産や、山梨産土産をこちらで購入できます。
ほったらかし温泉の周辺、勝沼町や笛吹市にはワイナリーも多いので、ワインのラインナップも豊富でした。
朝食処「気まぐれ屋」で提供していた「甲州ワインたまご」も購入できます。
産地直送の農産物も並びます。どれも新鮮でおいしそう! 取材時には山梨産の桃もたくさん並んでいました。
富士山と四季折々の季節を楽しめる「ほったらかし温泉」で癒やされる
温泉に浸かりながら富士山を眺めたい……という方は、秋や冬に訪れるのがおすすめです。取材時もそうでしたが、夏は晴天でも富士山が霞んでしまうことが多いのだそう。
富士山を見られない日でも、ほったらかし温泉では四季折々の変化を楽しめます。桃の花が一面に咲き誇る春の甲府盆地、海抜約700mの涼風を感じる夏、紅葉に包まれる秋の山々、澄んだ夜空に浮かび上がる冬の星座……と。
季節問わずに、自然の雄大さを感じられる「ほったらかし温泉」に、出かけてみませんか。
ほったらかし温泉
- 住所
- 山梨県山梨市矢坪1669-18
- 営業時間
- 日の出1時間前~22:00(最終受付21:30)
- 料金
- 大人900円、小人(0歳~小学6年生)400円
- 公式サイト
- ほったらかし温泉
取材・撮影・文/加藤あやな
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