東京方面から伊豆の旅と聞くと、伊豆高原など東海岸や修善寺を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、深く青い駿河湾に浮かぶ富士山の絶景は、伊豆西海岸でしか味わえない楽しみ。中でも伊豆西海岸最古の温泉地である土肥温泉は、静かでゆったりとした時間が流れる大人の隠れ里といった雰囲気の町。そんな町の高台にあるのが、今回お邪魔した宿「世界遺産 富士山を望む宿 富岳群青」です。
隠れ里・西伊豆。完全なプライベートが約束された、たった8室の贅沢な空間
東京方面からは車で東名高速道路「沼津」ICより伊豆縦貫道を抜け、海沿いの国道136号線へ。土肥温泉の町の端にある急な坂道を上ると、重厚な雰囲気のエントランスが現れます。
扉を開けると、そこは開放感のある高い天井に落ち着いたトーンで統一されたフロント。ソファに案内されると、ウエルカムスイーツと地元静岡のお茶のおもてなしが待っていました。
伺った日のスイーツは桜の葉を巻いたオリジナルの和菓子「桜きんつば」。ひとくち食べると口の中にふわっと桜の香りが広がり、ほのかな甘みとともにドライブの疲れを癒してくれます。
このオリジナルの「桜きんつば」(6個入り、1,500円)はフロントでも販売されていて、お土産としても人気だそうです。
フロントにいて驚くのは、この宿の静けさ。15:00のチェックインタイム頃に合わせて伺いましたが、ほかのゲストの気配がないのです。それもそのはず。「富岳群青」はとても広い空間に、離れのような客室がたった8室しかありません。
ここは、全室が海に面した100平米以上、温泉露天風呂と内風呂がついたラグジュアリーなプライベートスイートの宿。大浴場に行く必要がなく、レストランも個室なので、チェックインからチェックアウトまで、ほかのゲストとほとんど顔を合わせずに、まるで自分の別荘に来たようなプライベートな旅を楽しめます。
浮世絵のような絶景の富士山とモダンな部屋がお出迎え
チェックインを済ませ、いよいようわさの富士山の絶景が望めるというお部屋へ。今回泊まったのは、モダンな革製のソファと木目調のインテリアで統一された「月待つ」の部屋。8室それぞれに「虹の端」や「波の風」など、ロマンティックな名前がつけられ、部屋ごとにインテリアや露天風呂の材質なども変えているという凝った造り。
さらに部屋から見える富士山の趣きも少しずつ異なって見え、部屋ごとに雰囲気の違う滞在を満喫することができます。
大きな窓一面、駿河湾にぽっかりと浮かぶ富士山の雄大な姿が出迎えてくれます。裾野まで惜しみなく見せてくれる富士山と、駿河湾の絶景は葛飾北斎の浮世絵のような迫力。旅の荷物を足元に置いたまま、その美しさにしばらく立ち尽くしてしまいました。
宿の名前である「富岳」とは富士山のこと、そして「群青」とは青い海のこと。この絶景こそ、ここに建つ「富岳群青」でしか味わえない最高のおもてなしです。
贅沢なプライベート温泉露天風呂で心と体の疲れを癒す
富士山を眺める一番の特等席は、客室の露天風呂。さっそく、ヒノキの香りがする露天風呂へ入ることに。ほんの少しとろみがあるカルシウムとナトリウムを含んだ温泉は、「美肌の湯」と呼ばれることもあるそう。ぬるすぎず熱すぎず、いつまでも入っていたくなるちょうど良いお湯加減です。
脚を伸ばして、昼間から温泉に浸かり、ただ美しい景色をぼーっと眺めるだけの贅沢な時間。新鮮な空気を体いっぱい吸い込むと、昨日までの疲れがどんどん癒されていくのを感じます。
お風呂にゆっくり浸かったあとは、オープンテラスのデッキチェアでティータイム。冷蔵庫には、ビールや日本酒のほか、ミネラルウォーターやお茶、ジュースなどのソフトドリンク、地元で人気のミルクプリンや牛乳もすべてフリー。
温かいコーヒーや紅茶が飲みたいときもご心配なく。無料のエスプレッソマシンやポットも用意されているので、部屋のソファやバルコニーのデッキチェアでティータイムを満喫できます。もちろん、目の前の富士山がティータイムのお供です。
部屋には露天風呂のほかに、ジャグジー付きの内風呂も。脱衣所には、今治タオルが複数枚用意されているので、何度も温泉に出入りをくり返しても、常に乾いたタオルを使えるのはうれしいサービスです。
バスローブ、色浴衣、コットン100%でやわらかく肌触りの良いパーカータイプの部屋着も用意され、とにかくくつろいでほしいという、ホスピタリティが感じられました。
とことん自分を癒してあげたいなら、客室で受けられるエステを。フェイシャル(60分15,000円~)、ミネラルアロマボディ(60分15,000円~)や、美容鍼(80分25,000円~)など、たくさんのコースから選べます。部屋で施術を受けられるので、そのまま寝てしまっても、お風呂に入ってもOK。極上の癒しをお部屋で堪能できます。
客室エステ
- 営業時間
- 15:00~22:00
- ラストオーダー
- 18:00
お酒好きなら、フロントでお部屋にワインをリクエスト可能(赤9,000円、白8,000円)。絶景を楽しみながら、2人だけの特別な記念日に乾杯!
16:00を過ぎると(12月下旬頃)、そろそろ富士山に赤い夕陽が射してきました。ほんの1時間前には青い姿だった富士山が、夕焼けの時間が近づくと頬を赤く染めるように、ほんのりとお色直し。時間ごとに移り行く富士山の姿を一瞬たりとも見逃したくなくて、日が沈むまで、じっとその景色を見つめてしまいます。
プライベートルームでゆったりと味わうフレンチ懐石
18:00過ぎ、夕食へ。客室同様、落ち着いた雰囲気が漂う完全個室の食事処でいただきます。
幻想的なブルーにライトアップされたウォーターガーデンを望み、思い出に残るイベント気分を盛り上げます。プライベート空間なので話も弾みます。
お部屋で食事をしたい場合は、部屋食ができるおこもりプランも(+5,000円、1日につき2組まで)。希望する場合、チェックイン時にリクエストしましょう。
お料理は駿河湾の海の幸や、伊豆で採れた旬の野菜を素材にした、和とフレンチを融合したフレンチ懐石。お皿にもこだわり、そこに盛られたアート作品のようなお料理は食べるのがもったいないと思うほど。
「伊豆の魚や野菜を主役に、フォアグラなど絶対的においしい素材はサポートとして使っています」という洋料理長・須田勝慶さんのアイディアが光る、ここでしか食べることができないフレンチ懐石は、「また食べたい!」と思わせる記憶に残るお料理です。
この日のコース名は、「大地と潮の薫る旬彩な味覚の奏膳」。アミューズからプティフールまで9品をいただきました。
駿河湾の海のように美しいブルーのお皿にのった前菜「天城産アマゴのマリネ 静岡県産カリフラワーのピュレとコポーアメーラルビンズ キャビア 黄金いくら」。地元産の珍しい食材が盛り付けられ、見た目にも楽しめる一品です。
「本日水揚げされた特選地魚」は、ヤカラ、マグロ、クエ、シマアジのお造り。どれも新鮮だからコリコリと身が締まっています。
魚料理「オマールブルーと駿河湾産金目鯛のヴァプール ソースヴァンブラン」。真っ赤なお皿に盛りつけられたエビは食べる前からいい香りを放ち、食欲を誘います。
肉料理、お食事もののリゾットを挟み、デザートの1品目は雪をかぶった富士山に見立てた「マロンムース」。2品目は、木の実が敷き詰められた赤い皿の上に現れた「ムースショコラブラン 天城産キーツマンゴーのソルベ」。かわいらしい見た目を目で楽しみ、次に舌にのせて素材を生かした甘みを味わって、2度楽しめるスイーツです。
食事処を出るときに渡されたのは、ジュエリーボックスのような箱。「お夜食に」と、ソルティーなクレープが入っていました。
部屋に戻ると、海と空がひとつになった夜空が広がる光景が。もらったクレープを食べ、もうひと風呂浸かりながら、夜の景色もたっぷりと堪能できます。
早起きをして、朝焼けの富士の幻想的な風景を
「朝焼けの富士山が一番きれいなんですよ」とスタッフの方からお話を伺い、目覚ましを6:00にセット(12月下旬頃)。眠い目をこすりながらオートブラインドを開けると、まだ外はほの暗い空。徐々に日の光が射し、朝もやの中にオレンジ色に染まる富士山が現れました。その幻想的な景色は息を飲むほどの美しさです。
時間を追うごとに明るんでいく朝の駿河湾と富士山の風景を独り占め。贅沢な時間を堪能できます。
朝食は季節に合わせた和食御前。三段重を開けると、副菜がずらり。朝から新鮮な魚のお造りや、地元の名物・イカの三升漬け、焼き魚など、地場の魚づくし。夕食もたっぷり食べたのに、炊き立てごはんの香りに朝から食欲をそそられます。
チェックアウトは12:00と遅めの設定なので、2日目の朝もゆっくりと過ごすことができます。朝食を終え、裏山を散策。海沿いの国道へと続く小径からは、部屋から見るのとはまた違う富士山を見ることができました。
部屋に戻ったら、帰る前にもうひと風呂。誰にも気兼ねせず、何度も入ることができるのはプライベート温泉だけの特権です。
時間の移り変わりとともに、お色直しをするように表情を変える富士山。誰にも邪魔されずに、ただ富士の絶景と温泉を楽しむ極上の贅沢な時間は、プライベートな個室だから叶えられるもの。大事な人と2人で思い出を共有すれば、一生心に残るでしょう。
世界遺産 富士山を望む宿 富岳群青
- 住所
- 静岡県伊豆市八木沢2461-1
- アクセス
- 【車】東名高速道路「沼津」ICから約1時間30分
【電車・バス】伊豆箱根鉄道駿豆線「修善寺」駅から東海バス(土肥・松崎行)で約50分、「大久保」バス停下車
- 客室数
- 8室
- 駐車場
- 15台、無料(予約不要)