秋田県由利本荘市にある「鳥海山 木のおもちゃ館」は、季節を問わず屋内で子どもたちがのびのび遊べます。人気の由利高原鉄道「おもちゃ列車」のデザインとともに、秋田のふるさと文化に触れる、子連れ親子におすすめの観光をご紹介します。
「鳥海山 木のおもちゃ館」はこんなところ
「鳥海山(ちょうかいさん) 木のおもちゃ館」は、旧鮎川小学校校舎に誕生した遊べるミュージアム。「東京おもちゃ美術館」が監修を手がけ、多世代交流と木育体験の場として2018年に開館しました。
広い館内には地元の木材が使われた遊具や、数え切れないほどのおもちゃが展示・設置されています。子どもはもちろん、世代を超えて楽しめる工夫が散りばめられた、魅力溢れる施設となっています。
秋田県南のローカル線「由利高原鉄道」とは
由利高原鉄道・鳥海山ろく線は、羽後本荘駅から矢島駅を走る総距離約23kmのローカル線です。
かすりの着物姿のアテンダント「秋田おばこ」が方言でガイドをしてくれる「まごころ列車」が有名です。他にも季節によってイベント列車を走らせるなど、観光を楽しめる路線です。
鳥海おもちゃ列車「なかよしこよし」
「鳥海おもちゃ列車『なかよしこよし』」は、「木のおもちゃ館」の開館と同じ2018年にデビューしました。鳥海山ろく線を1日に2往復します。地元の木材が使われた個性的な内装で、おもちゃ館へ行くならぜひ乗りたい車両です。
- おもちゃ列車運行予定
- 「由利高原鉄道」公式サイト
木のおもちゃ館へのアクセス
東京からは上越新幹線で新潟まで約2時間、さらに羽越本線特急に乗り換え約3時間で、おもちゃ列車の発着駅である「羽後本荘駅」に到着。羽後本荘駅から鳥海山ろく線で約10分、「鮎川駅」で下車し、駅前から専用シャトルバスで約5分です。
秋田市側からアクセスする場合は、東京から東北新幹線で「秋田駅」まで約3時間45分、そこから羽越本線に乗り約45分で羽後本荘駅です。
懐かしい硬券切符を入手して出発!
羽後本荘駅から鮎川駅まで片道330円。鳥海山ろく線は運賃を車内で支払えます。バスのように、乗車時に整理券を取り下車時に支払機にお金を入れる仕組みですが、駅の窓口で買うと昔懐かしの硬券にハサミを入れてもらえるため、記念に購入する人も多いようです。
おもちゃ列車のデザインは、木のおもちゃ館と同じ砂田光紀氏の手によるもの。おもちゃの国からやってきたようなかわいいカラーリングが特徴です。
乗って楽しいおもちゃ列車のデザイン
車内には木材がふんだんにあしらわれています。木製のスツールや遊具があり、すでにおもちゃ館の一部のようです。
ボックス席やソファー、カウンター席があり、自由に座れます。
どこの席もドリンクが倒れにくいように縁取りがあったり、つかまるところがあったり、小さな部分に配慮が感じられます。
子どものための小さな椅子やテーブルがあり、設置されたおもちゃを自由に手にとって遊ぶことができます。
そして子どもたちが大好きなボールプールも木製です。木の質感や音を感じながら遊べるのは贅沢ですね。
木質化された車内では、手すりや装飾の曲線美にも注目してみましょう。地元の木材とそれを活かす職人さんたちの技術の高さがうかがえます。
車窓の風景も見どころ。季節によってさまざまな表情を見せてくれます。雪を戴いた鳥海山。稲刈りを終えた田んぼでは、冬を越すために渡ってきた白鳥たちが羽を休めていました。
約10分で鮎川駅に到着です。小さな無人駅で改札はありません。駅から出ると迎えのシャトルバスが待っていてくれるので、そちらに乗り込み、約5分で到着します。
美しい校舎を活かした木のおもちゃ館
白い窓枠が印象的な旧鮎川小学校校舎は、昭和20年代に建てられた重厚感のある木造建築。地域の人たちによって大切に保存され、国の登録有形文化財に指定されています。
玄関に入ったら靴を脱ぎましょう。学校なので上履きを持参するのを忘れずに。大人用のスリッパは貸し出していますが、子どもと一緒に遊ぶなら大人も上履きがおすすめです。
館内は「木のおもちゃ館ゾーン」(おとな 800円、子ども(小学生以下)600円)と、無料の「市民ゾーン」に分かれています。玄関を入って右手に入場受付とトイショップがあります。
体育館で思いっきり遊ぶ「もりのあそびば」
入場したらまずは「もりのあそびば」へ。こちらは木のおもちゃ館を象徴する広いエリアで、ほとんどの遊具が秋田県産材でできています。
子どもたちが大好きな「ちょうかいタワー」
もりのあそびばの中央に立つ「ちょうかいタワー」は、中二階へ続くらせん階段があり、上からはすべり台でタワー1階の「木のどんぐりプール」に降りてこられます。
子どもたちが吸い寄せられるように集まる木のどんぐりプールは、よく見るとボールがどんぐりの形。数種類の木が使われていて、色や木目の違いがよく分かります。
大人もわくわく!「ツリーハウス」
廃材を活用したツリーハウス。下にはハンモックが吊り下げられ、上の小屋には秋田犬の形の薪ストーブなどが置かれています。
まさしく秘密基地といった造りで、大人も思わず中を覗いてしまいます。
遊び方を教えてくれる「おもちゃ学芸員」
館内には「おもちゃ学芸員」と呼ばれるボランティアスタッフが在中し、一緒に遊んだり、おもちゃの遊び方を教えてくれたりします。こちらは同じ大きさの板をいろいろな形に積み重ねて遊ぶ「KAPLA」。一本引き抜くと滝のように崩れていく積み方を見せてもらいました。
時間を忘れて没頭してしまう「あそびのこべや」
窓際には小さく仕切られた26室の「あそびのこべや」が並んでいます。各部屋には、部屋のテーマやおもちゃの名前が書かれていて、中に入ってそれぞれのおもちゃで遊ぶことができます。
秋田の民芸おもちゃから、八百屋さんやカフェなどの「ごっこ遊び」、「どうぶつしょうぎ」のような頭を使うボードゲームまでさまざまです。きっとお気に入りの部屋が見つかります。
「野生動物がよく来るよ」と学芸員さん。うながされて窓の外をみると、カモシカがいました!よく来るそうなので、運が良ければ会えるかもしれません。
洗練されたおもちゃ「グッド・トイサロン」
体育館を出て各教室の展示スペースへ。こちらは全国のおもちゃコンサルタントたちが選んだ、「グッド・トイ」に認定されたおもちゃが集まる部屋です。
知育玩具やデザイン・アイデアに優れたものなど100種類以上が展示され、触って遊べます。
2歳以下の赤ちゃんのための「ハイハイひろば」
床に起伏があったり、凹凸のある鏡に自分の姿が映ったりするなど、ハイハイする頃の赤ちゃんが楽しめる内装とおもちゃが用意されています。
こちらは2歳以下専用の部屋で、大きなお友だちは入ってこないので、保護者もリラックスして遊ばせることができそうです。
また、「ハイハイひろば」のすぐ隣の部屋と、無料の市民ゾーンに授乳室があります。こうした場所があるとママも安心して過ごせますね。
木のおもちゃ館ゾーンではほかに、元音楽室で読み聞かせなどをする「こども劇場」や、身近な素材でおもちゃが作れる「おもちゃファクトリー」など、体験できる楽しい企画が行われています。
展示の魅力「特別企画展示室」
大人がじっくり眺めたくなる「遊び文化の継承」をテーマにした展示室です。日本のおもちゃと世界のおもちゃが展示されています。
キッチンカフェ「kino(キノ)」でランチ
キッチンカフェ「kino(キノ)」は元職員室がカフェスペースになっていて、地元の食材を使った料理を提供しています。座席にゆとりがあり、年齢ごとのベビーチェアも用意されているので子どもと一緒に落ち着いて食事ができます。
写真は「こむすび2個(180円)」と「ゆり根うどん(ハーフ)(320円)」。
「おむすび」のほかに、小ぶりな「こむすび」があり、小さな子も食べやすいサイズです。「ゆり根うどん」は地方の特産品で、ユリの球根の粉末が練り込まれたうどん。お出汁がきいた優しい味わいです。
※ランチ 平日11:00~13:45 LO.、土日祝~14:00 L.O.
地元でとれたお米を毎日かまどで炊いて、ごはんそのものがとってもおいしいのでぜひ召し上がってみてください。他にもカレーやスイーツとメニューが豊富で、どの世代でも楽しめる取り揃えです。
無料で開放している「市民ゾーン」
入口玄関を入って左側にあるのが、誰でも無料で入れる「市民ゾーン」です。どこか懐かしい木製おもちゃが展示されていて、大人も見学を楽しめるスペースとなっています。
こちらは5年生と6年生の教室がそのまま残してある「クラスルーム1&2」。休憩室として開放されているので、持参したお弁当を食べるなど自由に利用できます。こちらのほかに畳敷きの休憩室もあります。
由利地域の歴史と文化を伝える民具の展示
この地方で使われてきた農耕具などを展示している「民具特別展示室」と「ゆきぐにの民具展示室」では、昔使われていた着物や生活用品などから当時の暮らしを知ることができます。貴重な映像資料も公開されています。
昔仕事に使われた道具や冬の防寒具なども展示されていました。冬には雪に覆われる里山で、人々がどんな風に生きてきたかが伺える民俗資料の展示室です。
トイショップ「tocca」でお土産やギフトをセレクト
受付と併設のトイショップでは、安心して遊べる国産材を使った木製玩具を中心に扱っています。一般のお店ではなかなか見られない木工作家さんたちの作品は必見です。
店長さんにおすすめをいくつか教えていただきました。こちらは館内で大人気、穴に隠れた虫を磁石のついた棒でつかまえる「ひっつきむし」がたくさん隠れている「ひっつきむしの木」。
なんともシュールなビジュアルのこちらは「内臓パズル」。大人も心惹かれる不思議な魅力を放っています。
秋田の伝統工芸「樺細工」の手法で作られたアクセサリー「KAVERS」のブローチ。これまでの伝統的なイメージを覆すモダンなデザインが素敵です。
左から、おもちゃ館のスタッフさん、トイショップの魔女店長さん、魔女スタッフさん。「おもちゃ館周辺は環境がおだやかで居心地が良いですよ」と話してくれました。
館内はスタッフさんたちの優しさにあふれていて、赤ちゃんや高齢の家族と一緒でも安心して過ごせます。
里山にたたずむ「鳥海山木のおもちゃ館」
「鳥海山木のおもちゃ館」では旧校舎に、再び子どもたちの元気な声が響いています。世代を超えて楽しめるというコンセプトの通り、ノスタルジックな校舎と木のおもちゃには、会話を弾ませる不思議な力があるようです。
由利高原鉄道の「おもちゃ列車」で大切な人と訪れてみてはいかがでしょうか。
鳥海山 木のおもちゃ館
- 住所
- 秋田県由利本荘市町村字鳴瀬台65-1 旧鮎川小学校
- 営業時間
- 9:00~16:00(最終入館は15:30)
- 休館日
- 毎週木曜日・年末年始(木曜日が休日の場合は翌日)
- 入館料
- おとな 800円
子ども(小学生以下) 600円
- アクセス
- 【電車】JR羽後本荘駅から鳥海山ろく線「鮎川駅」下車。専用シャトルバスで約5分。
【車】日本海東北自動車道 本荘ICから車で約10分。
木のおもちゃ館周辺マップ
取材・文・写真/Junko Saito