提供:ことりっぷ
上野駅と御徒町駅のあいだ、アメ横の高架の近くにある「丘」は、昭和の東京オリンピックのと同じ創業当時から変わらない雰囲気で営業し続けています。そのレトロなたたずまいから、映画やドラマなどのロケ地としても使われることもある喫茶店を訪ねました。
時を経たレトロなたたずまいの純喫茶。上野「丘」
ビルの地下にお店がある
上野駅から徒歩8分。線路沿いに建つ年季の入ったビルに掲げられた看板の「丘」の文字が見えてきます。
レトロなタイルの並んだ壁伝いに階段を降りて行った先、地下1階にある「丘」は、1964(昭和39)年から続く純喫茶。現在は2代目マスターの三浦さんが受け継いでいます。
ガラスのドアを開けて店内に足を踏み入れると、目を引くのは天井から下がった大きなシャンデリア。昭和の喫茶店ならではの、温かみのある間接照明の光が、使い込まれたテーブルセットや壁紙をやわらかく照らしています。
シャンデリアや照明をはじめ、壁のステンドグラスやガラス、ヨーロピアンな雰囲気に、お店が積み重ねた年月が重なったシックな店内。
マスターにお話を伺うと、お店はテレビや雑誌のロケ地としても使われることも多いのだそう。オープン当社から変えていないという古き良き雰囲気は、そのままで撮影のセットのよう。思わずカメラを向けたくなるのは、お客さんも同じです。
ホットコーヒー(480円)
毎朝、豆から挽くコーヒーは、苦みを抑えた飲みやすい味わい。ドリンクでは、昭和の喫茶店のシンボル的メニュー、クリームソーダも人気です。
ランチの人気メニューはナポリタン。喫茶店ブームの影響で、最近では、週末には店の外までお客さんが並ぶこともあるのだそう。もっと軽めに食べたいときなら、コーヒーとも相性が良いサンドイッチをどうぞ。
クリームソーダ(650円)
お店の入り口のガラスに書かれた、《音楽喫茶》の文字について伺うと、創業時はジャズ喫茶だったのだそう。長年使っていたレコードプレイヤーが壊れて以来、音楽はかけていないそうですが、カウンターの奥にはレコードのコレクションがぎっしりとそろっていました。
お店に置かれた昔の映画やドラマで見るようなダイヤル式の公衆電話や、お客さんからのいただきものだという昭和の出来事がつづられた年代物の雑誌なども、映画の小道具のよう。まるでタイムスリップしたような気分でひとときを過ごせます。
ひとりで本を読んだり考え事をして静かに過ごしたり、親しい友人と小さな声で話したり。喫茶店のシックなイメージそのままの「丘」で、ゆっくり過ごしてみませんか。
文:朝光洋理 写真:小林利穂