1カ所で何種類もの泉質が湧く、「温泉のデパート」と呼ばれる温泉地があるのをご存知ですか?北海道・登別温泉は、国内10種のうちの9つの泉質が楽しめます。
なかでも開湯160年を超える「第一滝本館」は、そのうち5種類の湯(硫黄泉、芒硝泉、酸性緑ばん泉、食塩泉、重曹泉)に入れる温泉天国です。そんな歴史のある宿で、名湯と旬の味を満喫する旅へご案内します。
世界でも珍しい、温泉のデパート「登別温泉」
「登別温泉」は、北海道登別市にある温泉地。江戸時代にはすでにその存在が知られていて、湯治や保養に訪れる人で賑わってきました。観光スポットでもある「地獄谷」から湧出する湯量は1日およそ1万トン。さらに、国内に10種あるといわれる泉質のうち、登別温泉だけで9種類もの泉質が湧いていて、まさに温泉のデパートです。
「登別温泉 第一滝本館」の歴史
「第一滝本館」は160年以上の伝統があり、北海道に入植した初代・滝本金蔵が、皮膚病に苦しむ妻・佐多のために登別の地で湯小屋を建てたことに始まります。金蔵は、湯の効能を広く伝えようと街づくりに貢献し、現在の人気温泉地の礎を築きました。宿の歴史が登別温泉の歴史ともいえるほどの長い間、愛されてきた温泉宿です。
「登別温泉 第一滝本館」までのアクセス
札幌駅からホテル最寄りの登別駅までは、JRの特急北斗か、特急すずらんで約1時間10分。登別駅からは、道南バス「登別温泉」か「足湯入口」行きに乗車。「足湯入口」行きは、「第一滝本館前」バス停で下車すると目の前です。「登別温泉」行きは、終点「登別温泉ターミナル」で下車して徒歩約7分です。
広々としたエントランス・ロビーが出迎え
車の誘導からエントランスでの消毒・検温、フロントまで、どのスタッフさんも明るく迎えてくれて心がなごみます。リニューアルされた広いロビーは、地獄谷をイメージしたウォールアートと、木の温もりを感じられるデザインです。
ロビーにふわりと漂う白檀の香りに目をやると、その日焚いているお香を紹介するプレートが置かれていました。後ほど紹介しますが、お土産として購入できます。
地獄谷を見下ろす大人の隠れ家、温泉付きの「西館特別室」
木と石の質感を活かした壁。ベッドとソファはシモンズ社製。Bluetooth対応のBOSEスピーカー、ガス式の暖炉。旭川の家具メーカー「カンディハウス」の木製家具など。これぞ大人の隠れ家という素敵な空間です。
窓へ向いたベンチチェアとテーブル。部屋の温泉は、手触りの心地よい信楽焼のバスタブです。網戸があるので、夏は窓を開けて開放感に浸れます。
窓の外は、蒸気が立ち上る地獄谷を見下ろす絶景。第一滝本館が地獄谷に一番近い宿だから叶う眺めです。
ポットにミネラルウォーター、ドルチェ グストのコーヒーマシン。セットするコーヒーは、スターバックスのカプセルです。茶器やグラスなどは引き出しに十分な数が揃っています。
西館特別室のアメニティには、北海道産カレンデュラを使った肌に優しいスキンケアセットが置かれていました。子どもにも使えるほど原料にこだわっているメーカーで、肌荒れを防いでしっとりと潤います。こうした北海道の製品を試せるのはうれしいですね!
シンプルで過ごしやすい東館ツインルーム
こちらは東館ツインルーム。木目を活かしたナチュラルな雰囲気のインテリア。ベッドはシモンズ社製。ソファがあり、2人で滞在してもゆとりのある広さです。
洗面台とシャワーブース。シャンプーやボディソープは備え付けです。また、ドライヤーやコップ、歯ブラシなどは洗面の引き出しに収納されていて、自分の化粧品などを広げるスペースがあって快適です。
さまざまな泉質と35の湯船でたっぷりと温泉を満喫
1,500坪・3階建ての温泉棟に、男女合わせて合計35の湯船という圧巻の大浴場。そして、この大浴をまわるだけで、日本の泉質10種のうちの半分に入れてしまう温泉天国です。女湯の一番大きな浴槽は、血行促進が期待できる「酸性緑ばん泉」。
窓の向こうは地獄谷の景色。手前の「芒硝泉」は、お肌のかさつきが気になる方向け。奥は「食塩泉」です。ほかに「重曹泉」と「硫黄泉」があります。宿の方に聞いたおすすめの順番は「重曹泉でスタートしてお肌を柔らかくして、最後に食塩泉で保湿して湯冷めを防ぐ」だそうです。
湯船には泉質と効能、肌への刺激の強さが分かりやすく表示されています。「健康湯ゾーン」には、打たせ湯、寝湯、歩きながら足を刺激する歩行湯などがあり、入る順番なども掲示されています。蒸気風呂や気泡風呂、サウナもあり、さまざまな入浴スタイルを楽しめます。
温泉に浸かりながら注目していただきたいのが、クマやハクチョウなどをモチーフにした壁面のタイル絵。北海道ゆかりのアーティストによる作品で、とってもポップでかわいいんです!
洗い場の数が多く、見えていないところにもまだあります。これだけあれば混雑せずに利用できそうですね。シャンプー、リンス、ボディソープ、洗顔フォームと美容パックなども設置されていました。
あこがれの「露天風呂で1杯」ができるサービス
露天風呂にお盆を浮かべてお酒をいただく……。温泉好きなら一度は憧れるシチュエーションですよね。第一滝本館では、露天風呂のカウンターから日本酒やビールを購入できるサービス(15:30~20:30)があるんです!この機会に露天酒を味わってみてはいかがでしょうか?
はじまりの湯を再現した「金蔵の湯」
3つある露天風呂のうち木枠で囲まれた小さな「金蔵の湯」は、第一滝本館のはじまりとなった、金蔵が佐多のために作った湯を再現しています。温度の高い源泉を、湯車と湯棚を通して適温に調整する昔ながらの方法で、源泉かけ流しを堪能できます。
脱衣スペースも広く、ドライヤースペースには、化粧水と乳液が置かれています。
ウォーターサーバーと、冷やした蝦夷ウコギ茶が飲めるコーナーもあり、湯上りの休憩場所に最適です。
食事処「湯の里」でいただく豪華な「特別御膳」
四季折々、北海道の旬を味わえる第一滝本館。全ての席が半個室に仕切られた食事処「湯の里」で夕食をいただきます。宿の名物「愛妻鍋」は道産牛でした。重曹泉を出汁のベースに使い素材のうまみを引き出す料理は、このホテルならでは。
前菜は、さくら茶巾豆腐、筍と木の芽和え、穴子鳴門煮など。さくら茶巾豆腐がつるんとした喉ごしで、食前酒の梅酒とぴったりです。
しっかり身の詰まったずわい蟹は、特製の土佐酢でいただきます。「特別御膳」は、お刺身に蟹に道産牛のお鍋ととっても豪華です。
揚げ物は、オープンキッチンからできたてが届きます。この日はさくら鱒の磯辺揚げ。餡のふき味噌が香ります。揚げたての衣はさっくり、脂ののった鱒はふんわり食感。
最後に、あさりの押し寿司、烏賊のつみれと昆布の味噌汁が出ました。もうお腹一杯です。デザートは手づくりの苺のスイーツ。
宿泊プランによっては、ビュッフェスタイルの夕食やお部屋食もあります。事前に相談すれば、アレルギー対応の和食膳や子ども膳、ベジタリアン向けのお料理も可能とのことです。旅先で不安なく食事ができるのはうれしいですね。
朝食は種類豊富な和定食
朝食も食事処「湯の里」で和定食をいただきました。朝食の定番、焼き鮭と卵焼き。イカのお刺身やお蕎麦もあり、甘味は白玉ぜんざい。イカの塩辛でついついご飯がすすみます。たくさんの種類を少しずついただけるのはうれしいです。
よく見ると、ニンジンのかざり切りが鬼の金棒でした。遊び心のあるおもてなしですね。観光名所の地獄谷から由来して、登別の街にはたくさんの鬼のモチーフが隠れています。
おみやげ処「湯の街」で買える人気のお土産
とっても広い第一滝本館。本館の中央吹き抜け部分にお土産が買えるお店、おみやげ処「湯の街」があります。
お菓子やお酒といった定番のご当地商品から、シャンプーなどのアメニティ、雑貨、衣類など、さまざまな商品が並ぶ店内。品数が多くて短時間では選びきれません。お店の方に人気商品を教えていただきました。
第一滝本館ではオリジナルの商品もたくさん取り扱っています。大浴場のリラックスコーナーに設置されていたのと同じ「蝦夷ウコギ茶」(648円)は、国内では北海道でしか採れないウコギを原料としたお茶。オンラインショップでリピート買いされるほどのNo.1人気商品です。
自宅で名湯に浸かれる「瀧本乃湯」(660円)は、硫黄泉成分を湯の素にした商品。4つの香りが楽しめるカレンデュラのハンドクリームセット(1,650円)。コラーゲンが配合された「湯の花石鹸」(990円)。ホテルのロビーで焚いているお香、「芳輪白川」(880円)、「芳輪堀川」(1,100円)。「香立て」(各550円)
一日に300個以上売れることもあるオリジナルの「プレミアムチーズケーキ」(1,188円)地元で栽培されるわさびでつくる「わさび漬」(648円)。「余市ワイン滝本ラベル 小」(各1,088円)。「第一滝本館・菰樽」(1,980円)。お土産にはもちろんですが、滞在中にお部屋で楽しむのもいいですね。
家族連れで楽しめる広いプール
第一滝本館の楽しい施設をいくつかご紹介します。温泉棟の2階は広いプールがあり、家族で楽しめるエリア。子ども用の浅いプールやウォータースライダーなどがあります。浮き輪などの遊具レンタルも行っています。
飲む湯治「飲泉処ゆのか」
「飲泉処ゆのか」は、自家源泉のなかでも、飲用に適した「重曹泉」を飲めるコーナー。消化器系や便秘改善などに効能が期待できるそうです。
蕎麦にラーメンなどお店が充実
夕食をいただける「湯の里」やビュッフェダイニング、コーヒーラウンジに加えて、本館には、お蕎麦屋さんや期間限定で有名店が出店するラーメン屋さんなどが集まり、まるでショッピングモールのようです。
高さ9mの大からくり「滝本名物大金棒」
地階に飲食店、フロア階におみやげ処が集まる吹き抜けエリアには、定時になると動き出すからくり仕掛けの大きなモニュメントがあります。鬼の楽団や桃太郎たちがからくりで動きながら演奏を見せてくれますよ。
さまざまなスタイルで楽しめる、充実の温泉宿
ひとつの宿で湯巡りができてしまう第一滝本館。翌日はお肌しっとり、肩のこりも楽になり、数種類の泉質がもたらす力を感じました。清潔な大浴場は、本格温泉を体験したい若い世代にもおすすめです。
また、客室のバリエーションが多いので、旅のプランに合ったお部屋が見つかると思います。
北海道の名湯・登別温泉。夫婦愛から生まれた温泉宿で、皆さんも癒しのときを過ごしてみませんか。
登別温泉 第一滝本館
- 住所
- 北海道登別市登別温泉町55
- アクセス
- 最寄駅・登別駅/道央道登別東ICより約10分/新千歳空港より約60分
- 駐車場
- 100台/無料
- チェックイン
- 14:00 (最終チェックイン:24:00)
- チェックアウト
- 10:00
- 総部屋数
- 393室
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取材・写真・文/Junko Saito