人気宿のスタッフが魅せる「おもてなしの流儀」
人気宿には、一流のおもてなしがあります。宿泊者の快適で特別なひとときを支える宿のスタッフたちは、日頃どのように訪れる人と向き合い、おもてなしを実践しているのでしょうか。このシリーズでは、宿スタッフの方々にお話を伺い、人気の秘密を紐解きます。
今回の人気宿は、「城崎温泉 西村屋ホテル招月庭」
兵庫県の城崎温泉は、年間約100万人以上の観光客が訪れる関西有数の温泉地です。そして、ここ城崎で創業およそ150年の歴史を誇る老舗旅館「城崎温泉 西村屋本館」の別館として建てられた「城崎温泉 西村屋ホテル招月庭」。老舗の伝統をそのままにホテルの快適性を叶えた新スタイルの旅館は、国内はもちろん海外のお客様にも愛されています。ここで働くスタッフ・青木隆幸さんに日々心掛ける「おもてなし」を伺いました。
一人ひとりと向き合うことで、お客様に安心感を届けたい
西村屋ホテル招月庭の経営企画室にて、インターネットでの宿泊販売、予約管理などを担当している青木さん。フロントでの接客や電話対応なども、日々こなしています。
「日常の業務で特に気を付けていることは、お電話での対応です。ご予約をはじめとしたお電話は、お客様との初めてのコンタクトですから、旅館の印象が決まると言っても過言ではありません。言葉づかいや声のトーンに気を配ることはもちろんですが、お客さまの話にじっくりと耳を傾け、求めていることを察知できるように心掛けています」。
電話でのやり取りでは、まずお客様を不安にさせないことが第一だそうです。
「顔の見えない相手との会話は不安があるもの。私以上に、お客様がそう感じているのではないでしょうか。その不安を少しでも払うための心づかいが大事。たとえば、ご予約時にインターネットをご覧になってお電話いただいている場合は、必ずお客様と同じページを開くようにしています。間違えを防ぐため、ということももちろんですが、お客様にご安心いただくためでもあります。同じ場所にいなくとも、同じページを見ることでお客様と心の距離が近づく。少しでもほっとしていただけたら、と思っています」。
実際に顔を合わせての会話であれば円滑にいくことも、電話となるとなかなか難しいもの。青木さんも最初はうまくいかず、お客様にストレスを与えてしまったこともありました。しかし、「マニュアル化された対応ではなく、一人ひとりと向き合うことで、相手の顔が自然と見えるようになった」と、青木さん。その真摯な対応はお客様の心に響き、「青木くんに任せれば安心、次のときも頼むよ」と指名をいただくこともあるそうです。
お客様の様子を察した上で、一つ先の提案を
「お客様にご安心いただける対応をすることが、まずは基本。そして、その上でただ要望を待つのではなく、『一つ先の提案』を意識することも必要だと思います」と言って、青木さんは言葉を続けます。
「たとえば、会話の中で足腰に不安を感じているお客様であることが分かれば、テーブル席でのお食事をご提案することがあります。『結構です』とお答えいただくこともあれば、『それはありがたい』とご希望くださる方もいらっしゃいます。どちらを選ばれるかはお客様次第ですが、ご提案しなければご自身では気づかれないかもしれない。また、ご自身からお申し出になりにくい場合もあると思うのです。お客様からの言葉を待つだけでなく察して提案する。それも必要なおもてなしだと感じています」。
さらに、「老舗・西村屋だからこそ、細かいところまで配慮しなくてはならない」と青木さん。特に、館内の美化は青木さん含めスタッフ誰もが常に気を配っているそうです。
「ロビーの椅子の位置ずれや、窓の汚れなど、小さなことでもすぐに整頓するようにしています。細かいことを見逃さない意識、その積み重ねこそが、お客様からの『さすが西村屋だね』というお声につながるのだと思います。そのようにお言葉をいただくことはとてもうれしいですし、身が引き締まる思いでもありますね」。
英語が話せるからこそ、海外のお客様の役に立ちたい
「西村屋ホテル招月庭で過ごす時間は、お客様にとっては特別なもの。限られた時間をより快適に、思い出深いものにしていただくためにも、私たちスタッフの対応一つひとつが重要ですし、それ次第で変わってきます。お客様というひとくくりではなく、お1人おひとりの状況やニーズに合わせた対応をしていきたいです」と、青木さん。
その一つとして、青木さんは海外からのお客様とのコミュニケーション向上にも力を入れているそうです。というのも、青木さんは英語が堪能。語学力を生かし、海外のお客様をサポートしています。
「父の仕事の関係で13歳からの3年間、米国・カリフォルニア州で過ごしました。そこで身に着けた英語は今、海外からのお客様とコミュニケーションをする上で役に立っています。海外のお客様は日本へ訪れる際に、英語が通じないことをとても不安に感じておられます。実際に日本へ旅行され、言葉が通じずに困ったという経験を持たれる方も少なくありません。西村屋ホテル招月庭では、英語はもちろん、中国語が堪能なスタッフも常駐していますので、安心してお越しいただきたいですね」。
青木さんは、海外からの予約のお電話、メールやチャットなどにも対応しています。
「メールでも、実際にお会いした際でもそうですが、言葉が通じることによる安心感はとても大きいようです。今後、より海外からのお客様が増えていきますから、語学はますます必要になっていきます。海外のお客様に、英語が話せる自分だからこそできる、より良いおもてなしができればと思っています。スムーズなコミュニケーションはもちろんですが、城崎の魅力を深く伝えていくために、さらに語学力を磨いていきたいです」。
街は一つの旅館。感銘を受けた城崎の理念を伝えたい
青木さんが感銘を受け、より多くのお客様に伝えたいと考える城崎の魅力。それは、街に息づく「共存共栄」という理念です。
「私は元々、航空業界を志していたのですが、就職活動を進めていく中でふと目に留まったのが西村屋の会社説明会。実際に働くスタッフや社長の話を聞く中で、城崎という街、そして伝統と格式ある西村屋にたちまち惹かれ、就職することを決めました」。
「城崎は古くから、駅が玄関、道が廊下、土産物屋が売店、宿が客室、外湯が大浴場というように、『街全体を一つの旅館』として捉え、おもてなしをするという考えが息づいています。城崎に存在する旅館は、そのすべてが一つの旅館の客室。ライバルではありません。共に手を取り合い、知恵を出し合って、城崎全体を盛り上げていく。その意識がとても強い街だと思います」。
「実際、温泉街を訪れるお客さまは旅館での宿泊だけでなく、温泉街を楽しみたいという思いがあります。となれば、一軒の旅館が繁栄しても、街全体が活性化していなければ、その地での滞在のイメージがわかないと思います。城崎という街を含めての西村屋。だから、西村屋を訪れるお客様にも、外湯をまわり、風情あふれる街並みを楽しんでいただき、城崎の魅力をもっと知っていただきたいです」。
青木さんは。就職と同時に城崎で暮らし始め、豊かな自然と人の温かさにあふれるこの街への愛着は深まるばかりだそう。お客様の先を読み、見えないところにも気を配るきめ細やかさ。そして、何より城崎を愛する気持ちが、良質なおもてなしへと通じているようです。約150年の伝統と格式、それを支えるおもてなしの精神が根付く「城崎温泉 西村屋ホテル招月庭」。ぜひ、足を運んでみませんか。
城崎温泉 西村屋ホテル招月庭
- 住所
- 兵庫県豊岡市城崎町湯島1016-2
- アクセス
- 【電車】JR「城崎温泉」駅から送迎バスで約6分
【車】北近畿豊岡自動車道「日高神鍋高原」ICより約40分
※この記事は、「楽天トラベル」で過去に公開した記事を一部再構成したものです。