歴史ある古民家を再生し地域の魅力を伝える…。そんなサステナブルな取り組みを続ける「NIPPONIA」。2021年に山形県置賜(おきたま)地方にオープンした「白鷹 源内邸」のテーマは「きもの・リトリート」。きもの文化に触れ、里山に癒やされる滞在です。土地が培ってきた文化や食を五感で味わう経験は、大人の旅に新たな発見をもたらしてくれることでしょう。
里山でリトリートを「NIPPONIA 白鷹 源内邸」とは
源内邸は明治から大正初期に建てられた邸宅群で、母屋と5つの蔵をリノベーションしたお宿です。約8,000平方メートルの敷地内でガストロノミーや着物文化を楽しみつつ、里山でリトリート。日常を忘れて自分を取り戻す時間が過ごせます。
「NIPPONIA 白鷹 源内邸」までのアクセス
「NIPPONIA 白鷹 源内邸」は田園に囲まれたのどかな環境にあります。東京からは山形新幹線で約2時間45分、山形駅からはレンタカーで約50分。バスで向かう場合は山形駅から「道の駅川のみなと長井行」に乗り約1時間15分「浅立局前」で下車します。
独立したメゾネット客室「紅の八塩」
庭園のような敷地内に古民家や蔵が点在していて、まるで小さな村のような愛らしさがあります。それぞれプライベートをたもてるような距離で、静かな時間が過ごせます。
こちら「紅の八塩」と名付けられた客室は、リビングルームから竹林を望むメゾネットスタイル。大正10年に建てられた蔵をリノベーションしたのがこちらのお部屋だそうです。
最も広い客室で、一棟貸し切り4名宿泊できます。家族やグループでゆったりと過ごすことができそうです。広いリビングルームは畳の小上がりも用意されています。
階段を上がった2階が寝室とワークスペースになっています。蔵の屋根を感じさせる三角の天井。宿泊に支障がない部分はあえて当時のままにしてあるため、床板や梁の太さに歴史を感じます。
客室の冷蔵庫には、お酒や山形の特産ジュースが用意されていました。湯沸かしポットに茶器やオリジナルのティーバッグもあります。
各客室にお風呂がついているので、24時間好きなときに入浴できます。バス・トイレは新しく清潔。ヒノキ造りの浴槽はお湯を入れるといい香りが広がります。
歯ブラシやボディタオル、シャンプー・ボディソープなど基本的なアメニティーが揃っています。化粧水などはお気に入りを持参しましょう。
作務衣のようなデザインでリラックスできるルームウエアと、足袋ソックス、タオルが人数分用意されています。
心落ち着く母屋・共用スペース
敷地中央に建つ母屋は、共用スペースと2つの客室があります。共用スペースは着物体験で使われることがありますが、それ以外は自由に利用できます。
金庫蔵を改装した母屋の客室「真紅」
昭和初期に作られた重厚な金庫や階段箪笥といった、時代を感じられるリビング。昔からこの部屋で使われていたソファを張り替え、天童木工のテーブルを配置。メゾネットになっていて、2階がベッドルームです。
大正10年の洋室「艶紅」
母屋の南につながる「艶紅(ひかりべに)」の客室。窓枠や天井のモール、組木の床板など、随所に洋室のデザインがほどこされ、大正当時のこだわりが感じられます。
蔵を改装した離れ
明治35年に建てられた蔵を改装した離れの客室「紅葉」。吹き抜けの天井の高さは7mもあるそうです!アンティークの箪笥と天童木工家具をしつらえています。
伝統に触れる「着物体験」
到着したら、早速着物に着替えて過ごします。江戸時代に米沢藩領だった白鷹は、9代藩主・上杉鷹山が藩政改革で養蚕を奨励したことがきっかけで、その後全国有数の織物産地に成長しました。現在も米織、長井紬、置賜紬、白鷹御召など、日本を代表する織物がつくられます。着用したのは生産量日本一を誇る紅花で染めた着物です。
スタッフの方にアドバイスをいただきつつ、一緒に着物、帯、小物を選んでいきます。さまざまな素材、色がありどれにしようか目移り。さらに帯締めなどの小物を合わせるとまた印象が変わります。
着たまま出歩いてもOK。帯を締めると背筋が伸びて、気持ちもキリリと引き締まったような気がします。着物はまっすぐ縫い合わせるため、洋服に比べて布の廃棄が少ないそうです。これも先人の知恵ですね。
宿の敷地内を着物で散策。建物も江戸時代のものなので、タイムスリップした気分です。敷地内のお庭も美しくて記念撮影を楽しむのもおすすめ。
カップルやご夫婦で宿泊された際に、着物体験をして近隣を散策するお客さまも多いそうです。旅の良い記念になりますね。
「NIPPONIA 白鷹 源内邸」ハーブ園のような庭
実は源内邸には、さまざまな「食べられるもの」が植わっています。民を救うため上杉鷹山が普及させた「かてもの文化」(飢饉に備える食文化)のおかげで、この地方では山菜料理や保存食が豊富です。写真は山椒の実、実際にレストランで使われています。
ディナーは敷地内のダイニング「纏(まとい)」へ
フレンチをベースに、地場の素材と食文化を取り入れた現代的なコース料理。一皿ずつ、ソムリエによるペアリングでいただきます。地元ワイナリーのオレンジワインと一緒にいただくのは、馬肉のコンソメ。
カツオは、オカヒジキ、ナスタチウムの葉に、伝統野菜「畔藤(くろふじ)きゅうり」のソースを添えて。メインは蔵王で育ったフランス鴨を宿の敷地内で採れた桑の葉でローストしたもの。
イチゴと柑橘類のデザート。さきほど庭で見た実山椒が使われています!お庭の素材を料理でいただける、そんなさりげないことが本当の豊かさなのかもしれません。
「基本はフレンチですが、郷土料理の影響も出ています」と、上杉鷹山の「かてもの文化」には学ぶことが多いと語る横澤シェフ(左)。SDGsの観点からも規格外野菜の活用法などを考えているそうです。
「山形はしっかりと日本ワインを見ている方には知られた地域。生産者も続々と増えています」と、ソムリエの出来さん(右)。
食事を終え外に出ると、頭上は満天の星空でした。邪魔する光が少ないからきれいに見えるのですね。星空に気付けたのは久しぶりです。このお宿がそうさせるのでしょうか。
置賜地方の郷土食をいただく和の朝食
昨夜のディナーとは違う趣で、郷土食が並びます。塩蔵わらび、鯉の甘露煮、豆腐田楽、自家製納豆など。ご飯の竹の子もお庭から。元気が出る朝ごはんです。
朝食と一緒にハーブティーなどもいただけますが、こちらは地元で採れるトマトで作ったトマトジュース。置賜お酒だけでなくジュース作りも上手な地域ですね。
「NIPPONIA 白鷹 源内邸」は記憶を残すリノベーション
この場所をどう活かすか、プロジェクトメンバーと地域の方々が一緒に考えてきたそうです。「近隣の方にとって、源内邸は敷居の高いお屋敷だったようで、リノベーションの際には見学したいと訪れる方もいました」とプロジェクトメンバーの梅津さん。地域と繋がるようなアクティビティも用意したいと意欲的。
「こうした壁の傷は、むやみに消さないようにしています。当時を過ごした誰かの残したものだと思うと、むしろ見てほしい」。
愛された建物の記憶を大切にしたいと考えています。
「NIPPONIA 白鷹 源内邸」が伝える物語の中へ
美しい里山に抱かれた「NIPPONIA 白鷹 源内邸」は、地域遺産を守る役割を担っていました。着物に着替えて鳥のさえずりに耳をすませば、まるでここの住人になったような、いつもと違う世界にひたることができました。みなさんもぜひ滞在して、この土地の物語に触れてみませんか?
NIPPONIA 白鷹 源内邸
- 住所
- 山形県西置賜郡白鷹町浅立183-1
- アクセス
- 山形新幹線 赤湯駅より車で約30分
- チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン:17:00)
- チェックアウト
- 10:00
- 総部屋数
- 8室
- 駐車場有り
- 4台 無料 先着順
取材・写真・文/Junko Saito