東京の奥座敷と呼ばれる「鬼怒川温泉」。風光明媚な渓谷に、湯量豊富で湯治効果も高いといわれる温泉、周囲に観光施設も多い人気の観光地です。その鬼怒川温泉で創業130年余りを誇る「鬼怒川温泉 あさや」が、2020年3月にブッフェレストランをリニューアルしました。さっそく本邦初のリポートで、その人気の秘密にせまります。
都内から約120分!乗り換えなしの便利なアクセス
緑豊かな渓谷の景観が楽しめる鬼怒川温泉は東京の奥座敷とも呼ばれ、電車や車でのアクセスの良さが自慢です。特に電車は、東武鉄道の「特急スペーシア」や「きぬがわ号」などの特急を利用すると都内からわずか120分程度。
また、鬼怒川温泉駅から下今市駅へは、SL大樹という蒸気機関車も走っています。2017年、51年ぶりにSLが復活と話題になったもので、鉄道ファンには温泉抜きでも人気の路線です。
鬼怒川温泉駅を出ると鬼怒川温泉はもう徒歩圏内!でもその前に、ちょっと駅前で足の疲れを癒しておきたいところです。SL大樹のレリーフの奥にあるのが、無料で楽しめる人気の足湯「鬼怒太の湯」(9:00~18:00)。もちろん帰宅前の待ち時間で利用するのも賢いです。
泉質はアルカリ性単純泉で温泉街の温泉とまったく同じ。真ん中の六角柱の湯は手湯としても楽しめるよう工夫されています。タオルは無いので持参していきましょう。
駅から「鬼怒川温泉 あさや」へは、駅横のダイヤルバス利用が便利(所要約8分)です。浅草方面からの特急の到着時間に対応して出るバスで、運賃は大人190円、子ども100円で各ホテルまで送迎してくれます。
超豪華!ジブリの世界観にも似た巨大吹き抜け空間に圧倒
バスが到着する入り口側の外観は背が低く、それほど大きなホテルに見えません。ところが一歩内部に入るとびっくり!ロビー奥に、超巨大吹き抜け空間が現れます。
実はロビーがある入り口階は建物の6階。川岸の斜面に建てられているので、入り口の反対側が下まで伸びているのです。
吹き抜けは、その3階から12階までの高さ。まるでジブリ映画の「千と千尋の神隠し」に出てくる世界観を再現したかのようです。
チェックインが本格化する14時からはパイプオルガンの音色も聞こえてきて、華やいだリゾート気分が盛り上がります。
「鬼怒川温泉 あさや」は創業130年余り。現存する宿泊施設では鬼怒川で最も古い老舗中の老舗ですが、設備は絶えず更新し続け、最先端を行くホテルでもあります。
2020年3月にリニューアル!ブッフェレストランを本邦初公開
常時100種以上の品数を誇る充実したブッフェも魅力のひとつ。2020年3月7日に、ブッフェレストラン「ASAYA GARDEN」がリニューアルされたと聞いて、どこよりも早く取材してきました。
席数約200、大型ホテルだけあって壮大なスペースが広がります。
一般的なホテルのブッフェは年々進化していますが、地方により食材の違いこそあれ、共通する進化の方向としては、ライブキッチンでの実演提供があります。
今回のリニューアルで、特に力を入れたのがライブキッチンとのこと。カウンターを以前より低くしたことで、すっきりと臨場感のある実演料理の演出ができます。
お寿司の実演も、今回のリニューアルで新たに加わったもの。あざやかな新鮮なネタがずらり。皿によってネタが異なるので好みのものを選べるのも秘かな楽しみです。
焼きたてにこだわりたいステーキは、国産牛のひれステーキ。その場でシェフが切り分けるところまでライブで見られます。
温度の調整が難しい天ぷらも、職人さんのライブキッチンでの提供です。熱々サクサクのうちに楽しみたい料理の筆頭。天つゆ、抹茶塩などお好みでいただきます。
普通は大皿に盛り付けられて提供されがちなパスタも、こちらではライブキッチンです。
ソースと具材を好みで選べるようになっていて、たとえばソースはカルボナーラ、ナポリタン、ペペロンチーノから、具材はたまねぎ、ベーコン、マッシュルームなどから選べるという具合です。
もうひとつ驚いたのがこちら。石窯を使った焼きたてピザがありました。興味深く見ていると、生地を伸ばしてソースを塗り始めます。
ささっと手際よくトッピングを載せると、炎がちらちら見える石窯の中へ…。
言われてみればピザも焼きたてがおいしいのは当たり前ですが、なかなかホテル内のブッフェ会場で見かけることが少ないので驚きました。
ほかにも個別鍋があったのもうれしい驚きでした。「国産牛しゃぶしゃぶ」に「鍋焼きハンバーグ」「海鮮鍋」など、日替わりで数種類提供されている一人用の鍋は、どれも贅沢なのに独り占め感覚でいただけてポイント高いです。
「生ハムとモッツァレラチーズ」や、ご当地名物の「生湯波」のような前菜類も充実していて種類が多いのも特徴です。個別のお皿での提供はリニューアル後からとのこと。
ほかにも、鮮魚のお造りや、身がぎっしり詰まったズワイガニも人気です。
お楽しみのデザートは、入ってすぐの一番目立つところに置いてあります。取りやすい広めのテーブルですが、中央には見栄えのするディスプレイがあって、見ているだけで幸せになれるカラフルさです。
時期によってメニューの内容は変わりますが、取材時にはいちごフェアということで、地元栃木の「とちおとめ」を使ったスイーツ系デザートがそろっていました。
もちろん見た目だけでなく、素材にもこだわりが。たとえばプリンは、素材の卵に甘みと濃厚さで有名な那須御養卵を使った自家製でした。素材の卵からちゃんとこだわっているのは好印象ですね。
こちらのプリンも今回のリニューアルのひとつだそうです。
今回のリニューアルで新たに増えたのがソフトクリームメーカーとのこと。これは子ども連れにはうれしいですね。
もちろん、普通にカップにすくうタイプのアイスもそろっています。ちびっ子が目を輝かせて並んでいたのはハーゲンダッツのコーナー。高級アイスも食べ放題です。
何しろこちら、和洋中と全方位満遍なく全部で100種以上のメニューがあるので、とてもそのすべてをご紹介はできませんが、ズワイガニからお寿司にステーキ、スイーツの数々…と、これだけ何でも食べ放題だと、満足度が高くて人気があるのも納得です。
新しい会場とメニューの豊富さはもちろん、今回の取材で感銘を受けたことは、スタッフのサービスの質の高さです。
会場の「ASAYA GARDEN」は8階にありますが、入場時間にはスタッフが列を作って出迎えてくれました。
さらに中に入ると、係員が席に誘導して利用の仕方まで丁寧に案内してくれました。もちろん、食べ終わったお皿がテーブルに残っているとすぐに下げにきてくれます。
セルフサービスが普通のブッフェでは、なかなかここまでしてくれるホテルは少ないです。ブッフェレストランの居心地の良さはここにあったのですね。
※取材時は感染症対策をとっていたため、一部提供方法が通常とは異なります。
実はこのおもてなし、ブッフェレストランだけではなく、ホテルにチェックインするときも同じでした。
たとえば、入り口では、宿泊客が到着するのをじっと待っている和服姿の女性スタッフを見かけました。来てから外に出るのではなく、外で到着するのを待っていたのです。
そして、もちろん、出迎え時には、まるで朝ドラのヒロインみたいな、さわやかなこの笑顔です。
開放感抜群!空中庭園露天風呂をご紹介
13階にある「空中庭園露天風呂」は鬼怒川温泉で最も高い位置にあり開放感抜群。自家源泉の肌にやさしいアルカリ性単純泉が注がれます。ちなみに、かけ湯は贅沢にも源泉かけ流しです。
鬼怒川のライン下りで使われる舟と同じものを利用した湯船があるなど、デザインがとってもおしゃれ。ちょっと深めの立ち湯もあって変化も楽しめます。
そして、何といっても一番うれしいのはその景観でしょう。川面から高さ約80mで、鬼怒川では一番高いところにある露天風呂なのだそう。周囲の山々の絶景を眺めての開放感はまさに天空でした。
空中庭園露天風呂は北側と南側に分かれていて、時間帯で男女の入浴が入れ替わる方式。特に立ち湯がある北側からは日本300名山のひとつ「高原山」の景観も望めます。
ほかにも、1階に男女別の大浴場、連絡通路で行き来可能な「八番館」の大浴場も利用できます。どちらもチェックインからチェックアウトまで一晩中入浴可能なのがうれしいポイントです。
空中庭園露天風呂
- 入浴可能時間
- 14:00〜24:00、翌朝 5:00〜10:00
※月・火曜日は15:00〜24:00、翌朝 5:00〜10:00
- 1階大浴場
- 12:00〜翌朝10:00(水・木曜日は15:00〜)
- 八番館大浴場
- 15:00〜翌昼12:00(金曜日は〜10:00、15:00〜)
洗練されたデザインが素敵な最上階の和洋室「雅」
ロビーの吹き抜けを囲むように客室がありますが、2017年にリニューアルした最上階である12階の和洋室「雅」は、和の伝統に洋の機能性が融合した、最先端の意匠。
デザイナーズホテルの一室と言われても納得してしまうような洗練された空間です。
畳は小さくて正方形、縁が出っ張らない琉球畳を使用、ベッドはシモンズ社製のベッド、椅子は飛騨高山の柏木工への特注品です。
そして、柔らかな間接光に浮かび上がる仕切り枠には、日光杉でできた鹿沼組子の木枠が組み込まれていました。
全室温泉が引かれているのもこちらのホテルの特徴ですが、特にこの部屋は最上階のうえ、眺望のいい渓谷側に設置されているので、内湯なのに気分はもう露天風呂です。
さらに、その洗面所には、女性にうれしいパナソニックの美顔器(フェイスイオンスチーマー)が。シャンプーなどのアメニティは、フランスの有名コスメブランドのロクシタンです。
浴衣のデザインもつい最近(2020年3月)変わったばかりなのだとか。あらかじめ全サイズが用意されていて、バスタオルも大浴場で使えるよう、二組ずつ備えるという準備の良さです。
部屋の鍵も、宿泊者がそれぞれ持ち歩けるよう、最初から二組準備されています。部屋には持ち運ぶ際に便利なポーチまで用意されていたのにはちょっと感動です。
レジャー要素は館内で完結、リゾート滞在型ホテルの王道
今回は、リニューアルしたブッフェレストランや、施設の新しい側面をメインに紹介してきましたが、それはあさやホテルの一面に過ぎません。実際に取材してみると、前からあっても意外に知らなかったことも多くありました。
たとえば館内のお土産屋さんで売られていた「あさや特製温泉饅頭」。お店が開いている間はいつでも購入できるのですが、毎日午前7時にできたてが届くそう。よりおいしくいただくには、宿泊当日に予約しておくのがおすすめです。
5階にはライブラリーもありました。雑誌などの貸し出しや、あさやホテルの歴史が分かる資料も置いてあります。
3階の居酒屋前には、なにやら石が鎮座していました。聞くとこちら、100年以上前からずっとこの場所にある富石(ふくいし)という守り神なのだとか。
動かそうとしても動かなかったという言い伝えのあるパワースポット、参拝すると運が良くなるご利益があるとのことです。
ほかにも通常の館内レストランはもちろん、岩盤浴、バーや居酒屋、卓球にビリヤード、カラオケと、館内で一通りの娯楽がそろっています。娯楽が館内で完結するのは大型ホテルの王道ですね。
進化する施設とサービス、変わらない老舗のおもてなし精神
創業130年余りという老舗の歴史を持ちながら、絶えず最新の施設やサービスを取り入れて時代の先端に居続ける「鬼怒川温泉 あさや」。実際に取材してみると、その進化の裏には、変わらない老舗のおもてなしの精神がありました。むしろ、その変わらない精神こそが変化を生み出していたのかもしれません。
鬼怒川温泉 あさや
- 住所
- 栃木県日光市鬼怒川温泉滝813番地
- アクセス
- 【電車】東武「鬼怒川温泉駅」よりダイヤルバスで約8分(大人190円、子ども100円)、またはJR「宇都宮駅」よりシルクエクスプレス(バス)で約1時間30分(500円)
【車】日光宇都宮道路「今市IC」より約25分
- 客室数
- 192室
写真・取材・文/久保田耕司