文人たちが愛した湖畔の宿。城下町・松江を代表する老舗旅館「皆美館」でノスタルジックな時間を過ごす

文人たちが愛した湖畔の宿。城下町・松江を代表する老舗旅館「皆美館」でノスタルジックな時間を過ごす

提供:ことりっぷ

 

国宝・松江城のお膝元に開けた城下町の島根県松江市。この街の風景を象徴する宍道湖畔に立つ「皆美館(みなみかん)」は、創業120年の歴史を誇る老舗旅館。1888(明治21)年の創業以来、湖水の絶景と行き届いた心づかいが評判となり、皇族関係者をはじめ多くの文化人がこの宿を訪れました。そのおもてなしの精神は今も変わらず、「美肌の湯」と海山の幸をふんだんに使った伝統料理で癒しのひとときを過ごせます。

 

石畳の路地に佇むノスタルジックな宿

石畳の路地に佇むノスタルジックな宿 松江を代表する名旅館として知られる「皆美館」

「皆美館」があるのは、松江市の中心部。松江城のお堀沿いに開かれた「カラコロ広場」から、少し路地を入った場所です。「カラコロ」という名称は明治の文豪・小泉八雲が、石畳を歩く人々の下駄の音が“カラコロ”と響いたことから名付けたものなのだとか。

明治・大正・昭和の時代、この宿に滞在した著名人は、武者小路実篤、芥川龍之介、与謝野晶子ら、日本を代表する文人たち。3泊の予定で訪れ、あまりの居心地よさに5連泊した作家もいたそうです。おもてなしの根底にあるのは、名君であり大名茶人として知られた松江藩七代目藩主・松平不昧(まつだいらふまい)公の茶席での客人への心遣い。「客のこころになりて 亭主せよ」という教えを今も受け継いでいます。

 

世界が認めた枯山水の日本庭園と、のどかな湖にみとれる♪

世界が認めた枯山水の日本庭園と、のどかな湖にみとれる♪ 樹齢300年を超える名木を中心とした日本庭園

宿の自慢のひとつが、宍道湖を借景にした枯山水式の日本庭園。主役である15本の松のなかには樹齢200~300年の名木もあり、縁起のいい亀甲割の模様が出る松は「出雲松」と呼ばれています。樹齢にもかかわらず視界を遮る高さにならないのは、盆栽の剪定に用いられる技法で丹精込めて手入れされているからなのだそう。アメリカの日本庭園専門誌のランキングで1位の常連となっている県内の「足立美術館」、京都の「桂離宮」などに並び、上位に選ばれたこともある名園です。滞在中は自由に散策できるので、じっくり鑑賞してみてくださいね。

 

宍道湖を望む展望温泉風呂付き客室にチェックイン

宍道湖を望む展望温泉風呂付き客室にチェックイン 和洋室の「秀明」。部屋の鍵は勾玉をイメージしたもの

それぞれ趣が異なる16の客室から、今回滞在したのは日本庭園と宍道湖を一望できるガーデン・レイクビュースイートの「秀明」。かつて松江の応接間として皇族がたも宿泊されたお部屋を改装し、明治時代のノスタルジックな雰囲気を引き継ぐ和洋室です。

茶の湯の街らしく、茶菓子は地元の老舗和菓子店の季節のお菓子。窓からは湖に架る宍道湖大橋を望め、室内温泉風呂からも湖畔の景色を眺めることができます。浴室のお湯は、“美肌の湯”と呼ばれる「松江しんじ湖温泉」の掛け流し。寝室が湖とは反対側にあるため、静かな環境で眠りたい人におすすめです。

 

寝室から宍道湖を望めるツインルームの「松風」 早朝は宍道湖名物のシジミ漁を眺められる

一方、湖側に寝室があるお部屋からは早朝、宍道湖を行き交うシジミ漁の舟を眺められ、風情たっぷり。ほかにも、和室、洋室、庭園に面したメゾネットタイプなどがあるので、宿泊人数とともにお好みのビューで選ぶのがいいですね。一部、温泉浴室が付いてないお部屋もありますが、こじんまりとして落ち着ける雰囲気の共有温泉を利用できます。

 

絶景で選ぶなら最上階のレイクビュースイート「明星」

 

四季の食材を味わう会席料理

四季の食材を味わう会席料理 庭園を見渡せるレストランは、食事だけの利用もOK

“和のオーベルジュ”としても知られた「皆美館」。夕食と朝食は、庭園と宍道湖を見渡せるレストラン「庭園茶寮みな美」でいただきます。日本海の幸、海水と淡水が混ざり合う汽水湖・宍道湖で水揚げされるウナギ、アマサギ(ワカサギ)、スズキなど、さらに中国山地から集められた四季折々の食材を、伝統の調理法で味わえます。日本海の高級魚として知られるノドグロ、島根牛のステーキ付きのコースもありますよ。

 

朝食にはお殿様が好んだ料理から生まれた「鯛めし」を

朝食にはお殿様が好んだ料理から生まれた「鯛めし」を 名物の「鯛めし」を食べたくて滞在する人も少なくない

翌朝の朝食も楽しみ。“皆美伝統の味”と評判の「鯛めし」は初代料理長が考案し、代々受け継がれている料理です。「鯛めし」というと、お米とともに鯛を丸ごと炊き上げた料理が思い浮かびますが、松江に伝わるのはさらに手が込んだもの。鯛の身をほぐしたそぼろに、黄身と白身に分けたゆで卵をそれぞれ刻み、おろし大根、刻みネギ、ワサビを添えた、彩り豊かな料理です。これを炊き立てのご飯にのせ、秘伝の出汁をたっぷりかけて食べます。

不昧公が好んだ「汁かけ飯」をヒントにして生まれたもので、出汁茶漬け風にサラサラと食べられます。この宿をたびたび訪れた夜更かしの文人たちも、「食欲がない朝でも、食べやすい」と好んだそうですよ。

 

文人たちが過ごした時代にひとときタイムスリップ

文人たちが過ごした時代にひとときタイムスリップ 皆美館の歴史を物語る作品を展示するラウンジ

1階ロビーに面した「いにしえラウンジ古都里」には、この宿を愛した文人や、同じ時代を過ごした作家たちの作品を展示しています。朝食後はコーヒーや紅茶をセルフサービスで味わえるので、チェックアウトまでの時間をゆったりと過ごすのにおすすめです。温かみのある灯りのなかで、古きよき時代に想いをめぐらせてみてください。

「皆美館」から国宝・松江城までは徒歩で数分。江戸時代の武家屋敷の町並みが残る塩見縄手も徒歩圏内です。また、宿からすぐ近くの「カラコロ広場」には、松江城のお堀を巡る遊覧船の乗船場があります。創業時から受け継がれたおもてなしの精神とともに、城下町の風情を味わうのにぴったりの宿を、松江散策の拠点に選んでみてはいかがでしょうか。

 

 

文:永田さち子

 

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