日本三奇橋、という呼び名をご存知でしょうか? 奇橋とはその名の通り、一風変わった工法で造られた橋のこと。日本にはいくつもの奇橋が存在します。その中でも日本三奇橋ともなると、見た目からしてかなり特徴的。今回はそんな奇橋の一つ、徳島にある「祖谷(いや)のかずら橋」の魅力をご紹介します。※日本三奇橋の定義には諸説あります。
外国人客もはるばる訪れる祖谷のかずら橋とは?
場所は徳島県三好市。まさに秘境と呼ぶにふさわしい渓谷が広がっています。名前を祖谷渓(いやけい/いやだに)といい、徳島県内でも特に山深い地域で秋は紅葉の名所としてよく知られる場所です。
その祖谷渓にかかる吊り橋が「かずら橋」です。徳島県のほぼ最西部に位置し、愛媛県の県境と近い場所なので、アクセスがいいとは言えません。徳島市内からでも徳島自動車道の井川池田ICを下り、一般道で2時間半程度かかります。
それでもかずら橋を訪れるのは日本人のみならず、近年では海外からの旅行者も多いそう。なぜそんなに人気のスポットとなっているのでしょうか?
早速かずら橋がどんな橋なのかを紹介していきましょう。
長さ45m横幅は2m、下を流れる川面からの高さは14m。高所恐怖症の人はおそらく一歩も踏み出すことができないでしょう。
それもそのはず、かずら橋の材料は「シナチクカズラ」という植物で橋が組まれていて、足元はスカスカです。実際に渡ってみるとどうでしょうか?
一歩一歩ゆっくり歩いていっても、ギシギシという音とともに絶対に揺れます。
大人の足であっても木と木の間に足が落ちそうになるため、注意しながら渡らなければいけません。
「高いところは苦手だけど、頑張って歩いてみる!」という勇敢な人も途中で止まってしまっては大変。苦手という方は無理をせず、近くから眺めるだけにとどめておきましょう。
とはいっても、男性諸君は度胸の見せ所とも言えます。怖がる人がいたらサポートして、男気を見せるチャンスですよ。
なぜかずら橋はこんなにスリリングな橋なのか?
かずら橋は、もともとこの地に隠れ住んでいた平家の落人たちが架けたものとされています。もし追っ手に見つかっても、この橋を切り落としてしまえば逃げ果たせることができます。つまり切れやすいように、落ちやすいように作られた橋なのです。
そう聞くと、さらに恐怖心が生まれるかもしれませんが、もちろん現在はワイヤー入りで頑丈に補強されているので、切れたり落ちたりすることはありません。ただ、そのスリルを味わうには充分です。
高いところが好き、という方はぜひ周りの景色を楽しみながら、足元には注意してかずら橋を楽しんでみてください。高所は苦手、という方は無理をせず眺めるだけで楽しんでくださいね。
祖谷のかずら橋
- 住所
- 徳島県三好市西祖谷山村善徳162-2
- 営業時間
- 4~6月 8:00~18:00/7~8月 7:30~18:30/9~3月 8:00~17:00
※2022年4月1日から
- 料金
- 大人550円、小人(小学生)350円
- 定休日
- なし
- 詳細
- 大歩危祖谷ナビ
かずら橋を渡りきった後に食べたい名物グルメ
橋を渡りきった後で食べてみたいのが、徳島県周辺でアメゴとも呼ぶ川魚のアマゴ。焼きたてでアツアツのものが、かずら橋の近くにあるお店の軒先で売られています。じっくりと炭火で焼いているため、身はとても柔らかく頭まで食べられます。
またアマゴの横には「でこまわし」という祖谷地方の名物グルメが並んでいます。「でこ」というのは人形のことを示す徳島の方言で、でこまわしはサトイモの味噌田楽。見た目が人形のようで、回しながら焼くことからその名前がついたとされています。この地方でしか食べられない地元の味をぜひ一度味わってみてください。
さらに奥に歩いて行くと琵琶の滝を見ることができます。落差は約50mと、高いところから一直線に落ちてきている水の流れがとても美しい滝です。
その滝の下の方まで辿って行くと、かずら橋の下を流れる川に辿り着きます。
階段があるので、一度川面まで降りてみましょう。かずら橋を下から眺めることもできるので、渡れなかった方はこちらから橋を堪能するのもおすすめですよ。
かずら橋へのアクセスは基本的に車になります。周辺には駐車場がいくつもあるので、そちらを利用しましょう。料金は一台につき300~500円ほど。
最も大きい駐車場が併設された施設「かずら橋夢舞台」は、お土産の購入や食事をすることもできるスペースです。
かずら橋夢舞台
- 住所
- 徳島県三好市西祖谷山村今久保345-1
- 営業時間
- 4~11月 9:00~18:00/12~3月 9:00~17:00
- 定休日
- なし
- 駐車場
- 普通車286台
祖谷渓の崖っぷちで立ち小便!?
祖谷渓の見どころはかずら橋だけではありません。一緒に訪れるべきスポットは「小便小僧像」と「ひの字渓谷」の2つです。そう聞くと「小便小僧の像が何で見るべきスポットなの?」と思われるかもしれません。ただ、一度見てもらえればその理由はわかると思います。
こちらがその小便小僧像です。祖谷渓の絶景を一望できるポイント、しかもその崖っぷちに立っているのです。
こんな場所に立っている訳は、昔、子どもたちが度胸試しの場所として使っていたという逸話に由来があるとされています。
谷底までの高さはなんと200mもあります。現在は崖の手前に柵が設置され、その柵を超えることは禁止されていますので、くれぐれも真似はしないようにしましょう。
そして、もう一つのスポットが「ひの字渓谷」。ここではひの字というネーミング通りの自然を見ることができます。
祖谷渓は深いV字の渓谷美を楽しむことができる場所ですが、特にその迫力を感じることができるのが、こちらのスポットです。深い谷底を流れる祖谷川が急カーブして、ひらがなの「ひ」の字のように見えることからこの名前がついています。
正面から見ると、まるで山がこのひの字の部分を頭に持つ一つの生き物のように見えてきませんか?
「小便小僧像」も「ひの字渓谷」も絶景好きにはもってこいのスポット。かずら橋からは車で20分ほどの場所にあるので、かずら橋とセットで訪問することをおすすめします。
ただ注意点としては、2つのスポットがある徳島県道32号線は、この渓谷のように急カーブが続く道となっているので、脇見などせず運転に集中するようにしましょう。道路自体は舗装されていて山道というわけではありませんが、狭い所もあるのでゆっくり安全運転で走ってくださいね。
祖谷渓を思い切り楽しむなら祖谷温泉で宿泊
祖谷渓についてご紹介してきましたが、東祖谷にはもう1つのかずら橋「奥祖谷二重かずら橋」もあります。紅葉シーズンには渓谷全体が見所になります。祖谷渓を存分に楽しむには泊まりがけで味わうのがベストです!
かずら橋周辺には祖谷温泉があるので、温泉も一緒に満喫すれば旅の満足度はさらに上がること間違いなし。中でも天空露天風呂が人気の「新祖谷温泉 ホテルかずら橋」は様々なお風呂に入ることができ、旅の疲れを癒すのにピッタリな宿泊施設。祖谷の自然を丸ごと楽しむ旅をしてみてはいかがでしょうか?
取材・写真・文/岡本大樹