和歌山県の無人島「友ヶ島」。2022年放映のアニメ『サマータイムレンダ』の舞台として広く知られていますが、実は以前から、秘境ファンやアニメファンから高い人気を得ていました。
明治時代に作られた要塞(ようさい)や砲台跡に、草や蔦(つた)などの緑が侵食する退廃的な風景は、『天空の城 ラピュタ』の世界をも彷彿とさせます。アニメ好きの人はもちろん、アニメをあまり見ない人も、ノスタルジックな魅力あふれる「友ヶ島」に足を運んでみませんか。
目次
神秘の無人島「友ヶ島」について
和歌山県の紀淡(きたん)海峡に浮かぶ無人島群「友ヶ島」とは、地ノ島(じのしま)、虎島(とらじま)、神島(かみじま)、沖ノ島(おきのしま)の4つの島の総称です。
これらの島は、黒船の来航をきっかけに、長い間大阪湾を守る重要な役割を担っていました。明治時代には、旧陸軍により由良要塞(ゆらようさい)*の要所としてあちこちに大砲が備えられ、約600人の兵隊が駐屯する要塞となったようです。
*明治政府が、経済の中心地である大阪を守るため、紀淡海峡周辺に設置した強力な洋式砲台の総称のこと。
現在も、島内には当時のまま砲台跡などが残されており、さまざまなメディアのロケ地としても使われています。
特にアニメ『サマータイムレンダ』(以下、『サマレン』)は反響が大きく、2022年12月には、一般社団法人アニメツーリズム協会が毎年発表する「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」に同作品の舞台として友ヶ島が選定されました。
『サマレン』の舞台になっているのは、4つの島の中で、最も面積の大きい「沖ノ島」。島内での移動手段は、徒歩が基本です。すべて回りきるには、徒歩で6時間ほどかかりますが、主要スポットのみの場合は、3時間ほどでめぐれます。
※自転車も持ち込み可能(乗船料別途800円)ですが、島内は舗装されていないためおすすめできません。
「友ヶ島」への行き方や持ち物をチェック!
友ヶ島へのアクセスについて
友ヶ島へ向かう陸路はないため、海を渡るには島行きの船が出港している「加太(かだ)港」へ行く必要があります。
関西圏から電車で向かう際は、まず、南海電鉄「なんば」駅から「和歌山市」駅または「紀ノ川」駅で乗り換え、「加太」駅まで移動します。所要時間は約1時間45分です。そこから乗船場がある「加太港」までは徒歩約20分で到着します。
車で加太港へ行く場合は、阪和自動車道「泉南」ICから約45分、または「和歌山北」ICから40分ほどかかります。
首都圏から向かう場合は、JR「東京」駅から新幹線で「新大阪」駅まで約2時間30分。「新大阪」駅から「なんば」駅までは約15分です。以降は上記と同じルートで「加太」駅を目指します。
島に渡る唯一の交通手段は船のみ!「友ヶ島汽船(ともがしまきせん)」
友ヶ島へ渡る手段は、加太港から出港する「友ヶ島汽船」のみです。車での乗船はできないため、車で来た場合は港の目の前に2か所ある駐車場(1日最大700円)を利用しましょう。
加太港と友ヶ島の間を行き来する船は1日4便。往路は9時から16時まで、復路は9時30分から16時30分までの運航です。ゴールデンウィークと夏季(7月20日~8月31日)は6便に増便します。
天候や強風、波などの状況により欠航になる場合があるので、当日の朝7時頃に「友ヶ島汽船」の公式サイトを必ず確認してください。
乗船チケット(往復2,200円)は港の船着場で購入できます。事前購入・予約はできないため、出港時間が近づくと行列ができることもあるとか。連休中などは特に混み合っており、場合によっては定員オーバーで乗船できないこともあるので、早めに着いておくと安心です。
船内には潮風を感じられるテラス席と、室内席があります。『サマレン』にて、主人公と主要キャラクターの出会いの場面で登場するのは、この青いシートのテラス席です。
友ヶ島汽船
- 場所
- 和歌山県和歌山市加太港
- 営業時間
- 9:00〜16:00
- 価格
- 大人往復2,200円(片道1,100円)、小人往復1,100円(片道550円)
- 駐車場
- あり(1日700円)
- 電話
- 073-459-1333
- 公式サイト
- 友ヶ島汽船
服装・持ち物について
島内は起伏が激しく、足場の悪いところも多いので、動きやすい服装や靴で行きましょう。
また、これから紹介するスポットには、昼間でも真っ暗な地下施設があるので、懐中電灯が必須です。
主要ポイントを押さえた、お手軽聖地巡礼ルート
島の玄関口「野奈浦桟橋(のなうらさんばし)」
船着場でもあり、友ヶ島の玄関口となっている「野奈浦桟橋」は、『サマレン』では何度も登場する、重要な場所として描かれています。アニメ内でこの桟橋が出てくるシーンと同じ構図になる場所を探し、写真を撮るのもおすすめです。
桟橋からすぐの場所には、島内唯一のカフェ「らぴゅカフェ」があり、近くには自動販売機もあります。島内にはほかに飲食店・売店がないため、ドリンクやフードの物資調達をする場合はここで済ませておきましょう。
カフェの前はテラス席と、芝生が広がる「野奈浦広場」も。島内には、この広場にあるものを含めて4つしかトイレがないため、聖地巡礼する前に立ち寄っておくと安心です。
カフェの斜め向かいにあるのは、「友ヶ島案内センター」。出発前に島の状況などを知りたい場合は、ここに電話で問い合わせましょう。
友ヶ島案内センター
- 住所
- 和歌山市加太字苫ヶ沖島2673
- 営業時間
- 8:30~16:30(島の状況・天候により変動あり)
- 電話番号
- 073-459-0314
神秘的な雰囲気を醸しだす「第2砲台跡」
桟橋から海沿いを20分ほど歩くと、まず現れるのがこの「第2砲台跡」です。
ここは、大阪湾に侵入しようとする敵の軍艦に対して、真横から砲撃を加えるべく設置された砲台の跡地。
海岸低地にあり、敵からの砲撃をまともに受ける可能性があることから、当時は厚さ2メートルもあるコンクリートの壁で覆われていました。しかし、現在は崩れ落ち、赤れんが造りの要塞は緑に覆われ、神秘的な雰囲気になっています。
なお、台風による波風などの影響もあり、さらに壁が崩れる危険性があるため、内部は立入禁止です。遠くから観察するだけに留めましょう。
当時の様子を彷彿とさせる「第1砲台跡」
第2砲台跡から南へ10分ほど歩くと、「第1砲台跡」があります。写真は跡地への入口となる門。生い茂る周囲の木々は、まさに『サマレン』の描写そのままです。
なお、内部は海上保安庁の管理となっているため、これより先へ入ることはできません。ただし、年に2回だけ開催される友ヶ島灯台の一般公開に併せて開放されることがあるので、中までじっくり観察してみたい人は、その日を狙って行きましょう。
重要文化財に認定されている「友ヶ島灯台」
第1砲台跡のすぐそばにある「友ヶ島灯台」もぜひ訪れておきたい場所。ここは、1872年6月に初点灯した石造りの洋式灯台です。
2015年11月には、登録有形文化財(建造物)に登録されています。
元々は違う場所に建っていたそうですが、第1砲台から砲撃する際に妨げとなるため、現在の場所に移転したのだとか。普段は中に入ることはできませんが、年に2回開催される一般公開では、内部の様子や灯台からの景色を見ることができます。
フォトスポットとしても人気の高い「第3砲台跡」
「第1砲台跡」から東へ徒歩約30分歩くと、見えてくるのは「第3砲台跡」。ここは『サマレン』で、主人公と主要キャラが再会を果たした印象的な場面の舞台です。
また、『天空の城ラピュタ』のような世界観を醸し出す、人気のスポットでもあります。
ここは、保存状態が良いため、砲台内部まで見ることが可能です。中にはすり鉢状の砲座があり、砲座下部の地下施設にも入ることができます。
地下室はまるで異世界に迷い込んだような、非日常な空間。常設ライトは敷地内の一部にしかなく、照明がひとつもない真っ暗な箇所もあるので、必ず懐中電灯を使用しましょう。段差や崩れなどもあるため、注意が必要です。
「第3砲台跡」から北東に20分ほど歩くと、「野奈浦桟橋」に戻ってきます。加太港へ戻る船内で、遠ざかる友ヶ島を見つめながら、アニメの主人公の気持ちに、思いをはせてみてはいかがでしょうか。
友ヶ島
- 住所
- 和歌山県和歌山市加太笘ヶ沖島2673
- アクセス
- 【船】「加太港」より「友ヶ島汽船」で約20分
- 公式サイト
- 和歌山市観光協会
舞台に何度も登場する「小嶋一(こじまいち)商店」
加太港周辺にもアニメに登場するスポットがあります。この「小嶋一商店」は、『サマレン』で何度も出てくる売店「コバマート」のモデルとなったお店です。外観はまさにアニメの世界そのままで、取材中も店頭で記念撮影する人がたくさん見られました。
ここの名物は「よもぎ餅」(5個入・650円)。午前中に売り切れることもあるそうなので、フェリーに乗船する前など、早めに行くのがおすすめです。
小嶋一商店
- 住所
- 和歌山県和歌山市加太425
- 営業時間
- 8:30〜18:00(売り切れ次第終了)
- アクセス
- 【電車】南海電鉄「加太」駅より徒歩13分
【船】「加太港」より徒歩約5分
聖地「友ヶ島」の魅力を満喫しよう
アニメ「サマータイムレンダ」の聖地としての側面に加え、秘境や歴史好きな方にもおすすめの「友ヶ島」。非日常的な魅力が満載で多くの人が引き込まれるはず!ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
取材・文/加藤 絵里子 撮影/玉川 美保
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