国指定天然記念物である大室山の麓に位置する「大室の杜 玉翠」は、客室数わずか9室のラグジュアリーな宿。全室に源泉かけ流しの露天風呂と広々としたテラスを備え、美しい海を望むことができます。高級感と利便性を兼ね備えた客室は居心地がよく、リラックスした時間を過ごすのにぴったり。伊豆の幸がふんだんに盛り込まれたお食事と湯ごもりを楽しんだ、1泊2日の滞在記をお届けします。
伊豆高原の高台に建つ、緑に囲まれた宿
伊豆急行線の伊豆高原駅から車で8分ほどの場所にある「大室の杜 玉翠」。東京駅から伊豆高原駅までは特急踊り子号を利用して約2時間、新幹線と在来線を乗り継げば約1時間30分で到着します。伊豆高原駅からは宿の送迎もあり、アクセスのしやすさも魅力です。車の場合はバレーサービスがあり、スタッフに迎え入れられてスムーズに入館することができます。
2018年10月に開業した「大室の杜 玉翠」。大正3年(1914年)創業の老舗旅館をルーツに持ち、脈々と受け継がれた伝統と時代に合った設備やサービスを融合した「モダンクラシック」をコンセプトにしています。
各部屋のデッキテラスに設置された露天風呂は源泉かけ流しで、温度は湯守と呼ばれる人の手で管理をし、常に最適な状態を保っています。あえて大浴場を設けておらず、オーシャンビューのプライベート感たっぷりな空間でゆったりと良質な湯を堪能できるのが魅力です。
伊豆大島を望むモダンなラウンジでチェックイン
エントランスを入ると、大きな窓の向こうに広がる美しい眺めに思わずため息がこぼれてしまいました。チェックインはこちらのラウンジで行います。
窓際のカウンターに座り、ウェルカムドリンクをいただきます。提供されたのは、丁寧に点てられたお抹茶とそれによく合う爽やかな伊豆みかんゼリー。遠くには伊豆大島も見え、絶景を眺めながらお茶を味わっていると心がほぐれていくのを感じます。
ウェルカムドリンクのほかにも、ラウンジではコーヒーや紅茶の無料サービスがあり、夕食や朝食の前後などに一息つくことができるのもうれしいですね。
女性客には色浴衣の無料貸し出しがあり、部屋に入る前に好きな浴衣と帯を選びました。こちらを着て館内を移動したり、食事を楽しんだりすることができます。様々な色と柄が用意されていて、見ているだけで華やかな気持ちになりました。
広いリビングと和室が付いた「オーシャンビュー 特別室」
全部で9室、4タイプの客室があり、今回はリビングルームと和室を備えた「オーシャンビュー 特別室」に宿泊しました。デッキテラスを含めて約85平米の広さを誇り、定員は5名です。明るいリビングルームにはゆったりとしたソファが置かれ、大きな窓一面に絶景が広がっています。
ベッドはハリウッドツインタイプ。広々としたリビングルームの一角に設置されているので、シェードカーテンを開ければ朝日を感じながら爽やかに目覚めることができます。
リビングルームの隣には、座卓と座椅子が置かれた上品な和室があります。広さは8帖。客室には伊豆名産の玉緑茶「ぐり茶」やカプセル式コーヒーメーカーが用意されているので、こちらでお茶やコーヒーを飲みながら一息つくのもいいですね。
源泉かけ流しの露天風呂は、2人でもゆったりと浸かれる広さ。障子窓をスライドさせると目の前に緑と海が広がり、開放感に包まれながら湯浴みを堪能できます。夜は静寂の中、朝は小鳥のさえずりを聞きながらと、時間帯によって雰囲気も変化。好きなタイミングで思う存分に温泉を楽しみましょう。
玉翠オリジナルブランド「Yumoribito」のシャンプー、コンディショナー、ボディウォッシュが備え付けられています。温泉と親和性のある天然成分を配合したもので、洗い上がりはしっとり。いずれもヒノキのいい香りがベースになっていて、リラックスできました。洗面台には同ブランドの温泉ミストも準備されていて、肌だけでなく頭皮もケアできます。
クレンジングジェル、化粧水、乳液、男性用ヘアリキッド、アフターシェーブローション、歯ブラシなど、基礎化粧品からアメニティまでそろっています。
浴衣、作務衣のほか、バスローブも用意されていて、湯上り後は好きなものを選んでくつろぐことができます。
「オーシャンビュー 特別室」にはマッサージチェアが置かれていることも特徴。ゆったり体を預けて美しい景色を眺めていると、心のコリまでほぐれていくようです。
デッキテラスでもくつろげる「オーシャンビュー 1階ツイン」
「オーシャンビュー 1階ツイン」は、デッキテラスが全9室の中で最も広く、なんと約30平米もあります。もちろん、景色はオーシャンビュー。ベッドは完全に分離したツインタイプで、友人同士や母娘などでの宿泊に人気です。同じ空間にソファも置かれています。
広々したデッキテラスには源泉かけ流しの露天風呂も。景色を眺めながらじっくり浸かる温泉は格別です。
デッキテラスにはチェアとL字型のソファが配されていて、それぞれ異なる方向の景色を楽しめます。
ベッドの上から海を望む「オーシャンビュー 2階ツイン」
「オーシャンビュー 2階ツイン」は全室の中でいちばん窓が大きく、開放感抜群。デッキテラスを含めて約58平米の広さで、畳仕様のベッド&リビングルームには窓に向けてソファが設置されています。全体的に深めのブラウンが基調の重厚感のあるお部屋で、常連の方の利用が多いのだそう。
ベッドはハリウッドツインタイプ。窓側に向いているので、朝起きてすぐにベッドの上から海を眺めることができます。
もちろん、源泉かけ流しの露天風呂も完備。澄んだ空気の中で極上の温泉時間を堪能できます。
夕食前にエステでリラックス&アート鑑賞
館内にはエステルームも。心地よいアロマオイルの香りと音楽に包まれながら、ボディやフェイシャル、フットの施術を受けることができます。事前予約推奨ですが、空き状況によってはチェックイン後の予約も可能。2名まで同時に施術できるので、ご夫婦での利用もおすすめです。
小さなギャラリーには、静岡にゆかりのある画家の作品が展示されています。ディナーの前にアート鑑賞で心を潤すのはいかがでしょうか。
個室料亭「いずみ」で伊豆の美食を満喫!
夕食は個室料亭「いずみ」でいただきました。完全個室のプライベートな空間で、思う存分食事を堪能することができます。個室にはそれぞれお花の名前が付けられており、それにちなんだ絵や装飾があしらわれています。今回は「すみれ」のお部屋でいただきました。
料理のテーマは「旬味吟詠」。目と舌で楽しめる料理に、おもてなしの心と笑顔を加えるという創業以来のこだわりが込められています。地元の旬の素材をふんだんに取り入れ、料理内容は季節や仕入れによって少しずつ変わるというコースをご紹介します。
食前酒の山桃酒サワーで喉を潤し、先附の胡麻豆腐からスタート。花のような器にも見惚れてしまいます。
インパクトのある前菜の盛り合わせ「噴湯盛り~紡(つむぎ)~」。ルーツである老舗旅館があった熱川温泉の名物「温泉やぐら」がモチーフになっていて、階段状の部分は坂の多い熱川温泉の地形をイメージしています。スタッフの方がやぐらにお湯を注ぐと、湯けむりのような水蒸気がもくもくと。楽しい演出に思わず笑顔になりました。
鮎の塩焼き、ニューサマーオレンジの器に盛られた鯵の南蛮漬け、手長海老の素揚げなど、前菜からも旬の味を届けるという料理長のこだわりが伝わってきます。
先椀は鱧のすまし汁仕立て。ほっとする味わいです。
華やかなお造りはアオダイ、マグロ、スズキ、アワビ、伊勢海老の盛り合わせで、伊東港から仕入れた新鮮なもの。伊豆天城産の本ワサビをすりおろして、一緒に味わいます。
静岡といえば金目鯛が有名。こちらは下田産の金目鯛を丸ごと一匹煮付けた贅沢な一品で、オリジナルの鮮やかな器で提供されます。
メイン料理は金目鯛のしゃぶしゃぶ、または国産牛サーロインの溶岩焼きのどちらかを1人1品選べ、2人の場合も別々の料理を選択することが可能です。大きな金目鯛の切り身を出汁にくぐらせたら、おろしポン酢につけていただきます。
一方、きめ細かいサシが入ったサーロインは、熱した溶岩で加熱することでジューシーに焼き上がります。
止肴はホタルイカの辛子酢味噌和え。アヤメをかたどったウドが添えられていて、見た目も美しい一品です。
食事はシラスがのった生姜ご飯と香の物、赤出汁のなめこ汁。生姜の爽やかな味わいが口いっぱいに広がります。
ブラッドオレンジのシャーベットとメロンなど季節のフルーツで締めくくり。一つ一つの料理が、味はもちろん見た目も美しく、お腹も心も満たされる極上のディナータイムとなりました。
夕食を楽しんだら、書斎で大人の休息時間
「大室の杜 玉翠」でユニークなのが、館内にレコードや雑誌・書籍をコレクションした書斎があること。ここでは自由に好きなレコードをプレーヤーにかけ、座り心地のいい椅子に腰かけて本を読むことができます。書斎で音楽や本の世界に浸ったり、お部屋の露天風呂を思う存分堪能したり。ゆったりと夜の時間を楽しみましょう。
新鮮なお刺身や地元の旬の味が満載の朝食
朝はデッキテラスに出て、海を眺めながら日光浴。空気も清々しく、すっきりとした気分で一日を始めることができました。朝食前に、また露天風呂に入るのもいいですね。いつでも好きなときに温泉を楽しめるのが、客室付き露天風呂の魅力です。
朝食も個室料亭「いずみ」でいただきます。下田産夏みかんサワージュース、地物のお刺身、伊勢海老のお味噌汁、アジの干物など、夕食と同様に静岡の恵みを堪能できる料理がテーブルいっぱいに並びます。タジン鍋の蒸し物はごまダレ、地元産の新鮮野菜は西伊豆の天然塩や伊豆味噌で。どれも素材そのもののおいしさを感じられます。
デザート代わりは伊豆名物ところてんの黒蜜がけ。角切りにしたところてんにフルーツと小豆餡がのっていて、つるんとのどごしが良く、食事の締めくくりにぴったりでした。
お土産を購入してチェックアウト
チェックアウト前に、ラウンジの一角にあるお土産コーナーへ。伊豆のニューサマーオレンジを使ったお菓子など、特産品が並んでいます。特に人気なのは、ウェルカムスイーツにもなっているゼリーの「伊豆みかん」(5個入り600円)や、朝食で出されているふりかけ「七彩昆布」(660円)です。
玉翠オリジナルブランド「Yumoribito」の商品も充実。お部屋に置かれている温泉ミスト(1,320円)やリップクリーム(660円)は持ち運びしやすく、お土産にもおすすめです。
眺望抜群のおこもり宿で過ごす、温泉三昧の至福のとき
高台に位置し、すべての客室がオーシャンビューの「大室の杜 玉翠」。デッキテラスには源泉かけ流しの露天風呂が備えられていて、のんびりとした時間を満喫するのに最適なおこもり宿です。おもてなしも素晴らしく、帰り際の看板には「お気をつけてお帰りください」の一言が。居心地の良さは、大正時代の創業から続くおもてなしの心からも来ていると感じました。伝統とモダンが調和した「大室の杜 玉翠」で、日常を離れた特別な時間を過ごしてみませんか?
大室の杜 玉翠
- 住所
- 静岡県伊東市八幡野1357-10
- アクセス
- 伊豆急行「伊豆高原」駅より車で約8分(14時20分~17時00分は20分間隔で無料送迎あり※予約制)
- 客室数
- 9室
- チェックイン
- 14:30
- チェックアウト
- 11:00
撮影・取材・文/土田理奈