朝ドラのモデル・牧野富太郎博士ゆかりの地「佐川」と「牧野植物園」をめぐる高知の旅

テレビドラマのモデル・牧野富太郎博士のゆかりの地「佐川」と「牧野植物園」を巡る高知の旅

NHK連続テレビ小説『らんまん』のモデルとして話題の日本植物分類学の父・牧野富太郎博士のふるさと高知県。牧野博士が幼い頃から植物に興味を持ち、独学で研究を続けていたことも高知の豊かな自然があったからこそ。博士が植物への愛を育んだ高知の魅力に触れるために、生誕地である高知県高岡郡佐川(さかわ)町から高知県立牧野植物園へ、牧野博士のゆかりの地をめぐります。

 

JR土讃線

新緑の中を走る1両編成のJR土讃線。のどかな風景に心がなごみます。牧野博士の生まれ故郷・佐川町へは、JR高知駅より「特急あしずり」で約30分、土讃線で約50~70分です。

 

牧野博士の生誕地・白壁が美しい酒蔵の町「佐川町」へ

司牡丹酒造

佐川は美しい白壁の蔵が並び、酒蔵の町としても有名です。町の中央を東西に延びる「酒蔵の道」沿いには、江戸時代に造り酒屋が約9軒もあったとか。そのひとつ「岸屋」の一人息子として生まれたのが牧野富太郎です。

現在では400年以上の伝統を受け継ぐ「司牡丹酒蔵」だけが酒造りを続けています。大きな煙突の下にある蔵は、全長85mもある日本有数の蔵。出荷前のお酒が眠る佐川町のランドマークです。

 

司牡丹酒造

「司牡丹酒造」は佐川領主・深尾氏に従ってきた御酒屋が慶長8(1603)年にここで造り酒屋を開いたのがはじまり。今では土佐を代表する日本酒のひとつです。最近は牧野博士の名前を冠した「マキノクラフトジン」も人気。平日のみ予約制で酒造見学も可能です。

 

司牡丹酒造・酒ギャラリーほてい

司牡丹のショールームがあるのは、かつて料亭だったという趣のある建物の中。日本酒はもちろん酒器や和雑貨なども並んでいます。試飲もできるので、お気に入りの日本酒を見つければ旅の楽しい思い出に。

 

司牡丹酒造・酒ギャラリーほてい

住所
高知県高岡郡佐川町甲1299
電話番号
0889-22-1211(司牡丹酒造)
営業時間
9:30~13:00、13:45~16:30
定休日
年末年始

 

酒蔵の道
酒蔵の道

 酒蔵の道は、酒造りの蔵が並ぶ美しい町並み。仁淀川水系のきれいな伏流水のおかげでこの土地の造り酒屋が発展したそうです。

 

江戸時代の遺構が残る格式高い家々

竹村家住宅

竹村家住宅

酒蔵の道を東へ歩いていくと左側に見えてくるのが、格式高い佇まいの国指定重要文化財「竹村家住宅」。ここは江戸時代に造り酒屋として栄えた商家で、徳川幕府の巡見使の宿としても使われていました。3つの大地震に耐えた頑強な造りと、和紙仕上げの貼り付け壁や付書院の花頭窓など、土佐でしか見られない独特の建築様式を見ることができます。

※見学希望の場合は事前にNPO法人「佐川くろがねの会」(0889-22-5240)に要連絡

 

竹村家住宅

住所
高岡郡佐川町甲1301
電話番号
0889-22-5240(佐川くろがねの会)
営業時間
第2日曜日 10:00〜15:00

 

旧竹村呉服店

旧竹村呉服店・キリン館

竹村家住宅の並びには幕末から明治初期にかけての建物「旧竹村呉服店」があります。現在はお土産にピッタリの雑貨や軽食を楽しめる「キリン館」が営業中。

 

旧竹村呉服店・キリン館

呉服を湿気から守るために用いられたという美しい「なまこ壁」。白い壁の厚さにも驚きます。

 

キリン館

住所
高知県高岡郡佐川町甲1300
電話番号
0889-22-9160
営業時間
10:00~18:00
定休日
火曜日

 

旧浜口家住宅

旧浜口家住宅

江戸中期より酒造りを営んでいた浜口家の住宅は国登録の有形文化財に認定されています。ここでは佐川町のお土産の販売、古民家カフェを営業中。観光途中のひと休みに。

 

旧浜口家住宅

住所
高知県高岡郡佐川町甲1472-1
電話番号
0889-20-9500(さかわ観光協会)

 

植物に魅せられた牧野富太郎の少年時代に思いを寄せる

牧野富太郎ふるさと館(生家)

牧野富太郎ふるさと館

牧野博士の生家跡地に、唯一残っていた当時の写真を手掛かりに生家を再生した「牧野富太郎ふるさと館」。牧野博士直筆の手紙や、植物採集で愛用していた遺品が展示されています。

 

牧野富太郎ふるさと館

幼い頃に両親を亡くし、造り酒屋の跡継ぎとして祖母の手で大事に育てられた博士。少年時代、植物への興味はとどまるところを知らなかったようです。博士自身が語った幼い頃の思い出や自叙伝などからイメージしてつくられた少年期の部屋を見ると、植物に夢中だった少年時代が目に浮かぶよう。

 

牧野富太郎ふるさと館

住所
高知県高岡郡佐川町甲1485
電話番号
0889-20-9800
料金
無料
営業時間
9:00~17:00
休日
月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
※2024年3月31日までは月曜も営業

 

金峰(きんぷ)神社

金峰神社
画像提供:さかわ観光協会

ドラマでは牧野博士のお母さんが好きだった花「バイカオウレン」。牧野博士は幼少の頃、生家の裏山にある「金峰神社」に通い、晩年まで愛した「バイカオウレン」をはじめ、多くの植物を採取して植物への興味を広げていったと言います。ここは牧野博士の植物学の原点といえるべき場所です。

 

金峰神社

住所
高岡郡佐川町甲1896

 

牧野公園

牧野公園
画像提供:さかわ観光協会

牧野公園は県内有数の桜の名所。当時、牧野博士が高知になかった「ソメイヨシノ」の苗木を東京から送り、この苗をきっかけにたくさんの桜が植えられたのがきっかけだそう。戦争によって一度は伐採されましたが、戦後、地元の有志により、再び桜の名所として生まれ変わりました。

そのほかにも園内には牧野博士ゆかりの約400種類の植物を中心に、季節ごとに咲きほこる花々が訪れる人を出迎えてくれます。1~2月には牧野博士の分骨を埋葬した墓の裏に博士の思い出の花「バイカオウレン」が一斉に花を咲かせます。

 

牧野公園

住所
高知県高岡郡佐川町甲2458

 

名教館(めいこうかん)

名教館

安永元(1972)年、佐川領主・深尾氏が家塾として開講した「名教館(めいこうかん)」。その後、藩校として発展し、牧野博士や佐川出身の幕末の志士・田中光顕など多くの偉人を輩出しました。館内ではここで学んだ偉人たちがパネルで紹介されています。

 

名教館

名教館の屋根瓦にボールとバットが! 当時は野球をすることがステイタスだったことを物語っています。

 

名教館

住所
高知県高岡郡佐川町甲1510
電話番号
0889-20-9500(さかわ観光協会)
営業時間
9:00~17:00
定休日
月曜日(祝日の場合は翌日)

 

伊藤蘭林の寺小屋

伊藤蘭林の寺小屋

幕末から明治にかけての教育者として今でも人々の尊敬を集めている伊藤蘭林。この寺子屋、そして後には名教館の教授として身分に関わらず多くの子どもたちに勉強を教え、牧野富太郎をはじめ田中光顕、のちに日本港湾工学の父と呼ばれる広井勇など、多くの文教人が育っていきました。

 

伊藤蘭林の寺小屋

その寺子屋が佐川郵便局の後ろに復元されています。

 

伊藤蘭林の寺小屋

住所
高知県高岡郡佐川町1631-1
電話番号
0889-22-1110(佐川町教育委員会)

 

佐川文庫庫舎(旧青山文庫)

佐川文庫庫舎(旧青山文庫)

鹿鳴館時代の雰囲気をまとう高知県下最古の木造洋館は、元須崎警察署の佐川分署として使われていました。平成21(2009)年に現在の場所に移築。明治期の洋風建築を再現しています。

 

佐川文庫庫舎(旧青山文庫)

住所
高知県高岡郡佐川町甲1473
電話番号
0889-20-9500(さかわ観光協会)
営業時間
9:30~13:00/13:45~17:00
定休日
月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

 

植物の魅力と牧野博士の研究に触れる「高知県立牧野植物園」

高知県立牧野植物園

一路生まれ故郷の佐川町から高知市内の「高知県立牧野植物園」へ。植物園へはJR高知駅からMY遊バスで約30分、牧野植物園正門前下車です。

生前、牧野博士が「植物園を造るなら五台山がええ」という一言で、四国霊場第三十一番札所・五台山竹林寺の「南の坊」跡の周辺を譲り受け、牧野博士逝去の翌年1958年4月に開園。五台山の起伏を活かした約8ヘクタールの園地には、博士ゆかりの野生植物が3,000種類以上も植えられています。

ここはただ植物を見るだけでなく、自然生態系が築かれた植物研究の場としても位置付けられている四国唯一の植物園。毎月出かけても、新しい花や植物に出合える市民の憩いの場です。

 

高知県立牧野植物園

定期的に植物に関する企画展を開催中。公式サイトで内容をチェックして行くのもおすすめです。

 

高知県立牧野植物園

園内に入ると小さな植物にも名前の札がついていることに驚きます。「雑草という名の草はない」と言う牧野博士の言葉が示すように、ひとつずつの草花に名前があることを改めて知り、そのかわいらしい姿やその名前を見るともっと植物を愛おしく感じます。

 

高知県立牧野植物園

ちょうど開花した植物には「咲いています」の看板が掲げられています。

 

高知県立牧野植物園

本館中庭には、博士が台湾を調査した際に発見し、学名に牧野博士の名がつけられた「タイワンマダケ」が植栽されています。本館には映像ホールや図書館、ボタニカルショップ、カフェがあるので、ここでゆっくり過ごす人も多いとか。

 

牧野植物園こんこん山広場
牧野植物園こんこん山広場

2019年に新設された「こんこん山広場」は、園内で一番高い場所にあり、高知の山や市街地を見渡せる見晴らしのよい場所。牧野博士が自ら採集し、東京都練馬の自宅で育てていた植物や台湾産ツツジ属植物なども見ることができます。

 

牧野植物園こんこん山広場

この時は五台山の地形を生かしたゆるやかな斜面に70種類以上2万株のかわいらしい花々が咲いていました。年間を通じてフラワーショーなどの各種イベントを開催しています。

 

高知県立牧野植物園
高知県立牧野植物園

植物を見て楽しむだけでなく、植物の本質を知ってもらいたいという考えから造られた、植物を触ったり、においをかいだり、五感を使って体験できる「ふむふむ広場」。休日には、葉の感触を楽しむ子どもたちのにぎやかな声が聞こえてきます。

 

高知県立牧野植物園

植物園ができる前から園内には竹林寺へと向かうお遍路さんのための遍路道が通っています。時にはお遍路さんとすれ違うことも。

 

牧野富太郎記念館展示館

「牧野富太郎記念館展示館」は常設展示とシアター、中庭で博士のことを深く学べます。

常設展示の「牧野富太郎の生涯」では、博士の足跡を4つの時代に分けて展示。生涯に40万枚以上の標本を集め、植物学の教育にも力を入れた博士の植物学への愛や、人々を魅了し天真爛漫な笑顔の写真など、牧野博士の魅力が詰まっています。

 

高知県立牧野植物園

中庭では牧野博士が書いた植物を実物の植物と見比べることができます。牧野先生の絵の細かさには驚くばかり。

 

牧野富太郎記念館展示館

故郷・佐川町を紹介したコーナー。牧野先生は日本全国の植物を採取しながら、生まれ故郷の佐川へも足を運んだそう。

 

牧野富太郎記念館展示館

牧野博士が晩年を過ごした自宅の書斎を再現。標本や書物に埋もれていても、笑顔を浮かべている牧野先生の楽しそうなこと!

 

高知県立牧野植物園

50周年記念庭園へと向かう途中、柵の中で白く大きな美しい花が咲いていました。これは許可なく栽培してはいけないケシの花。それと知らずにその美しさだけで育ててしまう人がいるため、見て知ってもらうことも植物園の役割だと考えているそう。

 

牧野植物園南園

竹林寺の宿坊跡につくられたのが南園。東洋の園芸植物を中心に植栽され、春には桜が満開になります。その庭園の中央にあるのが、お決まりのワイシャツに蝶ネクタイを締め、カラカサタケを持つ牧野富太郎博士の銅像。

 

高知県立牧野植物園

五台山の地形を活かした50周年記念庭園や温室や土佐寒蘭センターなど、季節ごとにさまざまな咲く草花を楽しめます。花に囲まれた階段を歩くのはとてもいい気持ち!

 

高知県立牧野植物園

高さ約17mの温室に熱帯の植物が生い茂る温室。シダ植物やアコウが壁に張り付くように育つみどりの塔の入り口は、まるで冒険の始まりのようでワクワクします。

 

高知県立牧野植物園

夏休みなどのお休みには温室でさまざまなイベントを開催。水に浮かんだ大きな「オオオニバス」にのって写真撮影をするイベントは毎年大人気です。

 

高知県立牧野植物園

住所
高知市五台山4200-6
電話番号
088-882-2601
開園時間
9:00~17:00(最終入園16:30)
休園日
年末年始(12月27日~1月1日)※メンテナンス休園あり
入園料
一般730円(高校生以下無料)、団体630円(20名以上)
公式サイト
高知県立牧野植物園

 

牧野博士が幼少期を過ごした趣のある佐川町をゆっくりと歩き、丸一日かけても見切れないほどのたくさんの植物に出合える牧野植物園を探索して、植物を心から愛した牧野博士を身近に感じることができた旅。一日ではとても時間が足りない見どころいっぱいの高知。県内に宿泊をして、地元のおいしい食事を堪能しながら、牧野博士の歩いた自然豊かな高知を旅してみませんか?

 

取材・文/山本美和 撮影/田辺エリ

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