提供:ことりっぷ
ジブリ映画「風立ちぬ」に描かれ、ジョン・レノンが愛したことでも知られる、軽井沢の「万平ホテル」。約1年半の大幅改修・リニューアル工事を終え、2024年10月2日、ついにグランドオープン。古き良きノスタルジックな趣きを残しつつ、水回りはすべて一新。塩沢温泉を引く新築棟の「愛宕館」も誕生し、快適でより贅沢な時間を過ごせるホテルへと生まれ変わりました。他にはない魅力にあふれた空間で、忘れられないひと時をぜひ♪
時代を超えて、歩み続けるホテル
玄関脇に置かれた、赤い丸形ポストも創業当初のもの。今も現役で活躍中です
軽井沢駅から車で約10分。木漏れ日ゆらめく森の中に、「万平ホテル」はひっそりと佇んでいます。
エントランスがあるのは、国の登録有形文化財に登録された、1936年創建の本館「アルプス館」。信州民家独特の本棟造りを取り入れながら、ハーフ・ティンバー風に仕上げられています。
今回の改修工事では、建物全体をジャッキアップで持ち上げ、基礎となる土台や耐震補強をした上で元の位置に戻したのだとか。壁や屋根の塗装は、当時の色を忠実に再現。クラシカルな佇まいの雰囲気はそのままに、ゲストを迎えてくれます。
開業当初の木製看板「MAMPEI HOTEL」がゲストをお出迎え
中央に掲げられた看板は、宿が創業した1894年に出来たもの。130年前から現在に至るまで大切に引き継がれ、「万平ホテル」の顔として玄関に残されています。
クラシカルな雰囲気がすてきなロビーエリア
館内に入ってすぐ、目を奪われるのは、真っ赤な絨毯。これは、改修前に残っていたカーペットの一部から色を抽出して、色味を再現したそう。新しいながらも、足元から歴史の深みを感じられます。
またロビーには、さまざまな年代の椅子を配置。旅の疲れを癒やす、くつろぎのひと時にひと役買ってくれそうです。
チェックインを行うのは、スタイリッシュなフロントカウンターで。チェックインは15時、チェックアウトは11時になっています。
フロントカウンターにある筆箱やキャッシュトレイも見逃せません。これは、軽井沢で100年以上続く伝統工芸品の「軽井沢彫」。華やかな彫りの美しさに、思わずうっとり。
「軽井沢彫」が施されたアイテムは、あちこちに。ベルデスクや客室の家具、メインダイニングやカフェ、バーのプレートなど、さまざまな場所で見ることができます。
桜だったり、梅だったり。日本らしいシックな絵柄にも注目してみて。
亀のステンドグラスは、宇野澤秀夫さんによる作品
そして、フロントカウンター横の階段上には、海をゆうゆうと泳ぐ亀の図柄のステンドグラスが。
「海のない軽井沢で、なぜ亀が?」と思われるかもしれませんが、これはホテルの前身だった旅籠「亀屋」時代の名残りを伝えるもの。
もともと「万平ホテル」は、江戸時代から続く旅籠「亀屋」の9代目・佐藤万平さんが、カナダ人宣教師のゲストを懸命にもてなしたことがきっかけとなり、“外国人へのおもてなし”をいち早く取り入れた宿として誕生しました。
その「亀」にちなんで作られたのが、このステンドグラス。「万平ホテル」の歴史を語る上では外せない貴重なものです。
ジョン・レノン一家も過ごした「アルプス館」
古き良き面影が漂う「アルプス館」の廊下
森の癒やしが届く敷地には、3つの宿泊棟「アルプス館」「愛宕館」「碓氷館」があります。
クラシカルな雰囲気を楽しむなら、「アルプス館」へ。今から88年前の1936年に「本館」として建てられ、国の重要文化財にも指定されています。ジョン・レノン一家が夏のひとときを過ごしたのも、ここ「アルプス館」です。
すりガラスや丸いペンダントライトは改修工事前に使われていた、昭和初期のものをそのまま引き継いだ
「アルプス館」の客室数は12室のみ。リビングスペースは、 軽井沢彫の家具や掛け軸と、真っ赤なソファやストライプの絨毯が共存する、和洋折衷のスタイル。ベッドルームとの間にあるすりガラスを閉めると、セパレートになり、プライバシーも守れます。
上質な空間で身支度を整えたり、一日の疲れを癒やせる
リビング&ベッドスペースは、「万平ホテル」らしい伝統や格式をそのままに。一方、バスルームやお手洗いは、大幅リニューアル。ヨーロッパのホテルを想わせる、贅沢な設えになっています。
改修工事前から引き継がれた猫足のバスタブ
女性が憧れる猫足のホールドバスタブは、今も健在。優雅なバスタイムが過ごせそう。
アメニティボックスに「亀」をデザインするこだわりも
アメニティは、英国王室御用達の上質ブランド 「モルトンブラウン」。さらに、今回のリニューアルから、すべての客室にリファのドライヤーを導入するなど、嬉しい設備が満載です。
リラックスタイムに欠かせないパジャマは、全室、小さな凹凸の甲子模様に織っているワッフルニットを採用。驚くほど軽くて、程よい温かさがある、着心地のいいパジャマです。
リニューアルを機に生まれた温泉付きの「愛宕館」
大理石の浴槽に塩沢温泉が注がれる
「愛宕館」は、リニューアルを機に建て替えた新築棟。注目は、なんといっても温泉を注ぐお風呂です。
全30室すべてに、南軽井沢にある「塩沢温泉」から運ぶ温泉露天風呂を設置。泉質は、pH6.7のまろやかな、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(重曹泉)。よく温まり、お肌がつるすべになる美肌の湯です。
いつでも気ままに、好きなときに温泉に入れるのが嬉しい♪
広さ45平米の「愛宕館プレミア」ルーム
「アルプス館」とは違い、「愛宕館」にはリビングとベッドスペースを分ける仕切りがありません。クラシカルモダンな雰囲気で、開放感があり、のびのびと過ごせます。
森の緑に癒やされる「碓氷館」
冷蔵庫のドリンクはフリー、「エミールガレ」のアート作品も間近で鑑賞できる「碓氷スイート(テラス付)」
客室数が最も多い全44室の「碓氷館」は、自然豊かな景観がウリ。特徴的なのは、お部屋のタイプが、3つに分かれていること。アルプス館の雰囲気を取り入れた「クラシック」、仕切りのないモダンな「スタンダード」、限定1室の「碓氷スイート」があり、旅の目的やシーンによって、選べるのが魅力です。
「碓氷スイート」には、ゆったり過ごせるテラスも。目の前に広がる森は、時間帯を変えて見たくなる美しさ。森林浴を心から楽しむことができます。
ひときわ豪華絢爛なメインダイニングルーム
昭和初期から使われる土星型の照明もすてき
「万平ホテル」に来たら、贅沢なお食事も楽しみのひとつ。「メインダイニング」は、「アルプス館」1階にあります。
中に入ると、そこはあっ!と驚く豪華絢爛な造り。ランダムに色を配した「折上げ格天井」や古き良き軽井沢の風景を描いたステンドグラスが印象的な、和洋折衷が融合した唯一無二の空間になっています。
ブルーのタイルが床に敷き詰められ、さわやかな印象
今回のリニューアルで、「メインダイニング」から続く、飲食スペースも一新。窓が大きくなり、四季折々の中庭をゆったりと眺めながら、お食事を楽しめるようになりました。
ランチやディナー時には、スタッフがチャイムを鳴らす“お知らせサービス”も。ぜひ「ピン・ポン・パン・ポーン」と透き通るような、鉄琴の美しい音色に耳を傾けてみて。
お食事の時間になると、スタッフがチャイムを手に持ち、音を奏でてお知らせ 年4回変わる、ディナーコースけやき(6品)の一例
新料理長に就任した大橋進さんが手がけるのは、2種類(5品 or 6品)のディナーコース。
ホテル伝統のソースやクラシカルフレンチのスタイルは守りつつ、素材の組み合わせを変えるなどして、より軽やかで素材の味わいを生かすメニューを提供しています。今後は、料理に添えられるパンも自家製になるとのこと。こちらも楽しみです♪
昭和にタイムスリップしたような時間を過ごせるバー
「メインダイニング」の近くには、食後に寄りたい「ザ・バー」も備えています。一歩足を踏み入れると、昭和初期にタイムスリップしたかのよう。「霧の軽井沢」や「軽井沢の夕焼け」などのオリジナルのカクテルと一緒に、古き良き面影に酔いしれてみてはいかがでしょうか。
広くなったカフェで、ゆったり至福のティータイム
緑が満ちるテラス席
万平ホテルといえば、アップルパイ&ミルクティーの存在は外せません。その味を求めて、県内外からたくさんの人が訪れます。
このメニューを提供しているカフェも、リニューアルにあたり、デッキ部分が広くなりました。席数は20席増え、より多くの人が楽しめるように。風にゆれる葉音や木漏れ日を感じながら、ゆったりとしたひとときを過ごせます。
ジョン・レノンお気に入りの席
店内の奥には、ジョン・レノンが好んで座っていた席も。ファンの方はチェックしてみてくださいね。
「伝統のアップルパイ」(1,500円)、「ロイヤルミルクティー」(1,300円)
緑あふれる空間でいただく、ぎっしりリンゴが詰まったアップルパイは格別です。ケーキと合わせて、ぜひジョン・レノン直伝のミルクティーを召し上がれ♪
ノスタルジーなオリジナル商品をお土産に
創業当初のバゲッジタグをステッカーにアレンジ
館内のショップでは、オリジナル商品を多数販売。レトロなデザインのステッカーは、1枚200円とリーズナブル。ホテル名のロゴ入リで、自分用はもちろん、ちょっとしたお土産にも喜ばれます。
「伝統のフルーツケーキ3切セット」(1,600円)、「りんごとくるみのケーキ」(1,500円)
ちょっとしたおスイーツを手土産にしたい人は、ブランデーをたっぷり使用した「伝統のフルーツケーキ」を。こちらはリピート率ナンバーワンの人気商品。リニューアルを機に、新しいフレーバー「りんごとくるみのケーキ 」も登場し、パッケージの装いも新しくなりました。2つの味を食べ比べるのもおすすめですよ。
130年の歴史を守りながら、モダンに快適にリニューアルした「万平ホテル」。注目を集めるクラシックホテルで、特別な休日を過ごしてみてください。
文:安藤美紀