香川県の県庁所在地である高松の中心地に位置している「高松城跡」。天守は現在残っていませんが、この場所ならではの体験ができる「玉藻(たまも)公園」という観光スポットとなっています。今回は、そんな「日本100名城」、「日本三大海城」のひとつである高松城や玉藻公園(高松城跡)の歴史、見どころをご紹介します。
目次
高松城ってどんなところ?
高松城は1590年に完成したとされています。初代城主は、讃岐国領主であった生駒親正(いこまちかまさ)で、その治世は4代54年続きました。最終的には生駒家のお家騒動を発端とし、松平賴重(まつだいらよりしげ)が城主として入城。そこから228年に渡り、高松城は松平氏の居城として栄えました。なお、松平賴重は水戸黄門で有名な水戸徳川家の祖である徳川頼房(とくがわよりふさ)の子で、水戸光圀(水戸黄門)の兄弟でもあります。
松平氏が城主となってから高松城は整備が進み、1669年には天守が完成。当時の天守は福岡の小倉城を模した3層5階のもので、現存天守である高知城天守や松山城天守の大きさを凌ぎ、四国最大のものだったとされています。明治時代になり、版籍奉還に伴い高松城は廃城となり、1884年には老朽化により天守も解体されたため、現在は天守台のみが残っている状態です。
その後、1955年に国の史跡に指定され、同年中に「高松市立玉藻公園」として一般公開が開始、2006年には「日本100名城」にも選定されました。他にも、戦争中に焼失した桜御門(さくらごもん)の復元再建が2022年に完成し、着々と観光スポットとしての整備が進められています。
海に面している「海城」であることも高松城の特徴のひとつ。そのため、高松城は愛媛県の今治城や大分県の中津城と並び「日本三大海城」と呼ばれています。現在は海側に道路が通っていますが、かつては城壁が海に直接面していたとされており、実際に城内を散策していると、瀬戸内海との近さがよくわかります。
高松城の見どころは「本丸」や「桜御門」だけでなく庭園も
ここからは高松城の現在の見どころをご紹介します。まずは、園内の東門近くに位置する「桜御門」です。江戸時代前期に描かれた『高松城下図屏風』の中でもその姿を見られることから、築城後の早い段階で整備された門とされています。1944年には国宝に指定されることが内定していましたが、高松空襲の際に消失してしまいました。その後、復元整備が進められ、2022年に完成し、現在はその迫力ある姿を見ることができます。
桜御門から続く三の丸には「披雲閣(ひうんかく)」と「披雲閣庭園」が広がっています。披雲閣というのは、1917年に松平家の高松別邸として建てられたものでしたが、来客をもてなすための迎賓館としても利用されており、昭和天皇が宿泊されたこともあります。正統的書院造の建造物としての評価も高く、国の重要文化財にも指定されています。現在は高松市が譲り受け、貸会場として市民に開放されているため、お茶会やコンサートなどのイベントが開催されています。
披雲閣庭園の中にも、さまざまな見どころがあります。こちらの庭園が本格的に整備されたのは披雲閣と同時期の大正時代、さらにその一部は江戸時代に造られたものとされています。見どころは、全体が水を用いずに岩や砂などで山水を表現する枯山水の庭であること。150メートルほどの曲線状の枯川(かれかわ)や、高松市東部でのみ産出される高級石材「庵治石(あじいし)」で作られた石橋が設けられています。
庭園には、松やウバメガシなどの海浜に適したものを中心に、ハゼ、イブキなどの古木や蘇鉄(そてつ)などが植えられています。中には、昭和天皇・皇后が植えられた松も説明付きで見ることができ、散策していると多くの魅力を発見できます。
本丸と二の丸をつないでいる「鞘橋(さやばし)」も見逃せないスポットのひとつ。内堀の中心に浮かぶように造られた本丸は、この鞘橋を渡ることでしかたどりつけないようになっており、いざという時はこの橋を落とすことによって本丸を守ることも想定して造られたとされています。築城当初は屋根はなく「らんかん橋」と呼ばれていましたが、江戸時代の改修により屋根や側壁が設置され、刀の鞘のような形になったことから名称も変更になりました。
鞘橋を渡った先にある本丸には天守台がそびえ立ち、現在は展望デッキも設置されているため、園内で最も高い場所からの景色を楽しめます。瀬戸内海や高松駅周辺など、市街地と高松城の位置関係を一望でき、海と城の近さが一目瞭然です。堀に巡らされた水はすべて海水という点にも納得がいくでしょう。
「鯛願成就」と「城舟体験」、2つの珍しい体験
園内でできる珍しい体験も要チェック。水を瀬戸内海から引いているため、園内の堀には多くの海水魚が生息しています。ここでは、スズキやボラなどに加え、養殖の真鯛も混ざっており、「大願成就」ならぬ「鯛願成就」というエサやり体験ができます。願いを込めてエサを投げ入れ、食べてもらうことで願いが叶うとされているため、ぜひ挑戦してみてください。
エサやりの場所は2カ所あります。海水を引いていることから、堀の中の水位は干満の影響を受けます。満潮時には海と堀をつなぐ水門の周辺に魚が集まりやすく、干潮時は三の丸の「堀端」の近くが最適なスポットです。エサは自動販売機で購入できるので、時間帯に合わせて場所を決めて体験してみましょう。城跡内で鯛にエサをあげる珍しい体験は、旅の思い出になること間違いなしです。
堀の中を船頭さんのガイド付き遊覧船で巡る「城舟体験」も見逃せません。江戸時代に使われていた舟を復元した「玉藻丸(たまもまる)」という舟で、水門近くから天守台までを巡るツアーが毎日9便運行されています。
「城舟体験」の最大の見どころは、天守台を下から見上げ、その迫力を存分に感じられること。特に真下近くまで来ると石垣が迫って来るように思えるほどです。石垣の角を見ると長方形の石が交互に積み上げられている様子がわかりますが、これは算木(さんぎ)積みと呼ばれ、強度を高める積み方のひとつとされています。
さらに、用意されている団扇にはかつての天守閣が描かれており、船頭さんの案内と共に天守台の方へかざしてみると、天守閣が残っていればどれくらいの大きさだったのかがよくわかります。また、舟の周りには多くの魚が寄ってくるので、城舟体験と同時にエサやりを楽しむこともできますよ。
城舟体験
- 運行時間
- 9:00~17:00の30分おきに運行(12~13時を除く。)
※3、10、11月は16時までの運行 - 運休日
- 12月~2月
- 住所
- 香川県高松市玉藻町2-1
- 入園料
- 大人(高校生以上)500円
子ども(5歳以上)300円 - アクセス
- 【電車】JR「高松」駅より徒歩約5分
【車】「高松」空港より約35分
観光の記念に100名城スタンプを!
専門家や城郭愛好家などの審査により、2006年に選定された「日本100名城」。観光地としての知名度や城の持つ歴史上の重要性、また復元の正確性などをもとに決定された各城にはスタンプラリーが設置されています。そんな「日本100名城」のひとつの高松城では、東西の入り口と管理事務所の計3カ所でスタンプを押すことができます。高松城のスタンプは、重要文化財に指定されている月見櫓がデザインされたものです。
瀬戸内海に近い高松城跡ならではの魅力を堪能しよう
高松城跡を存分に楽しむことができる玉藻公園は、高松駅から徒歩圏内というアクセスの良さも魅力のひとつ。また、園内の堀に巡らされた水は海水で、鯛のエサやりという珍しい体験もできます。他にも重要文化財の披雲閣や庭園など、見どころにあふれた園内を散策してみてはいかがでしょうか。
玉藻公園(高松城跡)
- 開園時間
- 【西門】日の出~日没まで(月によって異なる)
【東門】8:30~17:00(4~9月は7:00~18:00) - 休園日
- 12月29日から12月31日
- 住所
- 香川県高松市玉藻町2-1
- 入園料
- 200円(小人100円)
- アクセス
- 【電車】JR「高松」駅より徒歩約5分
【車】「高松」空港より約35分 - 駐車場
- あり(57台・無料)
- 公式サイト
- 高松城「玉藻公園」
※この記事内の写真は玉藻公園内で撮影しています
取材・撮影・文/岡本大樹
参照
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