瀬戸内の12の島と高松(香川県)、宇野(岡山県)を舞台に、3年に一度開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」。2010年に第1回が開催され、今回、2022年は5回目を迎えます。直島、女木島(めぎじま)、小豆島などの注目のアート作品や見どころ、アクセスをまとめて紹介します。穏やかな瀬戸内海の景色とアートにふれる旅に出かけてみませんか?
「瀬戸内国際芸術祭2022」概要
会期
春:2022年4月14日(木)~5月18日(水)
夏:2022年8月5日(金)~9月4日(日)
秋:2022年9月29日(木)~11月6日(日)
開催地
直島、 豊島(てしま)、 女木島(めぎじま)、 男木島(おぎじま)、 小豆島、 大島、 犬島、 高松、 宇野
【春会期のみ】
沙弥島(しゃみじま)
【秋会期のみ】
本島(ほんじま)、 高見島、 粟島、 伊吹島
直島
”アートの島”として国内外から注目を集める「直島」。港では草間彌生の「赤かぼちゃ」が人々を出迎え、島内にはホテルと美術館が一体となった「ベネッセハウス ミュージアム」や、クロード・モネの「睡蓮」を展示する「地中美術館」などがあり、たくさんのアート作品に出合えます。
直島へのアクセス
【岡山・宇野港から】
宮浦港までフェリーで約20分、小型旅客船で約15分
直島港まで小型旅客船で約15分
【高松港から】
宮浦港までフェリーで約60分、高速旅客船で約30分
島内でのアクセス
直島での移動手段には、町営バスやレンタサイクル、レンタルバイクなどがありますが、暑い時期は町営バスでの移動がおすすめ。
レンタサイクル、レンタルバイクを利用する場合は、宮浦港・本村港周辺にいくつかショップがあります。島内には急勾配があるので、自転車を借りるなら電動アシスト付きがおすすめです。
また、ホテル「ベネッセハウス」に宿泊すると、島内を走る宿泊ゲスト専用バスを無料で利用できます。
直島の注目のアート作品・美術館
直島には、世界的建築家・安藤忠雄が手がけたホテルと美術館が一体となった「ベネッセハウス ミュージアム」、ベネッセハウス内で現代美術作家・杉本博司の作品を展示する「杉本博司ギャラリー 時の回廊」、建物の大半が地中にあり、クロード・モネの「睡蓮」などを展示する「地中美術館」、”もの派”を代表する美術家・李禹煥(リ・ウファン)と安藤忠雄のコラボで生まれた「李禹煥美術館」、2022年3月に誕生した「ヴァレーギャラリー」といった美術館・ギャラリーがあります。
そのほか、宮浦港で見られる草間彌生の「赤かぼちゃ」や、藤本壮介の「直島パヴィリオン」、実際に入浴できる大竹伸朗の直島銭湯「I♥湯(アイラブユ)」、7軒の家屋や寺社をアート化した「家プロジェクト」、安藤忠雄の活動や直島の歴史を伝える「ANDO MUSEUM」など、街の中にも多数の作品が。コンセプトである”自然・建築・アートの共生”をじっくり感じることができます。
なお、これらの施設・作品は「瀬戸内国際芸術祭2022」のためだけに公開されているものではなく、会期外も見ることができます。
また、草間彌生の黄色いかぼちゃをモチーフにした作品「南瓜」は現在、展示を中止しています。
▼直島の詳細はこちら
豊島
直島と小豆島の間に位置する「豊島(てしま)」。面積は14.5平方キロメートル、人口約760人の島で、豊かな土壌や漁場に囲まれ、美しい棚田も見られます。
しかし、1970年代後半から産業廃棄物が不法投棄され、環境汚染に苦しめられてきました。今では産業廃棄物は島から運び出され、汚染した土壌の除去も完了し、この島が本来持つ豊かな食やアートが注目を浴びています。
主な見どころは1日で回ることができ、高松や宇野から日帰り可能。もちろん、島内に宿がいくつかあるので、泊まりで豊島の風景やグルメをじっくり堪能したり、直島からも船で約22分なので、直島に泊まって、日帰りで訪れるもおすすめです。
豊島へのアクセス
【岡山・宇野港から】
家浦港までフェリーで約40分、小型旅客船で約25分
唐櫃(からと)港までフェリーで約60分、小型旅客船で約40分
【高松港から】
家浦港まで旅客船で約35分
(唐櫃港までの旅客船は船会社へお問い合わせください)
【直島・宮浦港から】
家浦港まで高速旅客船で約22分
島内でのアクセス
豊島での移動手段には、バスやレンタサイクル、レンタルバイク、レンタカーなどがあります。豊島の見どころは主に家浦・硯・唐櫃・甲生(こう)の4つの地区にあり、時間を気にせずに回るのであれば、レンタサイクル、レンタルバイク、レンタカーがおすすめです。
レンタサイクル、レンタルバイク、レンタカーを借りられるところは家浦港・唐櫃港周辺にいくつかあるものの、数がそう多くないため、午前中になくなってしまうことも。GWや夏休み、連休中などは、事前に予約しておくことをおすすめします。
豊島の注目のアート作品
家浦エリアでは、横尾忠則の主題”生と死”に深く迫る作品を公開する「豊島横尾館」や、旧メリヤス針製造工場と古い船体用木型のコラージュ作品、大竹伸朗の「針工場」などが見られます。
唐櫃浜エリアには、建築家・西沢立衛とアーティスト・内藤礼による環境・建築・アートが融和した「豊島美術館」、人々が生きた証として心臓音を保存・公開するクリスチャン・ボルタンスキーの「心臓音のアーカイブ」などが。
唐櫃岡エリアでは、蔵にカラフルな映像を投影する空間展示、ピピロッティ・リストの「あなたの最初の色(私の頭の中の解-私の胃の中の溶液)」や、森の中で無数の風鈴が音を奏でるクリスチャン・ボルタンスキーの「ささやきの森」といった作品が公開されています。
また、唐櫃岡エリアにある「島キッチン」では、豊島や周辺で採れた食材を使った料理を提供し、豊島の食の豊かさを堪能できます。
甲生エリアにある「海を夢見る人々の場所」は、今回の芸術祭から登場した新作。オーストラリアを代表する現代アーティストであるヘザー・B・スワンと、建築家のノンダ・カサリディスによる作品で、海を眺めに訪れる人々がここに腰かけ、思考を浮遊させる場になることを願って制作されました。
同じ甲生エリアで夏会期から公開される、冨安由真の「かげたちのみる夢(Remains of Shadowings)」も今回の芸術祭の新作です。
▼豊島の詳細はこちら
女木島
高松市の北約4kmのところに浮かぶ、人口120人ほどの小さな島「女木島(めぎじま)」。島内にある巨大な洞窟に、その昔、鬼が住んでいたという伝説から「鬼ヶ島」とも呼ばれます。
高松からはフェリーで20分ほど、作品は港周辺に集まっているので、高松からの日帰りショートトリップにおすすめです。
女木島へのアクセス
高松港より「雌雄島(しゆうじま)海運」フェリーで約20分
島内でのアクセス
作品は港周辺に集中しているため、徒歩で回れます。
鬼ヶ島大洞窟まで行くには、港から徒歩約1時間。バスでもアクセスできます。
女木島の注目のアート作品
女木港では、防波堤と防潮堤に約300羽のカモメが並ぶ木村崇人の作品「カモメの駐車場」が出迎えてくれます。風が吹くと、約300羽のカモメが一斉に向きを変えるのも必見。この作品は、春・夏・秋の芸術祭会期外でも見ることができます。
もうひとつの注目は、人口減少によって空き家になった建物に、コインランドリーやカフェなどの機能を持ったアート作品を展開する「女木島名店街」。生活の中で利用できるアート作品です。レアンドロ・エルリッヒの作品「ランドリー」は、実際に洗濯することも可能。
ほかには、実際にカットやブローをしてもらえる海を望むヘアサロン、宮永愛子の「ヘアサロン壽(ことぶき)」や、オリジナルの卓球台が並び、誰でも自由に卓球を楽しめる原倫太郎+原游の「ピンポン・シー」、カフェとして利用できるヴェロニク・ジュマールの「Cafe de la Plage/カフェ・ドゥ・ラ・プラージュ」などがあります。
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小豆島
瀬戸内海で2番目の大きさを誇る「小豆島(しょうどしま)」。エンジェルロードやオリーブ公園といったフォトジェニックなスポット、瀬戸内海の絶景を望むスポットなど、たくさんの見どころがあります。また、日本国内におけるオリーブ栽培発祥の島であり、オリーブをはじめ、醤油、手延べそうめんなど、名産品も豊富。グルメも見逃せません。
高松から日帰りも可能ですが、広い島内に多数の見どころが点在しているので、小豆島に泊まって、ゆっくり満喫するのがおすすめです。
小豆島へのアクセス
小豆島へは、高松や岡山県内の3港、兵庫県の姫路と神戸から船が出ています。島内には6つの港があり、出発地やフェリー会社によって到着する港が異なります。
【高松から】
高松港より土庄(とのしょう)港・池田港・草壁港までフェリーで約1時間
高松港より土庄港まで高速艇で約35分
【岡山から】
宇野港より土庄港までフェリーで約1時間30分、旅客船で約1時間(豊島経由)
新岡山港より土庄港までフェリーで約1時間10分
【兵庫から】
神戸港三宮新港より坂手港までフェリーで約3時間20分
姫路港より福田港までフェリーで約1時間40分
島内でのアクセス
島を一周するのに、車で2~3時間はかかるほど広い小豆島。島内での移動には、時間を気にせず回れるレンタカーが便利です。島内の各港にレンタカー店があります。
車を運転できない人は路線バスを。全線乗り放題の1日券や2日券が、各港や島内の主要ホテルで販売されています。
小豆島の注目のアート作品
土庄港近くに残る迷路のような町並み「迷路のまち」周辺には、ソピアップ・ピッチの「La dance」、スタシス・エイドリゲヴィチウスの「いっしょに」「ともだち」など、今回の芸術祭から登場した新作が。この3作品は屋外にあり、無料で自由に鑑賞できます。
「La dance」は、アーティストの出身地であるカンボジアの生活に馴染み深いアルミ製品で、百日紅(サルスベリ)の樹をかたどり、アンリ・マティスの絵画「ダンス」にちなんで、円形に配置されています。
同じ「迷路のまち」エリアには、現代アートチームの目[mé]が手がけた「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」も。洞窟のように延びる路を、歩いて体感することができます。
そして、醤油蔵や佃煮工場が軒を連ねる「醤の郷(ひしおのさと)」エリアには、古民家にフランス人写真家のジョルジュ・ルースの作品と制作現場を展示した「ジョルジュ・ギャラリー」や、今回の芸術祭に合わせてグランドオープンした「醤の郷現代美術館」などがあります。
池田港から突き出た三都半島の神浦(こうのうら)エリアも見逃すわけにはいきません。家をヤドカリの背の殻に見立てた尾身大輔の作品「ヒトクサヤドカリ」、漁業者の高齢化によって使われなくなった舟を作品化したフリオ・ゴヤの「舟物語」といった新作が展示されています。
神浦エリアではほかに、かつてあった小径の石垣や瀬戸内海で集めた流木などで作られた巨人、伊東敏光の「ダイダラウルトラボウ」や、バス停をアート化したチャールズ・ウォーゼンの「ポップストップ」、田中圭介の彫刻インスタレーション「Utopia dungeon ~Command from Utopia~」なども見られます。
そのほか、福田港近くにある「福武ハウス」も要注目。芸術祭会期中、「ベネッセアートサイト直島」のアジアコレクションを中心に、インディゲリラ、潘逸舟(はん いしゅ)、アマンダ・ヘン、Chim↑Pomといったアーティストの作品を展示しています。敷地内にはカフェ「葺田(ふきた)の森テラス」もあり、島の食材を詰め込んだお弁当や、島内で焙煎・ブレンドしたコーヒーなども販売しています。
▼小豆島の詳細はこちら
高松
高松の注目のアート作品
上記の各島へのフェリーが発着し、芸術祭めぐりの拠点になる高松。高松港のシンボル的存在の2本のカラフルな柱は、大巻伸嗣の作品「Liminal Air -core-」。柱の一部は鏡面になっていて、周囲の情景を映し出します。2010年に誕生して以来、芸術祭期間外もずっとここで訪れる人を出迎えています。
そのほか、高松港旅客ターミナルビル1階にあるAsaki Odaの「PAPER SEA」、2022年夏、屋島山上に誕生する「高松市屋島山上交流拠点施設(愛称:やしまーる)」、秋会期に登場する保科豊巳(ほしな とよみ)の「屋島での夜の夢」など、今回の芸術祭に初登場の新作も多数。
また、世界的彫刻家のイサム・ノグチのアトリエと住居を一般公開した「イサム・ノグチ庭園美術館」をはじめ、高松空港、香川県庁本館など、高松市内では多数のイサム・ノグチ作品を見ることができます。高松でも丸1日は時間をとって、アートめぐりを楽しみたいところです。
▼高松の観光スポット・グルメの詳細はこちら
宇野
宇野の注目のアート作品
直島や豊島への船が発着する岡山県の宇野港。港の目の前に立つJR宇野みなと線・宇野駅は、白と黒の装飾が施され、駅舎自体がイタリアのアーティスト、エステル・ストッカーの作品になっています。宇野駅のほか、常山(つねやま)駅、八浜(はちはま)駅、備前田井(びぜんたい)駅も同様に、モノトーンのデザインで駅舎をアート作品化。
それだけでなく、空き缶やペットボトル、家庭から出る不要品などで作ったチヌ(クロダイ)のオブジェ、淀川テクニックの「宇野のチヌ」や「宇野コチヌ」、放置自転車をアート化した小沢敦志の「終点の先へ」などたくさんの作品が。宇野港周辺でもアートめぐりを満喫できます。
宇野港へのアクセス
【バス】
岡山駅東口より両備バス 玉野渋川特急線で「宇野駅」または「宇野港」バス停下車(所要約55分)
【電車】
岡山駅よりJR宇野みなと線で「宇野駅」下車(所要50分程度)
または、JR瀬戸大橋線 快速マリンライナーで「茶屋町」駅へ、宇野みなと線に乗り換え「宇野駅」下車(所要45分程度)
宇野駅より徒歩約1分