提供:ことりっぷ
箱根を代表する温泉街のひとつ、強羅。箱根登山鉄道の強羅駅から徒歩5分の静かな路地に、箱根では珍しい日本茶専門店「茶石」があります。用意しているのは煎茶、玉露、かぶせ茶、ほうじ茶など20種類近いシングルオリジンの茶葉。箱根さんぽの途中でちょっと一息、香りと味をじっくり楽しむ日本茶の世界を楽しんでみては。
煎茶道を愛するオーナーが開いた小さなお店
2022年秋にオープン。寄木細工のスツールは箱根・畑宿の作家の作品
観光客でにぎわう強羅駅前から坂道を上り、緑豊かな路地へと入った先。もとは美容院だったレトロでかわいい建物の1階に「茶石」があります。こちらは地元出身で煎茶道をたしなむオーナーが、大好きな日本茶の世界を楽しんでほしいと開いたお店。シックな店内には、L字形の大きなカウンターに箱根寄木細工のスツールが数脚。静かにお茶と向き合うための空間が広がっています。
美容院時代の建物をグレーのデザインモルタルでシックな内装に
選りすぐりの茶葉を美しい作法でじっくりと
「焙じ茶」干菓子付き1200円~。3煎まで味の変化が楽しめる
「茶石」で扱う茶葉はシングルオリジンと呼ばれるもの。同じ農園で生産された単一品種の茶葉で、栽培から製造まで、ひとりの生産者が一貫したイメージをもってつくりあげたこだわりのお茶がそろいます。産地は静岡、鹿児島、福岡、京都、小田原など茶葉ごとにさまざま。オーナーが旅をしながら全国各地の農家を訪ね、これぞと思う茶葉を直接取引しているのだそう。
焙烙は笠間焼の作家のもの、丸みのある茶碗は韓国の作家のもの
訪れた日は「焙じ茶」だけで3種類があり、華やかな甘みと香りのある鹿児島県志布志市の荒茶をオーダー。お茶はすべて注文を受けてから目の前で1煎ずつていねいに淹れてくれます。ほうじ茶の場合は、小さな炉を使い、焙烙(ほうろく)で茶葉を炒るところからスタート。店内いっぱいに広がる香ばしい香りと、お茶碗に注がれるまでの流れるような所作にときめきます。手作りの干菓子、焙烙、鉄釜、急須、茶わんなど選りすぐりの茶道具とともにゆっくりと味わいましょう。
暑い日は水出し冷茶、煎茶に玉露、かぶせ茶も
「水出し冷茶」干菓子付き500円~。写真は日替わりで楽しめる「本日の冷茶」
緑茶はさらに選択肢が豊富で、暑い日にさらりと味わいたい水出し冷茶、目の前で淹れてくれる煎茶、玉露、かぶせ茶などジャンルやその日・その時期ごとにおすすめの品種を多数ラインナップしています。それぞれ3煎まで味の変化が楽しめるうえ、玉露なら最後は茶葉そのものを味わうこともできますよ。さらに抹茶や和紅茶、フレーバーティーも。迷ったらお店の人に飲みたいイメージを相談して決めてみては。
「煎茶」干菓子付き900円~
お茶といっしょに箱根を代表する和菓子はいかが?
「本日のお菓子」各300円
それぞれのお茶には、讃岐の和三盆を使ってお店で作った干菓子が付いてきますが、これとは別に箱根各地の和菓子をオーダーすることも可能。日ごとに多少異なることもあるそうですが、強羅で大正時代から続く「孫三総本家」の温泉餅や、箱根湯本「ちもと」の鈴形の最中「八里」などが定番どころ。箱根ならではの和の甘味で旅の一服を盛り上げてくれますよ。
写真左から時計回りにフィルターインボトル2800円~、テイクアウト500円~、茶葉ティーバッグ500円~
「茶石」では茶葉の販売にも力を入れています。その日のおすすめとして店内で味わえるものを中心に20種類以上がそろい、その場で購入が可能。お店の内装とリンクさせたようなグレーのシックなパッケージでおみやげやギフトにもよさそうです。そのほか、オリジナルのフィルター内蔵ボトルや淹れたてのお茶のテイクアウトもあるのでチェックしてみて。
自然光の入る店内。奥が焙煎室
知る人ぞ知る強羅の日本茶専門店。まるでひとつのセレモニーのように、時間をかけてシングルオリジンのお茶を味わう豊かなひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか。
文:佐藤史子 写真:山下コウ太