創業130年を超える老舗「料亭旅館 金城樓」で味わう金沢の贅と粋

金城樓

風情あふれる料亭や茶屋が残り、伝統的な街並みが訪れる人を魅了する加賀百万石の城下町・金沢。そんな歴史ある金沢でも老舗中の老舗なのが「料亭旅館 金城樓(きんじょうろう)」です。

130年以上前から料亭を営み、旅館としての客室は全6室。由緒ある庭園や美しい料理を通して日本の伝統美と和の心に触れる、「金城樓」1泊2日宿泊記をご紹介します。

 

「金城樓」へは金沢駅からタクシーで約10分

金城樓

「料亭旅館 金城樓」は1890年に創業し、きらびやかな加賀百万石の伝統を紡ぐ料亭旅館。前田利家の娘が嫁いだ前田対馬守家(まえだつしまのかみけ)の子孫、前田孝敬の屋敷を初代・土屋九兵衛さんが引き継ぎ、料理屋を開業したのがはじまりです。

 

金城樓

金城樓へは鼓門がシンボルのJR金沢駅からタクシーで約10分、バスで約15分で到着。人気観光地の兼六園やひがし茶屋街にも徒歩圏内と、観光に便利な立地です。

 

広い玄関と豪華な調度品に胸が高鳴る

金城樓

日本古来の木造建築の旅館の中に入ると、最初に驚くのは玄関の広さ。兼六園の由来である六つの景観「六勝」が書かれた、書道家・横西霞亭(よこにしかてい)作の屏風や、加賀友禅の巨匠である成竹登茂男(なるたけともお)が手がけた几帳など、豪華な調度品とともに宿泊客を迎えてくれます。

 

金城樓

「こちらで履物をお脱ぎ下さい」と笑顔で案内してくれたのは、玄関番の越田伸二さん。立派な伊予の青石の上で靴を脱ぎ、客室係の案内で部屋へと向かいます。

 

広々とした和の空間「雪の間」でチェックイン

金城樓

金城樓の客室はわずか6室のみで、この日宿泊したのは2階の「雪の間」。館内には階段だけでなく、エレベーターもあるので年配の方も安心です。

扉を開けると、そこはまだ次の間。少し進んだ先に、和室13畳とベッドルームの広々とした二間が広がっていました。定員は4名です。

 

金城樓

ベッドは石川県の老舗寝具店「石田屋」と提携した金城樓オリジナル。しっかりとした弾力で身体を支えてくれます。掛け布団はやわらかな天然素材の生地が優しく包み込む、オーストリア「カウフマン社 」の羽毛布団。

 

金城樓

涼しげに部屋を彩るのは、夏を迎えて障子から模様替えした風通しの良い簾戸(すど)。「日本の四季を感じてもらいたい」という想いが込められています。金城樓の客室はすべて庭園が見えることも特徴で、「雪の間」からは旧前田対馬守庭園を上から望めます。

 

金城樓

客室でお茶菓子をいただきながらチェックインを行います。金城樓では1室につき1人の客室係がおもてなし。今回は金沢生まれ、金沢育ちのちあきさんがチェックアウトまでお世話をしてくれました。

 

金城樓

お茶菓子は月替わりの上生菓子と落雁。初夏を代表する紫陽花(あじさい)を表現した上生菓子はとても美しく、きれいに点てられた抹茶とともに味わいました。

 

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館内着は日本旅館の醍醐味でもある浴衣。落ち着きのある紺色の浴衣に鮮やかな丹前が映えます。丹前は女性がえんじ色、男性が深緑色です。

 

金城樓

アメニティも一流のラインナップ。シャンプー、コンディショナーは「ブルガリ」、化粧水・クレンジングミルクは金沢の酒蔵「福光屋」の、お米の美容成分を配合した高保湿自然派化粧品です。

 

金城樓
金城樓

地元のものを使ったアメニティにもご注目。加賀野菜パウダーを配合した「加賀野菜せっけん」、能登産の珪藻土を使用したソープディッシュ&アメニティトレー、能登ヒバの香りが広がる除菌・消臭用エッセンシャルウォーターなど、高品質な石川県ゆかりのアイテムが用意されています。

 

 

贅を尽くした全6室のくつろぎの空間

金城樓

全6室の中で最も広い客室が1階「竹の間」。和室15畳+8畳の二間付きで、箱庭を眺めながらくつろぐことができます。空間に彩りを添える赤いテーブルは漆塗り。寝具はお布団、定員は4名です。

 

金城樓

「竹の間」は欄間が見事。富山県に伝わる伝統工芸「井波彫刻」が施されており、創業当時から残されている貴重なしつらえです。

 

金城樓

和室10畳・定員2名と、コンパクトながら人気のある2階「花の間」。窓からは旧前田対馬守庭園が見え、春は華やかな桜を望める特等席。夏は新緑、冬は風物詩の雪吊りと、四季折々の風景が楽しめます。

 

 

約150年前から続く旧前田対馬守庭園に見惚れる

金城樓

お茶をゆっくり味わった後は館内を散策。最初は玄関近くにあって気になっていた枯山水と旧前田対馬守庭園へと向かいました。旧前田対馬守庭園は1890年に金城樓が創業する以前、前田家の邸宅だった頃から存在する歴史ある庭園です。

 

金城樓
金城樓

庭園に並ぶ立派な灯籠のうち、「十二支燈籠」は十二支が彫られた豪華絢爛なもの。廃藩置県が実施された1871年頃に建てられた豪邸の面影を感じます。

 

金城樓

廊下に並べられていたのは、江戸時代に参勤交代で使われたとされる弁当箱。金城樓の前の通りは大名行列が往来しており、前田対馬守家が使用していたのではないかという説が伝わっています。

 

金城樓

1階のパブリックスペースには江戸時代初期の絵師・狩野探幽作の貴重な絵画も展示。また、ガラスケースにずらりと並ぶ「干支の盃」は、1954年から続く金城樓の伝統です。毎年正月に宿泊者へプレゼントしている九谷焼で、歴代の盃を見ることができます。能美市に記念館がある九谷焼作家・二代浅蔵五十吉の作品にもご注目。

 

金城樓

通路の壁に飾られた団扇(うちわ)は、花街・金沢の文化を象徴するもの。ひがし茶屋街、にし茶屋街、主計町(かずえまち)茶屋街の「金沢三茶屋街」で伝統を継承する芸妓(げいぎ)さんの名前が書かれています。料亭である金城樓ではお座敷体験も可能です。

 

金城樓

群青色の美しい階段は平成のはじめ頃、「金沢の迎賓館」をコンセプトに建て直した時に設置され、縁起の良い「ひょうたん」のデザインが施されています。

 

金城樓

2階にあるのは、婚礼や会議ができる大広間。「末広の間」は最大40名で食事ができ、手吹式円筒法(てふきしきえんとうほう)で製造された希少なガラス窓からは、旧前田対馬守庭園を見渡せます。

 

金城樓
金城樓

華やかな舞台が設置された110畳の大広間「丹頂の間」では、芸妓さんが華麗な踊りを披露することも。舞台の松は友禅作家・談議所栄二の作品です。後方では大樋長阿弥作の大樋焼(おおひやき)「櫻獅子」が見守っています。

 

金城樓

「金城樓」五代目主人の土屋兵衛さんにお話を伺うことができました。

「金沢は加賀百万石の時代から昭和初期まで、日本で五本の指に入る大都市でした。中でも浅野川界隈は花街も近く、特に栄えていた場所で、当時は料亭やお茶屋が見渡す限り軒を連ねており、その一つが金城樓でした。花街は料理、建築、芸事など和の文化の集大成でしたが、現在、失われつつあります。金城樓は花街文化の名残である料亭として、古き良き文化を継承するという使命感をもっています」と、老舗としての想いを語ってくれました。

 

金城樓

お部屋に戻り、夕食の時間までちょっと一杯。冷蔵庫に入っている飲み物はすべて無料です。金沢百万石ビール「ペールエール」「コシヒカリビール」、中村酒造「加賀太鼓」のほか、「奥能登サイダー」「湯桶サイダー 柚子乙女」「加賀棒茶」など、地元産にこだわったドリンクをおいしくいただきました。

 

老舗料亭の真価を味わう伝統的な加賀会席料理

金城樓

客室で和の趣を堪能していると、ちあきさんがお迎えに来てくれました。待望の夕食です。宿泊者の夕食は基本的にお部屋食ですが、空きがある場合は料亭のお座敷で食事を準備してくれます。様々なお食事部屋があり、例えば「つぼみの間」は、「大事なお客様は明るい色でもてなす」という金沢の風習に倣った、艶やかな赤壁が特徴的なお部屋になっています。

 

金城樓

この日の夕食は、旧前田対馬守庭園が見える「桐の間」で。樹齢400年を超える「槙(まき)の樹」が鎮座しています。

 

金城樓

料理は旬の食材に合わせて考案され、6月中旬〜7月下旬頃までは鮎がメインのお献立です。食事の準備を……と思い、ひざ掛けを広げてみると初めて見る形と柄。これは武家だった前田家にちなんだ「袴柄」で、手ぬぐいとしても使え、持ち帰ることができます。

 

金城樓

伝統的な加賀会席料理は先付「水無月豆腐」から開幕。無病息災を願う6月の神事「夏越祓(なごしのはらえ)」に合わせて提供される料理です。けがれを清める「茅の輪(ちのわ)」の装飾もすばらしく、つるんと喉ごしの良い胡麻豆腐と厄払いの意味をもつ小豆で残り半年の健康を祈りました。

 

金城樓

2品目は、透明なトマトジュレと加賀野菜の加賀太きゅうりを石川県産の黄金蟹と合わせた夏らしい向付。黄金蟹とは数千匹に1匹しか獲れないという、とても貴重な紅ずわいがにの一種です。幾度も濾すことで透明に仕上げたトマトジュレとともに、たっぷりの黄金蟹を味わう贅沢。老舗料亭の技術、そして産地だからこそ食べられる幸せを堪能しました。

 

金城樓

吸物「とうきび真丈(しんじょ)車海老」は、つるっとしたじゅんさいと、とうきび真丈のふわふわな食感が楽しい一品でした。蓋の内側に金の装飾が施されたお椀は輪島塗。代々継承された器や特注の皿など、目にも美しい食器にも注目です。

 

金城樓
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お凌ぎ「めぬけの蒸し寿司」、お造り「こちの洗い」「鮪・やりいか」「岩牡蠣」と続き、能登産の海の幸に舌鼓。お造りは大皿に盛り付けられるのではなく、梅醤油・ごぼう醤油・酢橘塩と、各刺身が最もおいしく食べられる調味料に合わせて一皿ずつ提供されました。

 

金城樓

食事をしていると挨拶に来てくださったのは、女将の土屋由美子さん。美しい所作とともに、一部屋ずつ、宿泊客一人ひとりに笑顔を届けてくれます。

 

金城樓

続いて強肴(しいざかな)の「ガス海老の湯葉蒸し」が登場。ガス海老は傷みやすいため石川・富山から出荷されることは滅多にない、幻の海老です。ガス海老のふくよかな旨味を湯葉が優しく包み込み、計算し尽くされた和の味わいに感動しました。

 

金城樓

見た瞬間、思わず感嘆の声が漏れてしまった焼物「天然鮎の塩焼き」。6月中旬から漁が解禁となった富山県・庄川の天然鮎をメインに、加賀野菜「金時草」で表現した紫陽花や沢蟹を盛り付け。躍動感あふれる清流を一皿で作り上げています。香ばしく焼かれた天然鮎は大人な苦味と香りがすばらしく、頭から尻尾まで丸々おいしくいただきました。

 

金城樓

肉料理は、リピーターにも評判の加賀郷土料理「治部(じぶ)」。治部とは「治部煮」とも呼ばれ、鴨肉や加賀特産のすだれ麸などを醤油・砂糖で煮込んだ、江戸時代から伝わる金沢の味。そんな郷土料理を、金城樓流の洗練された味わいに仕上げています。鴨肉は契約養鶏場の合鴨を使用。じゅわっと出汁が滲み出る鴨団子も絶品でした。

 

金城樓

お食事は「鮎ご飯」。毎年お店で仕込んでいるという自家製の味噌で作った味噌汁やお漬物とともに、風味豊かな鮎ご飯をいただきました。今回は富山県庄川産で、時期によっては石川県の犀川や浅野川で捕れる鮎も提供されます。

 

金城樓

締めの水菓子は、きなこアイス&自家製コーヒーゼリーに練乳をかけて。地元産の新鮮な食材にこだわり、丁寧な仕事が施された創業130年を誇る老舗料亭の味は、別格のおいしさでした。

 

金城樓

食後は香ばしい加賀棒茶を味わいながら、ライトアップされた旧前田対馬守庭園を鑑賞。槙の樹は庭師の巧みな技術により、縁起の良い末広がりの形に整えられています。

 

金城樓

幸福感で満たされながら「雪の間」へ戻り、総檜風呂でリラックス。まるで森林浴をしているかのように檜が心地よく香り、日本旅館ならではの癒しを与えてくれました。

 

 

静寂の中で過ごす幸せな朝食の時間

金城樓

静寂に包まれ、簾戸から入る陽の光を浴びながら目覚めた朝。立派な巨石「不二石(ふじいし)」を目前にしたお座敷「鳳凰の間」で、朝食をいただきました。

不二石とは豊臣秀吉が愛でたという太閤七石の一つで、秀吉が戦費を調達するために堺の商人に売り渡したもの。関西の名家から受け継ぎ、現在は旧前田対馬守庭園に配されています。料亭は昼からの営業のため、朝食は宿泊者のためだけの特別な時間です。

 

金城樓

朝食のお献立はご飯と味噌汁を中心に、特製の出汁巻卵、甘鯛のとっくり蒸し、縁起の良いひょうたん形のにんじんを添えた炊き合わせなど、豪華なおかずの数々。焼きたての「かますの幽庵焼き」は、ふっくらとした厚みのあるかますが美味でした。

 

料亭旅館 金城樓

「魚は市場に出る前に購入できるので、1日早くお客様にお出しできます」と話してくれたのは、料理長の加茂野隆志さん。例えば「かますの幽庵焼き」は朝セリで最も質の良いものを競り落とし、一夜干しにして提供。時には漁師から直接購入することもあるそうで、老舗だからこその仕入れ力もおいしさの秘密です。

 

金城樓

お米は、ごはんとお粥から選択可能。宿泊客の食べる時間に合わせて、炊き立てが土鍋で提供されます。お米は石川県の契約農場で育てられている「能登ひかり」。粒立ちがよく、おかず無しでも食べられるほど甘みのあるお米です。

 

金城樓

ごはんやお粥はお代わり自由。前日とは違う装いのちあきさんが一杯ずつ、丁寧によそってくれます。

 

 

ひがし茶屋街、近江町市場…周辺の観光スポットを紹介

金城樓

金城樓の周辺には金沢を代表する観光スポットが多数。チェックインする前にいくつかのスポットを回る方も多いそうですが、この日は11:00にチェックアウトした後、荷物を預かってもらい周辺観光へ。まず、ひがし茶屋街へ向かいました、金城樓から浅野川大橋を渡り、徒歩約5分。伝統的建造物群保存地区に指定されており、風情あふれる街並みが魅力です。

 

金城樓

浅野川沿いに料亭が連なる「主計町(かずえまち)茶屋街」へは徒歩約4分。金城樓を発着地として人力車に乗ることも可能で、「金沢3時間コース」では金沢を代表する二つの茶屋街(ひがし茶屋街・主計町茶屋街)を巡り、伝統工芸の金箔貼りを体験できます。そのほか、金城樓では人力車での多彩な観光コースの事前予約を受け付けています。

 

金城樓

ランチは金沢の台所・近江町市場へ。金城樓からは徒歩約8分。鮮魚や野菜、果物などを扱うお店のほか、海鮮丼・回転寿司など地元グルメを味わえる様々な飲食店が集まり、大勢の観光客や地元の人でにぎわう観光スポットです。

 

金城樓

前田家由縁の日本庭園を愛でながら、伝統の加賀会席料理を楽しめる「料亭旅館 金城樓」は、古都・金沢の趣を感じられる日本旅館。創業130年以上の歴史ある老舗に泊まる、安らぎの金沢旅行へ出かけてみませんか。

 

料亭旅館 金城樓

住所
石川県金沢市橋場町2-23
アクセス
JR「金沢」駅より車で約10分
客室数
6室
チェックイン
16:00
チェックアウト
11:00

 

撮影/島田香 取材・文/小浜みゆ

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