東日本で見られる初夏の絶景!
ゴールデンウィーク明け~6月頃になると、ツツジ、ユリ、ヒルガオなど、夏の訪れを感じる花が咲きます。そんな花をはじめ、新緑など東日本で見られる初夏の絶景を、写真家の喜多規⼦さんがプロの撮影テクニックとともにご紹介します。
写真家
喜多 規⼦(きた のりこ)さん
東洋英和⼥学院⼤学卒。写真家・前川彰⼀⽒に師事。⽇本国内の⾃然⾵景をテーマに光・⾊・フォルムを巧みに操り表現する。アマチュア時代、多数のカメラ誌の⽉例コンテストにてグランプリや年度賞を受賞し、フリーとして活動を始める。2019年、個展「MOMENT」(富⼠フイルムフォトサロン東京・大阪・名古屋・福岡・札幌)開催。2020年「栞ーfour seasonsー」(旧オリンパスプラザ東京・⼤阪)開催。2022年「FORME(フォルム)」(OM SYSTEM GALLERY)開催。写真集に『MOMENT』(⽂⼀総合出版)、『FORME』(⾵景写真出版)、共著に『美しい⾵景写真のマイルール』(インプレス)、『極上の⾵景写真フィルターブック』(⽇本写真企画)がある。「喜多規⼦フォトスクール」主宰。公益社団法⼈ ⽇本写真家協会(JPS)会員。公益社団法⼈ ⽇本写真協会(PSJ)会員。
秋田・仙北の水没林
秋田県仙北市
宝仙湖の水没林
国道341号線の上流側の⼋幡平と、下流側の⽥沢湖との中間に位置する宝仙湖(ほうせんこ)。鮮やかなコバルトブルーの湖⾯には理由があり、上流の⽟川温泉に含まれるアルミニウムの粒⼦が、⻘い波⻑の光だけを反射しているからだと⾔われています。
4⽉上旬から⼤量の雪解け⽔で⽔位が上昇し、毎年5⽉中旬頃にはヤナギの⽔没林の新緑が⻘い湖⾯に⾊鮮やかに映えます。ただ、6⽉初めには夏場の洪⽔期に備えて放⽔し⽔位を下げるので、この時期だけ⾒ることができる貴重な⾵景です。
PLフィルターを使って⽔⾯の反射を調整することで、コバルトブルーの⾊に新緑の⾊を引き⽴たせることができました。
宝仙湖
- 住所
- 秋田県仙北市田沢湖玉川
- アクセス
- 【電車】JR「田沢湖」駅からバス「宝仙湖展望台」下車、徒歩約5分
- 詳細
- 宝仙湖
秋田県仙北市
秋扇湖の水没林
⼋幡平から⽥沢湖⽅⾯に向かうと宝仙湖の次に秋扇湖(しゅうせんこ)が⾒えてきます。上流部の新⽟川⼤橋から俯瞰すると宝仙湖と同じようなヤナギの⽔没林が⾒え、この時期ならではの⾵景です。
コバルトブルーの⽔⾯に⾵が吹き、さざ波もきれいだったので、⾼速シャッターで動感も捉えました。
秋扇湖
- 住所
- 秋田県仙北市田沢湖玉川
- アクセス
- 【電車】JR「田沢湖」駅から車で約20分
- 詳細
- 秋扇湖(鎧畑ダム湖) 観光情報
⽉⼭志津温泉のブナ林
山形県西村山郡西川町
地蔵沼のブナ林
⼭形県⻄川町の⽉⼭(がっさん)⼭麓、志津温泉近くの神秘的な地蔵沼。ブナ林に囲まれており、新緑と残雪のブナの根開け(木の周りに積もった雪が丸くとけること)が⼈気の撮影スポットです。地蔵沼周辺はブッシュが残雪に埋もれているこの時期だけ散策することができ、新緑のブナの根開けのほか、雪解け⽔に咲く⽔芭蕉も楽しむことができます。
残雪とブナの新緑をバランス良く⼊れながら、⽔⾯からの霧が濃くならないうちに素早くシャッターを切りました。
⼩⾬が降る中、霧が出たり消えたりを繰り返していました。⽊⽴の重なりに気をつけながら、右奥へと視線誘導できるフレーミングにカメラをセットして、霧が流れた瞬間にシャッターを切りました。
地蔵沼
- 住所
- 山形県西村山郡西川町志津
- アクセス
- 【車】山形自動車道「月山」ICから約10分
山形県西村山郡西川町
⼭形県⽴⾃然博物園のブナ林
およそ245ヘクタールにもおよぶ広⼤な山形県立自然博物園には、ブナの原⽣林が広がり、樹齢200年にもなるブナの⼤⽊やミズナラ、カエデ、トチなども⾒られ、⾃然の仕組みや⼈間との関わり合いなどが学べます。初めて訪れるときは、午前・午後と2回⾏われているブナの森への案内(無料)に参加するとよいでしょう。
特徴のあるブナの⽊を⾒上げて撮影。霧がかかったので、より幻想的に仕上げることができました。
⼭形県⽴⾃然博物園
- 住所
- 山形県西村山郡西川町志津
- アクセス
- 【車】山形自動車道「月山」ICから約10分
- 詳細
- 山形県立自然博物園
福島のクマガイソウ
福島県福島市
⽔原のクマガイソウ群生地
クマガイソウはラン科の多年草で、紅紫⾊の網⽬状脈がある袋状の花弁が特徴。観賞価値が⾼いため、園芸採取により⾃⽣地が激減し、環境省と福島県の絶滅危惧種に指定されています。3万株以上が⾃⽣する⽇本最⼤級の福島市水原地区の群⽣地は、毎年5⽉上旬〜下旬に開催される⾥まつりの時期だけ⼀般公開されています。
PLフィルターを使って濡れた葉っぱの反射を取り除いて撮影することで、クマガイソウの花がはっきりとしました。
⽔原のクマガイソウ群生地
- 住所
- 福島県福島市松川町水原字鎌倉山地内
- アクセス
- 【電車】JR「松川」駅から車で約30分
福島県二本松市
⽻⼭の⾥クマガイソウ園
個⼈所有のクマガイソウ群⽣地で、オープンガーデンとして⼀般開放。1万5千株以上のクマガイソウが林の中で可憐な花を咲かせます。駐⾞場からのアクセスも良く、気軽に観賞することが可能です。
⽊⽴の並びが重ならないよう、⽴ち位置に注意しながら撮影しました。
⽻⼭の⾥クマガイソウ園
- 住所
- 福島県二本松市戸沢柏久保160
- アクセス
- 【電車】JR「二本松」駅から車で約30分
房総のハマヒルガオ
千葉県南房総市
原岡海岸のハマヒルガオ
毎年5⽉上旬頃から、南房総市・原岡桟橋近くの原岡海岸の砂浜にハマヒルガオが咲き誇ります。それほど規模は⼤きくないのですが、ゆらゆらと潮⾵に吹かれながら咲く姿がとてもかわいらしいです。
海岸に広がるハマヒルガオの群⽣を、超広⾓レンズで捉えることでダイナミックに表現。揺れているのでブレないように⾼速シャッターで撮影しました。
原岡海岸〜多⽥良北浜海岸の間にある原岡桟橋は、全国でも数少ない⽊製の桟橋。たびたびテレビドラマなどのロケ地にもなっており、フォトジェニックなスポットとして⼈気があります。
桟橋を歩くことができないほど波が⾼かったので、引き波をスローシャッターで撮影し、動感を表現しました。
お天気が良い⽇には、原岡海岸から⼣焼けに浮かぶ富⼠⼭のシルエットがとても美しく見えます。海の⾊をきれいに出したいので、空の部分にはハーフNDフィルターを使って露出を調整しながら撮影しました。
原岡海岸
- 住所
- 千葉県南房総市富浦町原岡
- アクセス
- 【電車】JR「富浦駅」から徒歩約8分
奥⽇光のミツバツツジとクリンソウ
栃木県日光市
竜頭ノ滝のミツバツツジ
男体⼭の噴⽕によってできた溶岩の上を、まるで⼤岩を噛むように豪快に流れ落ちる様⼦が⻯の頭に似ていることから、竜頭ノ滝という名が付いたと⾔われています。新緑の美しい5⽉には、トウゴクミツバツツジが咲き誇ります。
PLフィルターで新緑や⽔⾯の反射の調整をし、ミツバツツジが彩る滝をスローシャッターで表現しました。
竜頭ノ滝
- 住所
- 栃木県日光市中宮祠
- アクセス
- 【電車】JR・東武「日光」駅からバス「竜頭の滝」下車、徒歩約2分
栃木県日光市
⻯頭ノ滝下駐⾞場近くのクリンソウ
⻯頭ノ滝下駐⾞場近くでは、5月中旬~6月にかけてクリンソウも咲きます。クリンソウはサクラソウ科の多年草で、北海道〜本州、四国の⼭間部の湿原や沢沿いなど、湿気の多い場所で⾒られます。有名な日光市の千手ヶ浜より規模は少ないものの、国道脇なので簡単に⾒つけることができます。
クリンソウの群⽣を、⼿前から奥に視線誘導ができるよう縦でフレーミングしました。
⻯頭ノ滝下駐⾞
- 住所
- 栃木県日光市中宮祠
- アクセス
- 【電車】JR・東武「日光」駅からバス「竜頭の滝」下車、徒歩約2分
栃木県日光市
湯の湖のミツバツツジ
三ツ岳の噴⽕で湯川がせき⽌められてできた湖で、周囲は約3km、三⽅を⼭で囲まれており、どことなく神秘的な雰囲気が漂います。湖岸には散策路があり、1時間ほどで周回可能。湯の湖北岸には⽇光湯元温泉があり、⽩濁の名湯が癒してくれます。5⽉にはトウゴクミツバツツジや、アズマシャクナゲの群落を楽しむことができます。
⼩⾬が降る中、しっとりと濡れた新緑とミツバツツジがとても⾊鮮やかでした。PLフィルターを使って、鮮やかさを強調して撮影しました。
湯ノ湖
- 住所
- 栃木県日光市湯元
- アクセス
- 【電車】JR・東武「日光」駅からバス「湖畔前」下車すぐ
佐渡のトビシマカンゾウと岩ユリ
新潟県佐渡市
⼤野⻲のトビシマカンゾウ
佐渡島の北に位置する⼤野⻲は、標⾼167mの⼀枚岩が海に突き出ています。ここでは毎年5⽉下旬〜6⽉上旬に、約50万株100万本ものトビシマカンゾウが咲き、⻩⾊い花が⼀⾯に広がります。
カンゾウは朝咲いて⼣⽅にはしぼんでしまう⼀⽇花なので、花がら(咲き終わってしおれた花)が気になります。まずは、できるだけきれいなカンゾウを選ぶことがポイント。きれいなカンゾウが⾒つけたので、それを主役に超広⾓レンズで⻘空を⼊れてダイナミックに捉えました。PLフィルターを使って、⻘空の⾊も強調しています。
⼤野⻲から東の⽅向には、⼈気の景勝地である⼆つ⻲を⾒下ろすことができ、朝日も望むことができます。⼆つ⻲は二匹の亀がうずくまっているように⾒える島で、海⽔の透明度は佐渡随⼀を誇ります。
カンゾウが咲く丘のグリーンをきれいに出すため、ハーフNDフィルターを使って太陽と空の部分の輝度差を調整して撮影しました。
大野亀
- 住所
- 新潟県佐渡市願
- アクセス
- 【車】両津港から車で約55分
新潟県佐渡市
藻浦崎公園の岩ユリ
佐渡ではトビシマカンゾウと同じ時期に、岩ユリの花も⾒かけます。海岸沿いやゴツゴツとした岩肌にしっかり根を張り、オレンジ⾊の花を凛と咲かせている様⼦はたくましく、⽣命⼒を感じさせます。藻浦崎(もうらざき)公園では初夏の訪れを告げるように、岩ユリの群⽣が広がります。いくつかの株がまとまって咲く姿はまるでブーケのようです。
⼿前の岩ユリの株を主役にしながら、⼣日を⼊れて撮影しました。ハーフNDフィルターでユリと空の露出を調整しています。
藻浦崎公園
- 住所
- 新潟県佐渡市北片辺
- アクセス
- 【車】両津港から車で約60分
道東の新緑とエゾイソツツジ
北海道足寄郡足寄町
オンネトーの新緑
オンネトーは阿寒摩周(あかんましゅう)国⽴公園の最⻄端に位置し、季節や気候、⾒る⾓度、時間帯によって⾊が変わる神秘の湖。湖畔周辺には散策路が整備され、原⽣林に囲まれた⼿つかずの⼤⾃然を満喫することができます。
鏡のように映り込んだ雌阿寒岳(めあかんだけ)と阿寒富⼠を主役に、画⾯の周りに⽊々を⼊れることで遠近感を出しました。
オンネトー
- 住所
- 北海道足寄郡足寄町茂足寄
- アクセス
- 【車】道東道「足寄」ICから約50分
北海道足寄郡足寄町
錦沼
オンネトーから1.5kmほど北に行った場所にある⾚褐⾊の錦沼。この⾚褐⾊は、鉄分を豊富に含む堆積物によるものです。周囲のアカエゾマツの新緑と沼の⾚⾊が鮮やかなコントラストを⽣み出し、6⽉中旬には⽩いエゾイソツツジも咲きます。
このような⼟壌で成⻑する、植物の⽣命⼒を表現しました。PLフィルターを使って⽔⾯の反射を調整することで、⾒た⽬よりも⾚褐⾊の⾊が強調できました。
錦沼
- 住所
- 北海道足寄郡足寄町茂足寄
- アクセス
- 【車】道東道「足寄」ICから約50分
北海道川上郡弟子屈町
硫⻩⼭のエゾイソツツジ
川湯温泉の源である硫黄山。6月中旬から7月上旬にかけて硫黄山山麓に咲く、エゾイソツツジの⽣命⼒を表現しました。⼿前に⼤きな株のを⼊れながら、奥に硫⻩⼭の噴煙を霧に⾒⽴てて撮影。
硫黄山
- 住所
- 北海道川上郡弟子屈町川湯
- アクセス
- 【電車】JR「川湯温泉」駅より車で約5分
北海道網走郡津別町
津別峠の雲海
屈斜路湖(くっしゃろこ)の周りにある4つの峠の中で、最も標⾼の⾼い津別峠。津別峠から2.5kmほど登ると、津別峠展望台に到着します。雄⼤な屈斜路湖と遥か彼⽅に広がるオホーツク海、阿寒の峰々の美しい稜線など、360度の⼤パノラマが広がります。また運が良いと、早朝にこのような雲海を⾒ることができます。
下界は霧の中だったのですが、津別峠まで登ると雲海から朝日を望むことができました。朝日で雲海がオレンジ⾊に染まり、とても幻想的でした。
津別峠
- 住所
- 北海道網走郡津別町字上里
- アクセス
- 【電車】JR「摩周」駅から車で約60分